■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第35号 2003/1/13発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1詩のボクシングのキャラクター 私の席の後に居たポエム王子が 良い詩を書くのではなく、自分のキャラに合った詩を書くことが 詩のボクシングでは大事なのだと 熱弁を振るわれていた。 そのポエム王子は、どうみても三枚目系の顔で 出目でタラコ唇で常に口が半開き 欽どんに出ていたおっくんみたいな顔、 もしくは探偵ナイトスクープの桂小枝さんみたいな顔なのですが 俺がこの顔で二枚目の恋愛詩を詠んでもダメなのだ と言われていたんですね。 このポエム王子は研究熱心な人で 他の出演者が朗読中も、出演者の名前と詩の印象 ○×△◎を付けられてて、 今年は切れ系の人がどうのとか、 色々、寸評をされてました。 このキャラクターに関しては色んな人が 色んなことを言われていて、 人前で朗読することを前提にすると 詩その物よりも、どんな人がどんな風に詠むかが より問われるという当たり前のことが 起きてくるわけで。 キャラですごかったのは ろうあ学校の先生の視点から 手話混じりの生徒との交流をテーマにした詩を 手話混じりで朗読されていた方がいました。 目が見えない・耳が聞こえないという 障害をテーマにしたTVドラマが最近多かったですが それと圧倒的に違ったのが、 ろうあの生徒がしゃべるんです。 TVドラマの場合、 耳が聞こえない人は手話で静かにしゃべりますが 詩のボクシングのその人が演じる生徒は 「う〜〜〜」とか「あ〜〜〜」とか唸り声を上げる そこがまずリアルで、次にろうあの生徒が しゃべれるつもりでしゃべるんだけれども 発音が不明瞭で聞き取れない。 「こういうことを言ってるのか?」 と先生は何度も聞き返すのだけれども 生徒は横に首を振り、 ダメだお前は何も分かってないという顔をする。 生徒にすれば手話よりも声の方が通じると思って 言った言葉が伝わってないと相当がっかりするわけです。 普通の手話ドラマが静かな美しさを生み出しているとすれば その朗読は不機嫌になった生徒が それでも声でコミュニケーションを取ろうと 「う〜〜〜」とか「あ〜〜〜」とかグズる。 その曖昧な発音のやり取りがすごくリアルだったです。 他には、露出の激しい服を着て性的な詩を詠まれた女性も 何人か居ましたし、風邪用のマスクを付けてゴホゴホ されていた方が、詩を詠む番になって 楠さんに「大丈夫?声が出る?」と聞かれ、 首を縦に振って、一言もしゃべらないまま 人差し指と親指で丸をつくってOKのサインを出して 笑いを取られてました。 大丈夫というサインを出してるけど、 声出せてないじゃんというやつですね。 で、詩がスタートすると、 マスクを下げてあごに掛け、 普通に朗読されてまた笑いが起きる。 詩の出だしは 「今日、39度の熱が出た」 本人曰く、実話だそうです。 山男のようなごつい皮ジャンバーを着て 不精ヒゲにボサボサの頭で、 競馬新聞を持って 「逃げ馬、逃げろ」 という詩を朗読された方もキャラが立ってました。 江頭2:50のような、現代詩から やたらかけ離れたキャラの人がいるかと思うと 自分が太っていることをネタにされた みどいしさんの 「さようならラーメンダイエット」 もキャラですし、 女性なのに自分の声がダミ声であることをネタにされた 藤咲すみれさん http://members.jcom.home.ne.jp/cow/index.html の詩も一つのキャラですし、 俺はこんなに二枚目で女の子にモテモテなんだぜという ナルシスト役の一人芝居で笑いを取られていた 賀沢祐介さん(私の記憶が正しければこの人のはず) http://www.asahi-net.or.jp/~DM1K-KSNK/kazawa.htm も、一つのキャラクターでしょう。 休憩時間中に青木研治さんがロビーで 「あの空気だと笑いがないと辛いよね」 と言われていたのですが、出場してみた者の感想としては 何十人が黙ってこっちを見ているという ステージはかなり緊張します。 そしてその緊張感から逃れようとしたら どうしても客席からの笑いが欲しくなる。 出てる側の感覚からすると、詩が云々と言うよりも とんねるず・マギー司郎・イッセイ尾形・小柳トム・ でんでん・象さんのポット・ダウンタウンを生み出した お笑いスター誕生の予選会に出てるような感覚なんですね。 実際、見てても変に面白い人とか結構居て 全国大会決勝のような、現代詩!とか文学! って感じじゃなく、街でみかけた変な人! うちのクラスの変わり者!みたいな感じなんです。 審査員の楠さんが詩のボクシング東京大会予選のことを 「公開オーディション」とわざと間違って言って 「いやいや、詩のボクシングなんだけどね」 と言い直されていたのですが、 ほんとに、TV東京の浅ヤンみたいな感じで 落ちた人も含めて全員のパフォーマンスが 公開されているので、出場者の幅の広さも確認できますし、 審査員の好きな方向性と自分の好きな方向性の違いも 確認できますし、なんかこう気持ち良かったんですね。 詩のボクシングの参加者がのべにして千人を超えたという 話があるのですが、 その千人の中から選ばれた一人や二人というのは 質が高いのと同時に、やっぱり無難でもあるんですよ。 