■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外    2005/2/13発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1朗読第一世代 朗読第一世代とか第二世代とかいう概念がポエトリーの世界にあって 私はこの概念の有効性が分からなかったので あんまり信用して無かったわけです。 まず、朗読第一世代というのは ロバート=ハリスさん司会の J-waveのポエトリーカフェ(1996-1998)というラジオ番組を聴いて ポエトリーを始めた人達を指す。 大地さんとかカワグチタケシさん辺りがそうらしい。 ポエトリーカフェの常連だったのが、三代目魚武濱田成夫さん、 作詞家の森雪之丞さん、カオリン=タウミさん、 演奏でオチブラザーズ(越智義朗/兄&越智義久/弟)さん http://www.pad.co.jp/ochi/ という組み合わせだったらしい。 第二世代は2000年のダヴィンチのポエトリー特集に 触発されてポエトリーを始め 2000年・2001年の上野ポエトリカンジャムで盛りあがった人達。 第三世代は上野ポエトリカンジャムを知らない世代。 みたいな区切りで、 私は第三世代に属するのですが、 この区切りによって何が分かるのかが 私には分からなかったわけです。 三つに区切るのは分かったけど、三つに区切ったことで そこから何が分かるの?と。 第一とか第二という概念でどんなことが分かるのかが 私には見えない。 で、人づてに聞いた話をすると ラジオと雑誌で盛り上がったというポジティブな面だけじゃなくて その間にはネガティブな断絶もあるんだと。 2000年7月26日にカオリンタウミさんが亡くなって そこで一度、ポエトリーが盛り下がるんだと。 ポエトリーカフェでいうと、ロバート=ハリスさんは 俳優やDJや翻訳をされて、ポエトリーをする以前から有名だったし、 森雪之丞さんもシブガキ隊の曲を作詞したりして ポエトリーをする前から作詞家として有名だった。 三代目魚武さんも角川から何冊も詩集を出されていて ポエトリーをする前から有名だった。 カオリンはポエトリーリーディングによって有名になった最初のスターで だからこそ色んな期待を背負っていたし、 ポエトリー専業で食っていこうとした最初の人で、 詩集を出すとかCDを出すという話もある程度まとまっていたのが 本人の死去により、著作物や音源の権利を誰が相続するのか という話になり、その辺の話が上手くまとまらないまま ご遺族の意向としては、カオリンのことはそっとしておいてくれと。 メディアにカオリンのことを流されるのは遺族としては迷惑です。 という結果になったらしいんだ。 ポエトリーから育った最初のスター候補が亡くなったことで ポエトリーから離れていく人やトラウマを背負い込む人が 生まれるわけで、ポエトリー業界のテンションや動員が一度 そこで落ち込んで、それと入れ替わりに 2000年のダヴィンチや 2000年9月3日ウエノポエトリカンジャムで 何も知らない世代の人達が参入してきて盛り上がると。 空き地を借り切って、入場無料・参加無料の でっかいフリーイベントやろうぜ。 朗読版ウッドストックだ! と盛りあがったウエノポエトリカンジャムが 元々単発企画だったのが、好評につき翌年もやったと。 で、実際やってみると、始めから分かっていたこととして 会場を借りるのにお金が掛かるし、赤字も出ると。 やってみて分かったこととして、予想以上に スタッフサイドの労力が要るし、時間も取られると。 ポエトリーなんてのは、SLAMやピニェロ という映画を見ても分かるように ドラッグカルチャーとある程度結び付いていて 当然、ハッパやるよね、みたいな人も 集まってきて、酒かハッパかクスリかは別にして 酔って暴れる人も出てきたわけだ。 客や出演者の中に酔って他人を殴ったりする人が増え出すと ガードマンや警備員が必要になるし、 ハッパやクスリの疑いがある人には ボディチェックや持ち込み検査も必要になる。 そのガードマンをボランティアスタッフがやるのか 警備会社の人を雇うのかという話になってくると ただでさえスタッフが自腹でやっているイベントなのに 負担だけが増えて行くと。 すると、続けてくれよという周囲の期待と 疲労するスタッフの温度差が広がって 2001/8/18のウエノポエトリカンジャム2001で いったん打ち止めになる。 この流れてのは、オルタモントの悲劇 http://www.hfitz.com/festival/altamont/ やウッドストックとある程度似た流れだと思う。 もしくはダダがダメになっていく流れとも似ている。 反国家権力でアナーキーなイメージで売っていたダダイズムが イベントの中に暴れ出す観客が出たときに、 結果としてイベント会場に警察を呼んでしまった。 反権力と言っていた奴が権力の象徴である警察に頼ってしまったことで ダダは収束していく。 ビートニクやヒッピーの流れから来るポエトリーは 大麻解禁だのフリーセックスだのといった主張を当然内包しているし そうじゃないSLAMだピニェロだニューヨリカンだって ポエトリーもドラッグや暴力といった要素を内に含んでいて 正直、ウエノポエトリカンジャムのスタッフサイドの人達の中にだって そういう詩を詠んだり、そういうのに肯定的な身振りをしていた人達も 大勢いたと思うんだ。 ところが、実際に非合法なことをやりだす人達が集まると 上野水上野外音楽堂という公共施設を借りている立場の主催者としては 東京都から主催者責任を問われるわけですから 取り締まらざるをえないわけですよ。 普段「大麻解禁!!」「ジョイントコンサート」と言っている人が いざ公の場に立たされた時に 普段と正反対のことを主張せざるをえない。 最近だとMCバトルがそういった矛盾を抱えていたのかもしれない。 ギャングスターラップでバトルしていた人達が、 いざ本当に殴り合いになった時に、 殴り合いはやめろと言わざるをえない。 