■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第49号 2003/4/30発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1詩のボクシング東京大会 4/29観に行きました。 詳しくは公式HPに http://www.jrba.net/ 載ってると思いますが、 一応、状況を書くと 1回戦 玲はる名(れいはるな)選手●VS田中邦宣(たなかくにのぶ)選手○ 青木研治(あおきけんじ)選手●VSみどいし選手○ 滝沢ゆき子選手○VS武力也(ぶりきや)選手● 川村龍俊(かわむらたつとし)選手●VS賀沢祐介(かざわゆうすけ)選手○ 高橋“くりかえし“泰三(たかはしくりかえしたいぞう)選手●VS 宗前庸子(そうまえようこ)選手○ ものいこまち選手●VS本田まさゆき(ほんだまさゆき)選手○ 松永天馬(まつながてんま)選手○VS森山寛子(もりやまひろこ)選手● 露果(つゆか)選手○VS伊丹(いたみ)ありあ選手● 敗者復活戦 武力也選手○VS賀沢祐介選手● (結果、武力也選手が賀沢選手の枠に入って復活) 第二回戦 田中邦宣選手●VSみどいし選手○ 滝沢ゆき子選手○VS武力也選手● 宗前庸子選手●VS本田まさゆき選手○ 松永天馬選手○VS露果選手● 準決勝 みどいし選手○VS滝沢ゆき子選手● 本田まさゆき選手○VS松永天馬選手● 決勝 みどいし選手●VS本田まさゆき選手○ 優勝 本田まさゆき選手 ジャッジ 作家:清水志穂 http://nuance.cc/heart/rhetoric/author/0019.html 児童文学作家:三津麻子 (Ex第31回児童文芸新人賞受賞作 福音書刊「どえらいでぇ!ミヤちゃん」) 日本経済新聞記者:松岡弘城 JRBA専属リングアナウンサー: パブロ・サンチェス・松本 JRBA専属レフリー: 藪下秀樹 http://www.h4.dion.ne.jp/~lodelode/book0149.htm JRBA代表: 楠かつのり http://www.asahi-net.or.jp/~DM1K-KSNK/ (敬称略) 場所は科学技術館サイエンスホールで イスが横18列×縦23列の414席が9割5分埋まってました。 400人ほどの人が生で観た計算になります。 試合中も客席の照明はそれほど落ちず、 明るい中での朗読で 客席は他の朗読会と比べるとファミリー層が多い印象でした。 幼児や小学生中学生を伴っての親子連れが多い。 これが勝ち負けの采配にも微妙に影響しているような気がします。 詩の朗読は、音楽や文学や演劇や落語や漫談といった 隣接するジャンルの技術やパフォーマーや客層を取り入れて 大きくなっている気がするのですが 今回は演劇的な技術が多く観られた気がします。 動きやファッションに演劇性があったというよりも イントネーションのつけ方が小劇場系の演劇に近い気がしました。 演劇の歴史を大雑把にみたときに 歌舞伎→新劇→アングラ→小劇場 という流れで 歌舞伎というのは、善玉がいて、悪玉がいて、というのが メイクや衣装ではっきり分かるようになってます。 このメイク、この衣装は正義の味方の主人公、このメイクは悪者。 ストーリーも演技も型が決まっていて、 声の発声も日常生活では絶対にしないような 大げさで感情的なイントネーションがつきます。 これは欧米の中世のシェークスピア劇なども 似たような物で、ヒーローがいてヒロインがいて 悪の親玉(ダークヒーロー)がいてという 型と大げさな身振り手振りで、 片ひざを地面につき、両腕を大きく広げて 「おお、神よ!なんじ我にいずくんぞ使命を与えたもうらん」 みたいなノリだったりします。 それに対して新劇というのは TVドラマで言うと「渡る世間は鬼ばかり」みたなもので 瑣末な日常がテーマになり、 「大地が引き裂かれ 天空を切り裂いて 舞い降りるいかずちが!」 みたいなセリフはなくなり、 勧善懲悪ではなくなり 半径3メートル以内にいる程度の「ちょっと嫌な人」や 「ちょっと良い人」が登場人物になります。 セリフの言い方も日常生活そのままの イントネーションで「ラーメンとビール、三卓さん」 とか言います。 アングラ演劇の手法がもう一度、 大げさでドラマチックな中世の歌舞伎に戻っているとすると 小劇場系のイントネーションは アングラと新劇の中間にあるような気がします。 新劇が日常を描き、アングラが神と悪魔の戦争といった 極限状況や非日常的な祝祭空間を描いたとすれば、 小劇場は思春期の子供達が抱える誰にも言えない個人的な悩みや 個人的な幻想を描いていると言えます。 空想の世界に入り浸っている人達の空想の世界であったり 何で人の言うことを聞かなきゃいけないんだろうとか 何でこんなしんどいマネしてまで 生きていかなきゃいけないんだろうとか いっそどっか遠くに行けたら良いのにとか そういう世界です。 