■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第91号 2004/3/22発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1エブリネス――ディナーショーの挑発2 データ的なことで前回書き忘れていたのが、観客動員数ですね。 23:00という客席が終電に向かって席を立ち始めた頃の 人数で、店員含めてフロアにだいたい60人ほどでした。 みひろさんやハギーさんのように23:30回ってから 来られたような方もいらっしゃいますし、 逆に22:30辺りから帰られ始める お客さんもいらっしゃいますので 60人よりもは多くお客さんが来られているはずです。 だとすると、最低客単価3000円×(60+α)= イベントノルマの20万ボーダーギリギリ越えぐらいかなぁ。 スラムのシステム的には客席の一人一人にウエイトレスが 紙とボールペンを配って回り、一人5分のステージの後、 3分間の書き込みタイムを作って、 (5分+3分)×5=40分のスラムです。 感想欄も3行もあって書き応えがあります。 今回は、エブリネスに対しての苦言的なことを書きます。 これも書かなきゃ嘘だろと思うわけで、 読みたくない人は読まないで下さい。 表面的で分かりやすい部分から書いて行くと、 ・オープンマイクが24:00〜では オープンマイク客は終電に間に合わない。 ・スラムのエントリー枠が5名では少ない。 ・ スラムの優勝がアゲハさんで、次点が泉俊行さんと 主催者が優勝し、次点もイベントスタッフだ。 ・ 値段が高い。 これらの声は当日私の周囲で聞かれました。ただこれは、 アゲハさん自身が意図したストレスなわけです。 ・スラムにはある一定以上の質の人を厳選して5名だけ。 ・ ポエトリー村の人が来過ぎないように あえてオープンマイクは終電後。 ・ スラムの前後にメジャーレーベルで活躍している プロのボサノヴァミュージシャンのステージにすることで ポエトリー以外のお客さんにみてもらう。 上の三つはアゲハさんが言ったわけじゃないけど まあ、その辺の意図は見えるわけです。 主催者が優勝してると文句言うなら、他のスラム参加者が 頑張れば良い話ですから、対戦相手が主催者だろうと内容的に 圧倒すれば良いんだよ、甘えんじゃねーよって話です。 ただね、これはツッコまなきゃ嘘だろと思うからツッコミますが クララオーディオアーツさんのワークショップは主催者の意図と 正反対の方向へ転がってたなと。 まずワークショップという単語ですが、 普通は一日体験学習を意味するわけです。 陶器を焼くなら陶器を焼く、社交ダンスなら社交ダンスを 素人のお客さんが生徒になって、その場で一日、 先生から教えてもらい、みんなで実際にやってみるのを ワークショップというわけです。 主催者が意図してたのは、実際にみんなでやってみるという ワークショップでなく、 バイヤーの人達へのインタビューだと思うんですよ。 ワークショップには勉強会とか講習会の意味もあるので まあ、「販売や仕入れの人達はこういう商品を求めている」という 講習会を開いてもワークショップと呼べるんですが ポエトリー村の外にいる、 レストランにメシ食いに来たアベックにとって それはすごくどうでもいい話だったりするわけです。 「ポエトリーの人達はこういう音源を作らないと売れない」とか いう話をポエトリー村の外にいる アベックに言ってもしょうがねぇーじゃん(笑)。 で、インタビュアーが 「どんなコンセプトで店を作られているのですか?」 と言ったとき、 「言葉で説明出来ない」  沈黙 「実際に店に来てください」  沈黙 「店を見てもらえれば分かります」  沈黙 という答えが続いて、しゃべるの苦手な人同士のトークショーって 辛いよねと言ってたのですが、つぎの瞬間笑ったのが 「今日はしゃべると聞いてないので。  しゃべらないで商品を見てもらえれば良いから。」 と言われて、打ち合わせしてねぇーのかよ(笑)。 クララオーディオアーツさんの 取り扱っているビデオがVjで流れて、 それを黙って見ようという方向へクララさんが持っていった。 