■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第63号 2003/10/27発行 ■ ■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1混沌→型→崩し   その2 どんなルールで、何が期待されてというのが見えて、 カオス(混沌)がノモス(法則)になってゆく中で、 いったん途切れた興味だけれども、 わけ分からない中で、今日はラップ、明日はひとり芝居、 あさっては漫才やって、昨日とおとついやってたのは活字の文学、 というよりも、一定の方向性を定めて、同じ方向へ向かって 技術や知識を蓄積して行くのはポジティブなんじゃないかと いう思いが自分の中で沸いてくるわけです。 思えば、東浩紀さんだって、批評空間でデリダ論を書いて 哲学のジャンルを極めたからこそ、そのタコツボから出て もっと広いマスメディアの世界に行っても、 哲学を極めた人として尊重されるわけで タコツボの中も極めてないのに、 タコツボから出てもしょうがないだろと。 宝島で1ページ2ページの連載を持っていた人達だって 専門雑誌の編集に関わって、その専門分野を極めた人達だから サブカルチャー全般を扱うごった煮のような空間でも 輝けたわけだろと。 そうなったときに、まず自分はどのジャンルに 属しているのかという話になります。 MARZの新宿スポークン・ワード・スラムでは http://www.marz.jp/ssws/index.html ラッパーと詩人の対決をうたっており 私はラッパーじゃない以上、詩人だという扱いになるわけです。 詩のボクシングにしても、 http://www.asahi-net.or.jp/~DM1K-KSNK/bout.htm Ben'sCafeのオープンマイクにしても http://www.mihiro.net/events-j.html 一応、私は詩人という扱いになるわけですが 本人の自覚としては、詩人という意識はまったくなく ショートショートというジャンルの小説を書いている という認識だったりする。 ただまあ、はたからみたときに、詩人という肩書きになるなら 詩というジャンルで技術を磨くしかないわけです。 面白ければ何をやっても良いという空間から 純粋に技術を見せる空間に移ろうとしたときに 面白さと技術を分けたいわけです。 詰まらないけど技術的にはすごいという パフォーマンスを見せたいわけです。 さて、詩でテクニックのみを 純粋に見せるにはどうすれば良いのか? 詩にはどんな技法・テクニックがあるのか? ここで、詩のオーソドックスな型・フォーマット・パターン 何でも良いのですが、そういう物を知ろうとするわけです。 短歌や俳句といった定型詩であれば、 技法や型は分かりやすいわけです。 でも、一般にオープンマイクで詠まれる詩は自由詩で 定型詩ではありません。 B−BOY PARKだと http://www.bboypark.com/home.html MCバトルのルールがあったりするわけです。 http://www5.plala.or.jp/badboyz8112t/mcbattle.html フリースタイルつって、 即興で言葉をリズムに乗せて 語り出して、韻を踏んで、一小節に 早口で無理矢理言葉を積め込んだりする技術があるわけです。 KREVA STYLE(クレバスタイル)と言われる http://www.orcaland.gr.jp/~iwata/hiphop/20010809.html 韻の踏み方、ある言葉を連呼し、 そこからまったく関係のない話を始めて、 最後の最後にその連呼した言葉で韻を踏んで締める技術もあるし。 例えば、 「おまえ、オレンジのダサイパーカー着てんな。 ダサイパーカー、ダサイパーカー、 ダサイパーカー、ダサイパーカー。 俺、最近、糖尿で入院しちゃってさぁ、 今こんなところ出ている場合じゃねぇ−んだよ。 退院して家に戻ってきても、 なんか血糖値の上がる物食べちゃいけないらしくて、 家帰っても出る食事が、俺んち、野菜ばっか」 例としては、あまり上手くないけど、要するにこういう形式の 韻踏みをクレバスタイルと呼ぶらしいんだな。 また、ダサイパーカーを連呼したあと、 糖尿で入院しちゃってさぁ、と対戦相手が言った辺りで 相手が何で韻を踏むのか察知して 「出てくる食事は野菜ばっか」と先に言って 相手をつぶす技術とか、 素人が見ても上手いと分かる技術があるわけだ。 普通の人だと、即興で言葉をリズムに乗せること自体が難しいのに 連呼することで伏線張って、一見関係ない話を始めて、 そこからの流れで韻で落す。 よくみると、即興落語をやるテレビ番組の 「落語のご」でやってることと 実はすごく似てるんですねどね。 対戦相手の特徴を一個つかんでそれを連呼する MCバトルと 観客からお題をもらう落語、 連呼している間、もしくはお題をもらっている間に 最後の締めを考える形式。 韻や落ちと関係ないところから話を始めて 最後に、韻やダブルミーニングで落すやり方。 落語やラップでなく、詩で素人にも分かるような 技術を見せるにはどうすれば良いのか? ベンズカフェの司会者みひろさんがやる即興詩は、 観客からお題をもらってそれで落しているという意味で 落語のごに、近いわけです。 客席からお題を一個もらって、そのお題が「ラマダン」とか 扱いにくい題だった場合、 「どういう意味?イスラム教で断食を意味するんだ?」 などとお客さんとしゃべりながら時間を稼いで 「やっぱり分からない。もう一個、別のお題ください」 と言って、別の人に振って、もう一個もらったお題で 話を始めて、最後、「分からない」と言い張ってた ラマダンで落すという時間の稼ぎ方も、 お題を三つもらう落語のごと似ている。 