■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第207号       2009/8/14発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1音楽史 100名からなるクラッシックのオーケストラが、 10名前後のジャズのビッグバンドになって、 4人編成のロックバンドになって、 1DJ&1MCのHIP−HOPになる。 という音楽史が、テクノロジーの進化による演奏者の人件費削減の 歴史であると同時に、 クラッシックという音楽ジャンルがバイオリンを中心とした 弦楽器の発達史だとすれば ジャズはトランペットやサックスを中心とした吹奏楽器の発達史であり ロックはエレキギター・エフェクター・PAを中心とした 電子楽器の発達史だ。 クラッシックやジャズやロックという音楽は ある楽器がライブ演奏に耐ええる音量を確保した時に生まれ その楽器の発達が止まり、可能性が汲み尽されたところで終わる。 ☆☆☆ 別のタイプの音楽史を考えよう。 ある音に対し、一オクターブ上、もしくは下の音は その音と似ているため同音に聞こえるという。 その一オクターブを二分割して、5度和音を作ったのが ピタゴラス時代の音楽らしい。 一オクターブを三分割して、4度和音を使ったのが モーツアルト時代の音で、 いまは一オクターブを四分割した、3度和音が使われている。 より音圧を増すために、一オクターブ内の分割を細かくし 一オクターブ内に多くの音を配置する方向で 音楽史は進んできた。 これは、各楽器の調律がより厳密になったから 可能になったとも言える。音程が曖昧なら、 和音の間に空いたスペースが必要だが、 音程が厳密なら狭いスペースにより多くの音を配置できる。    一オクターブを荒く分割      ↑   パワーコード(二分割)      |   サスフォー(三分割)      |   セブンス(四分割)      |   ナインス(五分割)      ↓   一オクターブを細かく分割 2音楽の三要素 音楽には3つの要素がある。 一リズム(強弱) 二和音(音圧) 三メロディ(音程の変化) この三つはお互い対立し、どれかの要素を強めると、別の要素が弱くなる。 強弱を最大限高めると、メロディは途切れ途切れになるし 音圧も安定しない。 和音をいっぱい重ねて、音圧を最大まで高めると、 メロディは和音の中に消え、打楽器のリズムも音圧に消える。 メロディを最大限目立たせるなら、音程の変化は単旋律に成り 和音がなくなり、リズム隊もいらなくなる。 この三つの要素の中間点に分散和音・リフがある。 3ロックバンドは何故四人編成なのか いま、音楽はヘッドフォンやイヤフォンで聞くのが主流だが コンポが主流だった70年代、 長方形型のスピーカーには三つのコーンが付いてあった。 スピーカーは円すい型のコーンから音を出すのだが 高音を出す小さなコーン、中音を出す中ぐらいのコーン、 低音を出す大きなコーンの三つの円すいの底面が スピーカーに設置されていた。 高音のスピーカーから出る音を担当するのがエレキギター。 中音のスピーカーから出る音を担当するのがボーカル。 低音のスピーカーから出る音を担当するのがベース。 各スピーカーに対してリズムを刻むのがドラムで ハイハットが高音、スネアが中音、バスドラが低音を 担当する。 元々、音楽は四部編成が多くて、ギリシャ悲劇の合唱団は 男女混声の四部合唱で、 女性の高音(ソプラノ)、女性の低音(アルト)、 男性の高音(テノール)、男性の低音(バス)の四つのパートからなる。 合唱がバイオリンに取って代わるルネッサンス期でも 弦楽四重奏になり、 ジャズの時代でも、管楽四重奏のカルテットが一定の位置を占める。 100名が、10数名に成り、4人になったという話と 矛盾するようだが、 生演奏で体にBUZZBUZZ響く音圧をかけようとすると クラッシックのバイオリンで100名、 ジャズの金管楽器で10数名、 ロックのギターアンプで4名ぐらいいる計算になる。 