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荒唐無稽な骨組みに、
リアリティの肉を着せ、
ロマンスのドレスで飾る。
これこそストーリィテリング。
そして、よみがえった「マミー」こと「ミイラ」も
不死の肉体をよみがえらせ、ロマンスを体験する。
誰のミイラ?
そう、3千年前のエジプト王、ラムセスニ世だ。
舞台は20世紀初頭のエジプトと英国。
ヒロイン、ジュリーは英国人富豪の一人娘。
彼女を取り巻く人間関係には、庇護する者、
善良な婚約者、ろくでなしのいとこ、
忠実な召使い…
ヒロインは美人で機知に飛んでいて、世間知らず。
対するお相手は国王にもなれるくらいの男ぶりで、
(実際国王だったのだから当然か)
強さと弱さの両面を見せる。もちろんお金持ち。
そう。このあたりの設定は、あの英国ロマンス小説界の
輝ける星、バーバラ・カートランドを踏襲している。
アン・ライスはきっと少女時代にカートランドを
読んで育ったのにちがいない。
もし私が俳優で、映画化の際に演じさせてあげると
いわれたら、ヒロインの父親の親友、エリオットを選ぶ。
どうやら彼もこれから(続きがあるはずの終わり方なのだが)
まだまだ活躍しそうだ。
さて、恋愛の成就が目的のカートランド的展開は、
ほぼ上巻で終わり、後半は「愛するふたり」を脇に置いて、
別のヒロインが大活躍する。
それはだれ?
…クレオパトラ。
どう。読みたくなってきたでしょう?(M) → 「ザ・マミー」(1)