■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外    2006/4/7発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1ごあいさつ 近田春夫よりも音楽業界に詳しい木棚環樹です。 いやぁ、機嫌が悪くなると愚痴(メールマガジン)を流したくなる。 精神科医によるカウンセリング、人格改造セミナーへの参加、 カルト宗教への入信などと比べて ウェブほど安く愚痴をこぼせるメディアはないでしょう。 金がない、でも不満は募る。だから俺は愚痴を垂れ流す。 このネットの荒野へ。 2クラッシックの本など 坂崎紀編著 西洋音楽史より 〜〜〜〜〜 音楽史では、およそ1400年から1600年をルネサンスとよぶ。 このうち、1400〜1450年はやや様式が異なるため区別し、 1450〜1600年をルネサンスとすることもある。 およそ1600年〜1750年を、音楽史ではバロック時代とよぶ。 バロックという語はポルトガル語の「いびつな真珠」に 由来するといわれている。 オペラは、1600年頃にイタリアで誕生した。これは16世紀末に、 フィレンツェの貴族が古代ギリシャの悲劇を復興しようとしたことに 端を発する。初期のオペラの代表的作品は、モンテヴィルディの 《オルフェオOrfeo》(1607)である。 1750年から1800年ごろまでの時代を一般に古典主義時代と呼ぶ。(中略) フランスでは「バロック」という呼称を嫌うため、 1750年以前の音楽も広く「フランス古典音楽」と呼ぶ。 1800〜1910年頃までの音楽の傾向を、一般にロマン主義と呼ぶ。 ドイツの独唱歌曲はリートLiedと呼ばれ、ハイネ、ゲーテ、 ミューラーなどの詩に基づき、シューベルト(《魔王》、 歌曲集《美しき水車小屋の娘》、《冬の旅》)シューマン(歌曲集 《詩人の恋》、《女の愛と生涯》)、ブラームス、ヴォルフ、 R.シュトラウスが重要な作品を残した。 フランスの独唱歌曲はメロディーmelodieと呼ばれた。 ボードレール、ヴェルレーヌなどの詩に基づき、グノー、マスネ、 フォーレー、ショーソン、デュパルク、ドビッシーらが すぐれた作品を残した。 19世紀後半にウィーンで生まれたオペレッタ(軽歌劇)が、 アメリカのブロードウェイで、大衆音楽と融合して、 ミュージカルに発展した。従来のオペラが大衆化したジャンルと 考えられている。 〜〜〜〜〜 イタリアのオペラが、 ウィーンのオペレッタになって、 アメリカのミュージカルになると。 ウィーンがゲルマン語圏であることを考えると、 ソネットがラテン系の長音短音型から ゲルマン系の長音短音・強音弱音並列型に変わって、 アングロサクソン系の強音弱音型になるのと同じ流れだ。 つまり、詩とは何かを考える上で、 西洋詩の最もメジャーな形式ソネットについて調べるだけでなく 実際にその詩が歌われた歌劇(オペラ&ミュージカル)についても 調べてみても面白いかもしれない。 脱線だがアングロサクソン(Anglo−Saxon)を 辞書で引くと、「Anglo−」という接頭語の意味が 「イングランドの〜、英語の〜」 Anglesで、 「アングル族《5世紀以後北ドイツから英国に移住したゲルマン族》」 Saxonは、サクソン人 《5世紀以後北ドイツから英国に移住したゲルマン民族》 とある。 石井宏著の「反音楽史」と「帝王から音楽マフィアまで」 という本があって、どちらも面白い。 もう一つ挙げると「カラヤンの生涯」 フランツ・エンドラー著、高辻知義訳も面白い。 石井宏さんの本は両方ともクラッシックの本なのですが 揚げ足取りというか、一般的なクラッシックの音楽観を おちょくっている本で、情報として面白い話は豊富なのだけれども 誠実さに欠けると言うか、例え事実でも 他人の悪口を長々と聞かされるのは、後味が悪い時もある。 「カラヤンの生涯」はその辺誠実で、かつ他のカラヤンの伝記と比べて 文章が読みやすい。 中世からルネッサンスへの変化は 美術や芸術を禁止した教会からの解放だったとすると 古典主義からロマン主義への変化は、 王室や貴族から市民を解放した市民革命によって生まれた。 フランス革命(1789年) フランス第一帝政の皇帝ナポレオン1世(在位1804〜1815年)。 1800年前後を境に、古典主義とロマン主義を分けるなら、 この変化の大きな理由の一つにフランス革命は挙げられるだろう。 反音楽史ではベートーベンの項で、 その辺りのエピソードがいくつか挙げられている。 反音楽史のコンセプトは通常の音楽史をドイツ人が 愛国心ででっち上げたものだとし、 オペラ〜ミュージカル〜映画音楽と連なる、 大衆音楽劇を正統な西洋音楽の系譜として主張している。 18世紀。