12.アサーション・トレーニング4  7月15日

〜論理療法

今回は自己指導で40分です。べつに設定しなければならないわけではないのですが、なりゆきで1時間設定してしまいました。最初は、提出物を返すだけと考えていたのですか、そういえばアサーション・トレーニングでやり残した論理療法をやってやろうと思い立ちました。ちょうどいい本を本屋で見つけたこともあります。

時間 学習項目      活 動 内 容(★留意点 ▼生徒の反応)     
10 提出物返却    1)1学期の提出物や確認テストを返却する。
★正解や解答例を裏面に印刷して時間短縮をはかる。
25 思い込みを変える

1)「自己主張ワークシート3」を配布する。
2)読みながら説明する。
・彼氏にふられた女の子の例を考える。
・エリスの論理療法の概略を説明する。
・非合理的な思い込みを合理的な思い込みに変える必要性を理解させる。
3)「思い込み度チェック」を配布する。
4)チェックをさせ、結果を自分で分析する。
★100問あるので時間がかかる。
 5 ふり返り 1)ふりかえりシートを配布する。
2)記入させ、回収する。
★チェックの速度に非常に個人差があるので、集計を終わった生徒から書かせる。

資料

自己主張ワークシート3

前々回のワークでは、アサーションで対応できるように、ロール・プレイをしてみました。相手も傷つけず、自分の主張もできる、つまりアサーションになれたでしょうか。どうしても、アサーションになれない人の理由に、間違った思い込みがあります。

例えば、彼氏にふられた女の子のことを考えてみましょう。
少女A 彼氏にふられた→もう生きていけない  
少女B 彼氏にふられた→次の男を見つけよう       

同じように彼氏にふられた女の子なのに、それによって起こる感情や行動は全く違います。
それは、「彼氏にふられた」という[出来事]と、それによって起こる「もう生きていけない」「次の男を見つけよう」という[感情・行動]の間にある[思い込み]が違うからです。

      [出来事]     [思い込み]              [感情・行動]
少女A  彼氏にふられた→私は愛されなければならない    →もう生きていけない
少女B  彼氏にふられた→私は愛されるに越したことはないが愛されないからといって絶望的ではない→次の男を見つけよう       
               
アメリカの心理学者のエリスの理論によると、
私たちは、問題や悩みなどの[感情・行動]が、それを引き起こすような[出来事]によって引き起こされると考えがちだが、実は[出来事]をどんな[思い込み]で受け止めたかの影響で、[感情・行動]は引き起こされているということになります。つまり、問題や悩みの起こるプロセスは、
[出来事]→[感情・行動]ではなく、
[出来事]→[思い込み]→[感情・行動]なのです。
ただし、[思い込み]には、[合理的な思い込み][非合理的な思い込み]があります。そして、特に[非合理的な思い込み]は、現実的ではなく、その結果、問題や悩みかつくられやすくなります。エりスは、[非合理的思い込み][合理的な思い込み]に変えることを勧めます。


思い込み度チェック

つぎの100項目について、共感できるかそうでないか、それぞれ印をつけてください。考えすぎてはいけません。すばやくつぎつぎと判断していつてください。たいせつなのは、あなたが実際にどう思うかということで、「こう思わねばならない」というような視点はもたないようにしてください。それぞれの考えについて、共感できるときは番号の左下のマス目に、できないときは右下のマス目に印をつけてください。

