■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外    2004/9/26発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1マラソンリーディング2004 まずはデータ的なことから。 開催日時9月25日(土)14:30開場、15:00開演。20:00終演。 場所:東京都新宿区新宿6-14-1新宿文化センター小ホール 入場料、前売り2000円。当日2200円。 主催:田中槐(たなか えんじゅ) プログラム 〈第1部〉15:00 1多田百合香(ただ ゆりか)愛称:ぷらむ 2佐藤有希(さとう ゆき) 3岡島摩美(おかじま まみ) 4村田 馨(むらた かおる) 5新留紀代美(にいとめ きよみ) 6伴 風花(ばん ふうか) 7紺乃卓海(こんの たくみ) (休憩) 8鈴木有機(すずき ゆうき) 9茂泉朋子(もいずみ ともこ) 10中島裕介(なかしま ゆうすけ) 11木棚環樹(きだな たまき) 12Sin(しん) 13野原亜莉子(のばら ありす) 14夏瀬佐知子(なつせ さちこ) 15杉山理紀(すぎやま りき) 〈第2部〉17:00 16伊津野重美(いつの えみ) 17黒瀬珂瀾(くろせ からん) 18雪舟えま(ゆきふね えま) 19杉山モナミ(すぎやま もなみ) 20沼谷香澄(ぬまたに かすみ) (休憩) 21松井 茂(まつい しげる)  22田中 槐(たなか えんじゅ) 23錦見映理子(にしきみ えりこ) 24正岡 豊(まさおか ゆたか) 25石井辰彦(いしい たつひこ) (休憩) (ゲスト) 26櫂未知子(かい みちこ) 27穂村 弘(ほむら ひろし) 28高橋睦郎(たかはし むつお) 29高橋源一郎(たかはし げんいちろう) 30小池昌代(こいけ まさよ) 31岡井 隆(おかい たかし) ・持ち時間は一人5分。 ・ゲストの持ち時間及び休憩が10分。 席数が最前列が左右に6席。 2列目からが3・6・6・3の席数で11列。 (3+6+6+3)×11+(6+6)=210 の210席。 全席自由席(一部関係者席が6席ほど)。 メインの客層は30〜60代で 男女比は6:4でやや女性が多い。 「途中で帰る人や途中から観に来る人 などもいるため入れ替わりが激しく、 昨年度のチケット売り上げ枚数は360枚で、 計360人が観にきた計算」by伊津野重美 谷川俊太郎さんの朗読ライブが315人。 これを基準に考えると、都内の朗読鑑賞者人口が まあ、この辺りなのかなという気がする。 お客さんは休憩の度に大きく入れ替わり、 席の埋まり方は7割〜9割。 一部と二部だと意外に一部の方がお客さんが入っていた印象がある。 二部に行く休憩で9割ぐらい埋っていた客席の半分ぐらい(4割半)が帰って、 二部のみを観に来たお客さんが、外で列を作って待っていて どっと入って来て、客席の埋り具合が6割ほど。 二部の中休みでまたお客さんが増えて、 ゲストに行くところでまた少し減る。 一部の出演者は一般からの公募で、二部はある程度実績のある人、 ゲストは著名人であることを考えると、 必ずしもネームバリューだけでお客さんお数が増えるわけでない事も分かる。 http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg8.htm を見てもらうと、出演者横の「アマゾン」はアマゾンで その著者名の本が1冊しか出てこなかった人で bk1は二冊以上出てきた人を示します。 アマゾンもbk1もネット書店だが、 アマゾンは一冊の本にしかリンクが貼れず、 bk1は著者名検索結果に外部リンクが貼れるためこの形式になった。 第一部は一般からの公募で、事前に主催者に出演志望を届けて 自分の分のチケット一枚+出演者チケットノルマ二枚の合計三枚、 六千円払えば出演出来る。 二部以降の出演者は主催者が選ぶが、朗読イベントの主催実績や 単独朗読ライブの興行経験のある人、 本の出版実績のある人で占められる。 ゲストになると、著作が複数ある著述業者になる。 