■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第47号 2003/4/12発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1文学フリマ http://www.bungaku.net/furima/marketindex.htm 文学のフリーマーケット、文学オンリーコミケという奴が、 2002年の11月3日に東京の青山ブックセンターで行われた。 有名人も素人も、自分の作った本を持ちよって著者自ら 消費者に接して本を売ろうというイベントだ。 出店団体が88、来場者数1000人というイベントで、 文学オンリーとしては最大規模のイベントだったと思う。 私もインターネット創作作家協会 http://www.i-sakka-kyoukai.com/ の渡邊利道さん http://www.ix.sakura.ne.jp/~wtnbt/ に誘われて、 「Books Ever Die」という団体名で出たのわけです。 わけあって、渡邊さんは途中から抜けて私だけの参加になったのですが 竹森千珂/たけもり ちか http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/int5.htm さんにインタビューを取ってファジンを作ったり 客として来て下さった渡邊さん夫妻と食事に行かせて頂いたり 個人的に色々あったのですが それはそれとして。 2文学フリマの主催者 文学フリマの主催者は、大塚英志さんと市川真人さんで、 大塚さんは東浩紀さんと「新現実」という新雑誌を出し 市川真人さんは早稲田文学 http://www.bungaku.net/wasebun/wasebun.html という日本最大の文学同人誌の編集部の現場リーダーなのですが それとは別に鎌田哲哉さんと「重力」 http://www.juryoku.org という新雑誌を出された頃でした。 文学フリマは「不良債権としての『文学」」 http://www.bungaku.net/furima/fremafryou.htm という 大塚英志さんの書いたアジテーションから始まっていて そのアジテーションは笙野頼子さんと大塚さんの論争から 生まれてきている。 現地点で私は笙野頼子さん側の論文を読んでいないので 勉強不足ではあるのだけれども 書かせて頂くと、 「不良債権としての『文学』」という文章の中に 重力という雑誌に関するコメントが出てきます。 「『経済的自立』の手段を模索している」 というコメントです。 重力・新現実という二つの雑誌は 文学の経済的自立の手段を模索しているという点で 共通の問題意識を持っていると言えます。 また、共通のテーマを持ちながらも出した答えは 重力と新現実では対照的に異なっています。 重力の第一巻である重力01では、 編集長が鎌田哲哉さんで、 重力の理念や思想を担当している方です。 そして、DTP等の実務担当が市川真人さんで、 早稲田文学での編集経験・技術を 他のメンバーの方々に伝えるようなポジションにいる方です。 そして、新現実の二枚看板が大塚英志さんと東浩紀さん。 東さんは重力に参加するように誘われたが 断ったところを、大塚さんが東さんに対談集を出しませんかと 持ちかけて、上手くダマしダマししながら 重力と似たような場所に 東さんを引きずり出したという形になってます。 重力=鎌田・市川 新現実=大塚・東 文学フリマ=大塚・市川 (敬称略) という流れを見ると、文学フリマというものが 重力と新現実の合同イベントというように見えるわけです。 そして、文学フリマの会場で、午後2時半ごろ、 鎌田哲哉氏と大塚英志氏の公開討論が始まります。 討論の内容的には、「文学フリマに参加したくない」という 鎌田氏を大塚氏がいかにして引きずり出して参加させたかという 内容に終始するわけですが、 その大塚氏の手腕は、重力に参加したくないという東氏を 結果として重力と似た場所に引きずり出した手腕を連想させて 面白かったです。 個人的なことをいうと2002年11月3日に開かれた 文学フリマに先立つこと2年 novel-MLという場所で2000年11月4日に http://www.egroups.co.jp/message/novel-club/153 文学フリマを開催したいと言ったにも関わらず出来なかった 自分の力量と実際に文学フリマを開催するところまで持って行った 大塚さんとの力量の差を見せつけられる形になったわけです。 文学業界に居ない素人の私が自分を 業界に長く居る大塚さんと比べるのも 変かも知れませんが、同人誌を売るというイベントを やりたいという気持ちは 商業誌で活躍している人よりも 一般アマチュアの方が強いと思いますし 日本語で書かれたWeb小説の検索エンジンとしては 日本最大規模を長く誇ってきた老舗検索エンジン 「HONナビ」のMLでかつ、 参加メンバーが当時90名ほど居たMLです。 「オフ会やろうよ」「同人誌の交換会やろうよ」という声は 上記の私の発言よりずっと前から様々なメンバーから出ていたのです。 にも関わらず、私にはそれを実現させるだけの力がなかった。 インディーズという言葉が好きな私は 「大塚さん=商業誌」に対する強い敗北感に 打ちのめされたりもするわけです。 