二人の舌がしっとりと絡み合う。
手塚の指が愛しげにリョーマの髪を何度も梳いた。
リョーマは手塚の首に腕を巻き付け、もっと近づきたくなって手塚の上に跨った。
「重くない?」
少し唇を離してリョーマが掠れた声で尋ねると、手塚は「いや」と答え、ほんの少しでも離れていたくないかのように、すぐに唇を合わせてくる。
「ん……あっ」
手塚の手が、リョーマの敏感なところを撫で上げた。
「くにみつ……したい?」
「だめか?」
「いいよ…」
途端にやわらかだった口づけが激しいものへと変貌する。
それと同時に手塚の手がリョーマの肌を滑り、首から背中、脇腹、そして胸へと移動し始める。
「は……ああ………んっ」
「リョーマ……リョーマ……」
譫言のようにリョーマの名前を呼びながら、手塚の唇が頬から耳朶にまわり、首筋へと降りてゆく。
リョーマの手も手塚の首筋から肩のラインを滑り降りて背中を彷徨う。
「ん……ああ…っ」
手塚がリョーマの身体を少し持ち上げるようにして、胸の突起を口に含む。きつく吸い上げられてリョーマの唇から溜息のような声が漏れた。
「くにみつ……好き……っあっんっ」
手塚の長い指がリョーマの秘蕾にゆっくりと侵入してくる。
「…ここを使ってもいいか?」
昨夜のダメージを案じて手塚がそっと声をかける。
「うん…アンタの抱き方じゃないと、物足らないんだよね」
息を軽く弾ませながら、リョーマが手塚を覗き込んでクスッと笑った。
「ばか……そんなことを言うと、俺は止まらなくなる…」
「アンタならいいんだよ…どんなことしたって」
「リョーマ…」
手塚は噛みつくようなキスをしながらリョーマの身体を持ち上げた。
すでに充分な固さで勃ち上がった自分の上にリョーマの身体を下ろそうとするが、なかなか上手くいかない。
リョーマはクスッと笑うと「ちょっと待って」と手塚を制した。
手塚がリョーマを見上げると、リョーマは左手を後ろにまわし、手塚の屹立を掴むと自らの後孔に導いた。
「ん……くっ」
目を閉じて自分を受け入れてゆくリョーマの身体を支えながら、手塚はその表情を食い入るように見つめた。
わずかなライトと月明かりに照らされたリョーマの艶めいた表情が手塚の理性を食い尽くしてゆく。
「あ……ああ、んっ」
小さく喘ぎながらゆっくりと下ろされてゆくリョーマの腰を掴むと、手塚は一気に引き下ろした。
「ひああぁっ!」
いきなり奥深く手塚が入り込み、リョーマは圧迫感に目を見開いた。
「リョーマ…っ」
間髪入れずに手塚が突き上げ始めると、リョーマは必死になって手塚の首に縋り付いた。
手塚の激しい動きに湯が跳ね上がり、大きく波立つ。
突き上げると同時にリョーマの腰を引き下ろし、手塚は深く深く自身を突き刺し続ける。
「あっ、あっ、あはっ、く…みつっ……!」
激しく上下に揺さぶられながら、リョーマが手塚の唇を求めてくる。
手塚は上下に突き上げていた腰の動きを前後左右に回すような動きに切り替え、ゆっくりとした動きでリョーマの中を掻き回す。
求めてくるリョーマの唇に応えているうちに、手塚は苦しいほどの愛しさを感じてリョーマを抱き締めた。
「ああっ、深………っ!」
抱き締められて、さらに奥深くまで手塚を受け入れる形になったリョーマはあまりの快感に思い切り手塚を締め上げた。
「く…っ」
締め上げられた手塚は、またさらに質量を増してゆく。
入口を目一杯広げられて、身体の奥深くまで手塚を受け入れながら、リョーマは昨夜には感じられなかった幸福感を身体中に感じていた。
「やっぱり、アンタじゃないと感じない……どうしてくれんの?」
「大丈夫だ。俺はお前を手放したりしない」
そう言ってリョーマに口づけると、手塚はリョーマの頬にそっと手を伸ばした。
「愛してる……リョーマ……」
「オレも……アンタを、アンタだけを…愛してる」
二人は見つめ合い、微笑み合うと、もう一度深く唇を重ねていった。
再開された手塚の動きはさらに情熱的にリョーマを揺さぶる。
突き上げられるたびにリョーマの唇から悲鳴に近い嬌声が上がった。
