■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外    2004/12/4発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1Marble/マーブル 行って来ました。SSWS。新宿マーズの隣の隣。 マーズの小さい版マーブル。 http://www.marz.jp/marble/index3.htm 場所は新宿区歌舞伎町2-45-2ジャストビルB1F。 天井は一階・地下一階吹き抜けのマーズより低くて、 地下一階分しかない。そのため高音域が伸びずにデッドな空間。 ステージと客席最後尾との距離が短くて、 アンプ・スピーカーも低音重視の設定のため マーズより低音がズンズン響く。 耳に聞こえなくても体にバクバク響く感じ。 開場18:00。開演19:00。 終演が約22:00(22時以降は18歳未満の方は入場出来ません)。 出演者は18:30までに来場。 細かいルールはSSWS公式HP参照。 http://www.marz.jp/ssws/top.html 会場はスタッフ4名(バーカウンター1人+司会1人+照明&PA2人) 審査員5名 (ソニーレコードSD事業部 大野貴博さん 日本語ラップのライター 古川 耕さん ヒップホップ誌CLUE編集長から フリーの翻訳者になったらしい 浅沼優子さん 詩人・随筆家 筏丸けいこさん SSWS代表・作詞家・詩人 さいとういんこさん) 出演者9名。 お客さん11名の計29名ほどで、 お客さんも、今大会のチャンピオントーナメント進出が決まっている 死紺亭さんと楠木菊花さん。 服部剛さん、近藤洋一さん、山田紗名江さんなど割りと知った顔が多い。 出演者のさとごぼうさんが、ステージ撮影用のビデオカメラを 回されていたり、22時までしか居れない16歳の出場者 児玉あゆみさんがお兄さんと来られていたり、 という手作り感覚溢れる会場でした。 試合結果(敬称略) 0回戦 はっとりあつし●1VS地獄メット(ヘルメット)○4 一回戦 タナソーDX●1VS青木研治○4 いと菌●0VSハギー・イルファーン○5 さとこ坊●0VS児玉あゆみ○5 木棚環樹●0VS地獄メット○5 二回戦 青木研治○5VSハギー・イルファーン●0 児玉あゆみ○5VS地獄メット●0 決勝 青木研治○4VS児玉あゆみ●1 個人的に印象に残ったのは、16歳女子高生の児玉あゆみさんが 一回戦でやったラップが圧倒的にすごかったです。 三倍速でしゃべる上沼恵美子みたいなラップで、 韻の踏み方、内容、リズム感、スピード どれを取っても良かったです。 彼女は詩のボクシングの千葉大会の決勝トーネメントにも 出ていたんですね。言われなきゃ気づきませんでした。 彼女は初ラップらしいのですが、一曲のクオリティーでいうと SSWSグランドチャンピオントーネメントでやっても勝てる 内容でした。 みんな、「初めてで、これはすごいよね」と言うのですが 嫌な言い方をしてしまうと、初めてだから オーソドックスに良い曲が作れるという気がしました。 最初は作り方が分からないので、基本に忠実に作るし オーソドックスな良い曲が出来るのが 同じリズム、同じメロディーでは別の曲が作れないので ちょっとづつ変則的なことをやっていくうちに どんどんマニアックな方向へ行って普通の良い曲が作れなくなる。 ラップにもビギナーズラックはあって、 それが当たったという感じですね。 彼女は元々一つしかネタを作ってなかったのが 花本武さんのBBSで4つ作れと言われて あわてて残り3つを作ったらしいので 一回戦以降は普通の詩の朗読になるのですが まあ、それはそれとして。 彼女が準優勝したことで、次のチャンピオントーナメントに 呼ばれる訳ですが、未成年なので、条例だか法律だかで 22時以降はライブハウスに出入り出来ない。 チャンピオントーナメントが25時開始の29時終演だから どうするSSWS! 保護者同伴なら良いのかとか、出演者としてなら良いのかとか 色々調べてみるらしいです。 準決勝の青木研治さん対ハギー・イルファーンさん これも数字の上では5−0ですが 内容的には良い勝負をしていて、 ハギーさんのトラックが高音の伸びる良いトラックで 青木さんの声がまた、低音できれいに響いていて 低音がきれいに出るマーブルだから青木さんが勝ったけど マーズだと逆にハギーさんが勝ったかもしれないぜと 思っちゃいました。 SSWSでも詩のボクシングでも審査員の人が 「青木さんの詩が良い」と言うのですが 俺個人の感覚だと青木さんの一番の売りは声質だと思うんですよ。 