普段は俺なんか、「文芸誌なんて死んでるじゃん」 「文学雑誌なんか売れてないジャン」 「純文雑誌なんて読んでる奴いるの?」 ぐらいのこと言ってるのですが、 このときばかりはね。 俺が90名ほどの人が読んでるMLで 「文学フリマやろうよ」と言っても何も動かないものが 売れてないと言いながらも何万部刷っていたりする 純文学雑誌(群像)上で、 ネームバリューのある人が 「文学フリマやります」と書けば これだけのイベントが出来るわけだ。 俺なんか、MLやメルマガで色々書いても 最大で100名ほどしか読まないわけじゃん? 同人誌専門印刷所で100部やそこらの本を作って 同人誌屋さんで売ってもらって、 身内にファイス・トゥ・フェイス ハンド・イン・ハンドで配っても 月に何万部もばら撒く商業誌には勝てないんだよと 泣きそうになる自分がいましたね。 文学フリマという物が 二つの新雑誌、重力と新現実の合同イベントだとして 表向きのテーマが文学の経済的自立だとすれば 裏のテーマは批評空間でしょう。 批評空間という雑誌は柄谷行人・浅田彰という 批評界の2大スターが中心になってた雑誌で 東浩紀というスターを発掘し、 重力に載った鎌田哲哉さんの論文 「「ドストエフスキー・ノート」の諸問題(続)」は 批評空間に載った論文の続きですし、 重力に参加している7名の同人の中でも 大杉重男さんは批評空間の座談会の常連ですし 西部忠さんの扱っている地域通貨のテーマも 柄谷行人さんと二人三脚で来たところがある。 批評空間が一度解体することで生まれた新雑誌が 重力と新現実であったと個人的には思っていたわけです。 柄谷さんがアメリカに行ってしまって、 批評空間から抜けてしまったと 浅田さんも個人で充分本を出して行けるだけの 力も名前もあるとなったときに 残された批評空間絡みのメンバーが 自分たちの力だけでどうやって批評空間のようなものを 作っていくのかが裏テーマだと個人的には思っていた。 実際、重力01の座談会を見ると 柄谷・浅田というスター抜きでいかにして 批評空間を作るのかという話題が出てきている。 批評空間が好きだったし、 批評空間みたいな物を期待した私としては 表紙にイラストが入って 裏表紙にデジキャラットというアニメキャラクターの 広告が入った新現実は、かなり期待ハズレで 中身を見ても東さんと大塚さんの対談は入っているものの フルカラーの漫画や白黒の漫画、イラストレーターのイラストに エッセーだの小説だのが入った作りは何をやりたいのかが よく分かりませんでした。 批評空間は海外の思想や哲学や美術評論や 批評理論を輸入する文科系総合学術誌のような物だったのですが 新現実は、思想界のスターを招いて、漫画雑誌を作っている。 漫画雑誌なら漫画雑誌で良いのだけれども、 漫画雑誌としては、 細かい文字・活字が多く文芸誌のような小説も載れば 論壇誌のような論調もあっていまいち良く分からなかった。 というのが正直なところだ。 それに対して、重力は、表紙やデザインが 批評空間にそっくりで出てる面子も 批評空間とかなりかぶっている。 期待通りの雑誌が出たという意味で 嬉しかった。 文学フリマの主催者の一人、 市川真人さんが編集長をされている早稲田文学がらみで 「早稲田大学 現代文学会『早大文学』増刊for文学フリマ リブレリ」という雑誌が文学フリマで売られていました。 早稲田大学現代文学会 http://www.geocities.com/Tokyo/7830/ が出しているリブレリという雑誌の記事で 「対談『重力』と『新現実』をめぐって」 という記事があり、 早稲田の学生は私とは逆の感想を 二つの雑誌に対して持っているということが分かった。 リブレリの対談で言われているのは、 1二つの雑誌は共に経済的自立を目指しているが 新現実に比べて重力は何ヶ月もHPの更新がない。 2これは重力側の実務能力・事務能力の低さを示している。 3大塚さんは「新現実」を出すためにアニメの広告まで取って、 採算が合うように努力している。 なのに、重力には広告が一つも入ってない。 4新現実は大塚さんが仲が悪いといわれる角川を だまくらかして、角川ムックから出している。 重力にはそういう老獪さがない。 という話で、1〜4すべてが、重力はダメで 新現実はすごいという話なんですね。 これを読んで私はショックを受けたというか 私の周りにも、重力は「本が売れない」とか「出版不況だ」とか 暗い話ばかりでダメだと、 それに比べて新現実は明るくて良いねという人が 居たりしたのです。 その話聞いて思ったのは、重力と新現実は 手袋の裏表、右手袋と左手袋みたいな物じゃないかと。 重力は座談会以外に、第三期批評空間の編集長をはじめ 同人誌・商業誌での執筆・編集経験豊富な小説家の古井由吉さんや 編集者・文芸批評家として同人誌や商業誌での活動経験豊富な すがさんなど、同人・小出版文芸誌経験豊富な方々に インタビューを取り、同人活動を始めるにあたっての 様々なアドバイスを仰いでいました。 私はそのインタビューや座談会で話された出版業界の内部暴露は 面白いと思いましたし、いっけん上手く機能しているかに見える 市場や資本が内部的にはボロボロであるという話に 大喜びしていたりするのです。 