■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外    2004/12/20発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1ポエトリーリーディングの一日 まずはデータ的なことから 日時12/18(土)10:00〜15:00 会場千葉県市川市国府台2-3-1和洋女子大学英文学科 タイムスケージュール 10:00〜11:00 ポエトリーリーディングワークショップ   講師 岡川友久(和洋女子大学助教授 仏詩英詩、ロマンス語学)       小川公代(上智大学専任講師 ロマン派詩、18世紀文学) 11:00〜12:30 ポエトリーリーディングコンテスト 12:30〜13:30 お昼休憩 13:30〜13:45 授賞式&オナーリーディング 13:50〜14:50 講演&パフォーマンス         講師&パフォーマー 島田雅彦 最寄駅が京成国府台駅ということで、東西線西船橋駅から 京成西船駅に乗り換え、国府台駅降りの和洋女子大行ってきました。 これは去年学内の学生向けに開催されたものを、 今年は学外からも参加者を募って開催されたもので、 来年以降も毎年恒例でやっていく予定のものだそうです。 普段このメールマガジンで紹介するオープンマイクとは違って 英文学科主催のものですから、 英語でマザーグースを朗読するコンテストで 英語の発音が主な審査対象です。 最初のワークショップの参加者が約40名ほどで 和洋女子大学の学生・和洋女子大学付属高校中学の学生を中心に 和洋女子大学の学生さんの親や先生、OGなどが参加されてました。 朗読に使われるテキストは、一応、事前に参加者宛てに資料として マザーグースからの一部抜粋が郵送されましたが、 その資料に載っていないものでも マザーグースの中からであれば、朗読可ということでした。 2ワークショップ 岡川友久先生が割と硬派に個々の英単語の語源の話をされました。 マザーグースに出てくる英語には、 フランス語を語源とする言葉がほとんどない。 という話は面白かったです。 英語はアングロサクソン系の人が使う言葉で、 もっと広くいうとゲルマン系の言葉になる。 対するフランス語はラテン系の言葉だ。 Letter(レター・フランス語で「文字」)や science(サイエンス)などのように、 フランス語を語源とする英単語は文明にまつわる物が多く。 自然にまつわる単語は外国語を語源としない語が多い。 マザーグースは自然を主に歌い、子供にでも分かるような簡単な言葉で できているため、 フランス語を語源としないような単語が多く使われている。 日本でも谷川俊太郎の「ことばあそびうた」 http://tinyurl.com/6w46e などでは日本語を語源とする日本語である和語が多く使われる。 逆に日本国憲法をみると漢語が多く使われている。 小川公代先生のワークショップは 自身の留学経験を活かして、 向こうの幼児向け英語教育用の絵本や童謡の紹介&実践が主でした。 向こうでは、マザーグースとはあまり言わずに ナーサリー・ライム(Nursery rhymes/童謡)と言い、 マザーグース以外にも新しいナーサリーライムは生まれていて 最近だとキャット・イン・ザ・ハット(Cat in the hat)が ベストセラーになっている。 http://tinyurl.com/5c7w6 韻を踏んだ意味のない言葉(ノンセンス)を絵にした絵本が 多く出ていて、そういうのを読むと子供は喜ぶ。 例として見せてもらった絵の中にはプードル・イート・ザ・ヌードル などがありました。 また、日本人が苦手なRとLの発音を練習するナーサリーライムとして Row,row,row your boat Gently down the stream; Merrily,merrily, merrily, merrily, Life is but a dream. 訳 こげ、こげ、こげ 君の船 そうじゃないと流れの中に沈んじゃうよ 陽気に 陽気に 陽気に 陽気に だって人生は夢なんだから merrilyの4連呼がRとLが交互に四回出てくるパートで 子供の時期にこういう歌を歌っていれば RとLの発音は上達すると。 この授業で何が面白かったかったって 向こうの子供用童謡絵本の日本語訳が まんまBen’sのみひろ文体だったり。 