■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外 2004/6/1発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1坊主バー朗読会 裏3Kと言われた。坊主バー朗読会(5/29)に行ってきました。 3Kが、小森岳史さん、究極Q太郎さん、カワグチタケシさんだとすると 今回の出演者 ジュテーム北村さん、究極Q太郎さん、カワグチタケシさん は、ほぼ3K。 3Kについては下記参照。 http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/46gou.txt 場所は「坊主バー」と聞いていたのですが 地図をみてもみつからず人に聞いたところ 「ここだよ」と言われて入った場所には 「Vow‘s Bar」と看板が掲げられていた。 元々、本願寺系のお寺の方がやっている店らしくて、 店主いわく「布教目的で店を出させてもらったけど、 そんな事は気にせず。みなさんと作り上げて行ければ」 という感じで、宗教色はそれほど強くない。 タイムテーブルは7時開場、7時半開演。9時終演。 一人千円(ワンドリンク付き)払って、バーの二階に行くと 狭い空間にひしめく20名の人達! 出演者の3名含めてMAXで25名ほど入って、 途中の休憩で帰った方、来場した方もいるのでのべ人数にして 27名ほど来られた計算になります。 もともと、究極Q太郎さんがされている「あかね」という 飲み屋の常連さんがこの店の店主で、 究極さんが、Vow‘sBarに いつ来てもお客さんがいないからその救済企画でという 話らしい。 店主が 「大阪の方から、布教してこいと言われて、 ここにお店を出したのですが、そんな事はどうでも良く 私はこういうことがやりたいのです」 と言ったときに客席から 「こういうことってどういうことだよ!」 「ギュウギュウ詰めをやりたいのか!」 と声が上がったのが最初の盛り上がり。 ステージはまず究極Q太郎さんから始まって 知らない人のために究極Q太郎さんの紹介から書くと 早稲大学前にある「あかね」という飲み屋を 切り盛りされている方で、 「あかね」というのは、少し特殊な飲み屋で 金曜日に詩の朗読会をやったり、 早稲田大学の前という事もあって 「ダメ連」 http://www.dokidoki.ne.jp/home2/yatch/dameren.html の溜まり場であったり、 ダメ連関連で精神障害の方が 生活して行くための場として、精神障害者の方が出来る範囲で 店の仕事をして、社会との接点を持つ場であったり、 飲み屋の本棚には自費・商業出版された詩集が置かれていたり、 一部からは文壇バーと呼ばれていたり、 詩の朗読会で掛かってるBGMが「太陽肛門スパパーン」 だったりする。 70年代中央線沿線アングラ貧乏カルチャーな飲み屋です。 究極Q太郎さんは「究極マニア」という詩の個人誌を出されたり 毎月第一土曜日にある「詩学ワークショップ」青の日で http://www7.ocn.ne.jp/~shigaku/work.htm 講評として活躍されていたりします。 今回の究極さんの詩は むかし早稲田の前の4畳半のアパートに違法就労の中国人の方と 6ヶ月住んでいたとき、夜お互い寝袋に入って寝てるのだけれども彼が 興奮して顔を自分の目の前五センチの距離に近づけて 大声で話してくれた話を詩にしました。 と前置きがあって詠まれた詩で、 「中国人働かない。日本人働く。 日本人早起き。私十時まで寝てる。 会社電話ある。私会社行く。 機械ダメ。日本人ダメ。私なおす。 一時間なおす。12時帰る。社長いう。 帰って良い。働く一時間だけ。私楽しい。」 その中国人の彼は、機械のエンジニアで、 その会社では機械が壊れたとき直せるのは 彼しかいないらしくて、一生懸命働く日本人と ちょっとしか働かなくていい中国人てのを 面白おかしく朗読されてました。 他に究極さんの詩は 路上生活の人達が釣り糸をたらしに集まる川に 毎日かよって朝9時から夕方5時まで一緒に釣りをしていた 時期のことを描いた詩とか、 NPOで路上生活者の人を救済する活動をして行くうちに 彼らと仲良くなり出して一緒に路上生活を始めた話や、 ニューヨークのニューヨリカンポエッツカフェに行って、 詩を朗読したときの話とか ノンフィクションの体験ルポ的なものが多かったです。 次にカワグチタケシさんの朗読があって 自作以外にも、色んな詩人の詩を朗読されてました。 3Kというイベントが、他の3Kメンバーの詩を リレー・交換で読んで行くのが恒例ですから 今回裏3Kである以上、 他のメンバーや他の詩人の詩を詠むというのは ある流れなのですが、一番びっくりしたのは カワグチさんが詠んだ カオリンタウミさん http://po-m.com/inout/doc.php?id=46 の詩が静かに力強かった。 