「くにみつ…っ、ダメ、も……出る……っ!」
限界を知らせるリョーマの表情を見上げた手塚は、いきなりリョーマの張りつめた屹立の根元を左手で掴むと右手でリョーマの身体を持ち上げ、自分を引き抜いてしまった。
「なんでっ、まだっ!」
「ここの湯の中に出すわけにはいかないだろう…」
「………っ」
リョーマは頬を染めると小さく「うん」と頷いた。
手塚はリョーマの脈打つ屹立を握り込んだままリョーマを立ち上がらせると、洗い場へと続く平らな岩の上に手をつかせる。
「くにみつ……っ」
「リョーマ…」
耳元で名前を囁きながら、手塚は再びリョーマの中に身を沈めてゆく。
「うあっ………あああぁっ!」
さっきまで自分の中にいた手塚よりもさらに質量が増しているような気がして、リョーマは肩越しに手塚を振り返った。
「な、…んか……さっきより……すごくない?」
「…すまん」
口では謝ったが、手塚は深く息を吐くと一気に根元まで熱塊を埋め込んだ。
「うあっ!……くっ……」
「リョーマ………?」
一瞬硬直したリョーマの身体が小刻みに震え始めるのを感じて、手塚は強引すぎたことを少し後悔した。
「くっ……ふっ」
だがどうやら泣いているのではないらしいリョーマの身体を起こさせて顔を覗き込む。
「……リョーマ?」
リョーマは小さく身体を揺らしながら笑っていた。
「…やっぱりさ、間違いなくオレのくにみつだね……ゴーインすぎ」
瞳を潤ませながらも、そう言って微笑むリョーマに、手塚は昨夜『自分』がリョーマの心をひどく傷つけていたことを痛感した。
昨夜リョーマを抱いたのは自分であって自分ではない。身体は自分であっても、精神は傍観者であったのだ。
そのことが手塚に激しい憤りを感じさせる。
誰よりも大切にしたい存在を自分の手で踏みにじってしまったような、どうしようもない怒りと、嫉妬に似た感情が手塚の胸に広がった。
「リョーマ…」
「もっと……アンタを感じさせてよ……アンタはオレのものだって……オレも…アンタのものだって……」
手塚は何も言えなくなってリョーマをきつく抱き締めた。
自分の怒りなど、本当はちっぽけなもののような気が、手塚は、した。
上気したリョーマの頬に優しく口づけ、その耳元に囁く。
「誰にも渡さない……お前はずっと俺のものだ」
「うん……くにみつ………んっ、ああ…っ」
手塚は緩やかに腰を動かし始める。
冷めかけた二人の身体に再び熱い火が灯されてゆく。
リョーマの身体をそっと倒してもう一度岩に手をつかせ、手塚がリョーマの腰を抱え直して激しく抉り始める。
「はっ、あっ、ああっ、んっ、い…っ!」
「くっ、…リョーマっ」
立ち上る湯気の中に熱い吐息を紛らせて、二人は睦言も交わさずただ互いの名前だけを呼び合った。
「あっ、あっ、あぁっ、…っあっ!」
「リョーマ…」
「くにみつ…っ」
切なく自分を呼ぶリョーマの声に、手塚の胸が締め付けられる。
守るとか、守られるとかではなく、対等でありたいとリョーマは言った。自分もそうありたいと手塚は思った。
だが愛する者を守りたいという気持ちは、決して相手を貶めるものではなく、軽視しているのでもなく、純粋な愛しさの表れなのだと手塚は気づいた。
(これが、この想いが…本当の………)
手塚の抽挿のピッチが上がる。
「やっ、ああぁっ、あぁっ、あああっ、やぁっ!」
バシャバシャと激しく湯が波立ち、強すぎる快感にリョーマの声も悲鳴に近くなる。
「くっ、リョーマっ、もう、少し…っ!」
リョーマの腰もうねり始めている。限界が近い。
きつく狭まったリョーマの内部をさらに激しく抉り込みながら、手塚も自分を追い上げてゆく。
「やあぁっ、くにみつっ、だめっ…イクっ……はっ、あっ、んん………くっ!!!」
リョーマの身体が強ばり、とうとう堪えきれずに岩の上に白濁液を撒き散らした。
引きちぎられそうなほどきつく絞り込まれ、手塚も堪らずに激情を吐き出す。
リョーマの体内の奥深くを自らの体液で満たしながら、手塚の心もまた、熱く満たされていった。