10.アサーション・トレーニング3  6月28日(月)

〜ロール・プレイ〜

前回の理論学習をふまえて、今回はロールプレイで体験的に理解することです。
ロールプレイで大切なことは、目的をしっかりと説明し、段取りきちんと立ててテキパキと進めることです。そのために、進め方のプリントを作成するだけでなく、シナリオも用意しておきます。それも、7種類ぐらい用意して、自分にあったものを選ばせます。また、最初の会話も決めておくとスムーズに展開します。勿論、1週間の体験をまとめた『記録シート』の中から選んでもいいです。
ロールプレイは前回の4人組で行います。2人がプレイして、あとの2人が観察をします。この順番もきっちり決めておいた方がスムーズに進みます。プレイは2分程度が限界です。そして、その後のシェアリングも大切です。シェアリングをしやすいように『観察シート』を用意します。いくつかの項目について点数をつけることによって具体的な観察ができるようにします。また、よかった点と改善した方がよい点もメモをさせます。
そして、最後に全体を振り返ります。

時間 学習項目      活 動 内 容(★留意点 ▼生徒の反応)     
40 組み合わせ要約
1)前回提出させたものを添削して返却。ポイントを説明する。
どこがポイントになるかを説明するので、組み合わせ作文の解説よりもう少し時間がかかる。
2)要約第6弾「社会人の茶髪は是か非か」を配布して、30分間で要約させ、回収する。
今回はノーヒントで字数制限だけがあります。
15 自己主張ロールプレイ   1)『アサーション記録シート』を回収する。
▼回収率は4割程度。しかし、内容はよかった。普段意識していない自分に気づいたり新しい発見があったようだ。
2)『自己主張ワークシート2』を1枚、『観察シート』を4枚配布する。
3)前回の簡単な復習をする。
4)今回のワークである、ロールプレイの目的について簡単に説明する。
5)ロールプレイの進め方について説明する。
1)4人組になる。
★席が固まっているので、そのまま隣同士向かい合う。
2)「シナリオ集」から自分がプレイするシナリオを選ぶ。『記録シート』からオリジナルなものを選んでもよい。
★7つのシナリオがあり、自己主張役と相手役の役割と、最初の会話が指示してある。
3)プレイする順番を決める。
・1人が1回ずつ、自己主張役と相手役になる。
・ジャンケンで1番から4番まで順番を決める。
・1回目は、1番が自己主張役で2番が相手役。2回目は、3番が自己主張役で4番が相手役、3回目は、2番が自己主張役で3番が相手役、4回目は、4番が自己主張役で1番が相手役。
・プレイする以外の人は観察役。
★機械的に決めた方がいいだろう。
4)役割を確認する。
・自己主張役は、なんとか自分の主張が通るようにする。
・相手役 は、簡単に妥協しないようにする。しかし、最後は相手役が折れて緩慢に解決するようにする。
・観察役は、「観察シート」に採点と感想を記入する。
5)プレイの進め方を説明する。
・出だしはシナリオの会話で始め、後は自分なりに進める。
・残り30秒で解決するようにする。
6)シェアリングの仕方を説明する。
・1回終わるごとに、自己主張役→相手役→観察者の順で、「〜な気持ちがした」「あんなことを言われたら傷つく」などの感想や気づいたこと、「もっとこうすればよかった」などの改善点を話し合いシェアリングをする。
35 7)ロールプレイとシェアリングを繰り返す。
★毎回準備が出来たか確認してからロールプレイに入る。
★巡視してうまく進まないグループの助言をする。
★プレイの残り時間が30秒になれば合図して、解決に持ち込むように指示する。
 5 振り返り 1)『ふりかえりシート』を配布する。
2)今日の授業で、気づいたこと、感じたこと、学んだこと、これからこうしようと思うことを書かせる。
3)回収する。
★時間があれば、全体でシェアリングをする。


資料

自己主張ワークシート2

 前回のワークでは、できるだけ「アサーション」で自己主張した方がよいことを学習しました。今回のワークでは、アサーションで対応できるように、ロール・プレイをしてみましょう。

1.ロールプレイとは
 ロール・プレイ情葬シ訳すると、役割演技です。現実に近い場面を設定して、特定の役割を演技することによって、自分の言動の傾向や癖に気づいたり、相手の気持ちを理解したり、望ましい言動を体験的に学習できる技法です。
 
2.ロール・プレイの進め方
 1.4人組になる。
 2.「シナリオ集」から自分がプレイするシナリオを選ぶ。
 3.プレイする順番を決める。
  ・1人が1回ずつ、自己主張役と相手役になる。
  ・ジャンケンで1番から4番まで順番を決める。
  ・1回目は、1番が自己主張役で2番が相手役。
   2回目は、3番が自己主張役で4番が相手役。
   3回目は、2番が自己主張役で3番が相手役。
   4回目は、4番が自己主張役で1番が相手役。
  ・プレイする以外の人は観察役。
 4.役割を確認する。
  ・自己主張役は、なんとか自分の主張が通るようにする。
  ・相手役は、簡単に妥協しないようにする。しかし、最後は相手役が折れて緩慢に解   決するようにする。
  ・観察役は、「観察シート」に採点と感想を記入する。
 5.プレイを始める。(2分間。残り30秒で合図がある)
  ・出だしはシナリオの会話で始め、後は自分なりに進める。
  ・残り30秒で解決するようにする。
 6.シェアリング(5分間)
  ・1回終わるごとに、自己主張役→相手役→観察者の順で、「〜な気持ちがした」「あんなことを言われたら傷つく」などの感想や気づい   たこと、「もっとこうすればよかった」などの改善点を話し合いシェアリングをする。


