■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 号外 2004/6/20発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1詩のボクシングワークショップ 三回講演の最終日、いきなり16人で朗読のトーナメントが始まります。 持ち時間一人3分。 客席15人による挙手で点数が決まる。 決勝は持ちネタと即興の2ラウンド制。 即興はその場でお題を出して、それにあったものを詠む。 楠さんは例として「猫」と「犬」というのを出してました。 客席には観客として松永天馬さんも来てました。 司会:渡辺泰介(わたなべたいすけ)さん。 ゴング:武力也さん。タイムキーパー:あっこさん。 左が先攻、右が後攻、○が勝ち、●が負け。丸の後の数字は得票数。 名前はトーナメント用紙に書いた自己申告通り。 第一回戦 なかちゃん●VSあっこ○ 武力也○9VS村尾悦子●6 ネコのルル●VSサトウアケミ○ 宗前庸子○VSキダナ● 木葉揺(このはゆり)●VS土屋千華○ 加藤●7VSきらぴー☆○8 セリザワケイコ○VS AI● 紫(小松ゆかり)○9VSストイック橋本●6 第二回戦 なかちゃん○VS武力也● サトウアケミ●5VS宗前庸子○10 土屋千華●7VSきらぴー☆○8 セリザワケイコ○9VS紫(小松ゆかり)●6 準決勝 なかちゃん●1VS宗前庸子○14 きらぴー☆●5VSセリザワケイコ○10 決勝 宗前庸子●7VSセリザワケイコ○8 優勝 セリザワケイコ http://serizawakeiko.hp.infoseek.co.jp/ 今回自分は見る方に徹したかったので、 「勝つ気はないので」と言ってラップやって 終わってストップウォッチ見たら一分三十六秒ほどだったから、 残り半分ぐらい持ち時間余らせていたと。 個人的に感想書くと、にしざわあっこさんは、自己紹介のときに 男性役でしゃべられてて、それがやっぱり迫力あったし、 今回もそれを期待したんだけれども、男役じゃなくて 普通の朗読をされたので、ちょっと残念でした。 一回戦で負けているけど、村尾悦子さんは 普通の年長の女性なのですが、 発声が地味に良くて、文章自体は普通だけど、 何か伝わってくるというか、ステージの上で、緊張もしない、 演技もしない、芸も見せないで、普通にしゃべる。 出来そうで出来ないことをやってましたね。 きらぴー☆さんは、しゃべり慣れられてて、 かつ客いじりの技術もあります。 「十人十色と言いますが、あなたの色は何色ですか?」 と客席に聞いて、一人一人のお客さんに色を言ってもらって 話を進めて行くというスタイル。 有名人に例えると上沼恵美子に近い。 「理不尽なこと、おかしなことってありますよね。 小学校のとき算数のテストで 『四角の中に三角は何個あるか答えなさい』 と書いてあって、1・2・3・4と数えて14まで 数えたとき、ふと指が止まった。14個目の三角形が、 四角から半分はみ出しているのだ。 これは四角の中にあるのか外にあるのか。 この問題に算数の時間の半分を注ぎ込んだ。 私はテストが返ってくるのが楽しみだった。 答えがどうであるのか知りたかった。 答えは×。先生は老眼で、 三角が四角からはみ出しているとは思わなかった。 おかしですよね。理不尽ですよね。」 こういうネタで笑いを取る。 普段はセミナーの講師をされているとかで どうりで上手い。 それをご本人に言ったら 「本当は仕事でやり慣れていることではなくて、 紙を持っての朗読をしたくて来たのですが、 自作しか詠んじゃダメだと言われて、 結局いつもやっているのしか出来なかった」 と言われてました。 このきらぴー☆さんが優勝候補の加藤さんを 一回戦で破る大番狂わせをやってのけた。 ストイック橋本さんは、 元ボクシングの選手で、 ストイック橋本はそのときのリングネームだそうです。 谷川俊太郎・ねじめ正一の住む阿佐ヶ谷在住で現代詩に詳しく 演劇をされていたとかで、低い声の発声も出来ている。 ただまあ、テキストが良くなかったのと、 ご本人が朗読するのが目的でなく 鑑賞目的で参加されているのがミエミエで、 私と並んで勝つ気がまったくない人でした。 