アングラのような非日常を演出するような発声は求められないし かといって、日常の再現であるような発声でもない。 誰にも言えないし、誰にも言わないような心情を 吐露するときに使う発声。普段は一人ベッドの上で 悩んでうじうじしているときに聞いている黙考・黙読の声。 この黙考しているときの声の再現である小劇場系の発声が 多かったように感じます。 日常生活で使っていても不自然じゃない範囲の 最もきれいで抑揚のついたイントネーション。 ベンズカフェで言うと司会のみひろさんが そっち系の発声なのですが、小劇場系の長台詞のイントネーションを もう少しちゃんと聞いて分析したいなと思いました。 今回の出場者で小劇場系のきれいな発声だなと感じたのは 賀沢祐介さんと宗前庸子さんでした。 もう一つ思ったのは、抑揚やイントネーションを極力抑えた 一番地味なタイプの朗読。これも意外に魅力的だなと思いました。 スプラッシュワーズのカワグチタケシさんや今回出場された 川村龍俊さん高橋くりかえし泰三さんとかが そっち系だったのですが、 感情入れない・抑揚付けない・イントネーションも抑えるという 詠み方は、意味を伝えるという部分では非常に有効です。 明治維新の頃、元々江戸にいた幕府の連中を追い出して 九州はじめ色んな地方から人が集まって政府を作ったんだけれども なまりが強すぎて言葉が上手く通じなかった。 だからまぁ、標準語というのを無理矢理作って、 無理矢理その言語で統一しようとしたわけだ。 政府がNHKラジオ・テレビ・学校教育を 使って国策的にやってきたことだ。 結果、アイヌ語や琉球語を消してしまったり 方言には有るはずの抑揚やアクセントが 標準語では皆無で、しゃべってるだけで音楽的に聞こえる 諸外国語と比べると詰まらない言語に見えてしまったり というマイナス面はありつつ、 一言語で日本中どこでも言葉や文字が通じるという 経済的には便利な面もある。 NHK的な朗読も悪くないなと思ったのは 標準語でイントネーションを付けようとしたときに 付加疑問文を多用する手法があって 英語でいう“It is a pen,isn’t it?”の”isn’t it?”なのだが 日本語で「でしょ?」「だよね?」「・・じゃない?」 「じゃん?」「・・じゃありません?」と 語尾が上がる。標準語で自然なイントネーションがあるのが 付加疑問文ぐらいしかなくて、文章の意味上必要だからでなく リズムやイントネーション的に必要だから付加疑問を多用する 書き方が今回の出場者ですと、みどいしさん。 小説家だと新井素子さん。Ben‘sCafeだと、 体言止めの付加疑問文の多用でリズムを取られていて 「誰もいない教室? の前でたたずんでいる僕と 廊下に響き渡る体育館からの音。 バスケットボール? の、 ドリブルの音が僕の心臓にこだまする」 みたいな感じの詩でいわゆる語尾上げ若者言葉 なのですが リズムを取るための付加疑問の多用は 言葉の意味が言葉のリズムによって拘束されている状態なわけで 広い意味での定型詩であると言える。 言葉の意味をリズムから開放しようというのが 近代自由律の過激さ・暴力性であったとすれば あえて抑揚のないところへ行って 言葉の意味のみで勝負しちゃうのもありかなと いうのもありました。 自分が詠むことを前提にした場合、 抑揚やイントネーションの豊かな詠み方は 狭い音域で歌を歌っているようなところがあって 音程=抑揚を外しちゃったときの恥を考えれば まずは抑揚を抑えて一定の声質で最後まで読めるような 練習をした方が良いのかなぁと。 森本レオさんみたいに抑揚つけた読み方も 出来ればかっこいいんだろうけど、 まずはこっちの練習かなぁと。 東京のポエトリーシーンって Ben‘sや MARZ(ここの主催者は 上野ポエトリカンジャムの主催者でもあった) 中心に動いているのかなぁと思ったら 詩ボクのボランティアでやってる運営委員の人達と話すと みんな奇聞屋の話するんだよね。 今回優勝された本田まさゆきさんも奇聞屋出身らしくて なるほどなぁという感じがしました。 Ben‘sやMARZの場合、観に来ている人達は 学生かフリーターか独身の若い会社員が多くて 割りととがった感じの俺はアーチストだぜ! って感じだとすると、 奇聞屋はファミリー層や主婦層が多くて それは今回の会場の客席と比較的似た構成なんですね。 お笑いで言うところの 2丁目劇場と花月の劇場の差と言いますか とんがった学生さんだけじゃなく お年寄りから子供までに受け入れられるような内容に 持っていけた人が勝ったという気ました。 一例挙げると、敗者復活戦は 一回戦が終わって、一回戦落ちした詩人の中から 客席の挙手で一番多く支持された人に 復活のチャンスを与える物なのですが 武力也さんという60歳の方が選ばれました。 