■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第52号 2003/5/12発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1)シンジュク スポークン ワーズ チャンピオンシップ大会 4/4に開かれたチャンピオンシップ大会の映像です。 rtsp://rs3.music.co.jp/free/studio/inko/ssws.rm 少し、説明を入れると、新宿のMARZというライブハウスで 毎月第1・第3金曜日の25時から、つまりは土曜の朝1時からですが ラッパーと詩人が16名集まって持ち時間5分対5分のトーナメントを戦い 優勝者と準優勝者は次のチャンピオンシップ大会に出れる。 チャンピオンシップ大会は3ヶ月に1回開かれ チャンピオンシップ大会のあった月は、 その大会のみで、第3金曜日の大会はお休みになる。 チャンピオンシップ大会の優勝者は賞金10万円をもらえる。 年に一度、その年のチャンピオンを決める グランドチャンピオンシップ大会を開き そのときには、過去4回分のチャンピオンシップ大会の 優勝者と準優勝者、計8名でトーナメントを行い、 優勝者には賞金30万円が渡される。 で、その第1回チャンピオンシップ大会に私も出場しました。 1回目出て2回戦落ちで、2回目は観に行けず、3回目に準優勝で、 4回目も観ていたので、どんな人と対戦するというのは やる前からある程度は想像ついた訳です。 1回目 優勝 メテオさん 準優勝 服部剛さん 2回目 優勝 名乗る名もないさん 準優勝 小林大吾さん 3回目 優勝 タカツキさん 準優勝 木棚環樹 4回目 優勝 ロイさん 準優勝 水島陸さん で、四回とも優勝はラッパーで、 しかもサムライトゥループスという 同じグループの人達。 優勝すると優勝パフォーマンスがステージで成されるのですが ステージに上がる面子は常にサムライトゥループス。 私としてはどうやってこの人達に勝つかということを 必死に考えた訳です。 各人の芸風を説明すると メテオさんは、オケのないところでも、 常にアカペラで即興ラップをやってる人です。 言葉でリズムを刻んで自己紹介をしている。 名乗る名もないさんは、攻撃的で男性的なラップをかます人で 有名ラッパーで言うとキングギドラに近い。 タカツキさんはウッドベースを弾きながら詩を朗読する人で ラップもされますし、メテオさんのバックで ボイスパーカッションもされてますが、関西弁を駆使して 憂歌団のような歌を歌われることが多いです。 ロイさんは、バックトラックのリズムと ほぼ無関係にしゃべってるだけだったのですが 「今日、昼の12時に起きていいともを観てたら、 昔の彼女からメールがきて『会わない?』って入ってんだけど いま俺には彼女がいて、でも、正直言って、昔の彼女の方が 俺はいまでも全然好きで・・」 という言葉をリズムに乗せない韻も踏まない日記風ラップで 笑いを散々とって勢いで第4回大会を制した方です。 詩人の服部さんは、ほのぼのした語り口で牧歌的な空気が売りの 森本レオ系詩人で、湘南FMで詩のラジオ番組を持たれてたり HPでもラジオをされていたりします。 http://www.ourplanet-tv.org/MAIN/poet/poet.htm 小林大吾(こばやし だいご)さんはカッコイイ詩を詠まれる という以外は、この地点では情報なしで。 陸さんは、国文学を学ぶ女子大生で 短歌の連作を主として詠まれてました。 陸さんの古風なキャラクターは MARZの男性ラッパーに多くのファンがいます。 私は「俺はからっぽのピーマンだから、 ナイフを刺しても痛くないのさ」 という詩を詠んで、ナイフで腹を切って 脇腹からケチャップにまみれた、 生肉入りコンドームで作った腸を出した人です。 で、よりによって私は、第3回大会の決勝で ステージ上からメテオさんに 「即興で勝負する」と口走ってしまった訳です。 即興はメテオさんの一番の得意ジャンルです。 何も考えずに思いついたことを口にしても ちゃんとリズムに乗るような状態に自分を持っていかないと ラップの即興なんて出来ません。 メテオさんのすごいところは、 即興で言葉をリズムに乗せて韻を踏むだけじゃなく さらに韻を踏みながら面白いことを言って笑いを取り、 さらにラップの技術について 様々なコメントをするところにあるのです。 「今バックに流れているのは アブストラクトと言われるジャンルの曲で 言葉を乗せやすい」とか 「フリースタイルとは即興のことだから、 アメリカのバトルで持ちネタをやるとブーイングが来るらしい」 とかです。 私はメテオさんのラップのリズムでやるラップ批評に 可能性を感じました。 ドラゴンアッシュのKJが何故偉いかといえば それまでも日本にラッパーはいたし、 「DA・YO・NE」や「今夜はブギーバック」のような ヒット曲もあったが、ラップの批評を音楽誌でやって 様々なラップ用語を定着させたのはKJが日本で最初だろうと。 