1 他人から認められることは重要だ
2 失敗するのは、いやだ
3 まちがったことをした人間は、報いを受けるべきだ
4 自分は物事を冷静にうけとめるほうだ
5 もしその人が望むなら、人間はどんな環境でも幸福でいられる
6 何か面倒なことがおこるのではと、心配でしかたがないときがある
7 重要な決定は、先のばしにしてしまうことが多い
8 だれにでも、助けたり助言してくれたりする人は必要だ
9 アヒルの子はアヒルでしかないと思う
10 のんびりくつろぐのが何よりも好きだ
11 他人から尊敬はされたいが、どうしてもとは思わない
12 うまくできないことは、やりたくない
13 あまりにも多くの悪人が、罪を免れていると思う
14 フラストレーションがたまってイライラすることは、あまりない
15 人間は状況によって落ちこむのではなく、それをどう受けとったかで落ちこむのだ
16 予測できない危険や未来のできごとについて、心配する必要はないと思う
17 面倒なことがおきても、積極的に立ちむかうつもりだ
18 重要な決定をするときは、専門家に相談したい
19 過去のできごとの影響は消すことができない
20 計画はたくさんあるほうがよい
21 どんな人からも好かれたい
22 自分がへたな競技に参加することに抵抗はない
23 間違ったことをした人間は非難されるべきだ
24 物事にはそれぞれのやり方がある
25 自分の気分を決めるのは、自分自身だ
26 心配事が頭から離れないことがよくある
27 自分自身の問題に直面することを避ける傾向がある
28 人間には、力を借してくれる自分以外の何かが必要だ
29 1度あたえられた悪い影響が将来もつづくとはかぎらない
30 やるべきことがたくさんあると、充実した気分になる
31 他人が自分を悪く言っても、あまり気にならない
32 成功はしたいが、どうしてもとは思わない
33 道徳に反した行為は、きびしく罰せられるべきだと思う
34 望ましくない状況におかれると、すぐに落ちこんでしまう
35 悩んだり苦しんだりしている人は、実は自分で自分をそのような状況に追いこんでいることが多いのだと思う
36 突発的なできごとがおきたらどうしようとは思わない
37 決断は早いほうだ
38 とても頼りにしている人たちがいる
39 人間は過去のできごとの影響を過大に評価しがちだと思う
40 新しい取り組みに参加することは楽しい
41 自分を嫌いな人がいても、それはその人の勝手だと思う
42 手がけたことは何でも、絶対に成功させたい
43 他人のまちがいを非難したことは、ほとんどない
44 いろいろなやり方や物事のあり方を受け入れることができる。自分が気に入らないやり方であってもそうだ
45 いつまでも怒ったりふさぎこんだりしているのは、その人自身にも原因があると思う
46 一か八かやってみるというようなことは、怖くてできな
47 人生は、いやなことをやってすごすには、あまりにも短いと思う
48 自立した人間でいたいと思う
49 もし違った道を歩んでいたら、もっと理想的な人間になれたはずだと思う
50 早く引退してのんびり暮らしたいと思う
51 他人の考えにさからうのは、むずかしいと思う
52 スポーツなどそれ自体楽しむことができる。どれだけうまくできるかは気にならない
53 罰をうけることの恐怖が、人間を正しくさせている面もある
54 面倒なことがあったら、それを無視することにしている
55 問題を数多く抱えている人ほど不幸である
56 将来に対して不安を感じたことは、あまりない
57 ずるずると物事を遅らせることは、あまりない
58 自分の問題を本当に理解し対処できるのは自分しかいないと思う
59 過去の経験が現在の自分に影響をあたえているとは、あまり思わない
60 あまりにも自由な時間があると退屈だ
61 他人に認められたいが、何がなんでもとは思わない
62 他の人よりも自分がうまくできないことは、楽しくない
63 すべての人間は、基本的にはよい人だと思う
64 目標にむかってできるだけのことをやれば、あとは気にならない
65 できごとそれ自体が、人を落ちこませるのではない。その解釈によって、人は落ちこむのだと思う
66 将来のことを考えると、不安でしかたかない
67 嫌な用事には、なかなか手をつけることができない
68 自分が決断すべきことを、他人にまかせるのは嫌いだ
69 人間は、過去の経験によつて支配されている
70 南の島へ行って、ビーチで永遠に寝ころんでいられたらと思うことがある
71 どれだけ多くの人が自分を認めてくれているのか、よく気になる
72 失敗をすると落ちこんでしまう
73 「善人にも悪人にも、等しく太陽の光はふりそそぐ」というのは不公平だと思う
74 人生について、あまり難しくは考えない
75 もっと多くの人が、人生の苦しみについて直視するべきだと思う
76 ときどき恐怖心が頭から離れないことがある
77 安易な人生には価値がないと思う
78 よく他人にアドバイスを求める
79 過去にあたえられた悪い影響は、その後もずっとその人に影響をおよぼすと思う
80 怠惰にすごしているのが好きだ
81 他人が自分をどう思っているか、つねに意識している
82 ささいなことがよく気になる
83 自分が嫌な目にあわされた人にでも、もう一度チャンスをあげようと思う
84 人間は問題に挑戦し、それに打ちかったときが一番幸せだと思う
85 悲しい気持ちがずっと続くのには、とくに理由はないと思う
86 自分の死や核戦争について考えたことは、ほとんどない
87 責任のあることは嫌いだ
88 他人に頼るのは嫌いだ
89 人間の根本は変わらないと思う
90 ほとんどの人は働きすぎで、じゆうぶんな休みをとっていないと思う
91 批判されるのはわずらわしいが、それで落ちこむことはない
92 自分がうまくできないことにでも、平気で挑戦できる
93 本当に邪悪な人間などいないと思う
94 他人の失敗でイライラすることは、ほとんどない
95 人生における地獄とは、その人自身のなかにあるのだと思う
96 いろんな危険な状況を想定して、そのときどうしようかと考えることがよくある
97 必要なら、たとえ嫌なことでもやる
98 自分の幸せについて、他人が本当に気にかけてくれると思ってはいけない
99 過去のできごとを思いだして、後悔することはあまりない
00 自分が楽で何もしなくていい状態でなければ、本当に満ちたりた気持ちにはなれない