みひろさんのロンパルーム的なノリってここかぁとか。 あと、日本の本格派のラップ(ジブラ周辺の人達)に対して フリースタイルで韻を踏んでしゃべるラップなんて英米じゃ 誰でも出来るんだよという言い方はあって、 そんな子供でも出来るようなことをなに大の大人がやってるんだ という言い方に対して、俺なりの反論はあるけど そういう言い方をする人達の事情も分った気がした。 英米の幼児が英語を覚えるための絵本で キャット・イン・ザ・ハットと書いてあって 帽子をかぶった猫の絵が描いてある絵本とか プードル・イート・ザ・ヌードルと書いてあって 麺を食べているプードルの絵が描いてあったりとか そういう絵本があって プードルのやつは、もっと文が長くて プードルの頭の上に金魚鉢が乗っていて その金魚鉢の中に木が生えていたりとかして 音は面白いけど意味のない韻 (日本で言うと「隣の客はよく柿食う客だ」とか)を 具体的な絵にした絵本を幼児段階で見ていて その幼児向けの絵本に描いてあるようなことを外人の大の大人が ムキになってしゃべっているのは変だと感じる気持ちも分かった。 清水義範が書いていたけど、外国留学した時に ホームステイ先で現地の言葉を覚えるのに ホームステイ先の幼児の子守りをする。 こっちは大の大人だけど、語彙力が幼児レベルだから 話をしたリ言葉を覚えたりする時にそのぐらいがちょうど良いらしい。 すると、まず幼児語を覚える訳で、「パパ、ワンワンがいるよ」みたいな しゃべりになるし、ホームステイ先の家族からも 幼児語で話かけられるし、幼児扱いされると。 また、関係ないけど、外国人が日本に来て何に驚くと言ったときに 電車の中で大の大人が漫画を読んでいるのを見て驚く という話があって。 俺らからすると、漫画ぐらいで驚くなよと思うし 大人が漫画読んじゃいけないとは思わないけど。 欧米では漫画って4色刷とかフルカラーとかで 日本みたいな、白黒の漫画をあまりイメージしない。 日本でいうサザエさんみたいに、ピーナッツのような新聞漫画や 新聞に載る一こま漫画はあるが、普通マーブルのようなカラーの 漫画を向こうではコミックと言って、漫画は本屋ではなく 絵本屋さんで売っている。 日本で言うと、大人が満員電車の中で 絵本読んでいたらちょっと引くじゃん。 そういうイメージなんだよね、きっと。 ラップの押韻にしても、日本では中々根付いてなくて 外国から入ってきた難しい技法みたいなイメージなのが 向こうでは、押韻(ライム)って、ナーサリー・ライム(童謡)を イメージしてしまうから、日本のMCバトルとか見た時に 幼児向け絵本の内容を、なにいい歳した大人が ムキになってバトルとかしてるんだと。 そう見えるちゅや見えるのかなぁと。 小川公代先生の授業の方に戻ると、 英語のナーサリーライムをみんなで音読というのをやったのですが 最初は普通に音読すると、みんな読むスピードがバラバラなので 声もバラバラになる。 声をそろえようとすると、リズムを付けて読まなきゃいけないくなる。 すると必然的にアクセントとか意識するし、ナーサリーライムは 元々歌なので、リズムや韻が整っているので、 みんなで声をそろえてリズムに乗って読むのに適している。 実際にやると、先生がイメージするように上手くは行かないんだけど ネイティブの人達がどんな英語教育を受けているのかが分って面白い。 日本でも、みんなで声をそろえて音読というのは小学校低学年でやるし 卒業式になるとクラスみんなで 誰か一人:6年生の 男子全員:おにーさん 女子全員:おねーさん 誰か一人:ご卒業 クラス全員:おめでとうございます とかやるじゃん。クラスみんなで声をそえろえて教科書を音読する時に 句点で一拍、読点で二拍、ウンウンって 頭振ってうなずいたりとかしたじゃん。 日本語はアクセントがないとかリズムがないとか言ってるけど みんなで、そろって音読出来るってのは、 やっぱそれなりに何かリズムがあるんだよ。 2ポエトリー・リーディング・コンテスト 事前、エントリー制で、複数の人間で一つの文章を読むのも可。 17人のエントリーがあって、 当日のキャンセル・欠席が2名ほどあったので 実質、15組ほどのエントリー数。 グループで読んだのは、2人で読んだのが一組と 和洋女子大学付属中学だか高校だかのグループが 10名で読んだのが一組。 朗読者は私を除くと全員女性で、 和洋女子大の中学生・高校生・大学生がほとんど。 