主催者としてはここが難しいところなんですよね。 楠さんは詩のボクシングで出場もして 他の出演者の鑑賞もしてという人を 期待している節があるのですが、正直に自分の体験を書くと トーナメント制の本気のバトルの場合、 手持ちのテキストをそのまま読んでも、 持ち時間丁度にはならないし、 尺を合わせるためテキストの長さを変えなきゃいけない。 そのとき、どういう演出で、どういう発声で読むかによって 読むスピードも変わってくるので、 色んな解釈、色んな演出で読んでみて、 そのたびに時間をはかって、主催者・会場・客層を考慮しながら テキストの内容自体も変えていって、 テキストと読み方が決まったら、次にそのテキストを暗記して、 紙なしで読めるようにして、鏡の前で動きや振り付けを付けて という準備に、私の場合、5分のネタ1個作るのに 休日丸一日潰れたりするわけです。 当日は他の人が読んでいる間も、自分のことで一杯一杯ですし 終わったら終わったで、ハイテンションの緊張感から 日常のところに降りて行くのが難しいわけです。 ステージでテンション上げた次の日とか どうしてもダウナーになりますからね。 トーナメントの出場とトーナメントの鑑賞はどうしても 両立しないんです。鑑賞目的とかレポート書き目的で行くと 本気の朗読バトルは出来ないですし、 バトル目的だとレポートは書けない。 トーナメントの感想に戻ると、 なかちゃんこと、なかじまようすけさんはですね 二回戦、武力也さんとの対戦で、 テレビショッピングのモノマネをして、商品として 優秀な才能と美貌を持った子供を作る 「キムタクの精子」を出した地点で ステージ向かって右側にいたインテリグループ 宗前庸子・松永天馬・ストイック橋本さんの失笑が 俺の中で面白くてしょうがなかった。 ラウンドカッツだかコトバコだかで同じネタやったときは 滑りまくって「アレ?どうしたんだろ?」と言ってましたが 今回はアレですね。 面白いと思って笑っている人もいると思うのですが、 寒過ぎて笑ってしまった人も結構いたと思うんですよ。 「キムタクの精子には限りがありますので 売り切れの際にはご容赦下さい」 面白くて笑うときは顔を上げて、ステージを見ながら笑うんだけど 失笑するときって、みんなうつむいて、 ステージと目を合わせないように笑うんだよね。 決勝のセリザワさん宗前さんはクオリティー高くて、 演芸色の強いきらぴー☆さん・なかちゃんさんを準決勝で下して、 いわゆるカワグチタケシ系の朗読法で 勝ち抜いて行ったタイプですね。 セリザワさんは一回戦で詠んだ奴がすごく良くて 「父は私のことを息子と呼ぶ。髪も長いしスカートもはいているのに 『うちの息子が』『うちの息子が』という。 私はそれが恥ずかしくてしょうがない。 中学時代、当時好きだった男子生徒と たまたま一緒に帰っていたところを道一つ隔てたところから父が 見るでもなく見ないでもなく微妙な感じですれ違った。 家に帰ると父は職場の同僚に 『息子は嫁に行かなくても良いんだ』と言っていた。」 という話で、内容的には家族ネタで行く 本田まさゆきさんタイプですね。 対する宗前さんはいつものシュールなネタで、 「言葉が窓から入ってくるが置き場所に困る」とか 「男は27歳が良い。 25はまだ青臭い。30は物を知り始めている。 27は肉が付き過ぎているでもなく、つかな過ぎているでもなく。」 というネタで、27歳の方はいつもの宗前さんの詠み方ではなく わざとイヤラシイ薄ら笑いを浮かべて、セクハラっぽい声で シュールなことを言って笑いを取られてました。 決勝の即興で宗前さんに出たお題が「猫舌」で 「スープは冷めていた。」と第一声を出したとき 上手いと思いました。 前の講義で、楠さんが 「即興のお題はすぐにその言葉を口にするのではなく なるべく遠いところから始めた方が良い」と言ってたのですが 熱いスープで猫舌ではなく、正反対の冷たいスープから入るのは 技法としてありだなと。和歌でもわざと 正反対の季節を連想させる言葉から入って、 お題の季節に戻ってくるとか ありますからね。 