平成12年3月10日 中日新聞尾張版

江南市小折本町柳橋の山一酒造=村瀬公康社長(37)=の敷地に、地元のホ夕ル愛好家らが支援して、”ホ夕ルの庭”を造る計画が進んでいる。ホ夕ルが舞う酒蔵の庭園で酒の宴(うたげ)―。こんな光景が今年の初夏にも見られるかもしれない。

 山一酒造の敷地内には、約三百平方mの日本庭園がある。同酒造が創業した一九一五(大正四)年に造られ、松やモミジ、ツツジなどが植えられている。
 ホ夕ルの庭構想が浮かんだのは昨年末。「前々から余っているスぺースを利用して、独り暮らしのお年寄りや街の人に憩いの場を提供できたら」と思っていた村瀬社長の弟で専務の元弥さん(三六)が、自然保護活動をしている岩倉市の市民団体リリオの会会員で取引先でもある同市本町畑中、山吉酒店経営者の高桑敏直さん(四一)にホ夕ル育成を勧められたのがきっかけだった。
 山一酒造にほど近い同市曽本町では、地一元の有志が集まって江南ホ夕ル研究会ー中山修会長(七一)、会員二十人ーが結成され、ヒメボ夕ルが舞う光の園を取り戻そうと昨年六月ごろから活動している。こうした動きを知っていた高桑さんが仲介役となって、酒蔵でのホ夕ル庭園構想の支援を研究会に要請した。中山会長らも「願ってもないチャンス」と、ホ夕ルの庭づくりの支援に乗り出した。
 中山会長らは、ヒメボ夕ルの幼虫のえさとなるオカチョウジガイを飼育。五条川の堤防などにヒメボ夕ルを飛ばそうと、活動を続けてきた。市などにも働き掛け、現在では曽本町二子の二子山児童遊園の一角などに「ホ夕ルの里」が設けられるなど、活動は着々と根付いている。
 その一環で、研究会のメンバーは、自分たちが養殖しているオカチョウジガイ二十匹余りを今月初めに山一酒造に贈った。中山会長は「山一酒造の庭は、長年蓄積してきた枯れ葉などが豊富で、オカチョウジガイの成育には最高の環境。五月ごろには数十倍の数になっているだろう」と期待する。
 研究会は五月と六月に、三河地方や岐阜県内でホ夕ルを捕まえる計画を立てており、酒蔵の庭園にも放す予定。「つがいになって卵を産み、来年からはホ夕ルの自生地になるはずです」と自信を深めている。
 村瀬一元弥さんは「酒造りに使っている地下水をくんで、庭の中央に川のように流し、ヒメボ夕ルのほかにメダカも養殖したい。ホタルやメダカを、新酒を味わいながら観賞できるよう計画を進めたい」と話している。 

ヒメボ夕ル 人里近くの雑木林や竹林などに生恵する。体長六ー八ミリでゲンジボ夕ルやへイケボ夕ルに比べて小さい。
 オ力チョウジガイ 体長三−五ミリの陸に生息する巻き貝。枯れ葉などが積もった湿った土中や土の表面を好む。

記者の目
山一酒造だけでなく、江南ホ夕ル研究会のメンバーが昨年から始めたホ夕ルの養殖活動は、周辺の個人宅などにも広がっているといい、研究会のホ夕ルの里計画は一年足らずで現実のものになろうとしている。五月から六月上旬の夜には、曽本町周辺で淡い光の舞が見られるだろう。「いくらとっても無くならない」ぐらいにホ夕ルを増やすには、ここ数年が勝負どころ。酒蔵の「ホ夕ルの庭」が弾みとなり、さらに輪が広がればと願う。
(江南通信部・原 誠司)
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