見ると、街の平和な風景が映っていて、 噴水のある公園にハトの群れがいてちいさな少女が エサをやっていて、その画面へ黒のインクで バツを書いて画面を黒く塗りつぶしたり、 きれいな街の風景を映した画面に 黒のペンキをぶちまけたりしてる。 そこへクララオーディオアーツさんが 「Vjの音声上げれませんか?」と言い 上げれないことを確認すると インタビュアーの「どんな音声が流れているのですか?」 の問いに 「『お前らこんなのみるんじゃねぇー』とか、 観る人を罵倒するようなことを言っているのですが 音声が出なくて残念です」 だって(笑)。 いや、それ、アゲハさんが一番嫌いな方向性じゃなかったっけ? ビデオはフランスの老人が撮ったとかなんとかで 観る人を罵倒するような音声の内容も フランス語で入っている以上、店内に流れても 意味分からないから問題ないとは思うのですが 主催者の意図と正反対のことやってどうする! そのワークショップで、クララオーディオアーツさんの 一押しアーチスト「ザ・ピッチ・シフターズ」さんの ワークショップに移るわけですが、 もう、本人達としてはライブだと思って来ているから しゃべりはいい、ライブやらせろでライブになる。 ボサノヴァ系のラテンのBGMに乗って、 ホスト系のナルシスティックな声質でMCを入れる。 「女は歩く障害物みたいなものだからさぁ。 俺が歩くと事故が起きる。」 とか、まあ、俺はこんなにモテるんだぜ系のトークで笑いを取る。 ロバート・ハリスさんの朗読をもっと過剰にして、 パロディーにしたような朗読だ。 ロバート・ハリスさんの朗読はコミカルなところはコミカルだけど カッコ良いところはそれなりにカッコ良いわけだ。 ザ・ピッチ・シフターズさんは、その辺をもっと過剰にして パロディーのみで見せていく。 その場に、死根亭さんがいたんだけど、死根亭さんは 「これ、ロケットマンだね」と言っていた。 ピチカートファイブの小西さんとお笑いのふかわりょうさんが 組んだユニットで、ロケットマン http://columbia.jp/~rocketman/ てのがあって、 俺はちゃんとは聴いたことないけど、まあ、こんな感じらしい。 ロケットマンの名前の由来は、 ロケットの様に現実の向こうへ飛んでったっきり戻って来れない人 のことを指すとかで、小西さんがBGM担当だから ラウンジ http://music.goo.ne.jp/search/genre_j/10730/p1.html としてのクオリティーは高い。 このザ・ピッチ・シフターズさんの芸も、 場には馴染んでいたんだけど、俺の観点だと これ、NGだし、ダメだと思う。 お笑いというのは多かれ少なかれ誰かをけなす要素があるんだけど 想定購買層を傷つけちゃいけないというルールがあって、 スーツ着て気取ってる人間をパロディにする=傷つけるってのは スプーマでやっちゃいけない。 もっというと、アゲハさんの問題提起とは逆の方向ヘ行っている。 メジャーでやろうと思ったら、アレをやっちゃダメ、 コレをやっちゃダメという枠があって、 その枠を提示しようとしているのに、 「お前らこんなの見るんじゃねぇー」と見る人を罵倒するような 音声の入ったVjを持ってきて流したり、 ラウンジで女の子の前でカッコつけてる男をパロディにして おとしめるような芸をする。 これも、主催者の意図を分かった上で ぶち壊してやるぜっつってやるなら タイマーズ的なアンダーグラウンドパワーも感じるけど 単に主催者との意志の疎通が取れてないだけに見えるのが 余計辛い。 音が悪いという批判も割と聞かれました。 スプーマの内部がL字型になっているのですが、 まず、店に入ると、まっすぐ向こうまで続いていて、 突き当たりにステージ、左に曲がると またちょっと客席のスペースがあって、 奥の両角に1メートル四方×高さ2メートル大の スピーカーが二台ある。           