自己理解2(エゴグラム)&自己開示

 前回はゲーム的な要素で自己理解をした。今回は、交流分析の理論に基づいて自己理解をはかる。まず、ジョハリの窓を説明する。次に、交流分析の理論を利用して自己理解をする。最後に、自己理解したことをまとめて自己開示すると同時に、他者理解を確かめる。
 2時間目の「シューティング・ゲーム」も古典的なゲームである。工夫した点は、標的もチームで設定することである。それによって作戦がより複雑化する。自分のチームの標的の位置を考えることは、相手のチームの標的の位置を予想することにつながる。できれば2回する。

1.前回のふりかえりをする。【5分】
 《ねらい》前回の全員の感想を掲載し、他のメンバーが何を感じ考えていたかを知る。
 1)『みんなの声』を配布し、読ませる。特に、下線部に注意させる。
・自分で答えることも考えつつ人の話の集中することが自然にできて
・自分のことをいうのは少し恥ずかしかったけど、共感してくれてうれしかった。
  ・具体的に説明するとなるとなかなかうまく言えなかった。
  ・同じ答えでもそれにたどり着くまでの過程が違ったり、
  ・深い議題をみんなで集まって考える場も今の十代には必要なのかもしれない。

2.ジョハリの窓を説明する。【5分】
 《ねらい》自己理解・他者理解について考える。
 1)『ジョハリの窓』を配布する。
 2)自分が知っている・知らない、他人が知っている・知らないという区切りで、4つの窓ができることを説明する。
 3)それぞれの窓の名称と特徴を説明する。
 4)開かれた窓を大きくすることが望ましいことを説明する。
 5)そのためには、自己洞察によって自己理解を深め、自己開示によって他者理解を推進することが必要であることを説明する。

3.交流分析の5つの自我状態を説明する。【5分】
 《ねらい》交流分析の5つ自我状態を理解する。
 1)『5つの私』を配布する。
 2)5つの自我状態について説明する。
  1)カナダの精神科医のエリック・バーンが考えた。
  2)人間の心を5つに分けた。
  3)人は生まれてから多くの人の影響を受けて育つ。その中で最も影響力の強いのが親である。
   父親の影響を受けた心をCP(Critical Parent)。がんこ親父の心。
   母親の影響を受けた心をNP(Naturing Parent)。優しいお母さんの心。
   大きくなっても子どもの頃の心は残っている。
   自由な子どもの心をFC(Free child)。ワンパク坊主の心。
   従順な子どもの心をAC(Adapted child)。いい子ちゃんの心。
   成長するにつれてできあがってくる大人の心をA(Adult)。心のコンピュータ。
  4)5つの心が、いろいろな場面で顔を出す。
  5)どの心にも、よい面と悪い面がある。

4.エゴグラムをイメージする。【15分】
 《ねらい》イメージによって自分の自我状態を調べる。
 1)イメージワークのCDを聴く。
 2)机の横に立って、目を閉じる。
 3)今立っている位置をがあなたのAの状態です。なるべく何も考えたり感じたりしないで立っています。
 4)左前に一歩踏み出します。その位置があなたのCPです。目の前に、悪い子どもがいます。叱ってください。身振りもします。今の感じを味わいます。元の位置に戻ってAの状態に戻ります。自分のペースでCPになったりAに戻ったりして、感じを味わいます。Aの位置に戻ります。
 5)右前に一歩踏み出します。その位置があなたのNPです。目の前で赤ん坊が泣いています。抱き上げて「よしよし」と優しく泣き止ませてください。今の感じを味わいます。元の位置に戻ってAの状態に戻ります。自分のペースで、NPになったりAに戻ったりして、感じを味わいます。Aの位置に戻ります。
 6)左後ろに一歩下がります。その位置があなたのFCの状態です。飛んだり跳ねたり自由に体を動かしているイメージを想像してください。実際に動いてください。今の感じを味わいます。元の位置に戻ってAの状態に戻ります。自分のペースで、FCになったりAに戻ったりして、感じを味わいます。Aの位置に戻ります。
 7)右後ろに一歩下がります。その位置があなたのACです。幼い頃に戻って、お父さんに叱られています。一生懸命あやまってください。今の感じを味わいます。元の位置に戻ってAの状態を回復します。自分のペースで、ACになったりAに戻ったりして、感じを味わいます。Aの位置に戻ります。
 8)今度は、自分の一番気持ちのよい位置に立ってください。そこでの気持ちをじっくり味わいます。Aの位置に戻ります。
 9)次は、一番居心地の悪い位置に立ちます。その気持ちをじっくり確かめます。Aの位置に戻ります。
 10)深い呼吸をして、静かに目を開けます。
 11)『こころのイメージ』を配布する。
 12)今イメージした5つの心をそれぞれ20点満点で点数を付け、グラフを作る。

