■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第69号 2003/11/24発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1近況 木棚です。 花本さんのアパートにお泊りさせていただいて、 本棚の「SEX STYLE BOOK」を http://netman2jp.s26.xrea.com/normal/sei3078.html 音読していた木棚です。 だってさぁ、あの本、普通に音読するだけで絶対笑い取れるって。 「第一章 ふぞろいの性器たち」 「セックス催眠術 初級編」 「言葉のシャワーで彼女をいかせよう」 どうよ、これ。 2見下されて/尊敬されてなんぼ 詩の朗読を見てると、 ホームとアウェーの差を感じることがあるんですね。 ホームとアウェーのどっちが朗読やりやすいかと言うと キャラクターにもよるのですが、 意外にアウェーの方がやりやすかったりします。 日曜や祝日に代々木公園辺りに行くと、 ストリートミュージシャンが昔のホコテン並みにいっぱいいて それぞれ歌を歌ったり演奏したりしているわけで その中に青木研治さんなんかも混じって 朗読してたりするわけです。 路上で「今から詩の朗読をするので聞いてください」 と言ってる人が居たとして、普通の通行人は その人を見下します。 有名で人気があって実績がある詩人やミュージシャンならともかく どこの誰だか分からない人が路上で 「今から詩の朗読をするので聞いてください」と言えば だいたい見下した態度を取られるものです。 周囲の通行人から白い目でみられます。 「アホかこいつ」と見下されている環境の中で 一発周囲を驚かせるカッコイイパフォーマンスを決めると あきらかに周りの目や場の空気が変わります。 マイナスからプラスへの落差がすごいわけです。 詩の朗読をしている人には、お笑いベースの人が結構多くて 奇聞屋でされている「引かせ王選手権」など そのさいたるものですが、 お笑いのほとんどは客席がステージ上の人間を 見下していることが前提になってます。 客席よりも低い位置から、馬鹿なことをやって 自虐的な笑いを取る。 ところが、パフォーマーが観客より下の位置にいるという 前提が成立しない環境というのがあって、 ホームでのライブというのがそれにあたります。 青木研治さんは、音楽寄りのカッコイイ朗読が 多いのですが元ホリプロ所属のお笑い芸人だけあって 朗読の前のトークで笑いを取ったりもされます。 青木研治さんのライブに二度ほどうかがったことがあるのですが 青木さんのライブだと、客席はみんな青木さんのファンで 青木さんを見たくて お金を払ってきている人達ばっかりなんですね。 当然、客席に青木さんを見下す人など居るわけがなく、 みな青木さんを見上げる・リスペクトする・尊敬する感じで 接するわけです。 その空間で、青木さんが「このあいだこんなことがあって」と 失敗談か何かで笑いを取ろうとすると場が寒いんですよ。 私も含めて客席はみんな青木さんのファンなわけで、 その場では青木さんはスターじゃなきゃいけない。 スターは自虐的な失敗談を語っちゃいけないんですね。 生活感の漂う庶民的な話や笑いを客席は求めてないわけです。 スーパースター青木研治を観に来ているわけです。 つまり、路上=アウェーとは逆の芸風が 青木研治主催のライブ=ホームでは要求されるわけです。 これと同じことは、死紺亭さんの過渡期ナイトにも 当てはまって、死紺亭さんのギャグが一番受けない空間が 過渡期ナイトだったりします。 「ホームは究極のアウェーだ」と 過渡期で死紺亭さんは言ってましたが 過渡期で死紺亭さんがワザとおかしなことを言ってボケても 周囲が死紺亭さんのファンだと、 おかしなボケを事実として納得してしまうわけです。 具体的に言うと、過渡期は早稲田の高学歴な学生さんが 多く出席されてて、死紺亭さんが紹介するネタも ウィリアム・バロウズだとかタルコフスキーだとか 現代詩だとかジョン・ゾーンだとかの、 高級文化の紹介があった後で 死紺亭さんの「ビートコメディー」というネタが 始まるのですが、結構ボケてても さっきまでの真面目な授業の延長で客席は納得してしまう。 死紺亭さんがワザと間違ったことを言ってても 客席は事実として受けとってしまう。 ネタでボケてても、その前にはバロウズやジョン・ゾーンや について真面目に語っていたわけで、 「そんな教養人の死紺亭さんが間違ったことを言うわけがない」 という空気で客席はボケを聞くわけです。 (過渡期ナイトで笑いが成立しにくいのはもっと別の理由も あるのですが長くなるので省きます) お笑いというのは客席より一段低い位置にいないと 成立しないのですが、客席より一段高い位置で やらなきゃいけない環境というのが 場合によっては、あるわけです。 SSWSや詩のボクシングの本選などもその一例です。 