このイベントの成り立ちは田中槐さんによると 元々、石井辰彦著「現代詩としての短歌」 http://tinyurl.com/3r3kn が出たときに 勉強会を開いた。第一回、第二回と勉強会を開くうち、 朗読会も開きたいという話になり、第三回の勉強会の時に 朗読会も開き、それが2001年に開かれた 第一回のマラソンリーディングになった。 以後、毎年一回イベントを開催している。 という。 成り立ちからも分かるように、短歌関係者が多く 短歌雑誌「心の花」 http://www.kokoronohana.com/home.htm 短歌雑誌「かばん」 http://www007.upp.so-net.ne.jp/kaban/index.htm の所属者が多い。 出演して分かったのは、 イベントの三ヶ月前から、 プロフィールや台本やBGMや照明や舞台の立ち位置といった 細かな打ち合わせが、郵便&メールを通じて何度も行われ 当日、午前10時からのリハーサル含め、 事前の準備をきちんとするイベントなのだと感じた。 また、鑑賞して感じたのは、派手なコスプレイヤーもいるが イスに座って、もしくは立ったまま 朗読する方が多く、歩き回りながら朗読する人や 立ち位置を変える人は皆無で、朗読は笑いを取ったり、 リズムに乗せたりということは少なく、 真面目な短歌の朗読が中心であった。 また、出演者の中から「笑いを取りに行くことはやめろ」と お達しがあったとも聞いた。 マイクはスタンドマイク・ハンドマイク・ピンマイクと用意され 照明も、客電を落して、朗読者をピンスポットで当てる物から ホリゾント幕(客席の向かいにある、舞台奥の幕)が 白いスクリーンになっていて、赤い照明を当てることで夕焼け、 青い照明を当てることで青空といった、 照明の効果が豊富で、 スクリーンに当てるライト以外のすべての照明を消して 赤いスクリーンをバックに黒いシルエットになって朗読された 錦見映理子さんの照明が印象的でした。 2印象に残った朗読など 短歌に関する知識がないので、短歌その物については どうしても分からない。 するとどうしても外見に行く。 現役の女子高校生で制服で朗読された多田百合香さん、 御本人いわくユニセックス、女性的な風貌で詠まれた 佐藤勇希さん。 シモネタ川柳を詠まれたSinさん。 ゴスロリファッションで、人形を片手に朗読された 人形作家の野原亜莉子(のばらありす)さん。 実際、楽屋でもその人達の名前が良く挙がっていて 特にありすさんは、第一回からマラソンリーディングに出られていて マラリーの顔なんだなというのが客席の雰囲気からも感じられた。 二部では、雪舟さんのアイヌの歌がすごく良かった。 別の朗読会で、別の人が歌うアイヌの歌を聞いたこともあるのだが その時は全然ダメで、今回は選曲も本人の歌唱力 及び持っている空気感も良かった。 アイヌ語である地点で、言葉の意味は分からないのだが “hanrok,hanrok”という語の繰り返しや同じフレーズの繰り返しが 場を心地良くさせた。歌に合わせて目を閉じた雪舟さんの上体が 左右に揺れるのも良かった。 松井茂さんの朗読はやっぱり好きになれなかった。 量子詩の朗読イベントに行ったこともあるのだが 遅刻で朗読その物は見れてないものの、 新聞の天気予報欄を切り取って日付順に並べただけの コンセプチャルアートはコンセプト自体が退屈に思えた。 今回の朗読も、「誰が本物の松井茂なのかと よく聞かれますがいま出ているのが本物の松井茂です」 と紹介されて、出てきた人が前回の朗読会で見た 松井茂さんとは別人だったので驚き、 しかもその後の休憩中に、「今回朗読した松井茂さん」が 田中槐さんの息子さんで、高校生で演芸マニアと聞いて 驚き、帰り際に斉藤斎藤さんから 「松井茂さんはいつも別人に朗読させている」 「松井さんのコンセプトを正確に再現できない  下手な演者をわざと選んでいる」 と聞いて、鮮やかに裏切られたという爽やかさは無く だまされた怒りだけが小さく沸きました。 演者の能力は脇に置いて、コンセプトを立てた松井さんへの 不満を書くけれども、朗読の前に、 自身のイベントの告知を3つもやるのはルール違反だし 朗読の内容も1・2・3の三つの数字が並んだ物を 淡々と詠むだけというのもひどく退屈だ。 