 1   2   3   4   5   6   7   8   9   10 
                                       
 11   12   13   14   15   16   17   18   19   20 
                                       
 21   22   23   24   25   26   27   28   29   30 
                                   
 31   32   33   34   35   36   37   38   39   40 
                                       
 41   42   43   44   45   46   47   48   49   50 
                                       
 51   52   53   54   55   56   57   58   59   60 
                                       
 61   62   63   64   65   66   67   68   69   70 
                                       
 71   72   73   74   75   76   77   78   79   80 
                                       
 81   82   83   84   85   86   87   88   89   90 
                                       
 91   92   93   94   95   96   97   98   99  100 
                                     
                   
 1)   2)   3)   4)   5)   6)   7)   8)   9)   10) 

白いマス目に記入された印だけをタテに足して、いちばん下の欄にその数を記入します。5つ以上印のついた行、5つ以下でも他の行にくらべて印の多い行が、あなたの間違った思い込みのパターンです。

1)人間にとって、家族や友人、同僚から愛され認められることは絶対に必要である。
すべての人たちから愛され認められることは不可能だということを知る必要があります。たとえあなたに好意をもっていた人でも、なにかの理由ではなれていくこともあるのです。この「まちがった考え」は、人間が不幸におちいる代表的な原因のひとつです。
2)競争には絶対勝たねばならないし、やりはじめたことは完璧にやりとげねばならない。
こう信じてしまうと、つねに自分に完璧であることを要求し、それができないと自分を責めたり、自信を失ったりします。また、家族や友人にもそのような厳しい基準をあてはめて関係を悪化させたり、自分自身も新しいことに挑戦するのが怖くなったりします
3)この世には邪悪な人間が存在する。彼らは絶対に罰せられるべきだ。

より現実的な考え方はこうです。世の中には、反社会的な行動をとる人間がいる。彼らは無知で頭が悪いのだろう。そのような行動を彼らが改める機会があればよいのだが。
4)物事が間違ったやり方で行なわれたり、自分の思うとおりにいかないと、我慢できない。
これは、きわめて幼稚な考え方です。甘やかされて育った子供は、みなこのような考え方をしています。そして自分の思うとおりにいかないと、すぐに機嫌を悪くして文句を言いはじめるのです。あなたがそのような考え方をしていると、ストレスからのがれることはできません。
5)現実のできごとが人間の悩みや苦しみを決定する。感情はそうしたできごとに反応しているにすぎない。
こう考えてしまうと、あなたが幸せに暮らすためには、他人の意志をふくむ現実のできごとすべてを、自分でコントロールしなければならなくなります。そうではなく、できごとに対する解釈が、あなたの感情を決めるのだということをよく認識してください。他人をコント口一ルすることは非常に困難ですが、あなた自身の感情をコントロールすることは、じゅうぶんに可能なのです。
6)よく知らないことや不確実なこと、少しでも危険性のあるできごとについて、恐怖や不安を感じるのは当然だ。
あなたは、そうしたきっかけで自動的に不安を感じはじめるようにセットされてしまっているのではないでしょうか。さきに悲劇的な状況のシナリオを立ててしまって、スイッチが入るとそれをなぞっているのではありませんか。恐怖の感情さえうまくコントロールできれば、少々危険な状況でも、まるでテレビドラマのようだなとか、これも責重な経験だなどと考える余裕をもつこともできるものです。
7)困難な状況や責任には、立ちむかうよりも避けたほうがよい。
責任の回避には、数多くの言い訳が用意されています。「早く仕事を探さなければ‥…でも今日は疲れすぎている」「今日こそは、町に出て用事をすまさなければ……でも車の調子が悪そうだ」といったように。
8)自分より強く大きな何かに頼りたい。
このように何かの権威に依存してしまうと、あなた自身の判断や、自分が本当は何をしたいのかということが、わからなくなってしまう可能性があります。
9)過去のできごとが、現在を決定している。
あなたが過去に何か不本意な行動をしたとしても、それにとらわれる必要はありません。環境や状況がそのときとは、大きく変わっているのです。どうせ自分はあんなことをしてしまう人間なのだなどと考えてはいけません。過去の失敗を認識したら、今すぐにそれを反省し、2度とくり返さないようにすればいいのです。過去から学ぶことはたいせつですが、それを気に病む必要はないのです。
10)自分から何かをせず、怠惰に暮らしていても、幸せになることは可能だ。
このような考え方を、ギリシア神話で死後に善人が住むとされた楽園の名前をとって「工リュシオン・シンドローム(楽園症候群)」といいます。この世に楽園はありません。幸福になるためには、あなた自身が努力するしかないのです。

