東京ドーム

”スタジアム巡り”シリーズ初の野球場は、ご存知東京ドーム。新しいイメージのあるこの球場も、オープンは1988年。長嶋一茂が鳴り物入りでヤクルトに入団し、『阪急ブレーブス』ではブーマーが活躍していた頃だから、随分昔になったものだ。。
 そんなノスタルジーをかきたてる、プロ野球OBによる公式戦
”マスターズリーグ”が2001年秋に発足。仕事帰りに、ふらっと足を運んでみた。

 ..回転ドアのゲートを通るとき、エアドーム特有の”耳ツン”を軽く感じた。入るとそこはもう1Fスタンドの外周になる。野球場に限らず、一般的なスタジアムは階段を上ったり、通路を抜けたりして初めてグラウンドが目に入るものだが、ここは入ってすぐ全体が見えてしまうので、なんかあっけない感じ。登場当時は「大リーグ基準」とその広さが話題になったグラウンドだが、その後新球場が次々と作られ、今では平均的、あるいはやや狭い部類に入るようになってしまった。実際目で見ても、外野スタンドの奥行きが小さく、すぐ壁が迫っている(だからドームでは「看板直撃」のホームランが多い)ためか、かなり狭さを感じる。

きょうは月曜日だが、プレーボール前後から続々と観客が詰め掛け、けっこう混雑感を感じるほどの入りになった。(公式発表は24800人、1F内野席のみの開放なのでこれはご愛嬌?)年齢層は高めかなとも思ったが、サラリーマンのグループ、デートっぽいひとも多く、皆いつものプロ野球を観るような感じで来ているようだった。
 マスターズリーグは、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5チーム4回戦総当り、計16試合のリーグ戦で争われる。それぞれ地元球団・地元出身者でメンバーを固めているが、当時フランチャイズの無かった札幌にもチームを作ったことは、野球人気の拡大のための強い意欲が感じられる。 きょうはその”
札幌アンビシャス”と”東京ドリームス”の対戦なのだが、なんと札幌は開幕10連敗中.. きょう初勝利は成るのか。

両チームの先発バッテリーは(東京)村田−大矢、(札幌)宮本−山倉という組み合わせ。
この名前だけでホロリとくる方もおられるかもしれない。
 1回表、札幌は村田の立ち上がりを攻め、幸先良く1点を先制。まだ30代の宮本で必勝体制、といきたいところだったが、その裏、元チームメイトの駒田にドでかい3ランHRを食らってしまい、早くも劣勢に。逆に2点のリードをもらった村田が、マウンドへと向かう。


復活! マサカリ投法。審判のユニフォームにもご注目。

..左足を大きくあげる”マサカリ投法”、村田兆治については、昭和50年以前にお生まれの野球ファンであれば、説明の必要もなかろう。投手生命を懸けた右ヒジの大手術から、3年のブランクを経てカムバックした彼の復活劇は、「サンデー兆治」のニックネームと共に、当時の人々に大きな印象を残した。

そして、ふたたび復活した村田兆治が、いまぼくの目の前にいる。
引退から既に10年以上、50歳も過ぎているというのに、ストレートは常に130キロ後半をキープし、フォークボールは次々とバットに空を切らせる。ドームの観衆は、彼の一球一球にどよめき、惜しみない拍手を送った。
彼が当時のロッテ・オリオンズの本拠地である川崎球場で200勝を達成したとき、
ぼくもどうしても行きたかったのだが、小学生の自分にとって埼玉から川崎は遠すぎた。。
 ほんのちょっと、現役時代には間に合わなかったけど、ほとんどそのままの姿でぼくを待っていてくれた。 そんな想いがあたまをよぎりました。

 回を追うごとに大きくなるスタンドの声援に後押しされるように、結局 村田は5イニングを投げぬき、4回表の3者連続!を含む7奪三振、2失点のまさに力投をみせてくれた。
ベンチへ帰る彼を、観衆はスタンディングオベーションで迎えた。
 その後を受けたのはなんとあの江夏で、豪華リレーにスタンドは大歓声。かつての豪腕こそ見られなかったものの、打たせて取るピッチングで1イニングをぴしゃり。バッティングはともかく、守備・走塁に衰えを隠せない選手達の中で、華麗なフィールディングで難なくゴロを処理するショート広瀬の技が光った。

ここまで、ビッグネームの活躍ばかり取り上げてきたが、マスターズリーグに参加しているのは一流選手ばかりではない。現役時代はほとんど無名に近かった選手もおり、かつて雲の上の存在であったであろうスター選手たちに伍して いきいきとプレーする彼らの姿も、マスターズの見どころのひとつ。
選手全員の顔写真入りパンフレットが300円で販売されているので、スタジアム観戦の際にはぜひとも手元に置いて頂きたい。
『○○選手は現役時代、甘いマスクで多くの女性ファンを泣かせました..』なんて選手紹介のアナウンスも楽しく、往時を知らないひとでも楽しめるよう工夫されていたのは好感が持てる。

審判のユニフォームもなかなかおしゃれで、渋いレザー系のジャケット(上の写真、1塁塁審)を脱ぐと、サーモンピンクのセーター(アンパイア)という凝ったもの。しかしそんな彼らも”マスターズ”で、今日のアンパイアは御年70歳、とのアナウンスに2度びっくり!


結局試合の方は、その後も豪華投手陣を繰り出した東京が、最後は現役を退いたばかりの
守護神・渡辺久信の快速球(最速141Km)で締めて8−2の快勝。
 札幌初勝利、の瞬間が見られなかったのは残念だったけれど、そんなことより、村田兆治を
はじめとする懐かしの選手達のプレーする姿を目にすることができた、という満足感はかなりのものがあった。

オフシーズンの楽しみとして、マスターズリーグ、これからも続いていってほしいものだ。

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