■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外    2004/9/12発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 目次 1ポエトリー関連映画 2「8マイル」 3ピニェロ 4レニー=ブルース 5朗読イベント情報 1ポエトリー関連映画 レニー=ブルースという実在のコメディアンを描いた ダスティン=ホフマン主演の映画で、 http://tinyurl.com/3utxm スタンダップコメディアンのマイク一本という芸を見せてくれる 良い映画です。 死紺亭さんにすすめられて、 ポエトリー関連ということでこのメルマガでも 紹介しようと思ったのですが、 エミネムが出てた「8mile」や http://tinyurl.com/6598o ニューヨリカンポエッツカフェを描いた「ピニェロ」より出来が良くて http://tinyurl.com/6xnqt 結構感動しました。 上二つの不満を言うと、ダメな部分がちゃんと描けていないという辺りで。 まずは8マイルから 2「8マイル」 8マイルは前評判で、ラップが下手だったエミネムが 徐々に上手くなってゆく様子を描いていると聞いて観に行ったのですが リズムに乗れていない下手糞なラップをエミネムがやってなくて マイクを持ったまま棒立ちで何も出来ない という処理の仕方をしています。 スラムの面白さってのは、玉石混合でド素人も エントリーしてくるところにあるわけで 初心者が出た場合、バックトラックのリズムと無関係に ただしゃべるというウィリアム=バロウズ状態になる。 トラックのリズムに乗らずにただしゃべる人がいるから リズムに乗って韻を踏む人が上手く見える。 8マイルは下手バージョンを見せてないから、上手い人が出てきても 上手いかどうかが分かりにくい。 さらに言うと、トーナメントが進むにつれて、エミネムも対戦相手も 上手くなって行くのが普通なんだけど、 準決勝辺りでエミネムと対戦する黒人ラッパーが 俺の目から観ると一番上手く見える。 準決勝でやるエミネムのラップも、 対戦相手ほどじゃないけどそこそこ上手く見える。 で、決勝に進んだ時に、黒人街にあるライブハウスのトーナメントで 客は全員黒人で、唯一の白人であるエミネムは客の敵だと。 対戦相手はそのライブハウスのスターで、 当然黒人だと。 まずは、挑戦者のエミネムが「ウォー、オォー」と言って 客席に手を上げて振るようにうながすと、 客席の黒人達が「ウォー、オォー」と言って一斉に手を振り出す。 客席の黒人達はみんな白人のエミネムを勝たせたくないという設定なのに そこだけ突然、エミネムファンになっちゃうの。 客席みんなが手を振り出してから対戦相手に 「ギャングスターラップを気取ってるけど、 私立の学校に通う金持ちじゃねーか」とディスって その辺は共感誘うんだけど、逆だろと。 先にディスって客席の心つかまないと、客席がエミネムに合わせて 合唱なんてしないだろうと。 決勝だっつうのに、エミネムのラップは 客席も合唱しやすい歌謡曲になるし、 対戦相手はビビって何も言えないまま持ち時間が過ぎるっつう設定だし ひどい終わり方だなとか。 トレーラーハウスに住む貧困層出身のエミネムが スターになる話ってんだけど、 トレーラーハウスだってのが分かるように撮影した家の外観のカットが 俺の見た限りじゃなかったし、 トレーラーハウスが貧乏の象徴かってぇーと アメリカのロックスターやムービースターは みんなトレーラーハウスに住んでるしさぁ。 アメリカ全土を旅して回るライブミュージシャンは、 オアシスクラスでもバンで移動だし、 内装がリビングになったトレーラーでツアーを回るのは、 金持ってるミュージシャンの象徴だろうとか、 ハリウッドスターだって、撮影中はロケ車で移動するわけで トレーラーの中に自分の個室を持っているのは ハリウッドでも主役クラスのスターになるわけで 貧困を表現する方法が微妙にズレてる。 