■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第159号    2006/10/23発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1ごあいさつ ポエトリーから方向転換して、自費出版の体験レポ書きますと 書いたら、予想通りにメルマガの購読者が減り それもまた良しといった感じではありますが せっかくなので、ポエトリー関連で自分なりに書き残したことを 雑多に書き殴ってみたいと思います。 2本物のMCバトルをまだ見ていない 個人的に本物のMCバトルをまだ一度も生で見てないなと 思ってます。  Choriさんの 「BATTLE ON POETRY」 ■ルール パフォーマンスは対戦者、choriの順でおこない、 それぞれ30分以内のパフォーマンスをします。 そして、お客さまの投票によるジャッジに入ります。 ここで評価の高かったほうが勝者となり その日のイベント収入をギャランティーとして進呈されます。 ジャッジはイベント開演時間にいる観客全てが参加できます。 評価は「詩の内容」、「パフォーマンス」、「完成度」、「将来性」 「当日のお客様基準」(当日開始前にアンケートで集め、ランダムに選びます。) http://chori.cc/ Ben’s Cafeの四週目 http://www.benscafe.com/ja/3rd&4thPoetry.htm 第4日曜日 定員15名のオープンマイク(事前エントリー可) ゲスト : 前回のチャンピオン。 持ち時間はそれぞれが約10分、ゲストのみ20分。 観客のみなさまにお金で投票してもらい、パフォーマーと そのパフォーマンスの順位を決める『スラム』形式。 観客の方には 各パフォーマンス後および休憩時間のあいだに投票していただきます。 用意された封筒の中へ、お好きな金額をお入れください。 封筒に入れられたお金は各詩人のものになります。 お気に召さない場合にはもちろん、 投票をしていただかなくても構いません。 終了後にはさらに獲得金額の上位5名を発表。 優勝者には次回 " Prize, Price the Words "の ゲスト枠が与えられます。 SSWS http://www.marz.jp/ssws/index.html 詩のボクシング http://www.asahi-net.or.jp/~DM1K-KSNK/bout.htm 引かせ王選手権 と色々ある中「BATTLE ON POETRY」以外は全部見てもいるし 出場もしているのですが いわゆるMCバトルは、見てないしやってないのが 心残りです。BBOY―PARKのMCバトルはネット動画で のみ観た事があって、なるほどなぁと思いました。 ひょっとすると上記のイベントも全部MCバトルのつもりで やっているのかもしれませんが、MCバトルとは真逆の物です。 MCバトルはトップ・オブ・ザ・ヘッド (頭に浮かんだことをそのまま口走る) と呼ばれる即興が売りです。 対する 「BATTLE ON POETRY」のルールを見てもらえば分かりますが 完全にネタのショーケースですよね。 笑点の大喜利(笑点はリハーサルを三回もやるらしいが)と M−1グランプリの違いというと分かりやすいかも知れませんが 作りこんだネタの完成度を競う競技と アドリブの上手さを競う競技はまったく正反対です。 ネタでなくアドリブであることを示すには、 その場に居なくては分からないことにツッコム必要があります。 会場の雰囲気や審査員やゲストや他の出場者 天候や今会場で起きていることなどを盛り込んだ ラップをしないと、ネタだと思われてしまう。 この時、天候だって雨と晴れと曇り、 気候だって寒いか暑いか調度良いか、 ある程度パターンが限られるので三種ネタがあれば 組み合わせでなんとかなる。 審査員やゲストや他の出場者だって事前に情報が公開されていたり 下調べである程度分かったりすればネタで出来る。 バトルで交互に三回づつマイクを握るとして 相手が言ってきたこと、質問したり煽ったりしてきたことに その場で答えられれば、トップオブザヘッドだと認められるし 相手の質問に答えず、カッコ良い脚韻踏んでたらネタだと 馬鹿にされる。 