シナリオ1(映画)

状況
 友だちと映画を観ようということになって待ち合わせをしました。何を見るか相談しようと思っていましたが、友だちがいきなりホラー映画が見たいと言い出しました。
自己主張役(あなた)
 ホラーは苦手で、今日はラブ・ストーリーを観ようと思っていました。いつも、友だちのペースで物事が決まるが、今日は自分の見たい映画を観ようと思っていました。何とか友だちを説得したいと思っています。
相手役(友だち)
 あなたはいつも言うことを聞いてくれるので、今日もホラーで決まると思っています。どうしてもホラーを観たいわけではありませんが、いつも通り自分の意見を通さないと気が済みません。

あなた 私、ホラー苦手なのよ。
友だち 私は嫌よ。絶対ホラー映画!
あなた 私はラブストーリーがいいんだけど。
友だち そんなのあんたの勝手よ。いつも私の言う通りしてくれるじゃないの。


シナリオ2(ホカベン)

状況
 弁当を忘れたので、昼休み、ホカベンを買うために外出しました。ところが弁当屋は混んでいて、ようやく自分の番が回ってきました。休み時間はあと15分しかありません。ところが、オバハンが横はいりして、カルピ丼を2つ注文しました。
自己主張役(あなた)
 割り込まれると5時間目に遅刻してしまいます。オバハンに順番を守るように抗議します。
相手役(オバハン)
 この店の常連客で、いつもこの時間に買いに来ます。割り込んだことはよくありますが、一度も文句を言われたことがなく、当然のことだと思っています。

あなた  私、先に並んでたんだけど。
オバハン いいじゃないの、一人ぐらい。
あなた  急いでるんだけど。
オバハン いつもここで昼ご飯を買っているのよ。文句言われたのは今日が初めてよ。


シナリオ3(ノート)

状況
 今回こそは授業中ノートをとろうと思っていたのですが、やはり寝てばかりいて、気がついたら明日が試験です。今回、50点以上とらないと卒業も危ない。前に隣の人にノートを貸してもらいましたが、うっかりしてすぐに返しませんでした。 しかし、今、ノートを借りれそうなのはその人しかいません。
自己主張役(あなた)
 借りることができなければ卒業ができません。前のことを謝ってなんとか貸して  もらえるように頼みます。
相手役(隣の人)
 自分もこれから勉強しようと思っていました。前のこともあるので信用できません。また、普段勉強していない人に貸してあげたくもありません。       

あなた お願い。すぐ返すから。
友だち そう言って、この前もすぐ返さなかったじゃないの。
あなた 今度は大丈夫。今、コピーしてくるだけだから。
友だち だいたいね、いつも寝てるのに、ノートだけ借りようなんて虫がよすぎない。 


シナリオ4(電話)

状況
 あなたは、今、毎週欠かさず見てきたドラマの最終回を見ています。もうすぐクライマックス、あなたは息を飲んで主人公の恋の行方を追っています。その時、実は普段あまり好感は持っていないのに何となくつき合っている友だちから電話がはいります。彼女は、ものすごい勢いで彼にふられたことを話します。電話を切りたそうにしても取りあってくれません。
自己主張役(あなた)
 ドラマはいよいよクライマックスが迫っています。一刻も早くテレビを見るために電話を切りたい。
相手役(友だち)
 彼にふられてくやしくてならない。この気持ちを誰かに聞いてほしい。でも、こんな話を聞いてくれるのは、いつも自分に優しくしてくれるあなたしかいない。

あなた 悪いけど、後で電話するから。
友だち 私、今、ほんとに落ち込んでるのよ。彼ったらね。
あなた どうしても見たいテレビがあるの。今日が最終回なの。
友だち あんた、友だちとテレビとどっちが大事なの。


シナリオ5(CD)

状況
 買って間もないお気に入りのCDを、ちょっと聞かせてと言われて友だちに貸してあげました。ところが、すぐに返してくれません。二度ほど催促したが、今度持ってくるといっていまだに持ってきません。
自己主張役(あなた)
 あまりしつこく催促して友だち関係を壊したくないが、自分もあまり聞いていないし、いつまでも放っておくのは友だち関係の上でもよくないと思って、もう一度だけ言うことにしました。
相手役(友だち)
 悪気はないのだがややルーズなところがあります。自分でも悪いと思っているが、指摘されると大変嫌な気がします。

