■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第83号 2004/3/5発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1ジャニス 神田の古本屋街にジャニス http://www.janis-cd.com/janis/index.html というマニアの中では有名なレンタルCD屋さんがあって、 ノイズとかフリージャズとか現代音楽とか音響とか マニアックなジャンルのCD&ミュージックビデオのみが置いてある レンタル屋さんで、 小沢健二や大槻ケンヂといった人達も通っていた http://www5a.biglobe.ne.jp/~stc/ootuki-ozawa.html というマニアな店ですが ポエトリー関連のアーチストも置いているので 今日はそちらのレポートを書きます。 2英語圏の朗読 アメリカで朗読というと、ビートニクの人達、 ウイリアム=バロウズやケルアックやアレン=ギンズバークが 有名で、その下の世代で、 ローリー=アンダーソンのようなパフォーマーや、 パティ=スミス、ルー=リードといった 文学系ニューヨークパンクの人達、 もう少しフォークっぽい感じで トム=ウェイツなんかがいたりします。 ジャニスでそれらをあさったところ、 バロウズはビデオのバロウズコーナーに6本ほどあって トム=ウェイツも3本ほどあって、 あとまあ、ローリーアンダーソンや ケルアックトリビュートのCDがあったので 一部借りてきました。 ローリー=アンダーソン(LAURIE ANDERSON) http://park10.wakwak.com/~techno/oexperimental.html の1986年作「0&1――HOME OF THE BRAVE」 http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD9847/ 一緒に借りたトム=ウエイツ(TOM WAITS)の 「COMPILATION ‘77−87」 http://www.6988.jp/main/goodslist_pc.php?only=1&art=^TOM%20WAITS& は字幕も ついてない向こうのテレビ番組だったので、 結構辛いですが、 0&1のビデオは字幕どころか解説までついているのが嬉しい。 曲目は 1グッド・イブニング 2ゼロ・アンド・ワン 3エクセレント・バーズ 4オールド・ハット 5ドラム・ダンス 6スモーク・リングス 7レイト・ショー 8ホワイト・リリー 9シャーキーズ・デイ 10ハウ・トゥ・ライト 11ここく 12レーダー 13グラヴィティ・エンジェル 14ラング・ドゥ・アムール 15トーク・ノーマル 16ディフィカルト・リスニング・アワー 17ランゲージ・イズ・ア・ヴァイラス 18シャーキーズ・ナイト ゲスト:ウィリアム・バロウズ。 0&1は、ライブのステージのビデオ化で、 全体としてはニューウエイブ・ニューロマンティック系の コンサートに近いノリですが、 朗読と思われる箇所も何箇所かある。 まずは有名な、磁気ヘッドをつけたバイオリンに、 磁気テープの弓で演奏をするところから始まる。 この特殊なバイオリンは彼女のお手製であるらしい。 ザ・デストロイヤーのようなチープな覆面をして 磁気バイオリンを弾くパフォーマーが0と1について 話始める。 0は破算・無一文を示し皆に嫌われる。 1は一番・頂点を示し皆がそこを目指している。 嫌われる0と憧れの1。しかし0と1の幅は狭く閉じている。 0と1のどちらが優れてどちらが劣っているなんて 言えないんじゃないか? 現に、コンピューターは0と1だけで全てを表現する。 電子ドラムやコーラスやエレキギターに合わせて彼女は踊る。 押すと電子音が鳴るスイッチを服の中に生め込んで、 自らの体を叩き電子音を鳴らす。 真っ暗闇の中で彼女の手のひらだけが照らされ 手がどんなに動いても光が付いてくる。 動きに合わせて照明を当てるにしては対象物が小さ過ぎるし 動きが速過ぎる。どうやって照明を当てているのか分からない。 キーボードを弾きながら二つのマイクスタンドを使って 朗読もしくは歌唱をする。 片方のマイクはノーマルで、 もう片方はコーラス系のエフェクトがかかりまくっている。 醜い外見を持つ男性とのラブロマンスを歌った歌の終わり 照明が消えて、彼女の口の中だけが照らされる。 先ほどの手といい、 どうやってそこだけを照らしているのかよく分からない。 女性器に見立てたかのような真っ赤な口の中が画面いっぱいに広がり、 「私達はこんなに素晴らしい」と言って 口を閉じる。真っ赤な唇だけが残り、 やがて全ての照明は消え暗転する。 どうやら彼女はペンライトを使っているようだ。 「蛇のようなセクシーな舌をした男性に言い寄られ 幸せな結婚をするが幸せはやがて退屈に感じ、 別の蛇に惑わされる。そんな事を仕事中に考える。」 というリーディングの後、Yシャツという仕事着が 天井からつるされ踊り出す。 次の曲では天井からつるされたYシャツを サポートミュージシャン達が着て踊り出す。 エレキギターのネックがゴムのようにぐにゃぐにゃ 曲がり、直径一メートルほどの巨大な虫眼鏡で 写される彼女の顔は奇妙だ。 バロウズコーナーにあった「ビートニク」 (原題:The Source)。 アマゾン http://tinyurl.com/3cwqy 紀伊国屋 http://tinyurl.com/3derh http://www.zaziefilms.com/lineup/beatnic/beatnic.html これはカッコ良かった。 デニス=ホッパーの朗読がカッコイイ。 似たビデオで、 「Beat Generation」 アマゾン http://tinyurl.com/3x7hf というのを 以前、ジャニスで借りたがこれはひどかった。 