親子連れが集まると擬似的にお茶の間になるので 上座である舞台に60歳の武力也さんが立って 高度成長以前ののどかな日本の話をすると すわりが良いんですよ。 人生経験豊富な年長者の話を聞こうという 空気が流れる。 青木研治さんなんかはTV出ててライブやってて 知名度あって固定票も有りそうだけど 客席の人気投票で意外に多くもなく少なくもなくだった。 一回戦でやった青木さんの詩は 「古着屋でかっこいいGジャンをみつけて でも財布の中身を見ると無駄遣いに属するもので でも結局カードローンで買って、 嬉しくてGジャン着て、 ローンのための仕事もバリバリ頑張って働いて で、払い終わった頃にはまた新しいGジャンが欲しくなってて 試しにそのGジャンを試着して鏡の前になってみたら 都庁みたいだった」 という詩でした。Gジャン買って嬉しいというシーンでは Gジャン着てはしゃいで、割りとアットホームで そのGジャンのために頑張って働く場面も 会場のお母さんの心を思いっきりつかんでいる訳です。 自分のためのご褒美にちょっと贅沢なものを買う 贅沢な物を身につける。そのために頑張って仕事をする。 これは女の人がすごく好きなストーリーです。 ここで終わってれば世のお母さん大拍手なんです。 最後に「都庁みたいだな」というセリフで終わった時 それまでアットホームでファミリー向けだったものに 水浴びせて冷たーくなってるんです。 Ben’sでは「一生懸命頑張った自分のためのご褒美」 なんてのは「カード会社のCMかい!」というツッコミ入るけど ファミリー層の場合、 目に見える給料や数字として評価されることのない 家事や育児に頑張ってる人達がいて そこに対して冷や水浴びせるまねは しちゃいけなかったんだよね、きっと。 音楽的にも絵的にも良いパフォーマンスだったと思うのですが 客層を読み間違えたなぁ、同じファミリーでも 日曜朝のサンデープロジェクトなら受けたかもしれないけど という感じでした。 その逆にいっけんブラックな内容を 最後にアットフォームなところへ持っていって 上手く家族向きの内容にしていたのが 優勝された本田まさゆきさんで 母親に対する愛情や 妹に対する愛情を近親相姦チックに描いて かなりきわどい笑いを取るんですよ。 ある意味、一番とんがってますし、一番ダークです。 ファミリー向けのネタじゃないんです。 でも最後は、「僕の家はこんなに家族仲良く 楽しく暮らしています」という 暖かいフォローを入れて終わるんです。 それまで散々ダークな笑いを取っていたのに 最後の最後にアットフォームなフォローを入れて ちびまるこちゃんのような空気で終わる。 金八先生のラスト15分のような終わり方ですね。 中学生の女の子の妊娠や校内暴力といった 性と暴力という過激な部分を扱いながら ラスト15分ほのぼのしたシーンを入れてしまえば あいだが過激でもファミリーで観れる番組になってしまうという エンターテーメントのマジックですね。 飲み会で、その場に居ないAさんの揚げ足取りを散々やって 笑いを取っても、最後の最後に、 「でもAさんって良い人だよね。おれ、あの人好きだよ」 と言ってしまえば万事OK、角が立たないみたいな技術ですね。 2詩の朗読イベント情報 第3回「詩のボクシング」全国大会 7月12日(土)13:00 会場:イイノホール。 東京都千代田区内幸町2−1−1飯野ビル7階   TEL:03‐3506‐3251 http://www.iino.co.jp/hall/map.html 定期イベント Ben's Cafe http://www.benscafe.com/ja/poetry_j.html 毎月第三日曜日にオープンマイクイベントがあります。 朗読希望者の受付17:30〜 リーディング18:30〜21:00 参加費:無料 奇聞屋 http://www.kibunya.jp/ にて今月第四水曜日 OPEN18:00/LIVE 19:30に オープンマイクの朗読イベントがあります。 参加料:無料 場所:杉並区西荻南 3−8−8 B1 TEL:03‐3332‐7724 JR中央線西荻窪駅南口 徒歩1分 BeGood Cafe http://begoodcafe.com/tetra/openmic.html 日曜日(不定期)にオープンマイクイベントあり。 NPOの活動、自然食品や平和活動等の情報も多い。 boxinglee's cafe http://www07.u-page.so-net.ne.jp/sf6/boxlee/freesong.htm 毎月第1土曜日にオープンマイクイベントがあります。 (1月、5月のみ第2土曜日) 開場18:00 開始19:00 参加料:\500+1オーダー(\500〜) 場所:〒167−0051東京都杉並区荻窪5‐16‐15井上ビル3F п彦AX 03‐3220‐0267 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□