あなた この前、貸してあげたCD返してくれる。
友だち 今度、持ってくるから。ゴメンね。
あなた 今度、今度って、これで3回目よ。
友だち そんなに言わなくってもいいじゃない。


シナリオ6(校外学習)

状況
 校外学習も最後の夜になりました。12時に先生が見回りをして、寝ていないことを注意し、「今度来た時に寝てなかったら全員廊下で正座してもらうからな」と言って去って行きました。少しして、友だちが鞄から土産に買ったワインを取り出してみんなで飲もうと言いだしました。
自己主張役(あなた)
 私は、酒を飲んだことはなかったし、こんな所で飲みたくないと思っています。なんとかして断りたい。
相手役(友だち)
 ドンチャン騒ぎする気はないが、校外学習の最後の思い出を作りたいと思っています。せっかく盛り上がろうとしたのに、水を差されたような気になっています。

あなた ぼくはやめとくよ。
友だち なんでだよ。せっかくみんな飲む気になってるに。
あなた ぼくはいいよ。
友だち しらけるよな。お前って、そんな奴か。


シナリオ7(朝帰り)

状況
 あなたには女子高校生の親になりました。夏休みのある夜、娘は友だちと花火大会に出かけました。10時に帰ってくる約束だったのに、夜中の2時になるのにまだ帰ってきません。今までこんなことはありませんでした。心配でならず、寝ないで待っています。その時、話し声がして戸が開き、娘が帰ってきました。
自己主張役(あなた)
 何か起こったのではないかと心配で、イライラしながら待っていました。できるだけ感情的に怒らないようにしようと思っていますが、初めが大切だから言うべきことは言っておかなくてはならないと思っています。
相手役(娘)
 遅くなったのは悪いとは思っていますが、高校生になったのだから少しぐらいはハメをはずしたいとも思っています。

あなた どうしたんだ。もう2時だぞ。
娘   ちょっと、遅くなっちゃった。
あなた いままで、何をしてたんだ。
娘   何してたっていいじゃない。もう、子どもじゃないんだし。         


観察シート

あなたの名前
自己主張役の名前 相手役の名前
シナリオ(いずれかに○)  1 2 3 4 5 6 7 オリジナル       
評価(5段階で評価してください)                      
1) 自己主張の誠意や熱意は感じられましたか。             
2) 相手の気持ちを理解しようとしていましたか。            
3) 言葉の使い方は明確でしたか。
4) 表情やジャスチャーは豊かでしたか。
よかった点を書いてください。







改善した方がよかった点を書いてください。                  









生徒の感想

▼ロールプレイ初体験で楽しかった。自分の意見と違う人と何かをするっていうのはムズカシイ。▼今日のようなやりとりをやって、気づいたことは、相手役の立場に立って、きついこととか言われたらすごく嫌な気分になったことです。だから、自分がいろいろな人とこのようなやりとりをする時は、自己主張も大切やけど、相手の気持ちを考えて放さなければいけないと思いました。言葉の使い方も同様に考えて、言葉を選ぶべきだと思います。こんなことをするのは、結構、いろんなことがわかってよかったです。▼普段自己主張型ではないので、自己主張役は何を言ったらいいか分からなかったけど、意外な事とか言えて楽しかった。▼今日、自己主張をして、自分なりに攻撃面が強いなぁと思った。相手役をしてても一歩も引かずに常に攻撃してた。でも、やっぱり攻撃ばっかりでは嫌やし、受け身もあった方がいいと思う。もっと冷静になりたい。▼振り返ってみて、私は基本的に自己主張がしすぎのケイコウがありっぽい。自分の意見を通そうとして、ひたすら相手に押しつけているのかも・・・と思った。もうちょっと相手の気持ちも考えて、その人の意見を取り入れられるぐらい柔軟な考えを持ちたいと思った。▼このごろ毎回違う事をしているので楽しい。今日のやつもすごく楽しかった。


教師の感

今日は疲れませんでした。なぜなら、準備がバッチリで余裕をもってワークに臨めたからです。生徒も書いてくれていますが、同じテーマなんだけど、手を変え品を変えてやっているのが功を奏しているのでしょう。
ロール・プレイがこれだけ好評を博するとは思いませんでした。これは生徒が白けずにやってくれなければ成功しないだけに、生徒に感謝しなければなりません。ただ、生徒がうまくできるように準備万端したつもりです。ロールの仕方についてプリントしたのもよかったし、シナリオをきっちり作って、しかも複数作って選べたのも、また、出だしの会話を作ってロールに入りやすくしたのもよかった。
1学期はあと1回。準備は大変ですが、成功すると報われます。労を惜しまず。


参考文献

ロバート・E・アルベルティ/マイケル・L・エモンズ『自己主張トレーニング』東京図書
平木典子『アサーション・トレーニング』日本精神技術研究所

河野貴代美『女性のためのグループ・トレーニング』学陽書房
諸富祥彦『学校現場で使えるカウンセリング・テクニック上』誠信書房
窪内節子『楽しく学ぶこころのワークブック』学術図書出版社
國分康孝『エンカウンターで学級が変わる中学校編2』図書文化



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