■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第5号 ’99/12/20発行 会社員時代にもらった金で、100冊も同人誌を作ってしまった私が、 書籍コードの無い本を抱え、この本を扱ってもらえる書店をめぐる日々の日誌。 このメルマガは私の抱える同人誌の在庫がなくなるまで続きます。 現在の在庫状況 文体演練法74−5冊 寓話集58冊 最悪な気分68冊 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ まぐまぐさんに登録完了したら、前号まで読者数1とか2だったのが 233人レベルまで膨らんでて、さすがまぐまぐ!と感動の嵐。 この場を借りてまぐまぐさんありがとう。 そして読者登録してくださった皆さん。はじめまして。 今後ともよろしくお願い致します。 どういう方がこのメルマガを読んでくださっているのかが よく分らないので、取りあえずいまの自分の立ち位置の確認 ぐらいから入りたいのですが。 まずここでは半年で文体演練法の在庫を 0に出来るかという賭けを行なっております。 「以上0号参考」 0号が出たのが9月29日ですので3月29日までに 在庫が0に成るかどうか、メールで予想を送ってください。 当たった方の中から5名様に文体演練法をプレゼントです。 【未来が無いのは分ってる】 いま、自分のやってることがいかに無意味で 空虚なことかってのは、自分で良く分ってるつもりなんですね。 「同人誌を作ってます」と言った時に いまコミケなんかで流行ってる同人漫画 人気のゲーム・アニメ・芸能人のキャラクターを描いて 脱がしてしまう奴を皆さん期待されるので、 自分が書いた奴を渡すと 「ガッカリされます」 次に、ファジンと言われる同人雑誌から、商業雑誌として 成功していった例を見ると ロッキンオン・ぴあ・よい子の歌謡曲で 1商品カタログとしての要素を持ったもの 2有名人・芸能人の名前&写真を列挙出来る紙面作り ってのが成功してますね 商業誌で華々しくスタートし休刊に追いこまれた 失敗例として浮かぶのが 宝島30・ウォンバット・ETC コラム誌や文芸誌と言った 読者層が見えないのとか実用性が無いのが 失敗例には多いですね 華やかな芸能人が記事に登場しないのも特徴です で、私の作った同人誌ってのは 明らかに失敗例に属します。 さらに細かいことを言うと 成功してる同人誌(例えば試行とか)ってのは 三千部から三千五百部は刷ってるんですよ。 これは印刷屋さんに聞いた話ですが 輪転機を回す時インクを版になじませるため ニ千部ぐらいは無駄に刷って、 それから商品用のを刷るから 輪転機で刷るなら最低限三千から三千五百部は 刷らなきゃ意味が無いってことなのですね。 その場合、三千冊つくって印刷&製本料百万円 1冊の製造原価三百円ほど 私がやってるのは百部ほどの同人誌を コピー機みたいなのでコピーしてる もしくは職員室のガリ版でガチャガチャ してる印刷屋さんにお願いして百部で十万円 1冊の製造原価千円ほど。 コミケで売られる同人誌の作られ方としては わりと普通なのですが 始めから黒字を出すことよりも いかに赤字を少なくするかを考えたやり方ですね。 これで仮に百部さばけたとして何になるかって言うと なんにも成らないんですよ。 郵送料や小売り店さんの取り分やを考えると 黒字に成り様が無いし、百部ばかしさばけたところで 最低発行部数=ノルマが三千部の 出版業界から注目を浴びることも絶対にない。 【文学ジャンルとしての失敗】 いま私がやってるのは(例:寓話集) 1)400字詰め原稿用紙10枚のショートショートで、 2)キャラクターを立てずに 3)不条理文学 という、後で考えて見れば商品に成り様の無いもので 原稿用紙10枚と言うのは星新一が好きだという以外に 学校教育で読まされる小説の長さを考えた時に これより長い物は読めない読者が多いだろうと 自分を基準に考えて決めたのですが 重厚長大でないってのはヘビーユーザーには受けないですね。 2)のキャラを立てないってのも星新一先生の影響ですが これは書き手としては著作権を放棄してるに等しい行為で 例えば原作者が亡くなってもサザエさんやドラエモンの アニメはゴーストライター=お抱え作家さん達によって 続いて行くわけで、 原作が尽きても新作はいくらでも生まれるわけです。 サザエやカツオを生んだ長谷川町子先生の著作権は 消えないわけです。 ところが、私がキャラを立てずに 彼・あいつ・キミ・私を登場人物に小説を書いて あり得ないことですが 登場人物だけ代えてストーリーを アニメのサザエさんで使われたとして 私は著作権の侵害だと文句を言えないわけです。 何故ならストーリーには著作権は発生せず キャラクターに著作権は発生するからです。 3)の不条理物ってのはカフカやベケットや吉田戦車 高橋源一郎などの影響ですが そーゆー類のものが現代的で新しいと 当時は思えたんですね。 四コマ漫画の歴史を見ても 長谷川町子・いしいひさいち・吉田戦車と 時代が新しくなるに連れて オチのコマの位置が上がってきてるんですね。 四コマ目で落ちてたサザエさんが 「伝染るんです」では一コマ目から落ちている。 私としても始めっからオチに持っていった方が スピードがあって良いじゃないかと思ったんですよ。 ところがいくつか書いていくうちに 始めに異常な状態があって最後に元の普通の状態に戻る 例えば「ニルスの不思議な冒険」とか 「ガリバー旅行記」とか ってのは実はすごくオーソドックスなパターンじゃないかと 最後にどんでん返しがある星新一型の方が新しいのでは ないかと思い始めたわけで。 あと、不条理文学のシェアの狭さとかですね。 巨大なコカコーラのビンから顔だけ出してる人が居る。 ビンに入れられたまま成長したため肩幅がビンの口より 大きくなってしまい出ることは出来ない。 頭をビンの中に引っ込めようとしても やっぱりつっかえて出来ない。 ビンは丈夫なので割って外に出ることもできない。 その頭だけビンから出してる人は 他人に頼らなければ自分で飯を食うことさえ出来ない。 誰かがその人の口までご飯を運んであげないといけない。 ビン男が場所を移動する時も、誰かに頼んでかついで もらわなければ移動出来ない。 なのにそのビン男は何故か非常に横柄で 威張っていて命令口調で周囲を怒鳴り散らす。 まあ、こういうのが不条理文学で。 一見あり得ない事だらけの話でありながら 現実に存在している職場での上司と部下との関係とか 官僚機構の問題の比喩として成り立っている。 そうした時に、「何の比喩かは分らないけど なんとなくこういう事って存在するよね」 「意味は分からないけど面白いよね」 ってぐらいの距離を作りたいのですが 実際のところ「意味が分らん」と 「分りすぎてつまんない」 の二者択一な答えしか返ってこなかったりですね まあ、もし来週のサザエさんに 巨大なコカコーラのビンから 顔出してる人が出てきたら、 笑ってやって下さい。 売れない要素が自分で分ってるなら 変えれば良いワケですが なかなかどうして、それぞれの要素に愛着があって 捨てきれない。 【でも、やらずにいられない】 文学の世界にも 音楽で言えばアルケミーレコードのようなものがあっても 良いんじゃないかと 商業ベースになり得ないことを やり続けて行く場所があっても良いんじゃないかと 昔のハードコアパンクやインダストリアルミュージック なんてシーンも商業レベルで成功しないことが分ってて それでもやらずにいれない人がいっぱい居たから 成り立ってたわけで。 美術で言うとメールアートとか、 失敗に向って努力する、 自己満足のための努力ってのもやらずにいれないなら やってしまえという場所に居ます。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/ 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□