中山競馬場

 中央競馬の大一番、「有馬記念」で知られる中山競馬場。東京(府中)とならび、日本で最もメジャーな競馬場のひとつといってよいだろう。競馬場に限らず、こういう施設というものは規模が大きくなるほど無難な、面白みのないものになりがちだが、ここ中山は、遊び心があるというか、一風変わったとこのある競馬場である。

たとえば上の写真。ふつう、どこの競馬場でもレースを終えた人馬は観客から遠い方へ、そそくさと引き揚げていってしまう。馬券で負けた大多数の観客は、騎手に「ひとこと言わせろ」ぐらいのことは思ってるに違いないから、それが正解なのである。
ところがここでは、検量室がスタンドに隣接しているため、観客のすぐ側までやってきて馬を降りる。先頭で意気揚々と引き揚げてくる馬、あと少し届かなかった馬、全然だった馬、それぞれの騎手の表情を間近で観察できるのは、全国でもここくらいではないだろうか。

 肝心のコースもユニークで、内回り・外回りに分かれているのは珍しくもないが、その外回りコースはうんと外へふくらんでいて、トラックというよりは、むしろ楕円形に近いような形になっている。そして、中山競馬場を最も特徴付けているのが、その楕円形の中に納まった障害コースである。
 8の字状になった障害コースには、大規模な「
バンケット(深い谷というか、掘割状の障害)が設けられており、そこを通過する馬の姿が一瞬見えなくなるほど。その昔、ヨーロッパの貴族が愛馬にまたがり野山を駆けた、競馬の原点・クロスカントリーをイメージさせてくれる。限られた敷地の中で、よくぞこれだけ変化のあるコースを作ったものだ。


難関・大竹柵をジャンプ!

4月の「中山グランドジャンプ」、12月の「中山大障害」、ふたつのGTレースでは、高さ1m60cmの大竹柵・大生垣が出走馬の前に立ちふさがる。競走距離は国内最長の約4km(グランドジャンプ4250m、大障害4100m)、5分近くかかるマラソンレースで、勝利した馬はもちろん、最下位で完走した人馬にも熱い拍手が送られるゴールシーンは、普通の競馬とは全く違った感動を与えてくれる。

 バンケットと大竹柵・大生垣の迫力を両方楽しむことができる、馬場内B地区の投票所屋上からの観戦がおすすめだ。近くには大竹柵・大生垣の実物大模型もあるのでお見逃しなく。


 戦前に中山競馬の初代理事長が、「中山にもダービーに匹敵する名物レースを」という想いから創設したという、中山大障害。春のグランドジャンプは国際レースへと発展し、世界最高賞金額の障害レースとして、世界中のジャンパーたちが中山で覇を争うようになりました。
 中山の”遊び心”は、このふたつのレースに象徴されているのです。

 

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