
種子島にある4軒の蔵元の中で、1882年創業のもっとも古い蔵が種子島酒造だ。
”トンネルを抜けるとそこは種子島酒造だった”・・・^^;
鹿児島市からフェリーで4時間余りの船旅で西之表港へ-。西之表市内を流れる甲女川沿いに県道を上ること15、6分。種子島では珍しい「種子島トンネル」を抜けた左手に蔵はあった。道路沿いにある仮事務所の裏手で重機がうなりを上げている。新しい事務棟の建設だという。右手には上棟間もない感じの大きな屋根が見える。こちらは新しい貯蔵棟になるという。
建設中の貯蔵棟
案内して頂いたのは工場長代理の渡辺新一さん。杜氏で工場長の渡辺さんの息子さんだ。8月下旬から始まる仕込み作業のために準備をされているところだった。「工場長がいれば、もっと詳しく説明できるんですが・・」と申し訳なさそうにされながらも、一通り案内して下さった。ドラム型自動製麹装置と通風製麹三角棚で米麹を作り、創業当初からのかめつぼで仕込む。蒸留はもちろん常圧蒸留機だ。
通風製麹三角棚と自動製麹装置
種子島は本土でのサツマイモ伝来の地・指宿郡山川町よりも早くさつまいもの栽培が始まった土地柄で、その種類も豊富だ。当然、、と言うべきか、原料であるイモにこだわりを持った、そのラインアップは多彩だ。でんぷん質の多い「白センガン」を使ったレギュラー酒「金兵衛」と長期貯蔵酒の「紅岳(こうがく)」。肝機能アップなどに効果のある色素、アントシアニンを多く含むことから薬膳紫芋と言われる「種子島紫」を使った「紫(ゆかり)」。日本でもっとも甘くておいしいと言われる食用の「安納芋」を使った「安納(あんのう)」とPB銘柄「夢尽蔵(ゆめじんぞう)」。そして「白センガン」を使い、6年以上かめつぼで貯蔵熟成させた原酒とその年の新酒をブレンドした「久耀(くよう)」。7年ものの貯蔵酒だけを瓶詰めした「7年貯蔵古酒久耀」などがある。尚、この古酒は経営者が代わる前から造られていた銘柄だ。
紫は社長の好きな色・・なんだそうだ
このイモにこだわる姿勢は自蔵でいも畑を取得され、栽培していることからも伺える。”農業班”が担当していて5町歩あるという。将来はいも畑の拡充の他に、米作りも手掛けていく計画だそうだ。
真夏の陽射しの中、屋内とはいえ、立っているだけで汗が噴き出してくる。まもなく始まる仕込み作業も大変な労働になることは想像に難くない。ただでさえ、神経と体力を遣うというのに・・。
屋外では重機がまたうなりを上げている。こちらも炎天下での大変な労働だ。それに比べると自転車で汗をかくこと位、大したことではない!(と、思わねば・・・)
帰り際、「安納」をひと口頂いた。よく冷えたのど越しは旨かった・・!
ありがとうございました。 (03年8月)種子島酒造
西之表市西之表13589-3
電話:0997-22-0265
URL:http://www.tanegasima.co.jp/追)
工事を請け負っているのは、地元の藤田建設。
公共工事が激減する中、経営に行き詰まるところも多いと聞く。種子島でも建設中の新種子島空港が開港するのは平成18年でそれ以降は大型の工事の予定もなく、雇用問題など島の経済への波及は決して小さなものではない。
そこで藤田建設が目を向けたのがサツマイモによる振興策。安納イモや紫イモを使った冷凍焼き芋「焼きいもっ娘」は県の新ふるさと特産品コンクールで奨励賞を受賞した”甘〜い”力作。更に焼酎造りも視野に入れているという。そういえば、黒糖酒「里の曙」の奄美大島・町田酒造も親会社は建設業だっけ?