5.エゴグラムを書く。【15分】
 《ねらい》質問用紙でエゴグラムを書き、分析し、自己理解を深める。
 1)『エゴグラム』を配布する。
 2)質問に回答させる。
 3)集計させる。
 4)グラフを書く。
 5)エゴグラムの見方を説明する。
  1)5つの心のバランスをグラフにしたもの。
  2)その時の気持ちや年齢によって答えが変わることがある。今ここでの心の仕組みを表している。
  3)最も高い所と最も低い所に注目する。
   最も高い所が出やすい考え方・感じ方・行動。長所にもなるが、高すぎると短所になる。
   最も低い所があまりない考え方・感じ方・行動。
  4)軸と高い人の特徴を説明する。
 6)『エゴグラムの代表的な8つのパターン』を配布する。
 7)それぞれのパターンを説明する。
  ★パターンに優劣はなく、個性である。
  ★細かく分けると243のパターンがある。

6.エゴグラムを変える。【8分】
 《ねらい》「人と過去は変えられない、変えられるのは現在の自分だけ」であるので、エゴグラムを変えることによって自己変容を図る。
 1)『エゴグラム・チェンジ』を配布する。
 2)ある自我状態を下げることは難しいが、上げることはできる。
 3)CPとNP、FCとACは対になっているので、片方を上げれば他方は下がる。
 4)自分の上げたい自我状態を決める。
 5)上げ方の中からできそうなものに「レ」を入れていく。

7.自分のエゴグラムについてまとめる。【10分】
 《ねらい》データを基にして自分についてまとめて自己理解を深める。
 1)『私のエゴグラム』を配布する。
 2)今までのワークシートを参考にして記入させる。
  ★特に、3の思い当たることを重視する。具体的なイメージが想起される。

8.自分のエゴグラムを開示する。【25分】(11人で)
 《ねらい》自己開示して他者理解を広げ、自己イメージと他者イメージの違いを考える。
 1)『ポジティブ・メッセージ』を配布する。
 2)自分に当てはまるもの、自分がほしいものに5つずつ「○」をつけさせる。
  ★重複しても良い。
 3)『印象カード』を配布する。
 4)一人ずつ、前で『私のエゴグラム』を読み上げる形で自己開示をする。
 5)聞いている人は、その人の名前を書き、その人の印象を『ポジティブメッセージ』から5つ選  んで番号を記入する。
 6)全員が自己開示を終えた段階で、『印象カード』をその人に渡す。
 7)『ポジティブメーッセージ』の「他人」欄に集計する。

9.この授業のふりかえりをする。【5分】

 

 
みんなの声 〜自己理解2(エゴグラム)〜  10月19日
 
ヌ自分でも自分の事があんまりわかっていなかった。今回新しい自分を知れた気がしてよかった。自分が思う自分のいいところと他人の思ってくれた良い所の多数がかぶっていてよかった。しっかりしてるとか、頼りになるとかすごくうれしかった。こうやって自分のことをいろいろと知るのも大切だなと思いました。自分が変わるいいきっかけになりそうです。
ネ自分の思っていることと違うところを他人から良いと言われ意外だった。
ノポジティブメッセージで、自分で穏やかな方と思っていたら、他の人からも穏やかだと思われていた。逆に自分ではテキパキしたり、しっかりしているとは思ったのに、相手からそう思われていると知った時は驚いた。今日の授業で意外な自分を知ることができて楽しかった。
ハイメージワークの時は眠たくて楽しめなかったけれど、ポジティブメッセージはめちゃくちゃ楽しくて、人からみた自分は自分のなりたい人でよかった。
ヒ自分のイメージと心理テストの結果に同じようなものだったけれど、周りからの評価はびっくりするのが多かった。しっかりしていると落ち着いているというのは一体どこ見てそう思ったのかと問いたいくらい。可愛さというのは、女のコとしてJKとして、ショックだったけれど、まあ仕方がないと思います。また大人数ですればもっといいと思った。
フ自分はどういう人間なのか少しわかった。発表は私が苦手なことの一つで、すると知った時帰りたいと思ったけれど、頑張ってみてみんながどう思ってくれているのかわかってうれしかった。これからは発表は普通にできるようになりたいです。
ヘ思っていた自分と本当の自分が違ったのが驚いた。そして、自分と他人から見た自分も違ったので面白かった。
ホ自分がどんな人間なのかというのが分かったし、これから直していきたいところもできたので、これから変わっていきたい。みんなからもどんなふうに見られているかわかって、活発が一番多かったけれど、思いやりがあると言ってくれる人がいてめちゃくちゃうれしかった。
マ普段聞くことのできない自分の周りの評価を知れて楽しかった。逆に全く思ってもいないことに票が入ってちょっとうれしかった。これからももっと頑張ろうと思う。でも思いやりが1票もないなんて悲しかったけれど、その分もっともっと頑張ろうと思った。
ミ自分が思っているような自分と、他人が見ている自分が大きく違っているのがわかった。大まかに考えてみれば、合っている分が多いが、小さな部分が違うのがわかった。

教師の感想
 今回のプログラムはかなり悩んだ。テーマは、自己洞察と自己開示の対比を2時間で納めるのが課題でした。自分のイメージと質問紙によるエゴグラムの違い、ポジティブメッセージの自己評価と他者評価の違いを感じて欲しかった。前半は講義が多くてやや退屈だっただろうが、最後に他者評価を得て喜んでくれた。大きな喜びのためには、退屈かもしれないけれど、地道な準備が必要です。他人から自分のことなんて滅多に聞けないので、とても貴重な体験だったと思う。



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