カワグチさんの朗読法は抑揚や強弱リズムを抑えて なるべく平坦に詠む朗読法で、自ら意識してそうしていると インタビューでも言われているのですが あきらかに、抑揚やリズムをつけて詠む詩人の詩を まったく正反対の朗読法を唱えるカワグチさんが詠むわけです。 最初は、いわゆるカワグチさん式の朗読でした。 ゆっくりと静かに詠むカワグチ式の朗読が 少しづつ速くなり、足でビートを刻みながら 徐々に力強くなってゆく。 頭にアクセントのある8ビート。 個人的には一番踊りやすいリズムですが カワグチさんが詠んでいるだけに言われなければ リズムを刻んでいることすら気付かない。 最後は足のビートも強くなり声もシャウトしていたのですが それでも、カワグチタケシである事が崩れない。 スピードが速くなり、声も大きく叫びながら 足でビートを刻んでも、声の強弱・抑揚は あくまで否定する。 カオリンタウミさんをロック、 カワグチタケシさんをネオアコ・カレッジフォークだとすると ロックの名曲をネオアコアレンジでカバーするラウンドテーブル。 といった趣で、なぜか自分の中では、 静かなハイハットをバックにシャウトする初期ブルーハーツを 観ているような気分でした。 最後に、ジュテーム北村さんの朗読ですが 「自分の好きな詩を人前でなんか朗読するものか」 というフレーズから入ったジュテームさんは いつものように足でビートを刻み、 シャウト・抑揚・強弱をつけた朗読で 音楽的ニュアンスを出す。 「すみませ〜〜ん」「ペロン」といった言葉で笑いを誘い 会場にいる幼児の声にもアドリブで応対する。 他のメンバーも朗読が良かったこともあって いつものジュテームさんの朗読よりも文学性が高く 感じられました。 全体を通して思ったのは、 一人一人の完成度が高いし、 観なくても出来が良いの分かるから 観なくても良いやという気持ちが正直あったのが、 実際観てみると、一人一人の完成度の高さとは別に 三人の相乗効果が確実にあって、 担当で言えば、お笑い担当:究極Q太郎さん 文学担当:カワグチタケシさん 音楽担当:ジュテーム北村さん だと思うのですが、良い意味でお互いを侵食しあっていて ジュテームさんが詠んだ究極さんの詩を 究極さんがさらに詠み直して、 ジュテームさんの漢字の詠み間違いを指摘したり 同じ言葉が、究極さんとジュテームさんでは こんなにも節回し(メロディ)が違うてのを見せたり、 面白かったです。 カワグチさんの朗読で思ったのは 一見音楽的な朗読を否定しているように見える カワグチ式の朗読ですが 音楽でいうところのドローン(drone)や白玉と呼ばれる ベースパートをやっているんじゃないかと。 私は詩の朗読に関わり始めた頃、 言葉はハイハットだと思ってました。 メトロノームのパートを言葉が担当するのだと思っていたのですが 抑揚強弱を抑えて一定の強さ一定の音程を維持し続ける カワグチさんの朗読もメロディーに厚みを与えるための 音楽のパートの一部なんですね。 あと、究極さんの朗読法が、浄瑠璃だというツッコミが 客席(ブヒブヒさん?辺り)から出てて、 浄瑠璃・能・狂言・歌舞伎・講談・浪曲、 あの辺の純邦楽の区別が正直 私にはあまりつかないのですが 純邦楽の発声法だなとは思いましたし、 狂言をされているブヒブヒさん周辺から 浄瑠璃という言葉が出るということは おそらく、そうなのだろうなと。 究極さんを観ていて私が思いついたキャッチフレーズが 「高学歴・高偏差値・高IQ・低収入」 というやつで、早稲田という高学歴の大学を出て あえてNPOという形で、 精神障害や路上生活や不法就労外国人の人達と 生活を共にして、その体験を話すという 山田ジャック・大川興行系のルポタージュコメディですが 私は単純にIQレベルで、情報処理能力レベルで 究極さんに勝てないなぁと思った。 イベント後の帰りぎわ、 死紺亭さんが 「俺、いんこさん寄りの 渋谷・下北沢系オシャレカルチャーに行こうかなぁ」 と言ってて、それはもう単純に、 「貧乏です」「下層階級です」 というイメージで見せようとしても 究極さんが出て来たら勝てないってことでしょう。 帰りぎわ、「いま、いんこさん系の オシャレカルチャーの人数が手薄なんだよね。 バランス的にそっち行った方が良いのかなぁ。」 つってる死紺亭さんが面白かったです。 究極さん効果はこんなところにも表れてます。 あと、幹さん主催で上野ポエトリカンジャムが 来年の夏、復活するという噂を聞きました。 中野Vow‘s Bar http://www.geocities.jp/nakanovows 東京四谷Vowz Bar http://members.aol.com/vowzbar/ 大阪心斎橋Vows Bar http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/5766/ ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□