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なぜだか、旅先では眠り猫との遭遇率が高い。
ロンドンでは木彫りの眠り猫。
萩では伊万里の眠り猫。
京都ではロイヤルコペンハーゲンの眠り猫。
布で作られたもの、張子のもの、
風鈴、箸置き、蚊取り線香立て…
さまざまな眠り猫と出会った。なかでも、京都では行く度に、
さまざまな眠り猫を手に入れることができた。
特に前回は結果的には、
驚くほど充実した眠り猫探索の旅となった。ふと覗いた、陶器類をあつかう店のひとつ。
何の期待もせず、湯飲みやら、茶碗やらを見ていた。
それほど広くない店内のほとんどを見終わり
最後の一角に目をやった時、
その瞬間のどの奥で小さく声をあげてしまった。
「あ!」
そこには大小さまざまな大きさの、
よく見慣れた美しい伊万里の眠り猫が所狭しと並んでいた。
ひとつは私が持っているもので、
特に気に入っているものだった。
柄違い、大きさ違いで、大中小、すべてのサイズがある。
さらに伊万里焼ではないが、
ちょっと愛嬌のある三毛猫の眠り猫まである。一体どれを買うべきか、
しばし呆然として、考えあぐねる。
すでに取捨選択は不可能であった。
全部買うか、全部やめるしかない。
幸いなことに、それほど値が張るものではなかったので、
(ロイヤルコペンハーゲンの眠り猫たちを思えば)
数分(!)考えた末、持ってないものはすべて買うことにした。お店の女主人から、「猫を集めてるんですか?」と聞かれ、
「いえ、眠り猫だけを集めています。」と即座に訂正した。
「そうですか。珍しいですねえ。」と感心されてしまった。
実際、このお店にはとてもかわいらしい猫の陶器がたくさんあった。
伊万里の招き猫は眠り猫と同じ作者の手によるものと思われるが、
やはり上品で美しく、初めて見かけた。
女主人によると愛嬌溢れる三毛猫は瀬戸焼だそうだ。
前回、京焼の箸置きを手に入れていたので、
小倉焼のものなど、
いろいろな焼き物が揃ってきた。
また、興味深いことに、
私の持っている伊万里の猫も含めて、
この絵付けをしていた方が亡くなったので、
これほどに端正な絵柄の伊万里の猫はもう手に入らないそうだ。
もちろん、後をついで絵付けをしている方がいるので、
伊万里の猫そのものは、まだ手に入るのだが…。
そういえば、9月頃にハンズで動物グッズの特集があったとき、
伊万里の眠り猫もいくつか並べられていた。
私の持っているのと柄違いのものや、
青一色で描かれたものなど、
見たことのないものもあったが、
なぜだか、どうしても欲しいとは思わなかった。
記憶も曖昧になってきているが、
多分、顔が違っていたのだと思う。
端正さや、上品さに少々欠けていたように思える。
もう、定かではないが。
ただ、今回のようにどうしても欲しい。
そういう気持ちにならなかったのは確かだ。つらつらと、以前のことを思い出しているうちに、
4体の眠り猫たちは丁寧に梱包され、
わが家にやってくることになった。さまざまな眠り猫との出会いを重ねるにつれ、
旅のついでに眠り猫を探すのか、
眠り猫を見つけるために旅に出るのか、
最近、曖昧になってきている。
いずれにせよ、旅する喜びのひとつである。(S)
[ ねこまにあ ]