出入り口  _________|  | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            | |            |_________ |           ■         ■| |                      | |                      | |                      | |       ステージ          ■|  ―――――――――――――――――――――― ■ がスピーカーで、上の入り口から ■ 一つ目の■にたどりつく手前辺りで 下に降りる階段がある。つまり最初の直線部分が 1メートルほど高い中二階になっている。 そして、中二階にはスピーカーがない。 スピーカーが1階の右側部分に片寄っているのが分かるだろう。 スピーカーのサイズも、右の二つは先ほど書いた、 高さ2メートルの柱サイズで、ステージ正面にあるのは コンビニにあるような横二十センチ高さ十五センチほどの モニタリングスピーカーで、ステージ側を向いている。 ステージから見て、左側に本部席・Vj・Dj・ミキサー卓等の ブースがあり、その辺りにも 多少モニタリングスピーカーはあったかもしれない。 問題はスピーカーのある1階部分の特に右側と 中二階部分、特に奥側ではボリュームがまったく違うという辺りで、 中二階部分はスピーカーのないアコースティックライブになり、 一階右側部分はヘビーなライブ空間になる。 音は上から下に落ちて行くものだから、 ビルでも上の階の音は下の階には響くが上の階には響かないように アコースティックで上の階に下の階から音を届けるのは 結構厳しい。 中二階からアゲハさんとみひろさんの即興ライブを見たけれど ステージをジッと凝視すればかすかに何か言ってるのは分かるが 何を言っているのかは分かったり分からなかったりだ。 基本的に中二階はステージを見ずに 友人達との会話を楽しむスペースだと思う。 これはミュージシャンの人達のライブのときもそうで中二階はずっと 雑談をしているわけ。やってる音楽も、ボサノヴァとは言いながら ラウンジミュージックとかカフェミュージックとか イージーリスニングとか言われる、会話の邪魔にならない 静かなBGMで、邪魔にならないのが良いとされる曲だ。 邪魔にならないステージが良いステージ、 客席からの反応が無いのが良い反応、 そこを合格点にした時に、ポエトリーの人達が 本当にプレッシャーを感じるだろうか? 演芸場なら笑いがなきゃいけない。 ライブハウスなら踊らせなきゃいけない。 でもここは、反応がなければ合格点。 それがポエトリー批判になるのだろうか? 客単価三千円四千円で客を呼ばなきゃいけない。 これはポエトリーにとって、プレッシャーだろうけど、 それはスラムやオープンマイクの参加者が感じるプレッシャーでなく 主催者のアゲハさんが感じるプレッシャーだ。 メジャーレーベルで活躍している高級感ある音楽と比べて 違和感なく場に溶け込めるのかと言うのがアゲハさんから ポエトリーへ掛けたプレッシャーだったはずだけど、 音が届かない、声が届かない、客席の反応がない、 よし、場に溶け込めた、合格点。 それで良いのか? 音響的には、低音域が強調されてこもった音になっている。 これも店側が、中二階に音を届けないようにしている工夫だと思う。 低音やこもった音は、同じボリュームの高音や抜けた音と比べて 遠くまで届かない。音楽を聴きたい近場の人だけフルボリュームで 聴いてもらえば良いじゃんというセッティングだ。 まだ一回しか開かれてない新生エブリネスに 結構厳しいことを書いたけど、 ポエトリー客をあえて入れないタイムスケージュールとかみてると 面白いと思う。ボサノヴァバンド二つの間に無理矢理スラム入れて ボサノヴァバンドのファンにスラムを聴いてもらう。 ボサノヴァだけを聴きたけりゃ、 ボサノヴァが始まる時間に店に入って ボサノヴァが終わる時間に店を出れば良いんだけど、 最初にボサノヴァバンドが演奏して、次のボサノヴァ聴きたけりゃ スラムも聴かなきゃいけないという、 この力技はやっぱ面白い。 会場 SPUMA http://www.spuma.jp/ イベントHP http://www.everyness.com/