マーサ・デービス他『こころのセルフ診療室』(創元社)より 


生徒の感想

▼思い込み度チェックのチェック項目は、いつも感じること、いつも行動しいることなのに、項目に分けられるとこんなときどう思っていただろう?どう行動していただろうと思い出された。そして、「あっ、こんなことも!」といろいろ頭に浮かんできて、楽しくなったり「あの時のあの人むかついた」などといろいろな気持ちがでてきました。▼こういうテスト楽しみです。普段自分がどれだけ思い込んでいるか、やってみて恥ずかしくなりました。▼私は自分でも信じられないような思い込みをしているなと思いました。自分ではそう思っていないと思っていても、無意識の内に思い込んでいることがとあるんだなと思うと、自分がちょっと怖くなりました。▼確かに自分は責任感が強いほうではないなと思いました。大事なことを後回しにしてしまう所があるのは、以前から直さなくちゃいけないなと思っていた所なので意識していこうと思います。あまり競争に勝たなければならないとか、人に認められなければならないとは思ったことがないので、それはいいことかなと思ってしまった。将来のことを考えると不安で仕方ないというのはまるっきり今の自分でした。▼思い込み度チェックは、すごく当たっていたし面白かった。確かにそういう所もあるなーって思ったし、逆に数字の小さかった所は、本当に全然思っていないことだった。しかも思い込みの種類がとても多かった。気をつけて楽にいきないとって思いました。▼自分が「こうあって当たり前」と思っていたことでも、一般的に言えば間違っていることが多く、ぼくの中にも間違いがたくさんあることに気づき、驚きとともに感心を覚えました。▼今日やったやつは当たっていると思うやつと、そうなんやと思うやつの2つがわかった。でも、わかりたくなかった気持ちとわかってよかったと思う気持ちの2つで複雑な気持ち。▼私は思い込み度チェックで、よく知らないことや不確実な事、少しでも危険性がある出来事について恐怖や不安を感じるのは当然だというパターンの所が最も多くなりました。この結果がでたとき、「そうかなー?」と思いましたが、先生に「ノストラダムス信じてるか?」と聞かれて「あっ!」と思いました。なぜらな半々暗いの割合で信じていたからです。たぶん、あまりにも自分の内にありすぎたことで、そういう面が自分自身にあるとは思っていなかったのだと思います。自分の内面が、今回のワークで新たに発見できてとても楽しかったです。


教師の感想

昨日、「あした国語表現の事後指導あるのですか」と聞きに来た生徒がいました。言外には、「テスト返しもないのに何するの」という疑問というより抗議の意図があるのをひしひしと感じた。それならば、たとえ40分でもなるほどという授業をやってやろうと思いついてしました。でも、以前から寝かしいてた教材なので至極順調にできたと思います。ネタがいいのと、これぐらい醸造させることと、時間が短いことが勝因だったと思います。実は、昨日から不安で落ち着かなかったのですが、本当によかったです。2学期また頑張ろうという気持ちが益々強くなりました。


参考文献

マーサ・デービス他『こころのセルフ診療室』創元社
ウィンディ・トライデン『論理療法入門』川島書店
伊藤順康『自己変革の心理学』講談社現代新書
國分康孝『自己発見の心理学』講談社現代新書
窪内節子『楽しく学ぶこころのワークブック』学術図書出版社
平木典子『アサーション・トレーニング』日本精神技術研究所



コメント

ホーム