■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第46号 2003/3/19発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1)3K5 ハートランドで3K5というイベントを見せてもらって いままで観たオープンマイクのイベントとは かなり趣が異なっていて上手く言語化できないような ショックがあったのですが いままでのオープンマイクは、一人の持ち時間が3分から5分と 決まっており、大勢の人がエントリーして、 出場者=観客という物がほとんどでした。 今回のはオープンマイクではなく3人の詩人による朗読ショー だったので、3人で2・3時間朗読をされていたわけです。 もちろん、間に15分休憩やフリートークタイムも入りますが カワグチタケシさんと小森岳史さんに関しては 一人で20分ほどの長丁場の朗読をされてました。 これがちょっと、新鮮だったというか どう言葉にしていいのかよく分からなかったのですが。 3人のKが付く詩人が集まって3Kと いうイベントをされているのですが そのうちの究極Q太郎さんの詩は、 分かりやすい詩だったんですね。 フォークギターも弾ける、歌い上げることも リズムを刻んでラップっぽく歌うことも出来る。 詩というよりも短い標語・アフォリズムのようなものが多くて 機知・ウィットに富んでいて、反骨精神や無常感がある。 「イギリスに旅行で行った時、 観光旅行客が大勢訪れるイギリス貴族の宮殿の前に 乞食が寝転んでいるんだ。 でも、誰もみんな文句言わない。 みんな彼を起こさないように そこを避けて遠回りして宮殿に入る。 素晴らしいことじゃないか!宮殿の前に乞食!」 こういう話が多い。短いのだと 昔のツービートの 「赤信号、みんなで渡れば 怖くない」 みたいなのが多い。会場に笑いが起きるし 素人にも分かりやすい。 私がそれまでオープンマイクイベントで観ていた 詩というのはそういうのが多かった。 笑いがあり、リズムがあり、抑揚があり そして短く、機知に富んでる。 カワグチタケシさんや小森岳史さんの詩は 定型ではなく、形式は完全に散文で 読み方も普通の朗読で、歌うことも リズムに乗せることも、 声質を変えて一人二役することもない。 でも、上手いんだよ。 これ、後で、古井由吉さんの朗読会も含めて いくつか似た形式の朗読を聞いた上で言うんだけど ただ朗読しているだけなのに 確かにこの二人の詩人は上手いんだ。 どう上手いのかという話をすると長くなるんだけど。 カラオケスナックで、 俺なんかが歌うたっても他のお客さんは しらっとして反応がない。 まあ、当たり前といえば当たり前だけど。 ところが間奏の時に 「いらっしゃいませ いらっしゃいませ 本日、**(スナック名)におきまして・・」 などと言い出すと、見ず知らずのお客さんが ビクッと反応してこっち向くんだ。 自分に関係のあるアナウンスをされると思ったんだろうな。 自分と関係のないことを歌ってる時は 上手かろうが下手だろうが反応しないのが 関係のある話になると一瞬みんなこっち向くんだよ。 仕事仲間とカラオケ行ってBoφwyの ドリーミングを歌う時に 「ボルトナットの仕組みで/組み込まれる街で /爆弾にはなれないWoo」 のボルトナットを、上司の名前にするだけで 次なに歌うかページめくってたみんなが 一斉にこっち向くんだ。 シャ乱Qが学園祭を30本回って 学園祭キングになろうとしたとき 高校とか中学のイベントにも呼ばれるわけで そのとき、イベントよりも2・3時間早く会場に着いて つんくは学校の情報を集めたと言うんだ。 どの学校にも学校全体に名前が知れ渡ってる 有名な名物教師や名物生徒が居る。 学校一こわい生活指導の先生とか 学校一人気のある女子生徒や男子生徒、 その情報を仕入れといて、ライブの時に 「**先生というこわい先生いるらしいやん?」 と言うと、会場がドッカンドッカン受ける。 その先生をステージにあげて、 「いつもこんな竹刀持ち歩いたはるんですか?」 とか 「悪いことした生徒にはどんなことするんですか?」 とか聞くと、ものすごく受ける。 シングルベッドを歌う時に 「シングルベッドで夢とお前抱いていた頃」 という歌詞の「おまえ」を人気のある女生徒の名前に変えて 歌ったら、ドカドカ受ける。 詩の朗読も同じで、 聞いてる人と関係ない話をしても受けないわけで 関係ある話をしなきゃいけない。 カワグチさんの詩の場合、「日記」「手紙」という タイトルの詩を詠まれた。 カワグチさんがある女性と出会って 恋をして、すれ違うようになって、別れるまでを 手紙や交換日記形式でみせるのだが 詠まれているのは カワグチさんが書いた手紙・日記のみで 彼女からの返信はよまれない。 聞き手はひたすら、 女性を口説くカワグチさんの言葉に耳を傾ける。 