◆ 旧・シャム猫亭 ◆


最後のお買い物

ロンドン旅行の思い出は随分前のものとなった。

海外旅行の最後の買い物は、いつも空港だ。
離れがたい思いで最後の買い物をするのだが、
これが結構厄介だったりする。
楽しみのためというよりは、義理であったり、両替も面倒くさいから、
ありったけのイギリス通貨をここで使い切るためであったり。
限られた通貨をいかに効率的に使いきるか、
限られた時間の中空港内のショップを右往左往して、
細々したものを買い集める。
クラブツリー&イヴリンでクッキーやらソープやらを物色したり、
きっと私たちのような買い物客は多いのだろう、
手ごろな値段で買えるキャンディ・ショップで所狭しと並んだ
キャンディの缶の底をひっくり返して値段を確かめたり。

でもやはり。
せっかくのイギリスなのだから、
最後の最後まで紅茶には未練がある。
有名ブランドの紅茶だけでなく、
いかにも「最後のお土産」、いかにも「小銭処理」のため
というような手ごろな値段で、ちょっとシックな紅茶が売られていた。
濃いグリーンのパッケージ。
物としては決して安くはないだろうが、
こんな場合にはちょうど手ごろな価格。
しかも、種類も豊富で、結局小銭処理のためだけでなく、
最後にはカードなんかも使って買い揃えてしまう。
Japanese Cherry Blossom Tea
Exotic Tea
Gun Powder Tea
YuanTea
オリエンタルなお茶やフレーバーティが豊富だった。

紅茶の魅力には味や香りだけでなく、
名前の響きも含まれている。

美しいものには次々と付加価値が加算されている。
ささやかで、深い贅沢が紅茶を楽しむ時間にはある。

そういう紅茶の贅沢をあわただしく買いあさった時間。
優雅でもなく、格好良くもなく、ひたすら買いつづけた時間。
思い出すとそんなことすら大切なイギリス旅行の一部として、
懐かしく、楽しかった思い出として静かに息づいている。

それが、最後のお買い物。 (シィアル)

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