珈琲酒と雪の夜噺  



大学時代、友人達とスキーに行きました。
村の小さな民宿に泊まり客は私達だけ、
宿の奥さんは小さなワイングラスに
深い金色のそれは綺麗な液体を注いで
御馳走してくれました。
芳醇な珈琲の香、とろりと甘い
手作りコーヒー酒だそうです。

いつしか奥さんとのお喋りは
雪の夜噺になりつつあります。
その雪深い地方に伝わる昔話。

昔、村の入り口に旅のお坊さんが倒れていました。
行き倒れた僧を家に連れ帰り看病していた村の男は、
僧の持ち物の中に大層なお金を見てしまいます。
いけない、いけないと思いながらも男は。

ああ、来たな。
漱石の「夢十夜」にも出て来る、
いわゆる「六部殺しのフォークロア」。
話の顛末を知っている私は身構えます。

僧を殺して金品を奪い、
村一番の富貴の身となった男に、
子供が授かります。
喜んで男が子供を抱き上げると、
赤子はぱっちりと目をあけて

「儂を殺したのはおまえだろうっ」

「ひゃあああああああ〜っっ!!」

真剣に身を乗り出していた友達が
奥さんにいきなり髪を掴まれて
屋根の雪をも揺るがすような悲鳴をあげます。
覚悟していた私を含め、
一同一緒になって飛び上がってしまいました。

「もう、おばちゃん、今のすごい怖かったよう〜、」
あー、寒くなっちゃった、と
皆腕をさすります。

だからほら。
これ飲んであったまるんでしょう。

* * *

[ コーヒー酒 ]

材料

コーヒー豆   100g
氷砂糖     100〜200g
ホワイトリカー 1.8リットル

保存瓶に材料を入れて、一ヶ月くらいで飲み頃。
苦くなるのが苦手な人は、色がついてきたら
コ−ヒ−豆は漉して下さい。(N)



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