むしろ、8マイルでも、他のアメリカ映画でもそうだけど カラーテレビがつきっぱなしの家ってのが、 文化的な意味での貧困を表すことが多い。 昼間っから仕事にも学校にも行かずに ソファーに寝転がってテレビを観ている家族ってのが アメリカ的な貧乏を表現しているように見える。 3ピニェロ ピニェロがダメだったのは、映画の中のピニェロの朗読が上手くない。 ピニェロ役の俳優がやる上手いのか下手なのかよく分からない 中途半端な朗読を散々聞かされた後、映画の最後、 ピニェロの葬式の場面で、本物の朗読詩人の朗読が聞けて、 そこに来てやっと、あの俳優朗読下手だったんだと分かる。 プエルトリカン出身でニューヨークに住むピニェロが、 プエルトリカンとニューヨークを掛けて自ら ニューヨリカンと名乗るのですが、映画の中のピニェロは スコットランドの民族衣装を着てバグパイプをくわえた白人で どうみても人種差別を受けるような外観をしていない。 実物のピニェロの写真を見ると、 髪はアフロヘアで肌は黒人並みに黒く、 上半身裸で、短パンのみをはき、 裸足で路上に寝転がっていたりするので、 これは、路上生活の黒人にしか見えないし、 人種差別もされるだろうなと思うが そういう生々しさが映画では消えてしまっている。 4レニー=ブルース この映画の良いところは、ダメな状態から上がって行って、 スターになって転落するまでをちゃんと描いていて、 社会的地位の上下だけでなく、芸の力がない状態から、 ある状態に上がって、そして麻薬によってしゃべれなくなるまでを 一人の役者がきちんと演じ分けているところにあります。 最初の無名時代に芸が滑っているシーンも、 散々スベりながらも 「素人の演芸大会に出て負けた気分だ」 なんて言う。 スベって寒くなった時に、言って笑いを取る一言ネタってのは 売れない芸人がマズ最初に覚えるネタですからね。 上岡龍太郎さんのお弟子さんでテントさんてのがいて 「むかしむかし、おじいさんとおばあさんが死んでいました」 とかこんなネタですごく寒いのですが、散々スベって言ったセリフが 「いまのとこで笑わなかった奴、 このあと一生笑うとこないよ。こんなんがずっと続くからね。」 このセリフに爆笑でしたね俺は。 たぶん、芸風的に最初に言ったのは上岡龍太郎で 師匠からもらったネタやと思うけど。 芸が確立してからのレニー=ブルースのネタで 「アイゼンハワー」とお題をもらって 即興でしゃべる場面があるのですが Ben‘sのみひろさんを連想させました。 レニーの他のネタもそうですが、 過激でわけの分からないことを言いながらも最後のオチは 常識的なところへ収まる。その落し方がみひろさんぽいです。 常識的なことを積み上げていって 最後非常識の側へ落すのじゃなくて、 非常識な脱線の積み重ねから 最後に論理的整合性のある常識サイドへ落す。 枝雀さんがいうところの「合わせ」ですね。 ミステリー・推理小説と似た論理構造をしてます。 レニー=ブルースはストリップ劇場のコメディアンで 下ネタと社会風刺をメインにしているのですが ストリップ劇場よりも高いギャラで高級なクラブへ引き抜かれる時に 下ネタと社会風刺を禁じられて、もっと高級なネタをやれと言われる。 その辺の葛藤なんかも見てて、共感出来ます。 個人的にも、マネキンの体を触りまくるネタを 引かせ王選手権でやったら、ケーブルテレビでもやってくれと言われて 依頼通りに、同じネタやりました。 テレビ局に苦情が殺到して、私のネタは打ち切りになりましたからね。 ストリップ劇場の芸人が劇場のヌードダンサーと デキてしまうってのも、萩本欽一・渥美清(Exフーテンの寅さん) からあるパターンですし、 レニー=ブルースがユダヤ人だってのも、 ユダヤ人の教育過程の中に、 社会人になる前に路上に出て芸をやるってのがあって ユダヤジョーク集 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062560607.html なんてのは正にその教育から生まれてきているもので ユダヤの言語では「知恵」を示す語と「ジョーク」を示す語が 同じ「ホフマ」という単語だって話もある。