もちろん相手がどんなことを言ってくるのか事前に下調べして それに対してネタを作ることは可能だが、 別のイベントや会場で言ったことを元に、相手の言いそうなことを 予想してネタを作ったら、予想通りの展開になって勝ったとしたら 毎回同じこと言ってる相手が馬鹿だという話になる。 ラッパーの人は何故自己紹介ラップばかりするのか 疑問だったのですが、基本的にMCバトルは出演者いじり芸なので いじりやすいファッション、いじりやすい言動でステージに立ち ツッコンでみろよというツッコミ待ちで、そのツッコミに対して カッコ良い切り返しができるとカウンターとしてポイントが高い。 だから対戦者がツッコミやすいよう自己紹介から始める。 相手のファッションに対して、編み込み頭にバンダナ巻いて ベースボールキャップを後ろ前、バスケのTシャツ・レイカーズ 膝丈短パン・ローライズ、カッコだけならB−BOY、でも 履いてる靴はニューバランス、B−BOYつうよりA−BOY! というツッコミを入れて、笑いが起きれば得点高いし 人の悪口言って単に険悪な空気になっただけならポイントは低い。 なるべく見たままを描写しながらも、 みんなが気づかない細かい所への観察眼なんかも要求される。 お笑いでいう客イジリに近いし、芸風でいうと、 明石屋さんまやとんねるずやロンドンブーツのイジリ芸・ツッコミ芸で 出場者はいじられる側にもなりつつ、 最後はいじる側として勝たなきゃいけない。 MCバトルの対戦相手が、その日初出場で大木凡人 http://www.ammypark.co.jp/oki.html に似てる人だとするじゃん? ある程度ネタを持ってても、相手がツッコンでくれと言わんばかりの インパクトのある髪型してたら、ツッコまないとネタだと 客にツッコまれる。 するとネタを捨てて、あの髪型を何に例えれば笑いが起きるのか? 共感が起こるのかを考えなくてはいけなくなる。 「ズラ?」とか言ってしまうと、ハゲに「ハゲ!」と言うのと 同じぐらいそのままになるので、 ウォーズマン・モップ・フォルクスワーゲン・ダースベーダ−・・ 何に例えるのが一番はまるのか?どこで韻を踏んで、 オチをどこへ持っていくのか? ツッコまなきゃ嘘だろという状態でステージに上がった方が 相手はネタを出来ないから有利になるわけです。 エミネムも黒人のバトルに白人が出てるという部分で ツッコまれやすいキャラで、CDを聴いても マイケルジャクソンはじめ多くの芸能ネタにツッコンでいる。 この手のバトルは最低マイクが三往復ぐらいしないと 成立しないし、音源を音楽ビジネスにしようとしても 成立しない。 出場者紹介でステージに上がった時に、 大木凡人似が自分の前に立ったので「かぶってる。かぶってる。」 と後ろから言ったり「昔親から室内では帽子を脱げと言われましたが」 大木凡人似をチラッと見て、「ひどい親だと思います」。 と言って、仮にその場で笑いが起きていたとして、 音楽CDにしたときに、映像がないと意味が分からないわけです。 即興は、その場にいないと分からないことを口にすることで 即興であることを証明するのですが、 音楽CDは、その場に居ない人にも楽しめる普遍性が要求されます。 即興性と普遍性は対立して、 MCバトルの技術とラップミュージックの技術は ある水準を越えると対立していきます。 ある時期の(今は違いますが)SSWSは、 売れるミュージシャンを発掘しようとしているように見えたし ラッパーの即興はいらないから、曲を聴かせてくれという 声も聞かれました。 3フォークソング 自分の中でポエトリーの限界を感じた場面が、 第三回ウエノポエトリカンジャムのサブステージでの 敬々さん http://d.hatena.ne.jp/silenturbancrew/ のフォークソングです。 第三回のウエノポエトリカンジャムで、有名人がいっぱい出る 最後の方のステージは私はわざと見てないのですが いわゆるテレビレベルの芸能人を除いたステージで 一番盛り上がっていたのがサブステージの敬々さんでした。 フォークギター一本で敬々さんに合わせて客席の40人ほどが 大合唱しているわけです。 