飢饉の救荒作物として”活躍”したサツマイモ。長い歳月を経て、今また不況を打開する”救世主”と成りうるのだろうか・・!? 生産農家の高齢化問題などハードルは決して低いものではないのでは? と素人ながらに憂う反面、そんな可能性を秘めたサツマイモの底力を改めて再認識することだった・・。時折、行き交うダンプを見ながら、暑さなのか、それとも夕べの焼酎の残りによる”脳死”なのか分からないモァ〜っとした思考の中で・・・。
03秋 リ・ロード完全に酔っ払っていた。といってもアルコールによるものではなく、船酔いだった。波が高く、甲板に座っていてもズレないように足を突っ張っていなくてはならないほど、右に左に大きく傾く。波しぶきも降りかかり、足元には水溜りが出来るほど‥。
西之表港に着いたものの、しばらく酔いを覚ましてからのペダリングとなった。種子島トンネルに入ると米麹の懐かしい匂い。風向きの影響だろうか、充満していた。蔵に入ると工場長代理の渡辺さんが自動製麹装置の前で忙しそうにされている。今回は杜氏で工場長の渡辺さんに話を伺うことができた。先代の経営者時代、自動製麹装置を導入したことで、ご自身が任されることになり、研修に通いながら、焼酎造りを始められたという。文字通り、零からのスタートだったそうだ。米の出来具合の見極め、それに合った蒸し具合、そして麹のはぜ込み具合など米麹造り一つとっても、微妙な匙加減が要求されるのだが、そんな経験をされているからか、まずは自分でやってみて、試行錯誤の中で技をつかむことが大切だという。
安納いもの二次仕込み 紫いもの二次仕込み
「焼酎ブームというが、おいしい焼酎をつくらなければ生き残れない」と穏やかな口調の中にもこだわりの姿勢はゆるぎない。その姿勢はたとえ言葉にしなくても「以心伝心」で工場長代理へと受け継がれていくに違いない。仕事振りを見守る視線を通してそんな風に感じたのは、決して船酔いが残っているためではなかった・・。焼酎の香りに酔い、人に酔う。何ともすがすがしいほろ酔い気分で蔵を後にした。ありがとうございました。
04夏 リ・ロード西之表港から、ペダルを漕ぐこと、15〜16分の距離にある種子島酒造。時間的には全然楽チンのはずが、今年の夏はやはり暑さが違うようで、噴き出る汗も半端じゃなく、気のせいか倍以上漕いでいる感覚に‥。
やっと着いたという思いで蔵を見ると「ん・・?」。「種子島むらさき」と書かれた煙突がなくなっている。拡張工事のために取り払われたのだろう。シンボルだと思っていたせいかちょっぴり寂しい思い‥。
新しくなった事務棟にある売店で、のどの渇きを潤そうと図々しくも試飲をお願いした。初留の「滴滴凛々」と「紫金の玉」それに「久耀」の3銘柄。「滴滴凛々」と「紫金の玉」はどちらも甲乙付け難い味わいだったが、迷った末に「紫金の玉」を購入。そして「久耀」を口にしながら伺い知ったのは、七年貯蔵古酒「久耀」はもう販売されていないということ。残念・・!! 代わりに六年貯蔵モノを購入したものの‥。
少量ずつとはいえ、初留を2杯も頂くと、さすがに一気にほろ酔い気分、真昼間から。ところが一歩外に出るとムッとくる暑さ。これならすぐに汗となって抜けそうな気配‥。
今回は見学ではなく、買い出しのつもりで訪れたのだけれど、拡張された蔵での仕込みの見学を楽しみにしながら、蔵を後にした。
04秋 リ・ロード「トンネルを抜ける」こと、今回でもう四回目となる。案内して頂いたのは古田さん。
拡張工事はひと段落して真新しい貯蔵タンクなどが増設されている傍ら、蔵の裏手に回ると壁の色が紫がかっている個所があった。紫イモを使った二次仕込みの発酵で飛び散ったものが、長年にわたって変色させてしまったものという。歴史を感じながらも二次仕込みを覗かせてもらう。アントシアンと呼ばれる色素の鮮やかさには何度見ても目を見張らされてしまう。その近くではおばちゃん達がイモ切りの最中だった。鮮やかな紫イモを次々に処理されている。いも切り・選別も焼酎造りの中では大事な工程になる。元気そうに働くおばちゃん達の縁の下のおかげもあり、旨い焼酎が飲めるというもの。そのおばちゃん達のお達者ぶりは手作りの小冊子「種子島いも物語」にもほのぼのとした内容で紹介されている。
ところでこの「種子島いも物語」第2号の表紙裏を見て思わず苦笑いしてしまった。「トンネルを抜けると蔵元だった……」とトンネルの写真に書いてあったからだ。はて、どこかで見たような・・・^^;
今年から銘柄名と販路の一部に変更があると伺った。その一つ「弥一」改め「蔵弥一」を試飲させて頂いた。紫イモと地元のコシヒカリを使ったこだわりのPB銘柄だ。とろけるような甘いのど越しがさらに深まったのは、おばちゃん達の働く姿を見たからか、二次仕込みに目を見張らされたからか、それとも真昼間だったからかよくわからない。迷わず購入したのは言うまでもないことだが…。