義務教育として 路上でのコメディを課しているユダヤ人という社会的ポジションと レニー=ブルースの芸ってが整合性があったりして ドキュメンタリーとしての細部が、8Mileやピニェロより 腑に落ちるんですね。 ジャズバンドをバックにジョークを言って、ジョークに合わせて ジャズバンドが音で合いの手を入れる。 これも、私が好きだったロックミュージシャン、 ジョン=レノンやジョン=ライドンやキャル(ディスチャージ)や 遠藤ミチロウなんかと同じで、 レニー=ブルースはコメディアンであって ミュージシャンじゃないんだけど、 「レコードが売れている」なんてマネージャーが言っていたり する。上に挙げた四人のミュージシャンも ミュージシャンとしての腕よりもコメディアンとしての腕の方が 上だったと思う。 音よりもむしろ言葉にオリジナリティーがあった訳で。 ひょっとすると、ノエル=ギャラガー(オアシス)なんかも 音より言葉の人かもしれないし。 売れてから落ちて行くきっかけの一つが、 過激で猥褻なことを言っているという理由で 警察に何度か逮捕されて、裁判だ拘留だで金と時間を むしり取られる。 これもデッド=ケネディーズがたどった道と似ているし 警察とのトラブルと言うと最近は ブルーススプリングスティーンを連想させる。 よくある話なんだけど ドキュメンタリーとしての細部がよくできている。 とにかく細部に矛盾が無く納得出来る構成で 最後はシド&ナンシーのように、 ヘロインで死んじゃうのですが、 死紺亭さんが言うには レニー=ブルースには他殺説があって、 純度99%のヘロインが死体から検出されたけど 当時のレニー=ブルースの経済状況からは そんな純度の高いヘロインなんて買えなかった。 社会風刺で笑いを取るレニーを疎ましく思った政府が FBIを使って、低純度のヘロインだと言って高純度の物を渡し もらったレニーは低純度の計算で吸引したから 過剰摂取で死んだんじゃないかと。 ストーリーは全部バラしちゃったけど、映画の見所はそこじゃなくて ダスティンホフマン演じるレニーの芸だからね。 薬と言論弾圧の影響でろれつの回らないレニーが ステージの上で意味不明のことを口走ったり黙ったりする辺りは ほんと泣けます。 5朗読イベント情報 9/12 詩のボクシング第二回千葉大会 http://www.geocities.jp/poetrychiba/index.htm 9/25 マラソンリーディング http://members.at.infoseek.co.jp/TRL2001/new.html 10月10日(日) 鉄腕ポエム5 ■第1部 出演:近藤洋一、桑原滝弥、西野智昭、ジュテーム北村、寺田町、 味鼓侍、 ミキ、重兼、AGEHA、大村浩一、花本武、 里宗巧麻、どぶねずみ男、 死紺亭柳竹 開場:13:00 開演:13:30 料金:前売2,000円、当日2,300円(+1ドリンクオーダー) ■第2部 出演:近藤洋一、桑原滝弥、西野智昭、ジュテーム北村、寺田町、 味鼓侍、 荒木巴、ハギー・イルファーン、稀月真皓、レイ、 小笠原淳、 荒川圭一、カワグチタケシ 開場:18:00 開演:18:30 料金:前売2,000円、当日2,300円(+1ドリンクオーダー) ■第1部&第2部通し券 料金:前売3,000円、当日3,500円(+1ドリンクオーダー) 会場:新宿LOFT/PLUS ONE(東京都新宿区歌舞伎町1-14-7 林ビルB2F)  問:090-8047-8673(近藤) http://www.visualize-park.net/tetsuwan-poem/ 会場の地図はこちら↓ http://www.visualize-park.net/tetsuwan-poem/home.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□