ポエトリー第三世代てのは、またそういうネガティブな面を知らずに 詩のボクシングか何かを見て入ってきた人達を指すらしい。 私は映画SLAMとテレビで青木研治さんのパフォーマンスをみて 入ってきたので、第三世代だし、上で書いたことだって 伝聞で知っているだけで、同じ内部にいた人だって この人とあの人ではまったく違うことを言っているし ネガティブな話して、関係者同士で誰が悪いと犯人探しし始めたら みんな違うこと言うし、見解の相違は当然生じるが 大雑把に言えば上記のような感じらしい。 で、個人的に一番引っかかっていたのが、以前このメルマガで ロバート=ハリスさんの朗読のレポート書いた時に 割りとひどいこと書いてて、 メルマガを流した後に自分で読み返すと思った以上にけなしてて なんだろうなと思ったわけだ。 朗読会に顔を出し始める以前に、 ポエトリーについて語るロバート=ハリスさんのインタビューを 読んだこともあったし、 ロバート=ハリスさんの本や記事も多少読んだことがあった。 もっというと、ダヴィンチのポエトリー特集だって リアルタイムで立ち読みした記憶がある。 にも関わらず、そのときはポエトリー会場に行かずに SLAMと青木研治さんで行ったということは 私の心のフックには最初からロバート=ハリスさんやダヴィンチが 引っかからず、SLAMと青木研治さんなら引っかかったわけだ。 SLAMと青木研治さんに共通しているのは、 楽器を使わないバックトラックも流さない、 言葉をパーカッション風に使ってリズムを刻んだり 体や壁や床や机を叩いてリズムを刻んだりしている点だ。 それは、リズム隊が入ったビートをターンテーブルで回す DJ+MCというラップの楽器編成とも違うし、 ポールモーリアやリチャードクレーダーマン系の メロディーパートしか入っていないイージーリスニングをバックに 朗読をするロバート=ハリスさんの朗読とも違う。 言葉でリズムを刻むのがポエトリーだと思って入った人間にとって 初めて見たロバート=ハリスさんの朗読は ウィリアム=バロウズの朗読みたいに見えた。 http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/83gou.txt シャンゼリゼ大通りでモデルをやっている女の子をナンパして 歩いていたんだけど、・・ おとつい、ロスから戻ってみると・・ みたいな、テレビ番組で言うと 「世界の車窓から」や「シティーウィズ」のような 海外の観光地の地名がずらっと並んだ詩を 聞いても金持ちの自慢話にしか聞こえなかったわけだ。 オールバックで、黒のサングラス、細身の黒ジャケットに スリムの黒パンツという鮎川誠ライクな著者近影を表紙にした ハリスさんの著作のいくつかは http://tinyurl.com/4pqac too muchで胡散臭くみえたわけだ。 ところが、ポエトリー第一世代の人達としゃべっていると 俺間違ってたなと。 日本にポエトリーリーディングを持ち込んだ第一世代の人達って アメリカン・ブック・ジャムとか ニューヨリカン・ポエッツ・カフェとかに 関わっていて日本とアメリカを往復するのが 仕事の人達であったりするわけだ。 翻訳・翻案をメインの仕事にする雑誌のライターや編集者で、 カリフォルニア支部やロサンゼルス支部みたいな感じで 現地での生の情報をどこよりも早く日本に届ける仕事をしている人達で パリコレがあるといってはパリに行き、 どこどこでオアシスのライブがあるといっては、そこへ行きという 仕事をしている人にとって、 「先日ニューヨークから帰ってきたんだけど」 は自慢話でも、カッコ良過ぎるライフスタイルでもなくて 日常なんだよな。 室矢憲治でも岩谷宏でも植草甚一でも良いけど カリスマライターとかカリスマ編集者と言われる人って 基本的には翻訳・翻案をしていて、 海外で現地取材が仕事だったりするわけだ。 「海外が長くて、最近日本語忘れてきてさぁ」 みたいなノリが嫌味じゃなくて日常なんだよな。 96-98年地点でポエトリーと言うとこっちが普通だったんだ ということが分かると、ポエトリー**世代と言う区分けも なんか意味があるような気がした。 ちなみに、朗読自体は寺山修司時代にもあったし 言い出したら琵琶法師もそうだし、つったらあれなんだけど ポエトリー第一世代から第三世代までをつなぐのが Ben’sやポエトリーカレンダートウキョウだったりするわけで アメリカンブックジャムからつらなるポエトリーカレンダートウキョウ とかの枠を外して朗読を見ると、朗読第一世代は琵琶法師で・・ とかになっちゃう。どっからどこまでの朗読の中で 世代を区切るかという話なんだろうね、きっと。 2イベント情報 テノヒラタンカイベント vol.5  『ウタノ降ル夜 〜ヒダマリ・リーディング〜』 ■DATE:  2005.2.17(木)  18:00 open  19:00 start ■TICKET:  1drink+α ¥1000 ■EVENT SITE:  5F-communication lounge-  渋谷区恵比寿西2-9-9 代官山テクノビル5F  tel/fax:03-3476-1499 ■CONTENTS:  テノヒラタンカの歌人、ゲストの歌人による短歌リーディング、オープンマイク □オープンマイク募集! ご来場の皆様が、自由にリーディング・パフォーマンスできます。  1.1人3分以内  2.当日は、先着順で受付ます。ご来場の際にスタッフにお申し出下さい。   (定員になり次第、締め切らせていただきます。)  3.レジメを配りたい方は各自ご用意下さい 人数に限りがありますので、先行予約も受付けています。 以下の項目をテノタン事務局宛にメールでお送り下さい。 定員を上回る場合、お送り頂いた短歌をもとに選考させて頂く場合があります。  ・名前  ・電話番号  ・詠みたい短歌(数首)  応募先 テノタン事務局 tenotan@sansara.co.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□