Bjerke競馬場



ムンク色の空の下で。

 ノルウェーに旅行すると決めたとき、最初に調べたことが 「競馬場があるか」だった。
調べてみると、なんとトロットの競馬をやっているではないか! このとき、競馬場行きはフィヨルド観光と並んで
今回の旅の第1目的に昇格した。

トロットとは、映画「ベン・ハー」に出てくるような2輪の馬車で行う競馬で、その名の通りギャロップではなく
早歩
(=トロット)で走ることがルールになっている。日本語では
繋駕速歩競走」といい、戦後しばらくして消えて
しまったが、欧米では現在でも盛んに行われている。
もともと、馬に乗るときに足をかける
「あぶみ」が紀元前三世紀ごろに発明される前は、馬にまたがるより
馬車の方が主流だったというから、こちらが競馬の原型であるといってもいいだろう。

ノルウェーでは、全国11箇所にトロットの競馬場があり(ちなみにギャロップの競馬場は1箇所のみ)、その中心
がオスロの
Bjerke競馬場である。
さっそくHPにアクセスしてみたが、ノルウェー語オンリー。。翻訳ソフトで英語に直して、必死でそれを解読した
結果、とりあえず当日は開催があることを確認、9月シルバーウィークにオスロへ飛んだ。



 競馬場へは、オスロ駅前から31番のバスを利用。旅行者なら誰でも利用するであろう「オスロパス」が使える
ので、小銭を気にせず乗れる。Bjerkeの読みがわからなかったので緊張したが、車内にはちゃんと次の停留所
が表示されるので大丈夫。街を抜けたバスは高速道路のようなバイパスを飛ばしていき、約20分で「ビャッケ」
ことBjerkeに到着。あたりは高級住宅街というおもむきだ。

バスを降り進行方向に歩くと、すぐに競馬場の入り口が見つかったが、しかしひと気がない。。
本当に競馬を開催しているのかさえよくわからないが、ここまで来て黙って帰るわけにもいかず、それらしい
方向へ歩いていくとそのままコースに出た。

 おお!これがうわさの…! はじめて見るトロットの馬。サラブレッドよりちょっと小さいかな。。
それとも人が大きいのか? 馬のお尻のすぐ後ろに座っている騎手はけっこう難しい体勢で、
素人がマネするのはむずかしそう。

さてここまで入場料もなく入ってこれたのはよいが、その代わりプログラムも競馬新聞もない。
何かないかとスタンドに入ってみる。1階はカウンター席とソファーが少々、2階はレストランシートのような
立派な内装で、指定席ではないようだが一人では居づらい雰囲気、結局1階で過ごすことにした。

プログラムは見当たらなかったが、そこかしこに設置されたタッチパネルで出馬表からオッズまで
チェックすることができる。投票はマークカードだが、これまたノルウェー語だけ。しばし固まったが、
書いてる内容は世界共通なので、にらめっこしているうちになんとなくわかってきた。
あたりを付けたところで、馬券売り場のおじさんに英語で確認。こんなところへ来る東洋人などめったに
いないのだろう、親切におしえてくれた。ノルウェー人はほぼ全員英語が通じるのが救いである。
だったら英語表記くらいあってもよさそうなものだが。。

馬券の種類は単勝・複勝・馬単・3連単の4種類が基本だが、指定された複数レースの勝ち馬を当てる
重勝式もあり、日によっては5重勝、6重勝の発売もあるようだ。
こちらは勝手がわからないので、とりあえず単勝で買ってみる。

コースは1周1000mで、コーナーにはバンクがついているのでサーキットのようにも見える。
レース距離は1609m(中途半端!)と2100mの2種類だった。ふつうの競馬と一番違うのはスタートで、
先導車がついて走りながらのスタートになる。ヘッドライトを光らせて走ってくる先導車を見ていると、
やはりカーレースのような気分だ。

タイムを見ると、スピードはギャロップの競馬の半分くらいか?それでも見ていると結構スピード感はある。
トロット専門に生産・調教されている馬だが、つい?ギャロップをしてしまう馬も時々あり、即失格なのかは
わからないが、一旦最後方まで下げてレースに復帰するシーンが見られた。

さすがに普通の競馬のような鋭い差し脚はなく、また馬群を割って進出するということもできないので、レースは
圧倒的に先行有利。なので1着はオッズ2倍以下の大本命が続き、単勝派としてはたまったもんじゃない。

レース間隔はパドックがないせいか20分ととても短く、考えるヒマもなくあっという間に5連敗してしまった。
残りはあと3レース。。

 馬券売り場のおじさんが家に帰って、
「きょう馬券の買い方もわからない東洋人が来たからおしえてやったけど、
結局オケラで帰ったよ」と話す姿が目に浮かんだ。

このままでは日本へ帰れない! 6Rから作戦変更、馬単で勝負することに。競馬の基本、「頭が大本命のときは
ヒモ荒れ」に従い、中穴を狙って買ってみる。


ちょっとかっこいい「オートスタート」。


しかしそれにしても人が少ない。9月とは言えもうナイターには寒い季節、コンビニでも馬券が買えるシステム
なので、客の入りだけでは判断できないが、首都オスロの競馬場がこれで大丈夫なのか、ちょっと心配になる。
もっとも全人口が500万人に満たない国なので、アジアの感覚で考えてはいけないのかもしれないが。。

そんなことを考えるうちに6Rがスタート、先導車がスピードを上げて走り去ると、わが大本命はスッと先頭に
立った。これで1着は大丈夫。そして2着候補は…と見ると、中団すこし後ろの方だが、ここから届くだろうか?

レースは3コーナーヘ、いい感じでポジションを上げていくのが見える。頼む、勝たせてくれ…!


そして直線、4,5番手にいた僕の馬は今日見た中で一番?の末脚を繰り出し先行馬に迫る!いけー!!

僕の目の前で2番手に並びかけると、そのまま差し切ってゴール!
見事、ノルウェーの地での勝利をもたらしてくれたのでした。

一点買いで馬単12.98倍をヒット。窓口のおじさんに馬券を差し出すと、大げさなアクションで喜んでくれたのが
嬉しかった!
ノルウェー旅行初日の、ビッグな思い出になりました。

 



競馬場グルメ in Bjerke

 ノルウェーの典型的B級グルメ、ポルセ。
じゃがいも粉のクレープでソーセージを巻いた、要はホットドッグ
(ふつうのパンも選択可)
しかしソーセージが抜群にうまいので、十分満足できる。
おねだんは25クローネ(約400円)と、ノルウェーにしては安いほう。

 

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