出ている人間は皆テレビ雑誌レベルではほぼ無名のアマチュアで 朗読する内容もオリジナルなので、初めて聴く物ばかりです。 ポエトリーの朗読では客席込みの大合唱なんて一度も起きなかったのに フォークの敬々さんのステージでは初めて聴く敬々さんの曲に みんなが合唱しているわけです。 私の知ってる範囲だと「No Homeless」という曲が 盛り上がってました。 敬々さんが「警察や政府はホームレスが今年は何万人増えたとか 数字上のデータを出すが、俺達人間一人一人を見ずに、 統計上のデータだけで数値化したりホームレスと呼んだりするな。 ホームレスなんて人はいないんだという思いを込めて 作りました聞いて下さい」 という曲紹介のあと始まった曲が (細部は異なってると思いますごめんなさい) 「俺には家がある 公園だけどね  俺には職がある 芸術家だけどね ノー・ホームレス (ノー・ホームレス) ノー・ホームレス (ノー・ホームレス)  俺には家がある 牢獄だけどね  手には職がある 懲役でだけどね ノー・ホームレス (ノー・ホームレス) ノー・ホームレス (ノー・ホームレス)」 こういうのが10番ぐらいまで続くのですが ノー・ホームレスの後、ノー・ホームレスと歌っているときと 同じバッキングギターを弾くと、 客席のみんなが「ノー・ホームレス」と歌うんですよね。 二年ほど、毎週どこかのポエトリーイベントに顔を出していた 自分の目から見ても ポエトリーリーディングで、こんな場面は一度も見なかった。 定番で歌いやすいフレーズがあって、それと同じバックトラックが オケなしで流されるとお客さんは歌うもんなんだなと思った。 フォークの強みってこれなんですよ。カラオケが発明されるのが 1980年前後。それ以前は歌入りのジュークボックスに合わせて歌うか ギターに合わせて歌うしかなかったので、 ギターを弾ける人間はモテた。 飲み会で盛り上がってみんなで歌を歌おうとなったときに ギターが弾ける人間が必要だし、彼氏がギター弾きだと 自分の歌に合わせてギターを弾いてくれるのでカラオケ歌い放題だ。 フォーク=カラオケが無かった時代のカラオケの圧倒的な強さを見て 色々考えた。 正直あの場でノー・ホームレスを歌っていた青木研治さんにしろ 究極Q太郎さんにしろ、初めて聴いた曲だと思うんですよ。 にも関わらずみんな歌えるのは、即興ではないからですよね。 即興ではなく、定型で歌の構造がはっきりしてるから 合唱できる。その場で歌詞がガンガン変わったら合唱できない。 青木さんは「小さなフジロック」とあの場を呼んでいたけど 客席を合唱させる歌の強さを考えれば、即興や自由詩は捨てて、 バッキングの演奏をきちんと作って、 一番 イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→ 二番 Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→〜〜〜→アウトロ というパターンにならざるをえないと思うし ポエトリーにその構造と、バッキングを与えて 即興性と散文性を捨てて定型にすれば それは、いわゆる音楽にならざるをえないと感じた。 定型や構造やバッキングがないポエトリーを 初めて聴いたお客さんでも歌える構造にしようとすると Aメロ+Bメロ+サビからなる定型詩に バッキングを加えた歌謡曲かJ−POPになるし それって余りにも普通すぎる音になってしまうんだよなと 思った。 4販売 10/28 18:00〜 いとうさん主催 ぽえ飲み http://poenique.jp/nomikai.html 11月12日(日)開場11:00〜終了16:00 文学フリマ http://bungaku.webin.jp/index2.html に参加しますので、買いたい方は参加して声を掛けて下さい。 販売HP http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/post.htm ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□