リーディングをすると、午後の授賞式で参加賞や賞状がもらえる。 カスタネットを持って、リズムをとりながら、 読んだ緒方由紀さんから始まって、 基本的には、英語の発音のきれいさを競うコンテストなのですが マザーグースも童謡の一種なんで、歌える人は歌う。 短い詩は同じものを2度読んでもOK。 一つだけじゃなくて、複数の詩を読んだ人もいました。 二人一組で出てきた英文科の女子大生の方は 一人で出るの恥ずかしいからという感じで、 消極的理由で二人で出てきた雰囲気だったのですが 二人で一つの文章を声をそろえて読もうとすると 一人で読むより全然難しくって、ボロボロでした。 英文科の先生ににらまれて、壇上からごめんなさいを連呼されてました。 最後に、担任の川口邦子先生に連れてこられた10人組の 高校生だか中学生だかの女の子グループは、 かなり練習を積んでいると見えて みんなでマザーグースの詩を歌う。 割りと長い詩を手拍子に合わせてみんなで朗読したり 左右五人づつのグループに分かれて、輪唱したリ、 AパートBパートで交互に歌って、最後一緒に歌うときも、 相手パートが歌っている間に、ポーズを取ってまっていたり パントマイムぽい動きがあったりと、純粋に歌劇として楽しめました。 他の人の朗読が1分そこそこだったのに対して 15分近い女の子達の歌劇を見せてもらって これはこの子達が優勝して13:30からもっと多くのお客さんの前で オナーリーディングしなきゃダメだろうと思ったのですが 優勝したのは、発音のきれいさで群を抜いていた中学生の女の子でした。 3島田雅彦さんの講演 コンテストはタイムスケージュール通りいかなくて 一時間半の時間を取っていたにも関わらず、30分で終わってしまう。 1分ほどの朗読をしたのが14組と、 15分のパフォーマンスをしたのが一組で計30分。 昼休憩が二時間開いて、その間、最上階のラウンジで 江戸川を見下ろしながら昼食をとり、島田雅彦さんの講演に移ります。 最大で300人入る講堂で客席の6〜7割が埋まっている印象。 学外からも入場無料とは言え、女子大でやっているので 基本的には客席は女性ばかり。その中で島田雅彦さんは 文学の起源である神話を取り上げ、北米神話の中の 性描写を取り上げて、朗読する。 この辺りの露悪趣味というのはいかにも島田雅彦さんらしいというか 前の方で座っていた先ほどマザーグースを輪唱していた女学生グループも 顔を真っ赤にしてうつむいたり、目を閉じて聞いていたりする状況が まあ、企画者の意図通りと言うか、その辺を枕に使って 文学の話に掘り下げて行くかと思いきや そこからエロス(快楽への欲求)とタナトス(死への欲求) という心理学の話に行って、人間は死への欲求を持っており 退屈だと死にたくなるので、快楽を追及することで 生にとどまろうとするのだという話になる。 文学の話を期待していた自分としては期待外れで、 それは英文科に属している多くの関係者にとってもそうだったと見えて この辺の話で、講堂の最後尾のど真ん中で聴いていた 小川公代先生が帰っちゃったりとか、少し場がまったりとする。 最後は、ダンテの書いた神曲(デバインコメディ)が ダンテの死後200年たって宗教改革に力を与えた。 文学とはかように長期に渡って力を及ぼすものなのだという話で締める。 途中、自著の「溺れる市民」 http://tinyurl.com/3jcws から一部朗読があったり、 最後に島田氏が参加者から質問を受けるコーナーがあったり 出入り口で「溺れる市民」のサイン入り本を売っていたりした。 島田雅彦さんの著作も講演もそうなのですが、 島田さんの話の情報源が活字だったりするので、 その話知ってるとか、読んだことあるというのが、ちょくちょく出て そこが大きく減点対象になっている気がする。 あと今回は、深く話を掘り下げるというより 受け狙いで笑いを取りに行っている印象だったのですが 落ちに行く前に次が落ちだよという、 雰囲気を声やしゃべり方やテンションで作ってしまって もったいぶって予想の範囲内の落ちというのが 辛い。感情を込めずに淡々としゃべった方が同じ内容でも シュールで面白い雰囲気になると思う。 商売っ気を出すなら、講演内容は「溺れる市民」に関する話にすべきだし そっちの方がかえって面白いんじゃないかなと思う。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□