■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第203号       2009/5/7発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 5年表 1877年 蓄音機の発明 1887年 円盤型蓄音機の発明 1902年 複数の場面を持ち、物語性のある初の映画が誕生 1914年?1918年 第一次世界大戦 1920年 ラジオの商業放送はじまる(アメリカ) 1925年 ラジオの商業放送始まる(日本) 1927年 初のトーキー映画公開 1935年 初のカラー映画公開 1939年?1945年 第二次世界大戦 1947年 LPレコード誕生 1953年 2月NHK放送開始    同年 8月日本放送民放初の放送開始 1959年 皇太子殿下御成婚パレードによる白黒テレビの普及 1964年 東京オリンピックによるカラーテレビの普及 http://cozalweb.com/ctv/shiryo/rekishi.html 参照 6政治と音楽 ナベプロがNHKの試験放送時に既に自社のタレントを送り込んでいた。 という辺りから、そうなのですが、国営放送=国とのパイプが 大きな意味を持つわけです。 最近、SMAPの草なぎ剛が酒に酔って公園で全裸になったとして 警察に捕まり、地デジのCMを下ろされるという事件がありました。 CMスポンサーであった総務省のトップ鳩山邦夫総務相が 事件に関して「人として最低」と発言し、 言い過ぎだとして批判が集中したりしました。 芸能事務所が国(官僚・政治家)とつながることのメリットは大きく TV局一つとっても、地上波全国ネットは民放四局、NHK二局で 全体の3分の1が国ですし、地デジのCMのように政府発信のCMで 民放に出ることもあるわけです。 音楽のコンサートをやるにしても、コンサートホールの多くは 厚生年金会館のような公営施設で、 営利目的の私企業の施設を借りる場合の三分の一ぐらいの費用で 借りれるわけです。 それと同時に国とか公共の冠がつくと、品行方正じゃなければいけない。 普通の会社員であれば酒飲んで大声出して誰もいない公園で 全裸になっても、一晩留置所に入って次の日会社に昼出勤すれば 済む話で、首だ何だって話にならない。 ザ・タイガースが当時人気ナンバーワンバンドだったのに 髪が長いという理由でNHKの紅白歌合戦に出れないなんてのも いかにもお役所仕事なわけです。 また、大企業のCMでイメージキャラクターをするにしても 企業に無断で恋愛や結婚や離婚などのスキャンダルを 起こしてはいけないなど清廉潔白なキャラクターが 求められるわけです。 国や公共のイベントや何かと結びつくことは 芸能活動の場を与えられると同時に表現の幅が限定されるわけです。 圧倒的に真面目でスキャンダルがない状態でなければいけない。 この立場で活動する人を仮にアイドルと呼びましょう。 対するロックとは何か。ロックンロールを有名にした映画として 暴力教室と監獄ロックがあります。 暴力教室は工業高校の自動車科で実際に起きた暴力事件を 題材にした映画で、暴力シーンが過激だという理由で 上映禁止になったりしている映画です。 この映画のBGMが「ビル=ヘイリーとヒズ・コメッツ」の ロック・アラウンド・ザ・クロックです。 映画の中における主役・善玉の人がやる音楽が アイドルポップスやミュージカルだとすると 悪役の人がやる音楽がロックです。 ラブシーンで流れる音楽がアイドルポップスだとすると 暴力シーンやアクションシーンで流れるのがロックです。 きれいな建前の発言しか出来ないのがアイドルで 汚れた本音の発言をするのがロックです。 女性週刊誌やテレビのワイドショーで芸能ゴシップが流れます。 基本ゴシップは醜聞で、あの人はこんな良い人だとか、 この人はこんな良いことをしたとかは誰も聞きたくなくて 悪口とかスキャンダルを聞きたいわけですよ。 したときに、醜聞によって人気が落ちるのがアイドルで、 人気が上がるのがロックです。 もし、草なぎ剛が醜聞によって人気が出れば、彼はロックです。 「ロックは死んだ」とジョン・ライドンは言いましたが それ以前にも何度かロックは死んでいるんですね。 有名なのはチャック・ベリーがレイプで捕まった時です。 当時、ロックは悪魔の音楽と呼ばれていて、 プレスリーはロックではなくラブバラードを歌うようになり リトル・リチャードはキリスト教徒として、ロックを捨てて 教会音楽のピアニストになり、 ラ・バンバを歌ったリッチー・ヴァレンスが飛行機事故で亡くなり、 その飛行機事故の理由が 神に背く悪魔の歌(ロック)を歌ったためと言われた時代に チャック・ベリーがレイプで捕まって、音楽活動が出来なくなった。 これによって、一度ロックは死ぬわけです。 チャック・ベリーのレイプ事件が本当にレイプだったのかは 非常にあやしくて、レイプの被害者とされる女性は チャック・ベリーと交際期間があり、公の彼女であったし、 チャック・ベリーの事務所で働き、公私共にする仲であった。 チャック・ベリーは音楽雑誌など公の場で、 彼女(白人女性)とのセックスは最高だと言っていた。 当時、公の場で黒人が白人女性とのセックスについて 赤裸々に語ること自体がタブーであり、 そのタブーを犯すことがロックミュージシャンとしての リップサービスでもあったのだが、多くの良識ある人たちから批判され 結局彼女はそのセックスをレイプとして訴えた。 