1.出会いのワーク  4月19日(月)

 国語表現の最初の授業は、まさしく出会い。選択授業なので、生徒は4つのクラスから集まって来る。知っているものもいるし、初めて同じ講座になるものもいる。私は、この学年を初めて教えるので、どの生徒とも初対面である。1年間、心理教育を組み込みながら授業をしようという野望があるので、最初の授業は非常に重要である。インパクトの強い授業をして、こちらのペースに引き込みたいものです。生徒に動いてもらわなければ成立しない。初めての授業で生徒を動かすのは大きな賭です。

   教師の活動   意図・留意点     生徒の反応   
●教師が教壇から降り て、点呼する生徒の前まで言って、名前と顔を確かめながら、名前の呼び方など会話しながら、出席をとる。       ■教師は教壇の上からものを言うというイメージが強い中、そうした既成概念を少し破った行為 に、最初から出ること は、生徒に強いインパクトが与えられる。    ▼ちょっと違うなという感じを感じ取っていた。拒否したようすは見られない。
●一人一問ずつ質問させる。質問事項は番号をつけて板書していく。
●プライベートな質問やデリケートな質問にもできるだけ答える。ただ し、人権や差別につながる質問は説明してカットする。
■初対面の相手に対し て、情報を集めるためにどんな質問をするのがよいのかを学習する。
■答えにはさまざまなレベルがある。単語で答える場合ややや長い文章で答える場合もある。ただ質問されたことに答えることもあるし、少し膨らませて答えることもあ る。ユーモアを交えながら答えることもある。さらに、質問の裏にある感情に気づいて答える場合は、質問した人との駆け引きという緊張感も生まれる。コミュニケーションの醍醐味を味合わせ る。
▼3人目ぐらいから集中する。次々と質問が出る。
▼質問をすることと同時 に、教師に対する興味も沸いてきたようである。
▼年齢、趣味、出身校、長所と短所、家族構成や名 前、クラブ顧問や教師歴などオーソドックスな質問が多い。授業に関する質問もあった。
▼僕は背が低いので、身長を聞く質問もあった。
▼どんな時に幸せを感じるか、という質問は、相手に心地よさを与えながら価値観を問うよい質問であっ た。          
●後で、生徒同士で質問をし合ってもらうことを予告しておく。
●板書した質問を、分析する。
■質問された順番にその背景を解説していく。
■質問には、流れがあ る。関連した質問をすると理解しやすい。
■また、さまざまなレベルがある。その質問の背景にどのような感情があったのか。相手を知ると同時に自分を知ることにもつながる。     
▼後で自分たちがしなければならないと知ると、解説を聞くのに真剣味が増し た。
▼なぜそんな質問をしたのかと逆に質問されて、改めて質問の意味や動機を考える様子が見られた。
▼相手の欠点に対する質問が非礼であることも理解してくれた。
●教科書を使って、国語表現の一般的なアウトラインを理解させる。
●今年度の特色である、「話す・聞く」を重視した授業、「聞く」に関連してカウンセリングや心理についても授業することを伝える。
■教師に対する質問で、警戒心を解いてたところで、こちらの意図を伝える。
■いきなりガイダンスをするよりも、教師の意図がよく伝わる。
▼後のアンケートでは、 「話す・聞く」だけでな く、小論文対策として「書く」練習を望む生徒も多かった。


●教室の中を自由に歩き回る。
●「国語表現を選択した3組から6組までの29人のメンバーで一年間勉強をしていきます。今日は、その出会いの日で す。せっかく出会ったのだから、みんなと挨拶をしてみましょう。まず、立って、教室の中を無言で歩き回ってください」「同じ方向ばかり、隅ばかりを歩くのではなく、もっと自由に大胆に歩いてみましょう」
■普段の授業では教室を歩き回っては行けないのに、変な感じ、新鮮な感じを受けるだろう。はじめはぎこちなく隅を歩いたり、同じ方向に回ったりする生徒が多いだろ う。それがだんだんと大胆に自由な方向に自由なペースで歩けるようになると、心の中に余裕が出てくる。自由に歩き回れる人ほど自由度の高い人である。少し時間をとって、じっくり気持ちを味わいながら歩けるようにする。
▼普段から賑やかな2、3人の生徒は歩き回れるが、ほとんどの生徒は友達と固まって動かない。
▼机を下げるなどの場所を確保をが必要だったかもしれない。
●歩き回わりながら、全員と握手をする。
●「そのまま歩き回りながら、自分以外の人全員と握手をしてくださ  い。」
「できるだけ笑顔の方が相手にいい印象を与えます」

