中日新聞 尾張版 平成11年11月28日
尾張のクロメダカは、美濃とともに限定された地域にしかいない固有の種類であることが、新潟大理学部自然環境科学科の酒泉満教授(四五)の遺伝子鑑定で分かった。メダカは今年二月に絶滅危ぐ種に指定されたのをきっかけに、全国各地で養殖や放流活動が盛んになっているが、酒泉教授は「固有種が絶える
可能性もあるため、養殖メダカの放流は、その場で捕れた土地固有のメ夕カを」と警告している。
遺伝子調査は「生活と環境を考える」をテーマに尾北地方で活動するNPO(非営利組織)のリリオの会(今枝久代表)が企画した。同会は今年四月から岩倉市を流れる五条川のメダカを増やそうと、この川で捕ったクロメダカを養殖中。活動の一環で立田村、西尾市でも採取、十月に酒泉教授に鑑定依頼した。酒泉教授によると、いずれの夕ロメダカも、青森県から京都府の日本海側に見られる「北日本集団」ではなく、それ以外の地域の「南日本集団」に属する種類だった。このうち西尾のクロメダカ(五匹を鑑定)は、山陰から東北の太平洋側に分布する「8型」の遺伝子を持っていたが、岩倉(五匹)と立田(四匹)の多くは「14型」だった。
これまでの酒泉教授の調査で「8型」は、小坂井町や静岡県磐田市、三重県鳥羽市でも見つかっており広範囲に及ぶが、これらの地域の間に挟まる佐織町や岐阜県大垣市、同県安八町といった尾張・美農地方だけで「14型」が見つかった。
この結果、尾張のクロメダカは、南日本集団の中でも、限られた地域だけにいる”濃尾平野メダカ”と言えるという。8型、14型とも見た目はほぽ同じだが、遺伝子の型が異なることから「別種」
と考えられている。
尾張・美濃のメダカは、瀬戸−日進−豊明−大府−半田あたりを境(地図実線部)に西側に生息。 一方「北限や西限の線引きはサンプル数が少なく、分からない。ただ西限については津市より東側(地図破線部)だろう」という。
リリオの会では、今回の鑑定をきっかけに「尾張のメダカに限らず、メダカの遺伝子の地域差を保護する方法について考えよう」と、全国の人が意見発表や情報交換できる「ご意見聞かせて!専用掲示板」を同会のホームぺージに開設、意見を幕集している。アドレスは
http://www.pat.hi−ho.ne.jp/imaeda−q/
酒泉先生より後日ご指摘を受けましたので書き加えます。

・記事中にある「別種」に関して
「別」ではなく,「地方個体群として他地域のものと区別できる」ということ。
・同じく「・・型」に関して
ミトコンドリアDNA のチトクロームbという特定の遺伝子の型であること。
・記事中にある地図に関して
「そこまで言っていいの?」とのこと。

でした。

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