よく暴走族系の車やバイクがウーファー積んで 重低音をバンバン響かせて走っているが、 ベースアンプやウーファーで作られた電気的な音圧よりも クラッシックやジャズのアコースティックな音圧の方が 生で聴くと圧力がある。 でも、それを録音して、三千円ぐらいの安いラジカセで再生すると 百名からなるオーケストラの演奏なんかは 曖昧な音しかしない。 安いアンプで再生してきれいに聞けるのは 精々4つぐらいの楽器による演奏で、 百とかいう単位の楽器が一斉に鳴った音をきれいに聞きたいと思ったら 百万円じゃきかないオーディオシステムが必要になる。 4ディレッタント受けする音楽 通常、音楽好きは、テレビで流れている音楽から入って テレビでは流れていないようなマニア向けの音楽を 狭く深く聴くようになっていく。 パターンとしては、テレビにあまり出ないような ライブバンドやインディバンドを追いかけるようなパターンと 邦楽の元ネタ探しから洋楽に行くパターン、 アイドルなどに曲を提供するコンポーザーやプロデューサー、 バックバンドであるスタジオミュージシャンなどの音を あさりはじめるパターンがある。 ある種の中二病にかかると、 テレビで流れているような曲を聞く人たちを馬鹿にして 上記のような音楽を崇拝するようになる。 その場合の行き着く先は、大きく分けてダンスミュージックか ラウンジのどちらかになる。 家庭用のラジカセでは再現できないような重低音を聴いて 踊り明かすために、ロックバンドのライブに行って モッシュをしたり 大音量のクラブやディスコで踊ったりという イス無しの空間でお客さんが踊り明かすジャンルを ダンスミュージックと大きくくくってしまうと。 もう一つのラウンジは、イスに座ってゆっくりくつろぎながら 高級感のある美しいメロディを聴くタイプの音楽で イージーリスニングや映画音楽や クラッシックの室内管弦楽などだ。 音楽のジャンルは、 演奏者目線でリズムの違いから区分される分けられ方、 エイトビート・16ビート・ワルツ・サンバ・マンボなどと 楽器編成の違いで区分される分けられ方、 フォーク・テクノ・弦楽・吹奏楽などがあるが、 ここでは、消費者目線で消費のされ方で 区分してみる。 ラウンジは元々高級ホテルのラウンジで流れる 高級感のある音楽みたいな意味で、 似たような言葉で、カフェミュージックとか エレベーターミュージックとかあって まあ、女性向けのブティックやホテルやカフェが 高級感を出す目的で使う音楽で TUTAYAの店内で流れるJ−popを ウィスパーボイスでカバーしたアルバムとかで、 スタジオミュージシャンの音をあさりだすと 大体ラウンジにたどり着く。 クラブって、一応世間のイメージとしては 最先端のオシャレな空間という事になってるじゃないですか。 でも、俺なんかがそういうイベント行くと、 まあ、オシャレなダンスミュージックやラウンジが かかっていたりするのですが、 「これ、誰のなんていう曲?」とDJに聞くと 「モーニング娘の〜」「松浦亜弥の〜」「おニャン子倶楽部の〜」 という答えが返ってくる。 誰もがダサいと感じるTVで流れている大ヒット曲なんですよ。 でも、クラブでかかると全く聴いたことがないインスト(器楽曲) なんですよ。 テレビのスピーカーだと中音域しか拾わないのが クラブの機材で、イコライザーを使って 中高音の音量を下げて、低音だけを聴かせると 重低音が響くダンスミュージックになって、 中低音の音量を下げて、高音だけを聴かせると シンセキーボードの美しい音色が奏でるラウンジになる。 ディレッタントが、ありがたがって聴く ラウンジやダンスミュージックは、 J−popの高音部や低音部という部品でしかないんだという 皮肉がそこにあって、金掛かっている商業音楽って やっぱり凄いんだなという感慨があったりする。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□