手塚がもう一度口づける。
そのまま唇をずらし、リョーマの首筋に軽く吸い付く。
「は、あ……っ」
ぞくっと身体を震わせて、リョーマが手塚にしがみつく。
「リョーマ……」
耳元で名前を囁いて頬を掠めた手塚の唇は、リョーマの唇を数回啄んで、また深く重なってゆく。
艶っぽい水音をさせて舌を絡め合いながら、手塚の手がリョーマの浴衣の中へ侵入してきた。
「やっ!…ダメだって……んんっ!」
リョーマの制止の声などまるで聞こえないかのように、手塚の指がリョーマの下着の上から熱を持ち始めた固まりを撫で上げる。
「ああ…んっ、誰かに…見られ……っ!!」
少し力を込めて撫で上げられて、リョーマは息を飲む。
「声を出さなければ大丈夫だ……ここはかなり見えにくい」
「そんな…っ、あ……んっ!」
手塚の手がリョーマの下着の中へ差し込まれた。
直に触れられ、撫で上げられて、リョーマは叫んでしまいそうになる口を両手で必死に押さえ込んだ。
すでに最初のキスで熱を持ってしまっていたリョーマの雄は、手塚に直接触られて早くも蜜を零し始めてしまう。
手塚は跪くと、リョーマの下着を膝まで下ろし、浴衣の裾を大きく広げた。
「なっ!や、だ……あっ」
手塚は躊躇いもせずにリョーマの熱い雄を口に含むと、先端から溢れる蜜を舌先ですくい取り、根元から塗りたくるようにゆっくりと舐め上げる。
「…っ、………っっ!!!」
必死に両手で口を押さえているリョーマが、声を出す代わりに全身を震わせて快感を手塚に伝える。
先端を舌で舐め回され、すっぽりと口腔にすべて包まれてきつく吸い上げられる。それを何度も繰り返されるうちに手塚の口の中でどんどん成長していったリョーマの雄が、やがて限界近くまで膨らみ、脈打ち始めた。
「んんっ、………ダ、メ………くにみつっ!」
手塚の指がリョーマの後孔を探り出し、ヤワヤワと蕾の周りをなぞったり中心に圧力をかけたりして刺激し始める。
「…っ、んんっ……んっ!」
秘蕾の周りを彷徨っていた指先が入口をこじ開けるように内部に侵入してきた。
「んんっ!」
リョーマの身体がびくんと大きく揺れる。中で蠢いていた指が一気に付け根まで差し込まれた。
手塚はリョーマを追い上げるようにその熱塊を手で扱きながら口腔内を行き来させ、同時に後孔の指を出し入れする。
リョーマの身体がビクビクと震えだし、限界を訴え始める。
「出ちゃ………っん、くっ、………っ!!!」
とどめのようにきつく吸い上げられ、後孔ではスイートスポットの直撃を受けて、ついにリョーマが堪えきれずに熱い白濁液を手塚の口腔内に吐き出してしまった。
手塚はリョーマの放ったものをすべて口内に受け止める。
リョーマは放心したように、瞳を潤ませ肩で息をしながら手塚をぼんやり見つめていると、手塚にいきなり身体を後ろ向きにさせられた。
手塚はリョーマの浴衣の裾をまくり上げると、あらわになった双丘に手をかけ、左右に押し開いた。
「やっ!?……ああっ!」
そのままそこに唇を寄せ、口に含んでいたリョーマの放ったものを蕾の中に流し込む。
うまく入らなかった液体がリョーマの太股を伝い落ちていった。
「ここで………やる気?」
手塚は黙ったままリョーマを見上げた。
「…我慢、できないんスか?」
少しだけ余裕を取り戻したリョーマが、ちょっとだけ意地悪く言ってみる。
「…今日はずっと我慢していたからな。そろそろ俺も限界だ」
手塚の瞳が艶めいた光を宿す。
遊園地のベンチで、観覧車の中で、そして手塚の家の浴室で、ずっと溢れそうになる衝動を堪えていたのだ、と。
「…いやなのか?」
「嫌がると思う?」
リョーマがクスッと笑ってそう言うと、手塚も少しだけ表情を和らげて微笑んだ。
「アンタがオレを欲しいって思うとき、オレもアンタを欲しいって思ってる。すごいね、どうしてオレの思っていることがアンタに通じるんだろう」
「Because of love……か?」
「キザだね」
手塚は立ち上がってリョーマに口づけた。
貪るように舌を絡ませながら、手塚の指がリョーマの秘蕾に差し込まれる。クチャクチャと音をさせながら掻き回した後、ゆっくりとした出し入れを繰り返す。
「んん、……あ、ん…っ」
「…いいか?」
うっとりと目を閉じているリョーマを覗き込みながら手塚が尋ねてくる。