バロウズの朗読が入っているのだが、バロウズって相当朗読が下手で、 バックのジャズバンドの音と無関係にただ読んでいるだけで そのイベントを観に来た若者に 「バロウズも良いけど、マイルスの方が好きだね」とか 言われているの。CDで他のバロウズの朗読も聴いたけど、 バロウズが上手い朗読しているところって聴いたことがない。 ビートニクの方はすごくカッコ良く仕上がっていて カッコ良すぎて、だから何?になってしまう可能性もある。 英語でしゃべれば誰だってカッコ良く見えるじゃん?と 思えてしまったら、ビートジェネレーション借りて バロウズの下手糞な朗読を観るべきかもしれない。 ビートジェネレーションは、ビートのネガティブな面を 割と映してて、そこの面白さがある。 ビートの人達というのは、発展途上国系のファッションをしていて アメリカ原住民であるインディアンや ヒッピーのジャニス=ジョップリンやジミー=ヘンドリクスのような 民族衣装系のファッション、 手織りの布に手縫いの服を着てたりするのですが そんな人達の集まる貧民街っぽい場所に、 黒いスーツに黒いハットをかぶってパイプくわえた 一目みてエスタブリッシュと分かるようなファッションの よそ者のバロウズがやって来て、 自分がビートの代表者であるかのようにマスコミに宣伝すると いうような発言&映像が出てきたりするわけです。 ビート族というトライブ(生き方)はボヘミアンやヒッピーと 同系統で、時系列的にはボヘミアンとヒッピーの 間にあるのですが、ボヘミアンの人達というのは いわゆる普通の仕事をせずに、 芸術に没頭し芸術で食っていこうとします。 このとき、アート専業で食うには、 金になるかならないか分からない絵をひたすら描くとか いう時期が必要で、その食えない期間が、三ヶ月かもしれないし 十年かもしれないし、一生かもしれない。 その間、貧民街とはいわないまでも、 アート指向の貧乏学生が集う学生街で、ロフト (屋外と同じ気温で冷暖房の効かない屋根裏の物置)に 居候させてもらいながら、 有り余る時間を絵なら絵に費やし、 極力金の掛からない生活をするため、 ボロボロの汚い古着を着ていたりする。それに対する画商は、 彼ら貧乏ボヘミアンから安く絵を買って、 金持ち連中に絵を紹介して高く売る仕事をしている。 金持ち連中に絵を高く売るのが仕事だから、 まず、金持ちから信用されるだけのこぎれいな服装と、 こぎれいな言葉使いは最低限必要な商売道具になる。 画商とボヘミアンとの関係というのは必ずしも良好ではない。 ただ同然で手に入れた絵で金を儲けるのは画商であり、 画家の手には金が入らない。多くの場合は、 画商は画家に対し一生分の絵画を買い取る専属契約を結び、 画家に対して無償で画材を与える代わりに、 画家の絵を無償で手に入れる契約を結ぶ。 画商のビジネスにとって最も利益が大きいのは ゴッホの場合のように、 生きている間に百〜二百枚ほどの絵を描かせ、 画家の死後にその画家の個展を大大的に開き、 広告によって絵の価値を上げた後、 その画家が生前に描いた絵を全て自分の手元においた上で 原画のレンタル業を始めるという、 ゴッホ財団方式なのだ。 画商ビジネスとは、画材代のみで手に入れた絵を、 画家の引退後、広告費と営業トークで何億円もの価値に 跳ね上げるものである。 そう、絵の価値は画商が決めるのであり、 画家の描いた絵に価値があるわけでない。 その文脈で、バロウズを見ると、明らかにバロウズは 画商サイドの人間であり、ボヘミアンではない。 スクエアなメディアから信用されるような正しい服装、 正しい言葉使いをして、ビートニクスをメディアに紹介する 紹介者のような立ち位置にいる。 バロウズの名声に対する嫉妬も含めて 少なくともビートジェネレーションというビデオでは そのように表現されている。 「ジャック ケルアック トリビュート」 (原題:KEROUAC−kicks joy darkness) アマゾン http://tinyurl.com/2ozm8 74ページのブックレットに2枚の朗読CDが付いた形で、 造りが豪華ですね。 訳詩が中川五郎&高木完 日本版のスペシャルトリビュートが 大竹伸朗(Exパズル・パンクス) 本木雅弘&内田也哉子 浅井健一(Exブランキー・ジェット・シティー) 森永博志 クリストファー・ドイル(カメラマン) ビッケ(Exトーキョー・ナンバーワン・ソウル・セット) ヒロエ(カメラマン) 日本版で追加した分だけでこのメンバー。 本編の参加アーチストも REMやエアロスミス、クラッシュやパールジャムの リードボーカリスト達、 ソニックユースのギタリスト2人に、 パティー・スミス、 物書きではウィリアム=バロウズに、 ハンターSトンプソン、 ビート詩人の貯まり場であり、 出版元でもあった書店シティライツのオーナー ファーレンゲッティ、 映画俳優ではジョニー=デップとマット=ディロン、 1993年にMTVで放映されたポエトリー・アンプラグドで スポークンワードを代表する詩人になった マギー・エステップ(Maggie Estep)、 http://www.maggieestep.com/ 変わり所ではスタンダップコメディアンの リチャード=ルイスなんかも入っている。 ジャニス 営業時間 AM11:00 〜 PM9:30(年中無休) 千代田区神田小川町3−6−9神田第2アメレックスビル9F TEL 03−3291−9578 http://www.janis-cd.com/janis/index.html 3イベント情報 3/7(日)ポエトリー地下劇場 司会:ドクター・セブン 出演:ムロケン・平山昇・油本達夫(横浜詩人会)・ロバート=ハリス 美音妙子・稀月真皓 場所:神奈川県民ホールギャラリー第五展示室 開演18:00〜 入場無料 定員100名