■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】  第180号      2008/1/11発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 3−5ミニコミ&フリーペーパー TUBUTANE http://www.yononaka.net/3040s/images/tubutane.jpg 精神病新聞 http://www.tacoche.com/freepaper/freepaper/seisinbyousinbun.html といった紙一枚のフリーペーパー・ミニコミ。 こういったスタイルも模索舎・タコシェ・文学フリマでは多い。 一番多い形式は 学級新聞スタイルで、紙一枚に文字と絵を好きなように配置し 後はコンビニコピーで300枚ほど印刷し、 友人・同人系書店に配布。コピーが一枚十円だとして300枚で三千円。 掛かるコストは3−4で紹介した同人誌とあまり変わらない。 両面印刷にしたり、ページ数を増やしたり、カラー印刷にしたりすると 徐々にコストが掛かるようになる。ある程度ページ数が増えると 200〜300円(原価)で売るというパターンも多い。 TUBUTANEの大八木恵子さんは http://www.yononaka.net/3040s/vol2/oyagi.html このフリーペーパーを通して イラストレーターとして成功されています。 紙一枚スタイルのフリーペーパー・ミニコミを見ていると ちょっとしたイラストがあって、日常雑記があって、 全体として「ちびまるこちゃん」っぽい物が多い。 絵柄も内容もさくらももこテイストが高い。 そうでないスタイルだと、すごくオシャレなデザインの表紙で すごくお金が掛かってそうなカラー印刷で カッコ良い写真やイラストがひたすら続いていて よく見るとそれは全部、映画のポスターやライブハウスのポスター バンドのポスターに、オシャレカフェの広告イメージ写真と 広告写真の寄せ集めで、おそらくは無断コピーだけれども 広告である以上、無断コピーは先方も歓迎のはずという前提の下で 作られて、最後のページに、印刷代を出してくれた印刷所や 単館上映系映画館やカフェのCMが入っているパターンが多い。 スタジオボイス型のフリーペーパーだ。 3−6プッシュメディアとプルメディア 上記のフリーペーパーの類を新聞・ジャーナリズム・自然主義の側に 置いた時、3−4で書いた文芸同人誌は演劇・ロマン主義の側になる。 日本において雑誌は無料で立ち読み出来る物であり、 お金を出して買ったとしても、一冊300〜400円という 非常に安い値段に設定されている。実際、広告抜きだと、 完売しても赤字になるような値段に設定されている雑誌も多いと聞く。 つまり、雑誌やフリーペーパーは広告・プッシュメディアであるわけだ。 対する、演劇。もっと広く舞台芸術全般と言っても良いが コンサートやお笑いの寄席などもチケットが大体三千円以上する。 昔のハードカバーの学術書ぐらいの値段だ。 文芸同人誌というのも大体一冊千円近くして、しかも 雑誌のタイトルからは中身が推し量れず、著者名からも中身が推し量れず 中身が分からない物を試しに買うには高い買い物だと思われる。 同人誌で一冊千円は売る側からすれば決して高くない。 大手出版社のように輪転機回して三千部以上刷れば、 一冊辺りの単価は下がるが、何百部という単位で印刷する分には コンビニコピーと大して変わらない一ページ5円〜10円というのは 印刷代として掛かってしまう。ページ10円なら百ページで千円。 製造原価なわけです。ところが、仮に文学フリマで売った時に 158ブース並んでいて、お客さんがすべてのブースを見て回って 一番安い百円の商品だけを全ブースから買っても 一万五千八百円円掛かるわけです。 試しに買ってみて下さいというには千円の本は高すぎる訳です。 そうした時に、フリーペーパーを配る。 その本のどこがどう面白いかを書いたフリーペーパーを作って配り そのフリーペーパーの文章やイラストのセンスを見て 面白いと思ったお客さんが本も買っていく。 フリーペーパー・新聞・広告・プッシュメディアと 文芸同人誌・演劇・商品・プルメディアは連動する。 自然主義とロマン主義を便宜上分けるが、 実際には演劇のレビューが新聞に載り、新聞に載った事件が演劇になる。 忠臣蔵は事件の三日後には上演され、 そのレビューがまたかわら版に載る。 バンドや演劇をやっているとチケットノルマが発生する。 百人規模のライブハウスでやると、百人の客を呼ぶノルマが発生する。 5バンド対バンだと1バンド20人。4人一組のバンドだと1人5人。 チケット一枚二千円だとして、一人一万円のノルマが掛かる。 当然そこはチラシを配ったりするわけだが、 通常、無作為にポスティングしたチラシの効果は 0.2%だと言われている。 ラーメン屋の開店に合わせてチラシを持って行くと何円割引等の サービスを付けてチラシの回収率=チラシの集客率を調べると 千枚配って二枚回収できる計算だという。 某パリーグの球団が野球観戦の無料チケットを地元民に10万枚配ったら 実際そのチケットで観戦に来たお客さんが500人。 回収率0.5%だったという。 千枚チラシを配って二人しかお客さんが来ないという計算だと 百人のお客さんを呼ぶには五万枚のチラシを 配らなければいけない計算になる。 五万という数がどのぐらいかというと 日本雑誌協会のHPで http://www.j-magazine.or.jp/data_001/index.html 文芸誌の発行部数を見ると群像とすばるが八千部。 文学界と新潮が約一万二千部。角川の野生時代が五万部。 