コンセプチャルアートは、コンセプトさえおもしろければ、 作品が詰まらなくても評価されます。 ただ、その前提としてまず、 その面白いコンセプトを会場内で提示すべきですし、 松井さんのHPで純粋詩のコンセプトを確認しなければ 面白さが分からないというなら、 それはイベントその物の否定にも繋がると感じます。 また、松井さんのHPで純粋詩のコンセプトを読んだが 頭の良い人であるのは分かったが、 詩だけでなくコンセプトも詰まらないと感じた。 田中槐さんの朗読は最後の短歌が印象的でした。 渋谷が谷であることを意識する時、谷底にいる犬があわれだという 内容で、あわれというのは、古語のあわれと、現代語のあわれで 当然意味が違い、どちらにも取れる辺りが妙に面白かったです。 錦見さんは赤いスクリーンに黒いシルエットで、 焼けたクッキーの描写からはじまる詩を詠まれ、 そこから焼けた街や焼けた心といった辺りに 連想が繋がっていったのが面白かったです。 また、リハーサルでピンヒールのつま先を上げてかがとだけで立ち、 つま先を開閉しながら軽くひざを屈伸されていた時の ひざや腰の動きが絶妙に色っぽかったです。 普通のhip-hopダンスの場合、つま先を開いた状態でひざを曲げて つま先を閉じてひざを伸ばすのですが 錦見さんは逆につま先を閉じてひざを曲げ、 つま先を開いてひざを伸ばすという動きで 照明の効果もあってなまめかしく見えました。 ゲストでは穂村さんが淡々とシュールな日記を読む朗読で 客席を爆笑の渦にしてました。 高橋源一郎さんはバイオリンのBGMをバックに 内外タイムズのアダルト三行広告を読み出し、 そこで伊津野さんが席を立って会場の外に出られたのが 印象的で、 自著の朗読でも、あえて客席が嫌がるような ゲロシーンの濃密な描写を選んで読まれ、 もちろん幼児の言語獲得という高尚なテーマはありつつも 客席を引かせまくってました。 小池昌代さんは空箱が好きな男の話で 深い空箱をみると手を入れたくなるという もろ女性器のメタファーとしての空箱を題材にした内容で 静かな官能空間を作り上げてました。 岡井隆さんは、NHKの短歌講座を持たれている方とかで 楽屋でも非常に尊敬されている人なんだなというのが 伝わって来て、正直、高橋源一郎を知らない歌人の人でも 岡井隆は尊敬しているとか、そういうポジションの人ですね。 いや、楽屋で「高橋源一郎って小説出してたの?」 という会話が聞かれたときにはビックリしましたが 短歌をやってない人が岡井隆を知らないように 短歌をやっている人は高橋源一郎を知らないと まあ、そんなもんだと思います。 ただ、正岡豊さんの朗読辺りから、 亡くなった歌人に捧げる短歌が増えてきて 詠む方も自分と同世代の亡くなった歌人に捧げるので 国語の教科書に載ってなかった歌人への追悼歌・挽歌・弔い歌で 私には予備知識が無さ過ぎてよく分からなかったのが本音です。 斉藤斎藤さんの短歌を穂村弘さんが朝日新聞紙上で 「年収150万ぐらいの収入だけど 家にDVDを持っているそうな人が詠む短歌」 と評されたことに関して、斉藤斎藤さんのファンの女性が 「ひどい言い方だよ。」「歌と関係ないじゃん」と 怒られてて、マラリースタッフの斉藤斎藤さんが 「いや、事実だから良いよ。DVDは無いけど、低収入だし」 と言われてました。 斉藤斎藤さんの掲示板で枡野浩一さんが、 斉藤斎藤さんの名前に対して、 あきらかにペンネームだと分かる変な名前で 本名で短歌を発表する覚悟のない人のやり方だと言い 論争になったのも含め、 叩かれる形式ではあるけれども、 上の人から注目されコメントされる位置にいるという意味で 斉藤斎藤さんはいま短歌界で 頭角を表してきているんだろうなと思いました。 短歌結社の人にとって、 斉藤斎藤さんのようにBen’s等の朗読イベントに出るというのが ・短歌を広めるために、外に出ている ・短歌を捨てて売名行為に走った の両義的に取られるため、 賛否両論が同一人物内で同時に発生している空気が感じられました。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□