「はてしない物語」 著者:ミヒャエル・エンデ / 出版社:岩波書店
2001年05月31日(木)

☆それぞれが語る、果てのない物語の始まり。

 「本を閉じたとき、この閉ざされた本の中で
新しい物語が生まれていることを確かに感じた。
終わることなくはてしなく物語が生まれていく。
生まれた物語の一つ一つが無数の枝葉を生じ、
その枝葉の物語のそれぞれが独立した物語を無数に生んでいく。
一つの終わりは無数のはじまりに通じ、
はじまった物語の中で、終わっていくものもある。
メビウスの輪のように終わりははじまり、はじまりは終わり。
物語が物語を生み、
この中で語られなかった物語の語り部が私たち自身なのだと、
自分自身に語るために生まれてくる物語が
あふれそうになるのを感じながら、確信する。
想像力、それは人間の偉大な宝。
この宝が人生を長くもするし、短くもする。
エンデの人生は決して長かったとは言えないが、
誰よりも深いものであったろう。
そしてこの本の中で、無限に新しいものを生み出しつづけている、
エンデの想像力という魔法は永遠なのだ。」

夢の図書館本館 で、それぞれが「特別の一冊」を紹介している。
私の「特別の一冊」の中の、一冊が「はてしない物語」。
「はてしない物語」は、映画を見たっきり、
そのまま、本を読む気を失ったまま、
ずいぶん長いこと、ほったらかしにしてしまっていた。
さあ、読もう!と思い立ったのは、
インフルエンザの高熱で仕事を休んでいた時。
まさに、本当に(!)、熱に浮かされながら読んだのだった。

『けれどもこれは別の物語、
いつかまた、別の時に話すことにしよう』
「はてしない物語」の中の一文。
物語の中で、語られることのなかった、
是非ともエンデに語って欲しい物語。
もう、二度と、エンデに語ってもらうことは出来ない。
エンデから、新しい物語を聞くことは、もう出来はしないが、
エンデから、私たちは、素晴らしい「物語の種」を受け取っている。
それぞれの心に芽生えた、
新たなはてしない物語を紡ぐことが出来るのだ。

今、岩波書店では、「はてしない物語」の創作を募集している。
物語全体の続編でも、本文中のエピソードを発展させたものでも、
どちらでも、構わないということである。
締め切りは、9月10日。 (http://www.iwanami.co.jp/)

「はてしない物語」を今度は、
物語を読んだ私たちが紡いでいく。
物語は、今度は私たち読者のものとなって、
作者の亡き後も、物語は、はてしなく広がっていくのだ。
たとえ、文章に紡ぐことはしていなくても、
心の中で、新たな物語が生まれていく。
物語が、生きているのだ。

エンデが残してくれたものは、とても深く、なによりも豊かだ。(S)


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