沈丁花の香りのする闇に、二人分の吐息が溶けてゆく。
「あ…んっ」
胸の突起を手塚にきつく吸い上げられて、リョーマの身体がビクッと揺れた。
もう一つの突起は手塚の指に摘み上げられ、親指で押し潰されて固く凝っている。
長い口づけで赤く濡れたリョーマの唇は吐息とともに甘い声を漏らし続けていた。
「くにみ…つ………」
自分の胸に顔を埋めている愛しい恋人の髪を、リョーマがそっと梳いてやる。
顔を上げた手塚がリョーマの頭を引き寄せて口づけ、唇に優しく歯を立てる。
「あ……」
「…欲しいのか?」
リョーマの瞳が期待感に妖しく輝く。
「………アンタは?」
「………」
手塚は黙ったままリョーマの手を取り、自分の熱へと導く。
「……すごい……ドクドク言ってる……」
「…っ」
リョーマに緩く扱かれて、手塚が眉を寄せる。
「オレなら大丈夫だから………我慢しなくていいよ…」
そう言いながら、リョーマは腰を浮かせて自ら手塚の熱を小さな蕾へとあてがった。手塚も自分の熱塊に手を添える。
「あ………んぁ…っ」
完全に近い形に変化した手塚の熱は、リョーマの狭い蕾を軋ませながら、ゆっくりと先端の部分をめり込ませていく。
「あ……あ……っ、んっ」
「く………っ」
先端を埋め込んだところでリョーマの身体が硬直した。
「キツイか?」
「違………っ、………いっちゃいそう……っ」
すかさず手塚がリョーマの熱塊の根元をきつく掴んだ。
「やっ、痛っ………っ」
「じゃあ抜くか?」
「ヤダっ」
瞳を潤ませてリョーマが手塚を睨む。
そんなリョーマに小さく笑いかけると、手塚は空いた方の手でリョーマの腰をしっかりと抱え直した。
「…少し我慢しろ」
「え?………うあぁっ!!」
手塚が強引にリョーマの腰を引き下ろした。ズブッと音が聞こえそうなほど一気に手塚の熱塊が根元まで捩じ込まれる。
「あ……だめ、だっ……くにみ……っ、うあっ!」
手塚がリョーマを抱きかかえて立ち上がり、湯船の縁に腰掛けた。
途端に水中の浮力がなくなり、リョーマは自分の体重のために、さらに奥まで手塚をくわえ込む。
「あぁっ」
抱えられた腰を前後左右に揺すられ、タイミング良く手塚の戒めが熱塊から外されると、リョーマは我慢しきれずに熱い飛沫を吹き上げていた。
「あぁっ!!…あっ……ああぁ………んん……っ」
「く、う………っ」
思い切り締め上げられて手塚も極めてしまいそうになったが、リョーマの身体をきつく抱き締めてなんとかやり過ごした。
「…ごめ……先に……」
近くの桶に手を伸ばし、リョーマの愛液を洗い流すと、手塚はリョーマに軽く口づける。
「次は一緒に、な」
「…うん」
二人の唇がもう一度自然に重なってゆく。深く、さらにもっと深く舌を絡め合い、熱い想いを伝え合う。
緩く腰を動かされて、リョーマの眉が微かに寄せられた。
「…リョーマ……」
唇を離し、腰を揺らめかせながら手塚が熱い吐息を漏らす。それに応えるように、リョーマは手塚の首にまわした腕に力を込めた。
「…気持ち……いい?……あ、ん……っ」
「ああ……」
手塚の腰が次第に加速し始める。
回すように揺らめいていた動きが、勢いをつけた上下運動に変わってゆく。
「あっ、んんっ、あっ、はぁっ」
突き上げられる度にリョーマの口から小さく声が漏れた。いつの間にかリョ−マの脚が手塚の腰に巻き付けられ、離れないようにしっかりと固定されている。それでも時折はずれてしまいそうなほど、手塚の突き上げが激しくなってきた。
「あっ、ああっ、ああっ、くにみ…つ…っ、はぁっ、あ、んっ」
手塚がリョーマの尻をガッチリ掴み、突き上げに合わせて自分へと引き寄せる。
「く、…う、……リョーマ……っ」
「ひっ、やっ、ああぁっ、ああっ!」
リョーマは手塚の首に縋り付いて、強烈な快感に喘いだ。手塚と自分の腹に揉まれて、リョーマの熱が、また目覚め始める。
「あっ、あっ、ああっ、ああっ!」
「ん……」
手塚がリョーマの耳元で甘く呻く。その声に呼応するように、リョーマの蕾がキュッと締まった。
「う…………んっ、リョーマ……」
「ああっ、あ、んんっ、や、あっ」
手塚が愛しそうにリョーマの髪を指に絡める。そのままリョーマを引き寄せて、突き上げながら噛みつくように口づけた。
