■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第136号    2005/8/11発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1文学フリマ http://bungaku.webin.jp/ 過去、第一回、二回、三回と行われて、次が四回目なのかな。 毎回事にカラーが変わっていってるので その辺について書いてみます。 第一回は群像という純文学雑誌での論争が元で 開かれて、大塚英志さん、佐藤友哉さん、鎌田哲哉さん、 福田和也さん、東浩紀さんと豪華な面子が来場し、 純文学雑誌の編集者の方や純文学雑誌の新人賞受賞者、 新人賞の最終選考に残った人達や芥川賞作家等、 純文学関係の方達が出店したり来場したりが多かった回です。 第二回は第一回のときに、有名プロの人達のブースにばかり 人が殺到するという苦情があったこともあって、 プロの来場者や出店者が減ったわけです。 フリマの運営事務局も大塚さんからアマチュアのボランティアへ 引き継がれたこともあり、アマチュア色が強まりました。 第一回の時には、開場してすぐの地点で大塚さん・白倉由美さんの ブースに百人の列ができ、お昼どきには佐藤友哉さんの来場で 佐藤友哉さんのブースに百人の列が出来、 (このとき講談社の編集者の方が作ったコピー誌がのちの ファウストになるわけですが) その後、三時から大塚さんと鎌田さんのトークショーが始まると トークショーの部屋に人が集まって座って観戦し始め トークショー以外の部屋からはお客さんが消え、 トークショーの部屋でもお客さんの流れが止まるため物品が売れない。 お客さんとなる一般来場者を呼び込むための一連の仕掛けが 出店者からはあまり評判がよくなかった。 また、出店者もコミケで同人誌を売っているというよりもは 純文学をやっていますというテイストなので、 表紙にイラストや写真がない文字だけの同人誌、 人によっては原稿用紙をコピー機に掛けて ホッチキスで留めただけのものを並べて、 お客さんに声を掛けるのも押し売りっぽく感じられるからか 「どうぞ、見ていって下さい」ぐらいで、 あまり売り込むこともなく、イスに座って本を読んでいる。 という雰囲気が多かったわけです。 これが第二回になると、タコシェ系のオシャレ小物・雑貨としての本を 並べる店が増えて、 ガチャガチャのプラスチックのカプセルに詩が入っているとか 小説の入ったフロッピーにミニカーをセットで並べて売るとか 手作りの10センチ×5センチ四方の豆本を売ってるとか 芥川龍之介原作の小説を、 漫画にして厚紙の和紙にカラーでプリントアウトした物などが 店先に並び、お客さんの目を引くための 出店者の努力が発達するわけです。 第三回になると、第一回、第二回の会場だった青山ブックセンターが 事情により使えなくなることで、 会場が秋葉原の東京都中小企業振興公社へ移り、 会場が広くなったことで、一般来場者向けの休憩所や 全出店ブースの本を集めた試読スペースができて、 一般来場者の滞在時間が増え、 目的外の本に会場で出会って買って行くという人が増えたわけです。 これまでだと、ブース前の通路で立ち読みしか出来なかったので 目の前には本を作った売り子さんもいるし、 通路なので流れを止めてふさいでも通行人の邪魔になるので 中々立ち読みがしにくく、結果、 プロの作家さんの本を目当てにきたお客さんは 目当ての本を買うと、すぐに会場から立ち去ってしまうという 状況を生んでいた、 もしくはもう少しましな場合でも、 会場を一周回ってフリーペーパーやビラやチラシをもらった後 いったん会場を出て、近くの喫煙スペースで、 どのブースのどの本が面白そうか情報交換をしていたのですが、 休憩所と試読スペースが出来たことで、 会場内での情報交換が可能で、かつ本の内容も じっくり読み比べて選ぶことが出来るわけです。 その結果、去年と同じ内容の本を 去年と同じ値段で売っているにもかかわらず 去年よりも多く売れたという声も聞きます。 第二回との比較で言うと、雑貨系の百円〜三百円の本から 分厚くて文字がぎっしり詰まった千円〜三千円の本へ 売れ筋が変わったという気がします。 また、印象として本が純文学からライトノベルに変わったという 印象の強い回でした。 第一回のときには、それまで他の同人誌即売会には 出店したことのないサークルさんも多く、 会員制の同人誌で会員のみが投稿し、 会員のみが買うことが出来る同人誌だったのが、 いざ即売会で何回か売ることを経験したときに、 表紙が白黒で文字だけよりも カラーイラストがあった方が売れるのではないかという 判断が起きてくるわけです。 すると、第一回のときには硬派な 純文学系同人誌サークルに見えたブースが 軟派なライトノベル系サークルに見えてくるわけです。 それを象徴するのが、東浩紀さん率いるサークルで 第二回の時には「動物化するポストモダン」に関する アカデミックな書籍やDVDを出していたのが 第三回には「美少女ゲームの臨界点」という 恋愛シュミレーションゲームに関する本になり、 内容はそれなりに硬派なのですが、それととは別に、 表紙がカラーイラストで、扱う対象が美少女ゲームという イメージの部分で拒絶反応を起こす人は起こしていくわけです。 実際、試読スペースで、私が見た光景ですが 高校生の女の子らしい二人組みが来て 東浩紀さんの本を目当てに来たAさんと Aさんに連れられてきたらしいBさんが A:東浩紀という偉い哲学者の人がいるんだけど B:(試読スペースで本を探しながら)どれ? A:(「美少女ゲームの臨界点」を指して)これ…だと思うんだけど。 B:美少女ゲームって何? A:さぁ・・。 B:「ときメモ」みたいなやつ? あの会話は爆笑しました。Bさん的にはあえて18禁ではない タイトルを口にすることで、 かなりフォローしているつもりなんですよね。 他にもU−KENというサークルも 白水Uブックスという硬派な海外小説の翻訳をしている文庫シリーズの 研究サークルなので、硬い言い方をすると 外国文学研究サークルなのですが ここも、第一回のとき特集高橋源一郎だったのが 第三回では特集が少女漫画になってました。 どのサークルも、本質は変わらないものの、 売るために外側のイメージを軟派な方へ持っていって 結果、ブースにはアニメ絵のカラーイラスト表紙が並び 一部の硬派な出店者・来場者から拒絶反応が起きてました。 前回は試読スペースが無いことを前提に どのサークルも本を作ってきたので 表紙で勝負しなくてはいけなかったのが 今回も試読スペースが仮にあるとして 硬派な内容の本に需要があることを どのサークルも分かった上で本を作ってくるので そうするとまた、 前回とは違うテイストの回になるのではないかなと思います。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■ ■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□