バロックから古典主義にかけての時代で バッハ・モーツアルト・ベートーベンが活躍したとされる ドイツ音楽の黄金期と、学校の音楽史では教わった時代。 音楽の花形はオペラであり、オペラはイタリア語で書かれていたため ドイツ語圏の音楽家は評価をされていなかった。 彼らが評価されるのは19世紀に入って、 ドイツ観念論や美学や音楽史をドイツが自前で作り上げたからだ。 と石井宏は書く。 〜〜〜〜 帝王から音楽マフィアまでp214 日本の明治政府はプロイセンの富国強兵政策の成功をまのあたりに見て、 西欧に追いつく際の範をドイツに取ることに決めた。 戦前の旧制高等学校の第二外国語といえば、ほとんどがドイツ語で、 フランス語を教えるところは一高、三高など、 ごく限られた数しかなかったこともその一つの表れだが、 この純粋ドイツ指向は上野の東京音楽学校(現芸大)でも 至上命令であった。 〜〜〜〜 バッハの家系図には百を越える音楽家が名前を連ねており ヨハン・セバスチャン・バッハは音楽家の家庭に育ったと 中学の音楽の授業で私は習ったのですが 〜〜〜〜 同p226 ドイツの伝記作者は彼の父は音楽家であったとしている。 しかし、もし彼の父が音楽家であったとしたら、 チンドン屋でクラリネットを吹いている男も 音楽家ということになるだろう。 彼の父は村の鐘楼に登って、朝晩、時刻を知らせるためにラッパを吹く ラッパ手であった。 〜〜〜〜 俺はてっきり、バッハの父はパイプオルガン奏者だと思ってましたが。 違ったのですね。 〜〜〜〜 反音楽史p46  では、セリフのあい間に歌を入れる“歌つき芝居”と、 イタリアに誕生した“オペラ”とはどこがちがうのか。  問題はレチタティーヴォという特別な歌い方の誕生である。 レチタティーヴォという言葉はもともとは詩の朗読・朗唱の意である。 ヨーロッパのどこの国でも、韻文で書かれた古典的なドラマは みなこの朗唱によって演じられており、そこには俗な口調の、 平らなおしゃべりというものはないのだが、あるときイタリア語の 朗唱の部分に音符がつけられ、まるで“歌”のように、 言葉の長さや高さが音符によって動かされるようになった。 これがいまのオペラ用語でいうレチタティーヴォ (朗唱ふうの歌い方――叙唱と訳されてきた)であり、詩の朗唱が、 “朗唱ふうの歌”になったとき、歌芝居はオペラに昇格したのである (この“レチタティーヴォ”という呼び方はかなりあとのものであり、 最初のうちは“歌うように朗唱する/レチターレ・カンタンド”と そのものずばりに呼ばれていた) 帝王から音楽マフィアまでp209−210 そこまでの西洋音楽史は、民俗音楽を除けば、声楽の歴史であり、 声楽とは教会の専有物であったから、 音楽史はほとんど教会音楽史ということになる。 ところが教会の中では女は声を発してはならないという キリスト教の規制により、教会の歌手達はすべて男に限られていた。 (中略)王侯貴族たちはこれら若い女が舞台に出て張り上げる 美声を体験すると、それまでにない官能の喜びを味わった。 (中略)フランスではさらにこれにバレエ・ダンスをくっつけた。 十八世紀には女は長いスカートをはいていて、 人前でちらりとも足を見せることはない。 その女のスカートを極端に短くして、脚線美の女をそろえさせ、 足を高く頭の上にまで上げて、くるくる回ったり、 空中に跳んで足を交叉させたりする悪趣味なことを芸術の名のもとに 考え出したのはメフィストの知恵であろう。 〜〜〜〜 それまで教会音楽しかなく、女性歌手がキリスト教的に 認められなかった時代から、18世紀になり、 王侯貴族が宮廷でオペラを開くようになったと。 オペラの広がりというのが必ずしも高尚な芸術的感性というよりもは 性的魅力で広がっていったと。 ルネッサンスの彫刻や絵画が、中世において禁止されていた 人間の裸体を描くところから始まっているのと非常に似ているし 日本の歌舞伎やアングラ劇団がストリップ劇場的な 始まり方をしているのとも似ている。 芸術というのは元来そういうものなのだと思う。 3年表 1400〜1600年 ルネサンス 1440年頃 グーテンベルクによる活版印刷術の発明 1500年前後 ルターの宗教改革。プロテスタントの誕生 1550〜1600年前後 シェークスピアの活躍 1600年〜1750年 バロック 1600年前後 オペラ誕生 1750年〜1800年 古典主義。 1750年〜1850年前後 イギリスで産業革命 1800年前後 フランス革命&ナポレオン帝政 1800〜1910年 ロマン主義。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□  【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□