「んんっ、んんっ、んっ、う、んっ!」
「………」
腰の動きを緩めながら手塚がゆっくりと唇を離し、喘ぐように大きく息を吐き出す。何度目かの波をどうにか堪えたところだった。
「んっ、…くにみつ?……あっ……んっ」
まだいかないのかと言いたげなリョーマに手塚は小さく笑った。
「勿体なくてな」
「な…っ」
リョーマが上気した頬をさらに真っ赤にする。
「付き合ってもらうぞ。俺を煽ったのはお前だ」
言いながら一度強く腰を押し上げる。
「やあぁっ!」
いきなり内蔵を押し上げながら深く抉られて、リョーマは堪らずに仰け反った。
手塚はリョーマの奥深くに自身を捩じ込んだまま、大きく腰を回す。
「や、だぁっ!あぁっ!あああっ!」
「リョーマ……」
腰の動きを止めずに、反らされたリョーマの喉に手塚が口づける。そのまま唇をずらし、浮き出た鎖骨にきつく跡を残す。
延々と続く、激しく甘い責め苦に、リョーマは意識が朦朧としてくる。それでも手塚が愛しくて愛しくて、さらに手塚を感じ取ろうと本能が蠢き出した。
「あ、んっ、ああっ、あ……っ」
再び突き上げだした手塚の動きに合わせて、リョーマの腰も妖しく揺れ出す。
「くにみ…つ……くに、みつ……っんん、ああっ」
自分の耳元で喘がれて、いよいよ手塚も限界が近くなる。
手塚は一旦動きを止めて、己を突き刺したまま、リョーマを抱き上げた。
「ああぁっ、んんっ、な、に……?」
そのままリョーマを洗い場に連れてゆき、横たえさせる。
「ひゃっ」
床の冷たさにリョーマが身を竦める。
だが一呼吸おく間もなく手塚が激しく突き込み始めた。
「いやぁっ!ああっ、ああっ、あっ、あ、ああっ!」
「く、うっ、んっ」
手塚が歯を食いしばって腰を叩きつける。洗い場の屋根に肉を打つ鈍い音が反響した。
熱く猛る牡を深く捩じ込んだところでまた一旦動きを止め、腕に引っかけていたリョーマの脚を肩に担ぎ直し、手塚はさらに奥めがけて真上から肉剣を突き下ろす。
「ひああぁっ、ああぁっ、ああっ、あっ、あ、や…っ、出る……ああぁっ…」
「うっ、くぅ……まだだ………もう、少し……っ、リョーマ……っ!」
リョーマは必死になって射精感を堪えるが、堪える傍から手塚に激しく突き込まれて目の前が白くスパークする。
「すご……あっ、や、出るっ………あっ、も、ダメ………っ」
手塚は覆い被さっていた身体を起こし、斜め下から突き上げるように大きなストロークでリョーマの最奥を抉った。
「ああっ、やあぁっ!」
抉り上げられてリョーマの腰が浮き上がる。その浮き上がった腰をさらに突き上げられて、リョーマはとうとう我慢できずに愛液を吹き上げた。
「あああっ、ああ、あっ……ああっ!あっ!あ、はっ!」
射精中もさらに何度も激しく突き込まれ、その度にまるで最後の一滴まで押し出されるかようにリョーマは熱い白濁液を吹き上げ続けた。
「リョー…マ……っ!」
リョーマが自分の体液にまみれてしまった頃、手塚がようやく絶頂を迎える。
「あ……くっ、うっ、リョーマ……ぁっ!」
「ひ、あっ!」
手塚は細いリョーマの腰骨を鷲掴んで力の限り自分に引き寄せ、きつく絡みついてくる腸壁に熱い体液を勢いよく叩きつける。
「う、あっ、…ぁっ……っく!」
長く抑え込んでいた激情は一度では出しきれず、何度も強く腰を打ちつけながら、手塚は放出し続けた。
「う………っ、ん………」
すべてを注ぎ終え、リョーマの直腸を自分の体液で満たすと、手塚は大きく息を吐いた。
「……ああ…くにみつ……すご……熱い……いっぱい……」
それだけ言うと、手塚の腕を掴んでいたリョーマの手がぱったりと床に落ちる。
「リョーマ……?」
「………」
長く、強すぎた快感に、リョーマは失神してしまっていた。
「………すまない……リョーマ…」
手塚は眉を寄せ、額に手を当てて呟いた。
ゆっくり自身を引き抜き、リョーマの身体を抱き上げる。
身体を綺麗にしてやり、失神したリョーマを抱き締めたまま、手塚はそっと湯船に身を浸した。
「ん……」
手塚の腕の中で、リョーマがゆっくりと目を開ける。
「……大丈夫か?」
「……うん」
リョーマが満ち足りた微笑みを浮かべて手塚を見上げる。
その笑顔を見て、謝るつもりでいた手塚は謝罪の言葉を呑み込んだ。