*- ねこ物語 -*


 
 

「それは犯罪」
─情報提供者:玄機さん─

 母が以前勤めていた会社のオフィスには、社長の飼い猫が多数常駐
していた。市街地住まいでもワイルドな彼らは、気さくに外へ出掛けて
行き、スズメだのよそ様の金魚だのをハントしてきてはオフィスで働く
人々に見せびらかしていたという。
 ある日、彼らのうちの1匹が、ビニール袋らしきものをくわえ、半ば
引きずりながら帰ってきた。

「何持って来たの?」
母はしゃがみ込んで彼の“獲物”を確認した。その袋には
『ヤマ○キ・サンロイヤル食パン』と、赤い文字でくっきりと印刷されて
いた……。
 どうやら会社の隣にある○ァミリーマートから失敬してきたらしい。

しかし…どうやって盗ってきたのだろうか?
お客に目撃されなかったのだろうか?
店員にとがめられなかったのだろうか?
正面自動ドアから堂々と侵入したのだろうか?
商品搬入時を狙った計画的犯行なのだろうか?
それとも「つい出来心」の衝動的犯行?
いったい何が彼を非行へと走らせたのだろう?
謎は尽きない。

 ついでに、くだんの食パンのその後の運命も謎のままである。
 

 

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