「蜘蛛の巣館探訪・後編」 注釈




  「蜘蛛の巣館探訪・後編」 注釈  


(1)
なんといっても初鰹、江戸っ子なら女房を質に入れても、と言いますが、関口家じゃ
江戸っ子の雪絵さんが旦那を質に入れそうな。そこまでせずとも、一匹まるごと
800円くらい。秋は秋刀魚(さんま)をお刺身でいただきましょう。
なまじの高級魚などはるかに及ばぬ、この味で一匹40円くらい(最盛期)。
もっとも年によって獲れなかったりしますが。





(2)
1590年(大正18)、本多忠勝と共に正木家三代より勝浦城を接収。





(3)
1593〜94(文録2〜3)建造の五重六層の大天守に、櫓のいくつかも国宝。
無骨で重厚な黒板張りの平城です。岬にのっけるにはもちろん大き過ぎますけど。





(4)
八幡神社。この小さな社の裏の断崖を、落城の時14歳のお万の方が布をたらして
逃げのびた、「お万の布晒し」の伝説があるそうで。
で、燈台の手前で岬を振り返ってみて絶句。(社は林に囲まれて、向こうが見えな
かったんだもの。)恐るべし戦国の姫、やはりイワトビペンギンであったか。





(5)
正木頼忠息女。後、徳川家康の側室となり、紀州家・水戸家の母となる。
「養珠院於万」様。





(6)
次回レポートをお楽しみに。





(7)
本文P194〜195。





(8)
そこでまず家政婦さんにはりたおされる。前途は多難であった。





(9)
で、また“連れ”が。「きつねにつつまれたよーだ」と。おのれは鳥口君か。
「狐に包まれると、どうなると言うのです。」「うん、あったかい。」
一生つつまれとれ。あたたかくてボーッとするから、と言いたかったらしい。
おのれは伊佐間君か。ああ、ボケ役全員使い果たしたら「その後は君を
何と評価すればいいんだ。」(本文P819)





(10)
私は目が悪いせいか、数秒で立体視ができます。同柄の連続したトイレの
壁紙や、タイルでもできます。閉鎖された空間で、浮かび上がる虚の映像、
周囲にぎらぎらと満ちる輝き…ほとんど乱歩の「鏡地獄」的光学空間。(どこが)





(11)
山が、海に突っ込んだような地形。山頂でコケると海まで転がる。





(12)
複雑な形をよくみると、「全体」の形がその「細部」の形の相似形になっている。
例えば小枝の形は本体の「木」の形に似ている…といったような、子供の時
不思議だった法則に呼び名が与えられて、嬉しい。





(13)
厳冬期、氷結した諏訪湖の表面に亀裂が走り、「神の通り途」とされる自然現象。
これを知ったのは幼い頃「帰って来たウルトラマン」か「ウルトラマンエース」
だったかで、「御神渡は怪獣(超獣?)の通った跡だー。」というのがあって…
刷り込まれた。あとその話で隊長さんが物陰でお金かぞえていたのも妙に
印象的だ。宇宙人が、またそれを見ている。





(14)
でも、関東圏以外の人にとっては実際そうですよね。「地元ネタ」だと言ったら
シィアルに、「箱根レポート」とまちがわれた。なんで私が海を渡って山道を延々
歩かねばいかんのだ。ここは伊豆半島じゃなくて房総半島です、ちょっと形は
似てるけど。笑ってる関東人!四国四県言えますか?





(15)
(姑獲鳥の夏、P32。)京極堂が初お目見えのご挨拶に、関口君を嵌めて見せる。
(懐かしい。)
「それじゃあまるで、僕が幽霊のようなものじゃないか!」
それではまるで、つげ義春の「ゲンセンカン主人」のようなものではありませんか。





(16)
正確な定義は知りませんが、ここでは“世界の構造”がトリックになっているもの、
倫敦堂主人山内さん(「鉄鼠の檻」)…じゃなくて山口雅也著「不在のお茶会」
(「ミステリーズ」講談社文庫)、竹本健治著「ウロボロスの偽書」(講談社ノベルス)、
究極の伏線は「ソフィーの世界」、どんでん返しの極意は「少女革命ウテナ」
(1997年テレビ東京)…。それみんなミステリかって?だから、“アンチ”なのです。





(17)
「津山三十人殺し」(「塗り仏の宴・宴の支度」P16)
詳細な考察は島田荘司著「龍臥亭事件(下)」(カッパノベルス)に。





(18)
「碧さん」の可能性も高いけど、寮暮らしだからやっぱり無理だろうか。





(19)
「えっそれここで使うの、もったいないー」と思った貧乏症は多かったに違いない。





(20)
戦中に書かれた初期短編。三島が幼い頃訪れた鵜原(作中では鶯浦)の風光が
美しく描かれています。(「岬にての物語」新潮文庫中収録)
「類いない岬の風光優雅な海岸線、狭いがいいしれぬ余韻をもった湾口の眺め、
たたなわる岬の数々、殆んど非の打ち処のない風景を持ちながら」
人に知られず不遇な鵜原。でも、人が来ないから良いんだそうだ。


1998年08年