青木さんのしゃべっているときの声や、朗読しているときの声は オートマチックを歌っていたときの宇多田ヒカル並みに 超音波や1/fゆらぎが出ていると思うんです。 ただ、青木さんが歌ったり、10割の声でシャウトしたり 性能の悪いマイクやアンプやスピーカーを通したりすると 超音波も1/fゆらぎも出ない。 エレキギターのエフェクターの話をすると 良い洋楽はたいてい、ファズを使っているのに対して 洋楽と似ているけどダメな邦楽てのは たいていディストーションを使っている。 6〜8割の声で朗読しているときの青木さんは ファズギターの音が出ていて 10割の声を出すとディストーションになる。 0歳から3歳ぐらいまでの乳児は泣き出すとなかなか泣きやまないが テレビの砂嵐(放送されていないチャンネルを映した時の 白黒のノイズですね)の音を聞かせると泣きやむという。 母の母胎にいたころ聴いていた母の心臓音と似ているため安心するらしい。 青木さんの声は砂嵐と似てノイジーはノイジーなのですが 人を落ちつかせる効果があるんですね。 ベンズカフェなどで誰もステージを見ていない時間 というのがあるわけです。 基本的に喫茶店なので、ステージを観に来ていない人や 喫茶店で友人としゃべるのが目的の人も大勢いる中での オープンマイクで、誰もステージの話を聞いていないときに 青木さんがステージでしゃべり出すと喫茶店中の会話が止まって ステージの方をみんなが見るようになったという瞬間を 見たことがあるのですが、隣にいる友人達との会話を止めて ステージの青木さんを見るのは、青木さんのネームバリューでも 言葉の内容でもなく、声質だと私は思う訳です。 青木さんがしゃべり出すと、さっきまで幼稚園の教室のように うるさかった喫茶店が、砂嵐を聞いている子供のように 静かに耳を傾け出すのと同時に、 青木さんが歌い出したり、シャウトしだしたりすると また、喫茶店のお客さんが雑談を始めるというのも 見ているわけです。 宇多田ヒカルのオートマチックがヒットした時、 超音波や1/fゆらぎが流行語のように使われましたが 人間の耳に聞こえないけれども、 人間が心地良く感じる超音波を出せる人が 1000人に一人ぐらいの確率でいるらしくて 青木さんもそれだと、私は思うのですが シャウトすると、いくらなんでもその超音波がうるさいんですよ。 青木さんは声の大きさに比例して声が高くなるのですが 高音が伸びるマーズでは、 青木さんのシャウトが余計強調されるんですね。 マーブルでは、余分な高音がカットされるので、 シャウトしても響かないんですよ。 まあ、今回、青木さんはシャウトする時には マイクから離れて地声で聴かせるという工夫もされてましたが ライブハウスとの相性というのも正直あると思います。 トーナメント形式の大会に 青木さんが出ているのをみると、毎回思うんですよね。 持ち時間の最初と最後、出だしと締めにシャウトを使われるのですが 青木さんの一番良い声はそのシャウトじゃないねん、 普通にしゃべっているときか、6〜8割の声でシャウトしてる声で 宇多田ヒカル並みの超音波出ているときあるやん、 CDを800万だか400万だか売った宇多田並みの声質を 何故、最初と最後に持ってこないねん。 シャウトは真ん中のどうでも良いところで使ったらええやろと、 毎回思うんですよね。 意外と本人は自分の声が分からないのと 録音して聴くと、録音機材の音域が 青木さんの声域より狭かったりするので、 やっぱり本人には分からないんでしょうね。 審査員の古川さんのコメントがいつ聞いても面白いのですが 今回は秀逸だったのはタナソーDXに関して 「無駄に演奏が上手い。」 「詩がいよいよ収拾つかなくなってくると、焦り出して 手でジェスチャーをし始めて、 それによってキーボードがおろそかになってるのが、 面白くて」 言われなきゃ気付かない絶妙なポイントに突っ込んで 会場を爆笑させられてました。 今回、準優勝の児玉あゆみさんは マーブル時間の19:00〜22:00の SSWSでなければ、条例だか法律だかで 出場出来なかったのですが 今回優勝の青木研治さんもまた、 土曜の朝から仕事が入られているため 徹夜明けで仕事というのは、できなくもないけれども かなりキツイらしいわけで、 そういう意味では、マーブルならでわの出場者が 優勝と準優勝に輝いたというのはめでたいことだと思います。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□