
「花はきりしま〜、タバコは〜ぁ、こくぶ〜」とおはら節で歌われているほどタバコの生産で有名な国分市。焼酎の蔵元も昔は十数軒あったという焼酎どころでもある。その中の6社により、86年に設立されたのが国分酒造協業組合だ。
鹿児島市から国道10号線を北上し、国分市の外れ、国分敷根で左折、検校川沿いに4キロ程上ったところに蔵はある。最近流行りのカーナビでも表示されないという。こちらは”五感ナビ”をフルに使って検校川の右岸を頼りに何とか迷うことなくたどり着けた。川原渓谷の少し高台に位置し、桜島や銘柄にもある黒石岳が望めるのどかな場所だ。総務課の木場さんに案内していただいた。いも焼酎の仕込みはもう終わっていて、むぎ焼酎の生産が行われていた。前日掘った新鮮ないもだけを処理するコンベア類や、直径7〜8mはあり、十数人が同時に処理できるいも選別・いも切り作業用の巨大な円卓も今はその役目を終え、静かに眠りについていた。
自動いも洗い装置 蒸留機には小窓がついていて中のもろみが確認できるようになっている。杜氏の安田さんが、酒精計を覗きに来られた。そろそろ蒸留が終わる頃のようだ。
蒸留機の小窓
1回の蒸留時間はおよそ3時間。もろみを入れ替えて1日に2回蒸留するそうだが、意外にも芋の繊維度より米の繊維度の方が高く、さらさらしていないために、洗い流すのが大変とか。大変といえば、8年前に製品化された黄麹造りの銘柄に取り組まれたときもそう。試作の麹を持ち帰り、甘酒を作って子供に飲まし、味加減を聞くなど苦労されたそうだ。
酒精計
97年に発売された「いも麹芋」のときも同様だ。これは同市で酒屋を営む石野浩ニさんが「いもだけを原料にした焼酎を造れないか」というアイデアを持ち込み、取り組まれたものだ。
米に種麹をまぶし、出来上がったものは”米こうじ”。この米の代わりにいもに種麹をまぶして作るのが”いもこうじ”。百パーセントいもだけで作った焼酎ということになる。業界初とあって、マスコミの取材も過熱気味。そんな中、「お客さまと共に育てていって欲しい。絶対にプレミアがつかないように‥」と当時の理事長の強い方針があり、販売方法に工夫を凝らすことに。
小売店に案内を出し、取引が決まった店にはその店名のスタンプを蔵の方で記し、出荷する-というもの。そうすることで、転売やプレミア化防止につながるはず。実際、消費者からの問い合わせなどで、これらが発覚した店も何軒かあり、取引を中止した経緯もあるとか。
操業時には1日に百トンもの水を使うという。91m地下からの伏流水だ。良質の澄んだ水で仕込んだ焼酎同様に、師走の冷たい風の中、温もりを感じながら、蔵を後にした。ありがとうございました。 (02年12月)国分酒造協業組合
霧島市国分川原1750
電話:0995-47-2361
URL:http://www.kokubu-imo.com
03初冬 リ・ロード今回も師走に入ってからの見学となった。例年だと11月末で終えるいも焼酎の仕込みを少し延長されると伺い、天気予報を信じて見学をお願いすることになったもの。
当日は快晴。約束した時間は朝の8時だったため、5時10分にペダリング開始。昼間はまだ暖かい陽気ながら、朝の冷気の鋭さはさすがに応えた(みんちゃばがジンジン‥>_<)。それでも国道10号線をひたすら漕ぐうちに身体の中から暖かくなってきて、予定より15分遅れてしまったが無事、蔵に到着。案内して頂いたのは総務部長の笹山さん。
いも選別・いも切り作業
いも処理工程では、新鮮ないもがベルトコンベアに乗り、土を落とされ、回転するいも洗い装置を通り、いも選別・いも切り作業用の巨大な円卓へと数珠繋ぎで運ばれていた。山のように積まれたコガネセンガンが見る見るうちに両端を切り落とされ、処理されていく。この日は6〜7人で作業されていたが、多いときは1日に10トンもの量を処理されるという、その慣れた手さばきはさすが! でしばし見とれてしまうほど。2次仕込みタンクを覗かせてもらった。いも麹芋の2次仕込みは米麹のものと比べて泡が多いのが特徴という。仕込み量は米麹造りがいも10トン、米2トンに対して、いも麹造りの方はいものみ13.5トンと総量で1.5トンも多いそうだが、度数は米麹のものと比べると低い。これは米のアルコール化の分がないためだそうだ。そのため、初めはいも麹と水と焼酎酵母を発酵させる”全麹仕込み”いわゆる”どんぶり仕込み”だったそうだが、その後の製造技術の改良を経て、今ではいも麹で造った酒母にさらにいも麹を足し、その後にいもをかける”3段仕込み”で製造されているとか。またもろみの櫂入れはあまり行わなず、発酵による自然の対流に任せているのだそうだ。
いも麹芋のもろみ 2基ある蒸留機が稼働中で原酒がタンク内に滴り落ちている。その原酒を味見させて頂いた。焼き芋にも似た、ほんのりと焦げたような香ばしさの甘い味わい。
フーゼル油を取り除く作業
ろ過加減は銘柄によってろ過機を通す方法とタンク内のフーゼル油を手作業で取り除く方法とを使い分けているそうだ。最近は無ろ過仕上げで、油分について但し書きをしている銘柄も増えてきている中、やはり見た目で油分がないように、丁寧にろ過されているそうだ。主な銘柄は、レギュラー酒の「さつま国分」、黒麹仕込みの「黒石岳」、黄麹仕込みの「黄麹蔵」とその原酒、そしていも麹銘柄は白麹を使った「いも麹芋」、黄麹を使った「純芋」があり、3年貯蔵させたものもある。また2年前に発売されたばかりの「大正の一滴」もある。これは大正時代に飲んでいたとされる老(ひね)麹造りの銘柄だ。
通常、製麹は40時間ほどかけて造るが、「老麹は更に数十時間をかけて麹を造り、また二次仕込みも通常よりかなり長い時間をかけて造る」という。手間暇かけた割りには、収量もよくないそうで「(焼酎の)スローフード」と杜氏の安田さん。文献を元に取り組まれたそうだが、この仕込みを可能にしたのは「いも麹造りの副産物」という。つまり、いも麹を造る間は、米麹を造る必要がなくなり、その分、十分に日数をかけられる-という訳。安田さんからはさつまいもについてもいろいろと話を伺った。ポピュラーな原料であるコガネセンガンは昭和41年から奨励品として使われるようになった比較的新しい品種で、それまでは農林2号という芋だった。芋は秋口になると甘みが増し、焼きイモにしてもおいしいが、焼酎用としてはお盆前位の若い芋の方が適していて、旨い焼酎ができる。芋は薩摩半島や大隅半島などその地の土壌や気候などに合った風味に分化している。などなど‥。その他にも興味深い話があり、「(さつまいもについて)もっと知ってもいいのでは?」という言葉にただただ頷くばかりだった‥。身近なさつまいもなのに、知らないことが多すぎる‥。これは焼酎に対しても当てはまるのかもしれない。まだまだ勉強不足のようだ。呑んだくれてばっかりじゃ‥^^ゝ
帰り際、「昔、鹿児島から自転車を漕いで国分に来る途中、チェーンがちぎれたことがある」と懐かしそうに話された安田さん。チェーンがちぎれる前に是非とも、また寄らせて頂き、話を伺いたいと思いながら蔵を後にした。ありがとうございました。