そういう意味で、メテオさんがラップのリズムでやるラップ批評は まだ日本に定着してない様々なラップの技法を 紹介する方法としてはかなり強いのではないかと思ったわけです。 そこで私も、詩の批評を詩でやろうと思ったのですが 思った瞬間、いや、そんな知識ねぇーな俺、 だいたい、いまだに詩ってよく分からないしと思って、 でも、即興をやる以上は、自分の中にある一定のリズムを 作り出さなきゃいけない。でも、ラッパーの人がやってることと 同じことやっても勝てるわけがない。 「ラッパーの人があまり手を出してない変則的なリズムで 即興をやりたいんだけど何か良いアイデアない?」 とタカツキさんに聞いたら 「ワルツをやりなよ」とあっさり言われ ワルツって3拍子だぜ?!出来る訳ねぇーじゃん。 他人事だと思って簡単に言うなよ!と思って 普通の音楽は4分の4のエイトビート、 アカペラでやる場合、 言葉は打楽器だからハイハットのパートになるため 1小節に8音入る。でもボーカルパートだから 息継ぎのための休符が必要になる。 変則的な休符じゃリズムを共有しにくいから 定期的に休符を入れると1小節が7音+1休符になる。 これがワルツの場合は、4分の3拍子で8分音符が6個入って 5音+1休符・・ということは、 5・7・5・7・7という短歌の音数は ワルツ・エイトビート・ワルツ・エイトビート・エイトビート という形式なのか? なわけねぇーだろ! という批評的なネタをラップでやるとか 色々考えたわけです。どうすれば勝てるのかを。 特に、バックトラックなしで詠むことを前提にしている私の場合 言葉でリズムを刻まないと詩に見えないし、 一瞬でも詰まると取り返しが付かない空気が漂います。 バックトラックがあると、多少詰まってもどうにかなるし しゃべってるだけでもそれとなく詩に見えたりする場合もあります。 が、アカペラ勝負の私の場合、言葉は打楽器、言葉はハイハット。 詰まる訳にはいかないのです。 色んなオープンマイクイベントに行って 他の詩人の朗読を聴いて、良いリズムの詩に会うとひたすら 音数を数えたりしました。 そこで分かったのは詩人でリズムのある詩を読む人はたいてい 7音と5音で出来ている詩を詠むんですね。 でも個人的には7・5調はありふれてるし、 ダサイのでやりたくない。 じゃあどうすれば良いのか? 普通の新聞記事をラップ風に詠む練習などもして その場で思いついたことをそのまま口にしても 詩として成立するような練習もしました。 やってみて分かったのは、字余りは、 上のワルツ・エイトビート理論で行くと 休符の入ってないハイハットなので 割りと自然なんです。 すると、5音・6音・7音・8音は ラップ風に詠めばそれなりに処理できる。 10音や11音は5音+5音、5音+6音で処理できる。 ラップというのは多少不自然なところで言葉を区切っても 許されたりする。 問題は9音の文字が出てきた時で、5音+4音。 この4音が処理できない。 しょうがないので言葉にスタッカートを入れて 無理矢理7音や8音に音数を増やして 韻文じゃない文章も韻文風に詠むことは 何とかできるようになりました。 5音・7音以外の音数で詩を詠むにはどうすれば良いのか? 私が知ってる範囲で言うと、青木研治さんとみひろさんは リズムに乗った朗読をしながら、 音数が5音7音に限定されてない数少ない詩人です。 青木さんの場合何故それが出来るのかと言うと ハイハットじゃなくてリードギター風に言葉を使っている。 ポイントポイントで歌っちゃってるんですね。 一音が8分音符だけじゃなく、4分や2分でも使われている。 例えば、言葉の最初にアクセントを持ってきて、最初の音を伸ばすと 青木研治風の朗読になる。 「このTシャツはネ」と言わずに 「こーーの、Tシャツはさぁ〜」と入ると、それっぽい。 逆にみひろさんの場合は、休符の部分に2分休符・全休符が入る。 音を出してない時のリズムキープ、これがみひろさんの持ち味。 メテオさんの朗読は、 ハイハットと言うよりもは、ギターのリフに近い。 5音や7音のいかにも中世の韻文という感じが嫌な場合は 11音や15音にすると、近代的な散文ぽい、 けれども耳障りの良い音数になる。 11音+1休符=12音、15音+1休符=16音。 2小節に1回休符を入れるパターンだ。 同じやり方で休符を3小節に1回にすることも出来る。 そういうことを色々考えてたら大会のプレッシャーで ノイローゼー気味になってきました。 四大会とも優勝者がラッパーなのは 優勝すると優勝パフォーマンスを ステージで即興でやらなきゃいけないのですが 詩人で即興パフォーマンスを出来る人が 決勝まで行かなかったからだと考えました。 優勝したいと思ったら即興をやらなきゃいけない。 即興ということを考えたときに、 自分が普段考えていることをしゃべったのでは 即興である意味がないと思うんです。 自宅で紙に書いて持ってきたのか その場で考えたのか周囲の人には分からない。 