また、新宿スポークンワードスラムが終わった後 みんなでマックに行ったときに、 みひろさんに色々質問したのですが、 その答えやしゃべってる内容が全部、 5音と7音から出来てて、 みひろさんは普段から5音と7音だけで しゃべるんだってのも面白かった。 そういう技術なんかは素人さんがみても 分かりやすいテクニックになるわけです。 が、当時の私には7・5調の詩は浪曲みたいで ダサく感じたし、みひろさんにしたところで ステージでは7・5形式を崩してやってるわけです。 定型ではない自由詩で技術を競おうとしたときに、 どのようなルールで、どのような技法があって どのような方向性があって、 中身や内容がなくてただ技術のみを見せるような詩は どうすれば書けるのか? その疑問をオープンマイクをやってる詩人の人達に あちこちでぶつけたのですが 私が納得できるような答えは返ってきませんでした。 「詩とは自由な物だ」とか 「思ったことをそのまま出せば良いんだよ」 といった小学生向けの答えがほとんどで 活字の詩の世界に深く入り込んでるような人でも 詩の定義すら教えてくれない。 「詩が自由になんでも朗読して良いものなのなら テレビの天気予報は詩の朗読なのか?」 とまで挑発しても、明確な答えは返ってこない。 詩の結社に所属してれば詩だとか、 そんな答えしか返ってこない。 多少面白かったのはアウトノ宮さんが言っていた 「言葉の存在を揺るがすような言葉が詩だ」 という定義で異化作用のことを言っているのでしょうけど その言葉が元々持っていた意味を 揺るがせるような言葉の使い方をするのが詩だというのは 面白かったのですが、それだと詩の形式の話になってなくて このような作用を及ぼす言葉が詩だという話になってます。 私は詩としての効果や作用はまったくないのに 形式上詩になっているし、 技術的にも高度な形式になっているという詩を作りたい。 そういった詩を作るための形式の話をしてるのですが 中々そういう話にはならない。 で、他人に聞くだけじゃなくて、 お前個人にとっての詩の定義をまず示せよ という話になってくる。 周囲に答えを求めるだけじゃなくて まず自分で示せよと。 私にとって自由詩の定義は 「翻訳された物」です。 俳句や短歌じゃない現代詩は 新体詩として、外国の詩の翻訳として入ってきた。 それまで日本で詩といえば漢詩を意味した。 芭蕉は漢詩を俳句に翻案した。 旋頭歌や短歌や長歌は歌であって、詩じゃなかった。 外国語のダブルミーニングや駄じゃれや韻や リズムや抑揚を、どうやって母国語に翻案するのかが 詩のテクニックだろうと。 この翻訳の定義を最大限広げて考えると 薬師丸ひろ子の歌う「セーラー服と機関銃」の 有名なフレーズ 「さよならは別れの言葉じゃなくて 再び会うまでの遠い約束」 (作詞:来生えつこ) という歌詞はギリギリ詩だろうとなるわけです。 つまり、「さよなら」という日本語を 「Good−by」と訳すのか 「See you agein」と訳すのか 迷う翻訳者の視点を描いているという意味で ギリギリ翻訳だろうと。 ところが、この定義では形式はあるけど中身がない詩を 書くことが難しい。 この自分内定義に納得してないから、 周囲に無理難題言って定義論をやるわけですが。 2イベント情報 10/29(水) 「OPEN DJ BAR」 場所:東京都杉並区荻窪5-16-15井上ビル3F 荻窪boxinglee's cafe 開場19時  内容:オープンDJ 料金1000円(1ドリンクつき) http://www007.upp.so-net.ne.jp/boxinglee/ 11/1(土) 「EFRICOGI」 場所:東京都杉並区荻窪5-16-15井上ビル3F 荻窪boxinglee's cafe 開場18:30 開演19:00 内容:オープンマイク 料金 1500円(1ドリンクつき) http://www007.upp.so-net.ne.jp/boxinglee/ 11/3(月)文化の日祝日 文学フリマ 場所:青山ブックセンター地下2階 時間11:00〜 内容:著者による自著販売会 http://bungaku.webin.jp/ 11/3(月)文化の日祝日 山田詠美(朗読) 奥泉光(朗読&フルート) 吉野弘志(コントラバス) 時間18:30開場 19:30スタート 場所:杉並区西荻北3−12−10司ビルB1 ジャズバーKonitz(ハートランドの隣) 前売り・予約のみ。当日券無し。 内容:朗読ライブ 値段:5000円(1ドリンク付) 11/8(土) 美学校ナイト 時間:19:00〜21:30 場所:東京都千代田区神田神保町2−20第二富士ビル3F 内容:朗読ライブ&オープンマイク 料金1000円(1ドリンク付き) http://www.zyx-web.com/bigakko/ 11/8(土)   「一語一会 朗読発表会」 場所:アトリエだるま座 開演14:00〜   17:00〜 料金 1000円  http://wwwfoulitip.net/ 11/22(土) 3K7 出演:カワグチタケシ、究極Q太郎、小森岳史(ゲスト有) 開演:18:00 料金:カンパ制 会場:trade mark kyoto(京都市中京区蛸薬師新町西入る不動町180)  問:075-213-5969(trade mark kyoto)  http://www.trade-mark.jp/ 11/23(日) 3K7.1 出演:カワグチタケシ、究極Q太郎、小森岳史(ゲスト有) 開演:15:00 料金:カンパ制 会場:さらさ西陣(京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1 離楽庵WOOD-INN)  問:075-432-5075(さらさ西陣) http://za-ha.hp.infoseek.co.jp/sarasa_map.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□