俺のような黒人男性だって、ロックミュージシャンとして成功すれば 白人女性とのセックスだって出来るんだという チャック・ベリーのサクセス・ストーリーはロックであるがゆえに 世論の反感を買い、結果演奏の機会を奪われることになる。 このとき、一度死んだロックを蘇らせるのがビートルズだ。 ビートルズがロックかというのは非常にあやしいのだが リーゼントに革ジャンでガラの悪い言葉使いをしていたビートルズに スーツを着せて品行方正な態度を取らせ、サウンドはロックのままで 行儀の良いアイドルバンドとして売り出したのが マネージャーのエプスタインで、イギリスの小さなライブハウスでも ステージに押しかける女性ファンを押し返す警備に 地元警察を使っている。 民間のガラの悪い用心棒やバウンサーでなく、 公共の警察と手を組むという辺りに、 エプスタインの立ち位置が表れていると思う。 ビートルズの功績の一つは、公(世論や政府や官僚)によって 一度葬られたロックを公と結びつくことで、 再び世に出したという部分にある。 レーガン時代にレーガン大統領夫人がスーパーで買い物をしていたら 有線でプリンスの曲が流れてきて、その曲の内容が若者達にオナニーを 勧めている内容で、大きなショックを受けた夫人が、 レコードにR指定を設けさせたという話がある。 ラジオやテレビなどの放送事業は、 電波に関する許認可を政府から受けている許認可事業だし コンサート用の会場だって公共機関の管理下にあることが多く ロックミュージシャンがワールドツアーをやろうとすると 各国のビザが必要で、ドラッグの使用歴や逮捕歴がある ミュージシャンにビザを出す出さないはその国の政府の胸先三寸だ。 昔、辻仁成のオールナイトニッポンでロックが禁止された社会を テーマにしたラジオドラマがあったが、 実際それに近いことを、政府が世論の後押しを受けてやった時代もあるし ロックのヘビーユーザーである中学生高校生にとって 学校の昼休みの校内放送でロックをかけることを禁止されたり 軽音楽部でロックを演奏することを禁止されたりというのは 学校単位ではありがちなことだと思う。 ロックに対する最もストレートな抑圧は、ミュージシャンを殺すことだ。 前掲のロックミュージック進化論では、ジョン・レノンが殺されるまで CIAが24時間ジョンを尾行してかなり分厚いファイル(報告書)を 作っていたことが挙げられている。 ジョン・レノンはチャップマンという狂信的なファンに殺されるのだが CIAはチャップマンがジョン・レノンのストーキングをしていることを 知った上で見殺しにしたと渋谷陽一は書いている。 そのチャップマンがジョンを殺す動機もはっきりしないまま 不自然な死を遂げていることを考えると、 CIAがチャップマンを使ってジョンを殺したのではないか と思えなくもない。 ロックミュージックではないが、HIP?HOPにも似た話がある。 「It‘s My Thing 20Years Of Hip Hop」 沼田充司著 シンコーミュージック刊で ラッパーの2パックが銃殺された事件に関してこう書かれている。 P144 「その後聞いた噂では、結局警察と癒着しているギャング・メンバーが、  警察に頼まれて撃ったらしいという話だった。(中略)  確かに警察とも揉めて裁判で勝ったりしていたから、  報復は考えられることだった。」 この本の面白いところはクラッシュの「白い暴動」のジャケットから 本が始まっているところだ。ロックミュージック進化論は ビートルズから始まり、クラッシュのジャケットで終わっていた。 著者の沼田氏は自らのバンド活動の行き詰まりから、 パンクバンドを辞めるところから本を書き始め、 ヒップホップのDJとしての活動を書いている。 1980年前後、この辺りでロックの社会的役割が HIP?HOPやレゲエに取って代わられたのが分かる。 話を戻すと、ある種の公共性(国や政府や官僚)と結びついた アイドルポップスがあったとして、彼らは清廉潔白でなければならない。 それと同時に、テレビのワイドショーやゴシップ雑誌に スキャンダルを提供する悪役も必要で、それを仮にロックと呼ぼう。 ロックミュージシャンはアイドルが口に出来ないような 汚れた現実を体現し、本音を口にする。 パンクのルーツミュージックと言われているMC5は 1968年の民主党大会で「マザー・ファッカー」から始まる 歌を披露し、顰蹙を買っている。 アメリカの二大政党制で、長く与党にいる保守の共和党と 長く野党にいる民主党があったときに、 体制批判の歌を歌うロックは時として民主党と結びつく。 日本だと頭脳警察が労働組合や新左翼団体のイベントに呼ばれて 演奏することが多かった時代だ。 スキャンダルを売りにするロックが、スキャンダルによるリスクを 回避する手段として野党とのつながりを持つというのは あるといえば、ある手段だと思う。 7唐突に終わる 既にこのメルマガの着地点を見失っているわけですが 書くことは書いてしまったので唐突に終わります。 8文学イベント情報 第八回文学フリマ 日時:5月10日日曜日11:00?16:00 場所:大田区産業プラザPio 文学フリマ非公式携帯HP http://k2.fc2.com/cgi-bin/hp.cgi/kidana/ 第七回文学フリマ感想リンク集 http://d.hatena.ne.jp/kidana/20090506 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□