その場にあるもの、 その場にいる人を詩にしてこその即興だろうと。 で、客いじりというものもかなり考えたのですが 過渡期ナイトに行って分かったことは、 ステージから面白いお客さんを見つけていじっても 他の客席からはそのお客が見えないということです。 だったら、その客をステージに上げるトークを考えるか 既にステージに上がっている他の出場者や司会者、 主催者をいじるという選択になる。 出場者をいじるとき、ディスる(こき下ろす)のか 褒めるのか?笑いを取りに行くならディスだけど 自分の好感度を取りに行くならヨイショ芸だろと。 この大会の主催者、さいとういんこさん周辺の人達の 主な収入源をみてると広告代理店関係の人達で、 商品をほめ、メーカーをほめ、消費者をほめるのが 主な仕事で、そっち関係に深く食い込みたいなら 目指せ糸井重里!あらゆる物をほめちぎってやるぜ! なんですね。 また、第二回詩のボクシング全国大会準優勝のうみほたるさんは、 他の詩人を褒める方で勝ち残ってきた人だし、 でもそれは女の子がピュアにやるからきれいに見えるだけで、 俺がいかにも打算的にやると醜く見えるだろうし、 でもあらかじめ、自分のキャラを決めて、 けなすか、ほめるか、どっちかでネタを組んでいって 本番に使えるフレーズのパーツぐらいは作っとかないと。 そう思って作ったフレーズが手元にあふれだした頃、 パーツは集まったけど、 これどう組み合わせても詩にならないなと 悩み出したりして、 かなりナイーブになっていた時、 詩の批評空間「インアウト」というWeb雑誌に この大会の主催者であるさいとういんこさんの インタビューが載ってて http://po-m.com/inout/inco01.htm 「なぜもっと自分の感情を言葉にしないんだろう。」 というフレーズを読んで 勝ち負けにこだわらず、やりたいようにやろう 自分を出していこうと、吹っ切れました。 やりたいようにやろう! 元々私はスターリンというロックバンドが好きで そのバンドは、客と殴り合いをしたり、 女性客にステージでフェラさせたり 客席に豚の贓物を投げ込んだり、 そういうことをして話題を呼んだのですが よし、俺もステージで人殴るぞ! ステージでSEXするぞ! と思ったは良いけど、実際にやると色々問題ある訳ですよ。 法的な問題もあるし、主催者サイドに責任が行くかもしれない。 そうしたときに、どこまでならやっても大丈夫なのか? 客を殴っちゃまずくても、 客席にロケット花火を打ち込むぐらいなら良いのか? とか、SEXはまずくても、フルチンならOKなのか?とか 色々考えた落し所が、 ズボンのチャックを下ろして、 塩化ビニールでできたリアルなマネキンの 生足を出すというパフォーマンスだったのです。 結果は一回戦落ちだったわけですが 当日3台のカメラが回る中で、 絵作りに走れたのはそれなりの満足であったりもしつつ。 2)詩の朗読イベント情報 第3回「詩のボクシング」全国大会 7月12日(土)13:00 会場:イイノホール。 東京都千代田区内幸町2−1−1飯野ビル7階   TEL:03‐3506‐3251 http://www.iino.co.jp/hall/map.html 定期イベント Ben's Cafe http://www.benscafe.com/ja/poetry_j.html 毎月第三日曜日にオープンマイクイベントがあります。 朗読希望者の受付17:30〜 リーディング18:30〜21:00 参加費:無料 奇聞屋 http://www.kibunya.jp/ にて毎月第三水曜日 OPEN18:00/LIVE 19:30に オープンマイクの朗読イベントがあります。 参加料:無料 場所:杉並区西荻南 3−8−8 B1 TEL:03‐3332‐7724 JR中央線西荻窪駅南口 徒歩1分 BeGood Cafe http://begoodcafe.com/tetra/openmic.html 日曜日(不定期)にオープンマイクイベントあり。 NPOの活動、自然食品や平和活動等の情報も多い。 boxinglee's cafe http://www07.u-page.so-net.ne.jp/sf6/boxlee/freesong.htm 毎月第1土曜日にオープンマイクイベントがあります。 (1月、5月のみ第2土曜日) 開場18:00 開始19:00 参加料:\1500+1オーダー 場所:〒167−0051東京都杉並区荻窪5‐16‐15井上ビル3F TEL&FAX 03‐3220‐0267 毎月第3土曜日 Happy?Hippie! というオープンマイクイベントがあります 開場17:30 開演18:00〜 場所:岡山県岡山市丸の内1−1−15禁酒会館 TEL:090−4577−6028 料金500円(1ドリンク付き) ペアチケット800円 オープンマイクエントリー料300円 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□