本格的に危ない奴とか本格的にヤバイ人とかは 落される。でも、見てる側からすると そっちの方が面白かったりもするんです。 詩なのに、身振り手振りだけで 「ここが、こうなって、こういう風に こんな感じで」 と、ひたすらボディーランゲージいっしょくの人 なんかも居て、これ詩じゃねぇよなってのも 見てて面白いんですね。 だって、現代詩なんて活字を前提にしてるから 身振り手振り入れて 「ここが、こうなって、こういう風に こんな感じで」 と言われても、詩として成立しようがないんだけど 見てて逆に新鮮だなぁとか、前衛じゃんとか 思うわけです。 高校の頃、インディーズと言われた 自主制作の音楽をしている人達の音楽が好きで その人達の音というのはメジャーシーンでは 規格外で受け入れられなかったんだけど オーディションやコンペでは落されたんだけど でも、自分個人にとっては面白かったわけです。 で、いまでも規格外の物を面白いと思うのが 自分の感性なんだなと再確認できたし、 あんなに面白い規格外品が落ちてんだったら 自分も落ちて良いかなとか、 逆に絶対通せないと思えた危ない人を 通してて、審査員やるじゃんと思ったり オーディション自体を公開することで 見る人全員が審査員になれるし、 審査員を審査する目も生まれる。 アイドルオーディションの公開番組、 スター誕生・夕ニャン・浅ヤン、 これらはオーディションを公開することで アイドル文化をポピュラーな物にしたと同時に 業界内部の情報やシステムを公開することで 業界の権威を剥奪した部分もあるわけです。 オーディションを見た人全員が 審査員(気分に)なれるというのは 見る人の目を肥やすと同時に審査員の権威を 視聴者側に譲り渡しているわけです。 だから、上記三つの番組が 人気アイドルを生み出したと同時に そのすぐ後にアイドル冬の時代をも生み出しているのですが そういう公開オーディション番組、 上記三つにバンドブームを生み出した 「イカ天」も含めて良いですが 公開オーディション系の過激さが 感じられました。 業界の権威の剥奪という意味で言えば 選考過程が公開されないオーディション * *文学新人賞とかですと 選考・審査する側は無条件に偉いわけです。 人前で小説を発表するチャンスや賞金や なんやかんやを与える側ですから 審査される人からすれば無条件に偉い。 これが公開オーディションになると 人前で発表するチャンスは全員に平等に与えられて 後は順位付けだけなんですね。 仮にこの順位付けが、詩のボクシングのように トーナメント方式だと、全国大会の決勝とかいうと どちらもそれなりにクオリティー高いですから 僅差の判定なんですよ。 1対0.9998で、1の勝ちみたいな差で 千分の二票しか変わらなかったりもするわけです。 審査員がどっちを選んでも、 選ばれなかった残り半分を良いと思った客は 審査員の判定よりも、自分の判断の方を選びます。 決勝の一対一の試合でそうだということは 仮に千人の人が応募した公開オーディションだとして 一人しか最終的に優勝しないとして 残り999人を良いと思ったお客さん・観客の方が 絶対に多いわけです。 すると多くのお客さんは審査員の判定よりも 自分の判断を優先させますよね。 これが業界の権威の失墜になると同時に 多くの人の心に人それぞれの マイ・フェイバレット**を残すことが出来て **業界の普及にはつながったりします。 最後に、テレビで流れる全国大会より 生でみた地方予選の方が 荒削りで過激で前衛で面白いことを もう一度強調して終わりたいと思います。 2詩の朗読イベント情報 1/29渋谷アピアで青木研治ライブ 18:30開場。19:00開演。 チケット1300円 2/9 独唱パンク ペンギンハウスにて青木研治ライブ。 4/17boxinglee’s cofeにて 「全心ストリッパー on DJ」青木研治+DJのライブ チケット1500円 3/9(土)18:30新宿「風花」にて 古井由吉、鷺沢萌の朗読イベントがあります。 チケット¥3000(ドリンクつき) TEL:03−3354−7972 3/29「ひなたぼっこ」にて 武力也(ぶりきや)さん参加の詩のイベントがあります。 オープンマイクで、一人三分ほどであれば飛び入り参加可。 コミュニティカフェ〈ひなたぼっこ〉 千葉県船橋市本町4-31-23 石国ビル1F 交通 = JR総武線船橋駅南口より徒歩10分 http://homepage2.nifty.com/swampland/chiba/hinatamap.gif 4/29祝日午後六時〜第二回詩のボクシング東京大会が 科学技術館/サイエンスホールにてあります。 入場料二千円。 第3回「詩のボクシング」全国大会 7月12日(土)13:00 会場:イイノホール。 東京都千代田区内幸町2−1−1 飯野ビル7階  TEL:03-3506-3251 http://www.iino.co.jp/hall/map.html Ben's Cafe http://www.benscafe.com/ja/poetry_j.html 毎月第三日曜日にオープンマイクイベントがあります。 朗読希望者の受付17:30〜 リーディング18:30〜(21:00) 参加費:無料 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□