SSWSの第一回チャンピオン大会にラッパーの人がいっぱい来て 予選を勝ちぬいた優れた詩やラップを勉強するんだという意識で ステージを見てたりするわけです。 いま詩の朗読やってる人はお笑いベースが多いのですが ラッパーの人達がみんな、笑わないわけです。 文学における詩という立派なジャンルをやってる人達なのだから 立派なことを言っているはずだという目で観る訳で 笑いが成立しないんですね。 詩のボクシングなんかも、東京地区選考の本選をみると 客席には小学・中学生の親子連れが多いわけです。 詩のボクシングは文部省などに働き掛けて 義務教育に詩のボクシングを 取り入れてもらったりしているわけで ステージに立つ人はお笑いのつもりで立つんだけど 客席は、文部省推薦の立派な何かを 観に来ている人達だったりします。 親は子供に 「あのステージに立ってるような立派な人になるんだよ」 と言ってステージを見せるわけです。 この環境でお笑いをやるのは結構厳しいわけです。 客席の期待に答えるには、 立派なことを言う立派な人にならなきゃいけない。 ホームで強い芸風というのをみせてもらったのは さいとういんこさんで、SSWSの大会で 私がカッターで腹切って ケチャップとコンドームと生肉で作った腸を 出したあとだったのですが 司会のアトムさんが 「このイベントの大ボスさいとういんこさんです」 と紹介して、 いんこさんにパフォーマンスするよううながして いんこさんはパフォーマンスの用意してなかったらしいのですが 周囲に盛り立てられてステージに立つわけです。 赤いフェルトのベレー帽に赤いフェルトのコートに 赤いフェルトのスカートという 全身赤のド派手な着せ替え人形ライクな衣装で ステージに立ったいんこさんの第一声が 「どうしよう。私普通の地味な人になってる」 で、客席のいんこファンから 「いんこちゃーん。だいじょうぶだよぉー。」 「がんばってぇーー。」 という歓声が上がるわけです。 私はそのカッコのどこが地味な普通の人なんだよと思いながらも 先日渋谷のレコード屋でみた元チェキ娘の下川みくにの ラジオ公開録画みたいでカッコイイなと思ってるわけです。 基本的に、アイドルと親衛隊との間で交わされる コール&レスポンスって好きなんです俺。 で、ステージからのコールに対して、 定型のレスポンスで返せるのはそのアイドルの固定ファンだけで 固定ファンがいっぱいいるホームでしか コール&レスポンスって成立しないんですね。 いまロカビリーと呼ばれている初期ロックンロールも ステージとか客席との間のコール&レスポンスで成り立ってて レコーディングでは客席パートを ヴォーカル以外の演奏者がコーラスで歌ってたりします。 PPPHなんかも含めたコール&レスポンスをやりたいかどうかは 他の客からみて固定ファンや親衛隊が カッコ良く見えるかどうかなんですね。 カッコイイと思ったら一緒にレスポンス返したいし ダサかったら、ダサい人達と一緒にされたくないし レスポンスも返したくない。 そのときのいんこさんの固定ファンはカッコ良く見えたんですよ。 ステージではいんこさんが出した 詩集「too much caffeine makes her a poet」の話を してて、どこで売ってるとかいくらだとか、 どんな写真が使われてるとか言ってて、 で、客席に「この詩集から何を読んで欲しい?」って聞くんです。 この辺の客いじりってのは、タンゴヨーロッパで アイドルとしてデビューした人だけあって さすがだなと、思うのですが 固定ファンじゃなきゃ、 その詩集にどんな詩が載ってるのか分からないし 詩のタイトルも分からない。 そこでレスポンスを返せる固定ファンになろうと思ったら 詩集を買わなきゃいけない。 ファンにしてみりゃ、 自分のリクエストに応えてもらえるって嬉しいわけですよ。 俺なんかでも青木研治さんの「弁当箱」の詩に関しては 青木さん以上に思い入れあるし、青木さん以上に語れるからね。 作り手以上にファンの方が色んな思い入れあったりするわけですよ。 客席からは、色んなリクエストの声が上がって、 その中の一つを読むんだけど ホームだから出来るパフォーマンスって こういうのだなと思いました。 P.S.イエス!マイクロフォンで 田中創さんがいつものように頼りない一人芝居をしていたら その芝居の中で 「頼りがないのは良い便りと言うじゃないか」と 言ったのは笑った。 3イベント情報 11/23(日) 3K7.1 出演:カワグチタケシ、究極Q太郎、小森岳史(ゲスト有) 開演:15:00 料金:カンパ制 会場:さらさ西陣(京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1 離楽庵WOOD-INN)  問:075-432-5075(さらさ西陣) http://za-ha.hp.infoseek.co.jp/sarasa_map.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□