■特に異性間ではためらう生徒が多いだろう。アイコンタクトで軽い会釈の出会いもあるが、あえてボディタッチのある出会いを選んだ。より親密度が増すであろう。全員と握手するとなると出会った人の顔を覚えなくてはならない。
▼同性同士はだいたい握手できたようだが、次に異性に握手する段階になると、ほとんどの生徒がためらっていた。このワークを初回に実施するのは難しい。
●誕生日の順番に並び、ペアを作る。


■適当にペアを作らせるのは初回では難しいの で、ゲーム的な要素を取り入れたペア作りを選択した。
▼出会いの握手では恥ずかしがっていたが、ある事実のもとの強制的なワークは抵抗が少ない。
●ここで1時間目終了                            
●インタピューをする。1)集めた情報をもとにして、後で相手を紹介してもらうことを予告しておく。
2)ジャンケンで質問する順番を決める。
3)2分間質問する。
4)交代する。
■ここで、先程の板書が生きる。       ■トラスト・フォールも考えたが、しなくても十分信頼しあい親密な雰囲気があった。      ▼初対面のペアもあった が、どのペアもいい雰囲気であった。       ▼メモを取りながら一生懸命質問していた。
●その場で立って、互いに相手のことについて1分間で紹介する。
■1ペアごとに拍手をするようにする。
■1ペアごとに寸評をする。         
▼どのペアも一生懸命相手のことを紹介しようとしていたが、ほとんど30秒以内が多かった。
10 ●ふりかえりシートを配布して、本日の感想と、国語表現に対する要望を書かせる。
■どれだけ相手の話を聞いていたか、また、うまく質問すればまとまった全体像が把握できることを体験する。
▼この段階になると、「ふりかえりシート」というネーミングだけで反応するようになる。       
11
次回予告
●教科書の3分間スピーチの項目を読んで、ポイントと失敗しやすい例を説明する。
●次回、自分を理解してもらう一番よい題材について、1分間で話すことを予告する。
■他己紹介の次に自己紹介というのは順序が逆のようであるが、却って自分を見つめられたし、緊張感も緩和できるのではないか。
▼別段、ブーイングが起こることもなく、動機付けは一応成功したかのように思える。

生徒の感想

▼国語表現ってどんなことをするんだろうと不安がいっぱいだったけど、今日の授業はとても楽しかったので、そんな不安も消えた。先生のこともいろいろ知れたし、インタビューした人のことも知れたし、初めの授業でこんな面白かったのは初めてです。▼恥ずかしかったけど、すごく面白かったです。先生への質問コーナーが楽しかったです。普通の先生なら恥ずかしくて言えないことでも先生はどんどん話してくれたので、すごく特別な感じがしました。2時間続きも苦じゃないなぁと思いました。▼今までにない新感覚の授業で、正直最初は戸惑いました。互いのことについてインタビューし、発表する。何の意味があるんだろうと思いました。しかし、紹介するということは、その人の事をどれだけ分かりやすく相手に伝えられるか、つまりは表現力が問われているんだなということが、これはあくまで自分の勝手な解釈ですが、こういうことがわかり、感じました。▼初対面の人にインタビューをして、それをみんなに発表することは、すごく簡単なようで、すごく難しかったです。でも、みんなの発表を聞いていたら、意外なことが分かったりして面白かったです。インタビューされることなんてなかったので、すごく緊張しました。インタビューをすることは相手のいろいろなことが聞けたりして楽しかったです。▼質問会は楽しかったです。自己紹介するのはすごく恥ずかしいから嫌だけど、先生のやり方はよかったです。2時間連続やったのに、すごく短く感じました。楽しかったです。▼「なんでそんなんすんねん」って思ったらそれまでやと思うけど、ペアの人とあんまり喋ったことがなかったし、顔ぐらいしか知らん人のこととかも知れたし、おもしろかった。

先生の感想

 最初の授業、さすがに緊張しました。しかし、みんな協力的で、楽しく授業ができました。やはり、教師が楽しい授業は生徒も楽しい、生徒が楽しい授業は教師も楽しい、こういう授業が理想です。しかし、こういう授業は初日の御祝儀のようなもので、今後、このテンションを維持していくことの難しさをヒシヒシと感じています。
 どんな質問にも誠意を持って答えるという真摯な態度が生徒の信頼を得たのでしょう。信頼を得るには多少の代償と勇気が必要です。これを「自己開示」と言うのでしょう。自由歩きと握手は、初回の授業ではちょっと無理がありました。そこで、バースデーラインに切り換えて軌道修正したのは正解でした。つかみをしっかりやっておくと後々楽です。その意味で、今日の授業は大成功でした。

インタビューをし合う 他己紹介
質問事項を板書 インタビューをし合う



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