こどもタイムズ

平成12年4月8日 中日新聞夕刊 こどもタイムズコーナー

”メダカの学校”春本番
そっとのぞいてみてごらん

かわいい”生徒”みんなにてるけど
地域で遺伝子が違うヨ
地元産を大切に

別の場所からの放流はやめよう

 私は、愛知県尾張地方を流れる五条川に住むメダカです。春本番。メダカの学校には行きたいけれど、川はコンクリート化され、水田も減って、学校はめっきり少なくなってしまいました。このため、全国の仲間の中には、他の土地へ旅立つ?ものまでいます。でも、・・・・。まあ、私たちの話聞いてやってくださいな。
 
 昨年二月のことでした。野生のメダカは環境庁から絶滅の恐れがある魚に指定されました。日本にすむ淡水魚の中で、一番小さな魚です。古くから親しまれていたから、注目されました。そして、いなくなったら別のところから連れてこよう、増やしたら、という善意の人たちが目立つようになりました。
 そんな動きに、尾張地方で環境問題に取り組む市民団体「リリオの会」は、地域のメダカの、親から子に伝わるさまざまな性質、つまり遺伝子を調べようと思い立ったのです。野生のメダカはクロメダカです。北海道以外の全国にいますが、一般にはみんな同じだと思われています。でもメンバーの服部徹雄さんは「もし地域によって違った特徴があれば、かってに放流したら、本来いたものがいなくなる可能性もある。保護は慎重にしなければと考えたんです」と言います。
 全国のメダカの遺伝子を研究している酒泉満・新潟大学教授に、尾張地方の五条川(岩倉市)と立田村、愛知県三河地方の西尾市で捕まえた三十匹を送り、、検査を頼みました。その結果、尾張と三河では遺伝子が違うことがわかりました。
 酒泉教授によれば、日本のメダカは、南日本集団と北日本集団に分かれます。このうち南日本集団は、琉球型から東日本型まで九つの主なタイプがあります。三河のメダカは東日本型の一般的なタイプでしたが、尾張のものは全国でも濃尾平野にしか見られない遺伝子を持っていたのです。
 「メダカ自信が他の地域へ移っていくことはないし、食用にならなかったせいか、ヒト移動させられることもほとんどなく、地域特有の遺伝子が保たれたようです」と酒泉教授。
 ところが、姿が身近に見られなくなった二、三十年前から、少し様子が変ってきました、別の地域のものを、いなくなった川に放流したりするようになり、関東の利根川水系で関西のメダカが見つかったり、やがて、ふるさと小包になって全国に発送されるようにもなったのです。
 でも、最近、地域のメダカを大切にという声が高まり、動きが変わりつつあります。ふるさと小包はなくなりました。別の地域のメダカ養殖を考えていた人も、地元のものを増やすことにしました。岩倉市の岩倉北小学校では、五条川のメダカのすめる池が、PTAやリリオの会などの協力でできました。
 酒泉教授は「地域にはその土地固有の生き物がすんでいます。それはその地域とともに生きてきたものなんです。大切に考えてほしい。」と強調します。服部さんたちも「川などに放流するのは地元のメダカだけにして」と願っています。
 現物はカラーです。よって、この地図ではさっぱりわからんけどご容赦。
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