自分の書いた同人誌を百冊売ろうと思ったら 野生時代に広告を打たなきゃいけないみたいな話になる。 これもさぁ、表に出して良い情報なのか、どうか知らないけど http://bungei.cocolog-nifty.com/news/2007/12/post_fbd8.html なんか上記HPには出ちゃってるから書くけど 文学フリマで行列が出来る状況というのがどういう状況かというと 「桜庭一樹×桜坂洋による『blackcherry bob』が 『桜坂ハミングディスタンス』を文学フリマ限定同人誌として発売。 文学フリマに向けて公式HPを立ち上げ、百人規模のトークショーを開催。 トークショーの入場チケットが『桜色ハミングディスタンス』の 無料引換券となるなど、サービス三昧。雑誌『活字倶楽部』の 桜庭一樹インタビューでも文学フリマに関する話題が出る。 開場と同時に三百人の行列を作る。」 「芥川賞作家長嶋有さん所属の 『ブックスフクナガシマシバサキホウキナクイ』に行列ができる。 大手新聞社の文化欄に事前情報が掲載され15:00を回っても 長嶋さんのサインを求める行列が途切れない。」 活字倶楽部さんの発行部数がどのぐらいか知らないけど 何万部かは出していると思うし 長嶋有さんの大手新聞社というのは読売と朝日だから、 読売が一千万部で朝日が六百万部だとすると合計千六百万部の チラシを撒いた計算になるわけで それだけやって何百人の行列が出来る。 仮に活字倶楽部さんの発行部数が5万部ぐらいだとして 「桜坂カミングディスタンス」が仮に500冊売れたとして 5万部のチラシをみた人の中で、実際に買いに来た人の割合が1%。 私がblackcherry bobさんに負けないぐらい売れたいと思って でも、雑誌や新聞に記事として載るだけの ニュースバリューが自分にないとしたとき、 自力で5万枚のチラシを作って配るという作業が必要になる。 実際ライブハウスでライブをやっているバンドや、 小劇場で演劇をやっている劇団員などは、 百人〜二百人のお客さんを集めるために、チラシ配りをしたり 広告印刷したポストカードを友人知人に出しまくったりしている。 仮にコンビニの10円コピーでチラシを作ったら、 5万枚コピーすれば50万円。 それを郵便受けにポスティングしようとバイトを雇えば 一枚ポスティングするごとに5円、 一時間に200枚郵便受けに入れて時給千円。 このぐらいの給料を払うのが相場になる。 広告印刷したポストカードを出すと、郵便代で一枚50円。 印刷代が仮に一枚10円でも、 5万枚郵送しようとすると300万円掛かる計算だ。 昔、雑誌QJ(クイックジャパン)のHPを見ていたら、 QJには四分の一ページで7万〜8万円ぐらいから 広告が打てるようだった。 仮にQJの発行部数が5万部ぐらいだとしても、一部十円を切っている。 コンビニコピーより安い計算になる。 新聞広告でも三行広告なら三千円から広告が打てる。 無作為に配ったチラシの広告効果が0.2%で、 100人200人規模の会場(劇場やライブハウス)に お客さんを運ぶには10万枚チラシを配らなければいけない。 その場合、自分でチラシを作って配るより、 雑誌や新聞に広告を打ったほうが安い。 この辺のことは演劇やバンドのような舞台芸術をやっている人なら 誰でも体験的に知っていることだが、文学をやっている人たちは この辺の意識が薄い人が多い。 4広告 外国の書店では雑誌は立ち読みが不可の国が多い。 日本でいうスポーツ新聞のような扱いになる。 その時、書店は物を売る機能だけで、人を集めて広告をする機能を失う。 そこで、欧米の書店ではイベントスペースを設けて 著者による自作小説の朗読イベントを行うことが多い。 著名な著者が書店内で自作小説の朗読を行い、観客は無料でそれを鑑賞し そのイベントの中で著者は自著の広告を行う。 著者朗読だけではなく、プロの朗読家がいて、朗読する場合もある。 日本でいう講談師や落語家、最近なら声優などにあたる人達だ。 日本では、雑誌がほぼ無料で立ち読み可なので、 雑誌コーナーが、書店に人を集める集客機能、 単行本を売る広報機能を持つ。 ロマン主義/自然主義    演劇/新聞・雑誌 本や商品はそれ単体では売れないことが多い。売るためには広告が必要で 雑誌連載や書店内の朗読イベントやテレビドラマやテレビアニメなどで 無料で見れる状態で流通することで、それを見た0.何%かの人が 買ってくれる。 舞台芸術の広告方法としては路上や公園などで 出し物を演じるという方法もある。 市街劇やストリートミュージシャンなどが、それにあたる。 5自費出版に関するトラブル 新風舎の件などもあり、自費出版のイメージは、世間では相当悪いようだが 個人的に思うのは、勧誘方法はサギまがいだが、 値段が法外だとは思えないし、値段が高すぎると言っている人たちは 物を知らないと思う。 世間の人は本と言うと一冊340円ほどの雑誌をイメージして そのぐらいの値段で本は黒字を出していると思っているが、 私のイメージだとあれは広告であって商品ではない。 雑誌に書いてある340円とかの値段はただの流通経費だ。 試しに週刊少年ジャンプを郵便局から書籍小包で送って欲しい。 ジャンプの値段と同じぐらいの郵送費が掛かるから。 広告の入ってない雑誌が単体で黒字を出そうとすると 一冊二千円ぐらいになる。 300円前後で買える雑誌は 無料で手に入る就職情報誌や住宅情報誌やタウンページと同じ広告だ。 広告は消費者ではなく、広告主がお金を払うという意味で 自費出版と同じだ。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 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