ところが「戦場では野菜くずが散らばっていて」 とか言い出した辺りで、段々苦しくなって行って 沈黙の時間が長くなりだすのですが、 オロオロせずに堂々とステージに立ってると 沈黙も絵になるし、本人が思うほどピンチじゃないてのは SSWSを見ていると感じますよね。 俺はパニクルとすぐにオロオロして挙動不審になるのですが 座り込んだり、ステージのソデに行こうとしたり、 客席に背を向けたりせずに、 仁王立ちして客席をにらんでいると、黙っていても それはそれで緊張感が持続するし、客席からはパニックに見えない。 個人的には猫舌で、戦場の描写に行った時に、 きれいに終わるなら、スープに戻るし、意外性で勝負するなら 温度の熱さでなく、「冷たい冷戦の割には 肌がヒリヒリしてやけどをしそうだった」とか 恋が云々を持ってきて、冷たいけれど熱く感じたとか その辺ぐらいしかパターンが思いつかなくて 宗前さんも割りと不完全な終わり方をしていました。 個人的に、先攻の宗前さんに「猫舌」という題で トーナメント前に出た例題が「猫」と「犬」だったので 犬に関係のある単語が後攻のお題になることは想像がつく。 いまの流行語ということで「負け犬」辺りがお題だと踏んでいたら セリザワケイコさんへのお題が「ホットドッグ」。 彼氏と遊園地に行って、悩み事を相談したら 予想外にキツイことを言われてという 展開で、俺が思ったのは 「ホットドッグなだけに一本筋が通ってますな」 「ホットドッグなだけにスパイスが効いてます」 落ちはこれだろと。俺の即興詩に対する理解は 「らくごのご」なわけです。 セリザワさんはホットドッグという単語を使わずに ホットドッグの描写をするという高度な技術を見せつつ 終了。 武力也さんも言ってましたが、 即興詩でセリザワさんの勝ちでした。 今回のトーナメントは楠さんのジャッジじゃなくて 客席だったので、すると当然、 選ばれる人も選ぶ基準も変わってくる。 SSWSの場合、詰め込みぎみのフロウてのが評価されるので 早口で息継ぎせずに長くしゃべるのが良いとされる (例:小林大吾さん)が、楠さん的には 武力也さんのように一文が短く、間をいっぱい取って ゆっくりとしゃべる方を好まれるようです。 これはお笑いで言うところの「二丁目劇場」と「花月」の違いで 二丁目は中高生客がメインで来ているので、テンポが速くて 先端の流行語を使っていてというのが好まれるが 花月ではお年寄りが多いので、 耳が遠い人、少し老人性痴呆症が入っている人、 若い頃よりもは頭の回転が落ちている人、 上演中、隣のおばさんと大声でしゃべるおばさんが、 客席にいっぱいいます。 パソコンを触ったことがない人も多い客席に 「昨日、2ちゃんねるで、こんな書き込みがあって」 なんて言っても意味が分からないわけです。 関西では2ちゃんねるというとNHKを意味します。 NHKに何を書き込むのだという話です。 楠さんが、 「今この会場では受けているけど 大きな会場に行ったときに通用しない」 「空間性がない」というのは 俺の解釈だと、しょせんここで受けているのは 「二丁目劇場」だと。「花月」の劇場で通用するのかと。 幼児からお年寄りまでいる全国大会の会場に行ったら 武力也さんみたいにゆっくりしゃべる人が強いよと。 武力也さんとか加藤たけおさんは歳が歳ですので しゃべるスピードは「北の国から」の田中邦衛さんや 「渡る世間は鬼ばかり」の藤岡琢也・角野卓造・赤木春恵ぐらいの テンポで、日常会話としてもゆっくりめのしゃべりです。 楠さんをみていると、全国大会を想定して 地方予選を見ているようなところがあるので 即興詩の出来も評価の基準として大きな比重を占めそうです。 2ネタvsフリートーク 明日、というか今日の17時に 「詩人 VS 芸人 言葉のバトル2」に出なきゃいけないんだけど ネタが決まってない。コトバコでやったネタがそこそこ受けたら それをやろうと思っていたのにコトバコで隣にいた花本武さんが 「詩人vs芸人では、これとは違うのを観れるんだよね」 と言うので思わず「うん」と言ってしまった。 たのむ、俺を追い込まないでくれ。 詩のボクシングのワークショップみても、 みんなこれをやれば受けるというネタは3つぐらいしか持ってなくて 決勝で4つ目のネタになると、結構苦しそうなんだ。 