■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第29号 2003/1/6発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1詩のボクシング 無事会場に着いて、主催者の一人である楠さんによる ルールの説明が始まりました。 まず、開口一番に言われたのが 「稲川方人の詩を読んだことのある人、手を挙げて」 これが反応なし。で 「稲川方人を知っている人、手を挙げて」 これも反応なし 「いいんだよ。これが良いんだよ。何の予備知識もなく詩に接する。 これが良いんだ。」 そう言って、もう一度 「**(おそらく日本の現代詩の人)を知っている人、手を挙げて」 これも反応なし。 「良いんだよ。私はこういう人達にこそ詩に接してもらいたい。」 「では、楠かつのりを知っている人」 これもほとんど反応なく、二・三人が手を挙げた後、 それに続いて、パラパラと五・六人手が挙がる。 私の左隣の特攻服の少年が 「これは分からないとマズイっしょ。」 と手を挙げている。 現代詩の詩人どころかこれから自分達が参加する詩のイベントの 主催者兼審査員の名前すらろくに分からない参加者達。 「そうか、でもこのぐらいは知っていて欲しい。」 そう言うと会場に笑いが起きる。 以前、このメルマガで小説でも国語の教科書に載らないと 過去の名作は売れないという話を書いたのだけれども、 正岡子規とか松尾芭蕉とか国語の教科書に載ってる詩人の名前なら ギリギリみんな分かるんだけど、 現代詩手帳でリアルタイムで活躍している人の名前になると もうみんな分からない。 谷川俊太郎なら分かるってのも、 教科書に載ってる載ってないの力が大きいと思う。 これが現代詩手帳じゃなくて、 純文学の文芸誌でも似たようなものだと思う。 面白いのは、いま現代文学や現代詩なんて誰も読まないし 影響力もないのだから、今の時代の文学史が数十年後 教科書に載るとしたら、漫画の時代として記載されて 手塚治虫や藤子不二雄なんかが文学者として教科書に載るし いまある文学なんてのは五十年後には存在しなかった物として 教科書上では扱われてしまうぜという話がある。 楠さんの話に戻ると 「こんなのは現代詩じゃないとか 詩の形式になってないんじゃないかという批判を 受けることもあるし、詩のボクシングじゃなくて 言葉のボクシングで良いんじゃないかという話をされる人もいる。 でも、活字では詩に見えない物が声の力で詩としての力を持ったり、 普段詩とは関係なしに生きている人が、 こういう機会に詩を意識するようになったり してくれれば良いんじゃないかと私は思う。 ここに居る審査員の残り二人は活字の方の詩の人達なので、 詩の出版社の編集部にいて、 活字の立場に立たれるのだけれども 私は違う。あなた達の味方だ」 てな内容のことを話されるわけです。 要するに、詩のボクシングというイベントは現代詩を普及させる もっと言えば、現代詩の本や雑誌を売る目的で行われているので 現代詩の詩集を買ったことがありません。 現代詩手帳を読んだことありませんという人を 集めてもしょうがないだろと。 言う人も居るんだけれども、 現代詩の詩集を何冊以上買った人しか参加できませんとかにして 敷居を高くするよりも、 現代詩なんて読んだこともないし触れたこともない人に 詩に触れる喜びを伝えて行くことが大事なんじゃないかと。 私はそっちの側ですよ。素人さん大歓迎ですよ。 という話だったんですね。 そうは言っても、残り二人は活字の側の人間だからと 楠さん自身が言われているように やっぱり、現代詩の詩集の在庫を売りさばいてくれるような人が トーナメントで勝ち残って行った方が良いわけです。 SLAMなんてのはアカペラのラップ・ヒップホップだと 思ってもらえれば分かりやすいのですが、 「文字なんて読んだことないけどドラゴンアッシュ大好きです エミネム毎日聴いてます。」 みたいな人も結構参加しているわけです。 そんな人が優勝して、テレビカメラの前で音楽の話されても 現代詩の本は売れないわけです。 CDを売るセールストークをさせるために イベントやカメラを用意したわけではないのです。 外国の現代詩とか短歌や俳句のような 自分達の出版社と無関係な詩の影響下にあるような人を 神輿として担ぐわけにいかないのです。 何のためにスターを育てようとしているのか? 現代詩の本を売るためなのです。 そういう少し汚れた本音を頭の片隅に置いて 見ると、実はこの東京地区予選大会なんかは かなりクリーンな大会だったと思うんですね。 現代詩の流れとはまったく無関係な流れに居る人が 結構残っているんですよ。 SLAM系の人も居れば イッセイ尾形の一人芝居系の人とか 森本レオ系のナレーションや古館伊知朗系の実況生中継 戦争童話集を出版されるたびに沖縄で朗読会をされるという 野坂昭如さんのような戦争体験を朴訥と語る老人の語り系 テレビで見た全国大会には出てなかったような 色んなタイプの方がこの予選を勝ち抜いて 東京地区大会に進出されているんですね。 予選を勝ち抜いたメンバーを見れば 楠さんが言われたこじんまりまとまった現代詩村批判 ってのが本物だなと感じます。 2詩の朗読イベント情報 3/29「ひなたぼっこ」にて 武力也(ぶりきや)さん参加の詩のイベントがあります。 オープンマイクで、一人三分ほどであれば飛び入り参加可。 コミュニティカフェ〈ひなたぼっこ〉 千葉県船橋市本町4-31-23 石国ビル1F 交通 = JR総武線船橋駅南口より徒歩10分 http://homepage2.nifty.com/swampland/chiba/hinatamap.gif 4/29祝日午後六時〜第二回詩のボクシング東京大会が 科学技術館/サイエンスホールにてあります。 入場料二千円。 第3回「詩のボクシング」全国大会 7月12日(土)13:00 会場:イイノホール。 東京都千代田区内幸町2−1−1 飯野ビル7階  TEL:03-3506-3251 http://www.iino.co.jp/hall/map.html Ben's Cafe http://www.benscafe.com/ja/poetry_j.html 毎月第三日曜日にオープンマイクイベントがあります。 朗読希望者の受付17:30〜 リーディング18:30〜(21:00) 参加費:無料 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□