でもそれは、手品師の手品を舞台裏から撮影して 手品の種明かしをしているに過ぎないと 言ってしまえば、そうも言えるわけです。 対する、新現実は こんなのやろうと思えば誰でも出来るんだよと言い放ち 仲の悪い角川をだまくらかして本を出させ 東さんには「対談本を出しましょう」と持ちかけて 相手がOKを出してから企画を摩り替えて雑誌形態にしてしまい、 文学フリマへの参加を渋った鎌田氏は 何故、文学フリマに参加しないのかを 公の場で説明すべきだと言って 文学フリマの会場に来させて公開討論ショーまで開くという 大塚氏の露悪的・・というよりもはむしろ 偽悪的なパフォーマンスは 重力の人達が模索している様々な手品の種を使って 客席に向けて手品をすればこんなことができるのですよ という実例として出されている。 大塚英志さんは角川との契約に関しても あえて自ら、「だまくらかす」という単語を使って 偽悪的なポーズを取るし、 東さんをパートナーに選んだ理由を聞かれても 東さんに多くの固定客が付いているからと答えて 私の文章の質や内容を見て選んだのではないのかと 東さんを怒らせたというゴシップがあったり、 雑誌に広告を入れることに関しても 偽悪的なポーズをすごく強調されるんですね。 自分は誰とケンカしてるとか 誰と仲が悪いとかそういうことをあえて口にして 場を盛り上げる大塚さんのパフォーマンスが 最初私には理解できなかった。 大塚さんが自ら偽悪的に振舞う時の 悪がどの正義、どの基準に対してのアンチテーゼなのかが 見えなかったのが、重力を見ると腑に落ちたんですね。 重力は座談会で広告は入れないと言ってるし 国や教育機関からの補助金をもらうことの是非も論じている。 対する新現実は背表紙アニメの広告を入れている。 重力は柄谷・浅田といったスターのネームバリューを使わずに 無名の人達が集まって無名のままで どうやって雑誌を売るのかという話をしている。 対する新現実は東浩紀というスターの ネームバリューとマーケットを最大限利用している。 また、大塚さんのパフォーマンスは客席に向けて されているので、客席から見えないところには 色々種も仕掛けもあって 新現実の部数は過去に大塚さんが出した批評の部数を基準に それと同数刷られており、 (東さんというバリューがあるにも関わらず) それはやっぱり、大塚さんのバリューや実績があって出来ることで 大塚さんが言うような「誰にでも出来る」 ではないことを示している。 少なくとも実績も名前もない私には出来ない。 種を隠したショーと 種も仕掛けも全部さらしたドキュメンタリーの どっちが面白いのかという話ですが どちらも対になって価値を発揮するというのが 実感です。 2詩の朗読イベント情報 4/12Jazz Spot 映画館 1.場所 文京区白山5―33―19 2.最寄り駅 都営三田線白山駅 3.TEL 03-3811-8932 でポエム王子司会のオープンマイクイベントが 14:00からあります。 参加料:300円+ドリンクオーダー http://www.jazzsoda.com/cafe/eiga.htm 4/17「全心ストリッパー on DJ」 boxinglee’s cofe http://www07.u-page.so-net.ne.jp/sf6/boxlee/index.htm にて 青木研治+DJのライブ DJ: RYOTA, RED, SODOM 開演19:00 終了24:00 チケット1500円(1ドリンク付き) 4/29祝日午後六時〜第二回詩のボクシング東京大会が 科学技術館/サイエンスホールにてあります。 入場料二千円。 第3回「詩のボクシング」全国大会 7月12日(土)13:00 会場:イイノホール。 東京都千代田区内幸町2−1−1飯野ビル7階   TEL:03‐3506‐3251 http://www.iino.co.jp/hall/map.html 定期イベント Ben's Cafe http://www.benscafe.com/ja/poetry_j.html 毎月第三日曜日にオープンマイクイベントがあります。 朗読希望者の受付17:30〜 リーディング18:30〜21:00 参加費:無料 奇聞屋 http://www.kibunya.jp/ にて今月第四水曜日 OPEN18:00/LIVE 19:30に オープンマイクの朗読イベントがあります。 参加料:無料 場所:杉並区西荻南 3−8−8 B1 TEL:03‐3332‐7724 JR中央線西荻窪駅南口 徒歩1分 BeGood Cafe http://begoodcafe.com/tetra/openmic.html 日曜日(不定期)にオープンマイクイベントあり。 NPOの活動、自然食品や平和活動等の情報も多い。 boxinglee's cafe http://www07.u-page.so-net.ne.jp/sf6/boxlee/freesong.htm 毎月第1土曜日にオープンマイクイベントがあります。 (1月、5月のみ第2土曜日) 開場18:00 開始19:00 参加料:\500+1オーダー(\500〜) 場所:〒167−0051東京都杉並区荻窪5‐16‐15井上ビル3F п彦AX 03‐3220‐0267 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□