これはダウンタウンでも言っていて、まだ新人時代に 山藤章二とダウンタウンがケンカしたことがあって その理由というのが、テレビの番組で、若手漫才師を集めて 普段やってるネタ以外のことをやって誰が一番面白いか トーナメントするという企画があって、審査員に山藤章二がいて ダウンタウンも出演して、番組の企画や審査員をネタにして 笑いを取ったら、審査員が切れたと。 ダウンタウンが言うには 「俺ら以外のみんな結局普段やってるネタやっとるやん」 舞台だと一つのネタを三ヶ月ぐらい掛けて作るわけで テレビというのは、同じネタを二度やってはいけない場所なわけで ツービートは大阪から東京に向かう新幹線の中で 二時間の移動時間で三十分のネタを作ったらしいですが 結果、ツービートは他の漫才師よりウケなかったが、 同じネタをテレビでやった他の漫才師がテレビから消えても ツービートはテレビに出続けられたわけです。 テレビでは作り込んだネタではなくて、 フリートークやアドリブで笑いを取れなければいけないわけです。 舞台の芸とテレビやラジオのような放送メディアの芸では 同じ芸でも要求されるものが違うわけです。 「パペポTV」とか「ごっつええかんじ」とか フリートークでどれだけ笑いを取れるかという芸ですよね。 私の場合、2ヶ月に1回のコトバコには毎回顔を出していて ネタじゃなくてフリートークをしてるんですね。 オープンマイクイベントを回っていると どこかしらで見た顔の人がいて、同じことをやっていると 「またか」と思われてしまう。 それこそ、トーネメントやバトルの場合、 ネタをきっちり作って勝ちに行くことが大事ですが 「3つか4つしかないネタを使い回してても しょうがないやん」てのもあるわけです。 体質がネタ体質からフリートーク体質に なってしまっているのですが 明日はバトルということでネタをやれということかと思いつつ かといって、主催のどぶねずみ男さんが一度観たネタを もう一度披露してもしょうがないし、 取りあえず新ネタ一個コトバコで試して、 思ったら、花本さんに追い込まれた。 主催者からのメールによると 「簡単な言葉遊びをやります」 とのことですので、大喜利やアドリブやリアクション芸は 言葉遊びで見るからネタはネタでちゃんとやれよ ということだと思います。 いま、ネタ作りをしなきゃいけない現実から逃げて メルマガ書いてます。 3詩の朗読情報 6/20 詩人 VS 芸人 言葉のバトル2 場所:東京都立川市錦町2−1−8グリーンビル2Fあちゃ 時間 17:00(120分間) 料金 1000円(1ドリンク付き) 出演  詩人:ミキ、死紺亭柳竹、木棚環樹、重兼徹 芸人:大村浩一、三島省吾、ぎんなん (HPでは死紺亭さんと大村さんが逆だが、 坊主バー朗読会での噂によるとこっちに変更されたらしい。) http://www.poeca.net/cgi/db.cgi?action=details&code=1346 8/22 詩のボクシング千葉大会 予選 時間:12:30〜16:30 場所:船橋市本町4-19-6船橋市民センター第一会議室、第二会議室 9/12 詩のボクシング千葉大会 本戦 時間:12:30〜16:30 場所:船橋市二和東5‐26‐1船橋二和公民館講堂 詩のボクシング千葉大会公式HP http://www.asahi-net.or.jp/~DM1K-KSNK/chiba2.htm 9/25 マラソン・リーディング2004 http://members.at.infoseek.co.jp/TRL2001/index.html に申し込んで、たぶん手売り分二枚私の元に来るので 誰か定価二千円とは言わないけど、 千円ほどで買って頂けると助かります。 メディアッティ笑タイム http://tinyurl.com/2zwad (深く考えるな。考えてはいけない) ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html 発行者 木棚 環樹:kidana@pat.hi-ho.ne.jp ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□