日々の生活の中ですれ違いが多くなって 疎遠になっていく彼女を 繋ぎ止めようと機嫌を取ったり、ごまかしたり おだてたり、なだめたりするカワグチさんの言葉が そのまま、聴衆の心をおだてたり、なだめたり、 機嫌を取ったりする言葉になっている。 詩の中でカワグチさんは相手の女性の怒りや哀しみを なだめて癒そうとする。 聴衆はそのまま、詩の中の女性になりきって 癒されてゆく。 これは、手紙や交換日記が二人称だから出来るという 人称の問題が大きいと思う。 聞き手に年長の女性(30代半ばから後半)が多かったり、 ハートランドの照明を落として、 赤茶けた裸電球と 真っ暗な中で黒光りする木製の柱や梁に囲まれて 山小屋かどこかで語られているような情緒と結びついて 独特の雰囲気がありました。 2叙景詩=抒情詩 よく言われることですが和歌というのは 花鳥風月を歌うものです。 花とか草木とかの描写をするのが和歌で 私はあなたが好きですなどという感情を歌っては いけないのが和歌のルールで、 かつ同時に恋について歌わなくてはならない というのも和歌のルールです。 表面的には花や木に対する 情景描写でしかないけれども、 前後の文脈を考えた時に どう考えても相手に対する恋心を 告白しているとしかとらえられないような そういう詩が和歌なわけです。 例えば、ある女の子が 「私の周りの男はみんなAさんはかわいい Aさんはかわいいって、 Aさんばっかりほめて嫌になっちゃう。」 てなことを言ったとして その場にいた男性が この窓の向こうに立派な松の木が見える。 皆その立派な枝振りに感心するけれども その松の根元に咲く小さな花には気が付かない。 でも、その小さな花に気がついた人にとっては 松なんかよりもよっぽど美しく見えてしまう。 みたいな詩を詠む人がいたとしましょう。 詩だけを見れば、自然を歌った情景詩ですが 読まれたシチュエーションを見れば あきらかに抒情詩でしょと。 なぐさめてるのかナンパしてるのかは別にして 女の子を口説いているわけジャンみたいなね。 この手のダブルミーニングが 和歌の重要な技法であったとすると。 ニューミュージックの歌詞なんかも そういうところがあって 情景描写を積み重ねることで ある一定の感情を伝えようとするわけです。 松井五郎系の歌詞って そういうところあるじゃないですか。 言葉で感情を説明するのではなく 言葉で感情を体験させる詞の作り方、 それがカワグチさんや小森さんの詩にもありました。 詩の中でカワグチさんと彼女が 付き合い出して一年ほどで少し関係が ギクシャクし出してきた頃 砂浜に打ち上げられた プラスチックのチップの話をするんですね。 ゴミとして川や海に捨てられたプラスチック製品が 長い間海を漂って 赤や青のきれいなプラスチックの破片になって 砂浜に打ち上げられる。 砂や水で削られて小さく丸くなったプラスチックの描写を 丁寧にするのですが、 きれいな色をしていて、 何年にも渡って波に削られることで角が取れて 丸く小さくなっている。 そのきれいなプラスチックというのが 相手の女性、もしくは自分達を示していて 長い年月の中で角が取れて丸くなって行くというのは いまはケンカばかりしているけど、長い年月の中で もっと上手くやって行けるようになるよという ニュアンスを残しながら、 小さくなったプラスチックが そのまま波にさらわれて砂浜の中に消えてゆきそうな バッドエンドへの伏線にも感じられたりもするという 両方のニュアンスを出してるんですね。 どっちにも取れることで どっちなんだという興味を聞き手に持たせながら 関心を次に引っ張ってゆく、緊張を持続させて行く。 元々、私はこういったジャンルの詩は 嫌いだし認めてないんです。 定型でもない、詠む時にリズムに乗せるでも 抑揚をつけるでも、メロディーに乗せるでもない。 詩のボクシングの予選会場でも 意味を取らずに抑揚とリズムだけを 聞きにきてたような人間なので 言葉の意味が分からなければ最後まで伝わらないような詩は 嫌いなのですが、 もっと言うと、定型でもないし リズムも抑揚もないものを散文ではなく 詩だと言い切る根拠はどこにあるのだと、常々思っているのですが 今回に関して言うと、あきらかに和歌の技法が入っている。 情景描写でありながらそれが同時に感情の描写にもなっている。 かつ、ニューミュージックという私個人は好きではないが 商業的には一番歓迎されそうな音楽の詞の形式にもなっている。 化粧品のCMソング用のニューミュージックなら 化粧品をほめ、恋愛を賛美し、消費者をほめ、 化粧品の購買層をほめるようなことを 露骨にではなく遠回しにやるのが 技術だったりするわけじゃないですか。 好き嫌いは別にして、 描写の積み重ねで物を伝えていくというのが 詩の一番の王道のような気がしたんですね。 こっちがホンモンやよなぁと。 