
日当山(ひなたやま)といえば、霧島の清流・天降(あもり)川を挟み、県内で最も古い温泉街があるところだ。アクセスは鹿児島市から国道10号線を北上して 隼人町小浜(おばま)で左折する。国分隼人有料道路の高架橋をくぐり、JR隼人駅前を過ぎ、国道223号線に合流するともう目の前だ。さらにしばらく漕ぐと空港入り口交差点がある。直進すると牧園、霧島方面に向かうところだ。その角にあるのが大正9年創業の日当山醸造。距離にして40km、およそ2時間超のペダリングだった。時間に余裕があったので、加治木町にある龍門滝に寄ってみた。高速道路を空港方面に向かう車窓から左手に見えるあの滝だ。高さ46m、幅43mと案内板に書いてあったが、幾筋にも分かれているためか、それほどのスケールは感じなかった。目の前にある温泉に浸かってゆったりと眺められたら、と思ったが、さすがにそこまでの時間はなかった。
工場長の山下さんに案内して頂いた。蒸し上がった米に種麹をまぶす製麹(せいぎく)は自動製麹機で行っていた。「河内式ドラム型自動製麹装置」だ。回転させることで、均一にまぶされ、また冷却の作用もあるという。かめ壷の一次もろみをひとつまみ、口に含ませてもらった。甘みと酸味とほのかな苦味が混ざり合った複雑な味だ。一次仕込みでは「差し元」と呼ばれる作業をされているとか。4日目のものを少しだけ、初日のかめにいれるという。
二次仕込み用のタンクは一升瓶で3500本分の焼酎ができる大きさだ。「一日にニ合飲むとして、一生の間に飲む量は4000本ぐらい」という説明を受けるうちに、みるみるもろみがせり上がってきた。中に攪拌装置でもあるかのように対流を始め、まるで月面のクレーターのように中から炭酸ガスが噴き出し始めた。酵母が糖をアルコールに分解するときに生じるガスだ。収まった後で、こちらの方も口に含ませてもらった。先ほどの一次もろみとは違い、苦味が強い感じだ。「これが焼酎の元?」と思いながらも「見学にみえるのは県外の人ばかり。県内の人も身近にある焼酎なんだから見て、知って欲しい」と口にされたばかりで、耳が痛かったこともあり、より苦く感じてしまったのかもしれない。
蒸留機は常圧用が3基、減圧用が1基備えてあった。自ら設計をされたそうだ。「見学者はこの形にビックリされる」と説明を受けたが、素人にはどこがどう違うのか、よくわからないまま、後をついて事務所に向かってしまった。「せっかくだから」と言われた試飲の方に気持ちは飛んでしまっていたようだ。^^;
レギュラー酒は「アサヒ」。他は隼人町特産品に指定されている「隼人心」、黒麹仕込みの「にごり黒」、それに「百秀」「心の雫」、そして昨年発売されたばかりの「千秀」などがある。
千秀を試飲させて頂いた。減圧蒸留してあるためかすっきり感があり、「ロックで飲めばすぐなくなる」と笑いながら話された山下さんの言葉にうなずくことだった。「焼酎入門用として飲んでもらいたい」という銘柄だ。
ふと目をやると隣に同じ千秀の違ったボトルがあった。出来たてを瓶詰めしたものという。「匂いがきついですよ」と差し出されたグラスをこわごわ近づける。強烈な刺激臭だ。味の方はほとんど変わらない感じだが‥。
「うれしいとき、悲しいとき、いつもそばにある。焼酎を飲みながら語り合ってもらえたら」と話され、「人のため、世のためになっている」仕事に誇りを持っているお人柄がうかがえた。「おいしいもの、付加価値の高いものを作っていきたい」という。薩摩隼人の意気込みをひしひしと感じながら、蔵を後にした。本当にありがとうございました。日当山醸造株式会社
霧島市隼人町西光寺649
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