オープンマイクで、一人持ち時間数分で 勝ち負けを司会者が決めるような形式の場合 究極Q太郎さんのような、機知に富んだフレーズで 笑いを取って場を盛り上げるようなタイプの人が多いけど カワグチさんや小森さんのような方向の方が 本物やろと思いつつ、 素人さんやライトユーザーには この方向性は分かりにくいやろうな 究極さんの方が分かりやすいよなぁと思ったり。 また、面白いと思ったのは、2・3秒で詠めて その場で反応が返ってくる究極Q太郎さんの詩は 20分〜40分という長い散文詩を詠むカワグチさんはじめ 散文系の詩人の人達に受けがよくって、 散文詩の前後によく詠まれていたりします。 このへんも住み分けなんでしょうか。 ちなみにカワグチさんはフィクショネス http://www.sigma-planning.com/ficciones/ という本屋で定期的に ワークショップを開かれて、 詩の朗読の先生のようなこと(本人談)をされてます。 それから、カワグチさんと小森さんは ハートランドさんが出している詩の朗読のイベント情報誌 POETRY CALENDAR TOKYO http://pct_web.tripod.com/ の編集委員をされています。 また、カワグチさんは SPLASH WORDS http://members.jcom.home.ne.jp/splashwords/ という詩のインディーズ出版社から さいとういんこさんなどと一緒に本を出されています。 3詩の朗読イベント情報 3/21 新宿スポークン・ワード・スラム 第一次予選トーナメント 開場24:00開演25:00 場所:東京都新宿区歌舞伎町2―45―1第一トキワビル地下一階MARZ TEL:03―3202―8248 料金2000円(2ドリンク付) 3/22インディーズ落語家の 死紺亭さん主催で「過渡期ナイト」というイベントが ボストン高田馬場店4階であります。 開始18:00〜 料金:500円 場所:東京都新宿区高田馬場1―27―8 TEL:090―8452―7952 3/29「ひなたぼっこ」にて 武力也(ぶりきや)さん参加の詩のイベントがあります。 オープンマイクで、一人三分ほどであれば飛び入り参加可。 コミュニティカフェ−ひなたぼっこ 場所:千葉県船橋市本町4‐31‐23 石国ビル1F 交通 = JR総武線船橋駅南口より徒歩10分 http://homepage2.nifty.com/swampland/chiba/hinatamap.gif 4/17「全心ストリッパー on DJ」 boxinglee's cofe http://www07.u-page.so-net.ne.jp/sf6/boxlee/index.htm にて 青木研治+DJのライブ DJ: RYOTA, RED, SODOM 開演19:00 終了24:00 チケット1500円(1ドリンク付き) 4/29祝日午後六時〜第二回詩のボクシング東京大会が 科学技術館/サイエンスホールにてあります。 入場料二千円。 第3回「詩のボクシング」全国大会 7月12日(土)13:00 会場:イイノホール。 東京都千代田区内幸町2−1−1飯野ビル7階   TEL:03‐3506‐3251 http://www.iino.co.jp/hall/map.html 定期イベント Ben's Cafe http://www.benscafe.com/ja/poetry_j.html 毎月第三日曜日にオープンマイクイベントがあります。 朗読希望者の受付17:30〜 リーディング18:30〜21:00 参加費:無料 奇聞屋 http://www.kibunya.jp/ にて今月第四水曜日 OPEN18:00/LIVE 19:30に オープンマイクの朗読イベントがあります。 参加料:無料 場所:杉並区西荻南 3−8−8 B1 TEL:03‐3332‐7724 JR中央線西荻窪駅南口 徒歩1分 BeGood Cafe http://begoodcafe.com/tetra/openmic.html 日曜日(不定期)にオープンマイクイベントあり。 NPOの活動、自然食品や平和活動等の情報も多い。 boxinglee's cafe http://www07.u-page.so-net.ne.jp/sf6/boxlee/freesong.htm 毎月第1土曜日にオープンマイクイベントがあります。 (1月、5月のみ第2土曜日) 開場18:00 開始19:00 参加料:\1500+1オーダー 場所:〒167−0051東京都杉並区荻窪5‐16‐15井上ビル3F TEL&FAX 03‐3220‐0267 毎月第3土曜日 Happy?Hippie! というオープンマイクイベントがあります 開場17:30 開演18:00〜 場所:岡山県岡山市丸の内1−1−15禁酒会館 TEL:090−4577−6028 料金500円(1ドリンク付き) ペアチケット800円 オープンマイクエントリー料300円 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□