リョーマは目を閉じたまま小さく頷いた。

「う…あっ……っ!!」
大きな熱い肉塊がリョーマの小さな秘蕾をメリメリと広げながら押し入ってくる。
リョーマは左手で木の幹に爪を立て、右手で自分の口を必死に押さえ込んだ。
それでも、どうしても漏れてしまう声を何とかしたくて、リョーマは自分の袖を口に銜えた。
「リョーマ……っく!」
「……っ!!」
手塚は、自身を根元まで完全に埋め込むと、ふうっと息を吐いてからリョーマの腰や太股のあたりを愛しげに優しく撫でた。
そんな優しい手塚の手の動きでさえ今のリョーマには強い刺激となってしまい、快感に身体を震わせながら無意識のうちに手塚を強く締め上げてしまう。
「…っん」
手塚はきつい締め付けに低く呻きながらゆっくりと動き始める。
潤いが足りないらしく、二人は摩擦感をひどく感じた。だがそれが、お互いの官能にますます火をつけてゆく。
しかしリョーマを傷つけたくない手塚は、あくまでゆっくりとした動きで自分の大きさになじませようと試みる。
「…っ、……っみつっ!」
リョーマが銜えていた袖から口を離して、手塚を振り返る。
「…いいよ、もっと…っ、アンタのしたいように、して…」
手塚は獰猛な光を目に宿しながらも小さく微笑むと、リョーマの頭を優しく撫でた。
少しずつ、手塚の腰の動きが加速し始める。リョーマは両手で木に縋り付き、歯を食いしばった。
「くっ、うっ、んんっ、…っ!」
「…つらいか?」
「ちが…っ、ああっ!」
歯を食いしばっていないと、途端に甘い嬌声が漏れてしまう。リョーマは必死に首を横に振った。
手塚は目を細め、リョーマの腰骨をガッチリ掴むと力強く抉り始めた。
「ひっ、…いっ!…ああっ!ああっ!…っ!」
歯を食いしばる余裕すらなくしてゆくリョーマの声に反応するように手塚の肉剣がさらに硬度を増し、リョーマの内壁を自身の形に広げた。
数メートル先では多くの人々が行き来している中、闇と木々に紛れたこの空間は賑やかな祭りとは対照的に静かに、しかし激しく艶めいている。
声をかみ殺した二人分の荒い息づかいが 木々に吸い込まれてゆく。次第に激しくなる手塚の動きで生じる衣擦れの音も、時折吹き抜ける風がそっとさらっていってくれた。
「あ……っ、くっ、……っみつ…っ!」
声を出す代わりに、ハアハアと喘ぐように荒い呼吸を繰り返しながら、リョーマが手塚に合わせて腰を蠢かす。
手塚は動きを緩やかにすると、ゆっくりと自身を奥深くに埋め込んだところで一旦動きを止めた。
「…っ、ヤ…ダ……っ、くにみつ…」
手塚は、やめないで欲しいと目で訴えるリョーマの身体に腕をまわし、ゆっくり抱き起こした。
「あっ……いやだっ!ああっ!んんっ!」
手塚の左手がリョーマの口を塞ぐ。
身長差のために結合部分にリョーマの体重が加算され、手塚の熱塊がリョーマの内臓を押し上げた。
「んっ!んんっ!!」
手塚は右手でリョーマの右足を抱え上げると、膝を使ってリョーマの身体を下から抉り始める。
残されたリョーマの左足は、手塚が突き上げるたびに浮き上がった。
「んんっ、んっ、んっ!!」
あまりに強烈な刺激にリョーマは目を閉じることもできず、上下に揺すられながら視点も合わない目を宙に向けていた。
だがリョーマの耳に手塚の荒い息づかいが聞こえてくると、微かに残っている理性が感動に震えた。
(あの手塚国光が、オレを抱いている…)
普段、口数も少なく、表情を和らげることのない手塚が、自分にはやわらかく微笑みかけ、そしてこんなに熱く求めてくれる。
(オレだけが知っている、アンタのこんな激しさ…)
手塚の動きがさらに激しさを増し、思考はそこで途切れてしまったが、リョーマの心の中に歓喜の想いが残った。
「んっ、んっ、んっ」
突き上げられながら、リョーマは手塚を振り仰ごうとした。
手塚がそれに気付いてリョーマの口を押さえていた手を顎に移動させ、自分の方を向かせる。
「く、…みつっ」
頬を上気させ快感に瞳を潤ませたリョーマの表情に、堪らず手塚が腰の動きを止めて口づける。
無理な体勢にも関わらず、口づけは甘く長く続いた。ゆっくりとリョーマの右足が下ろされ、手塚は両腕でしっかりとリョーマの身体を抱き締める。
唇が離れると二人はしっとりと見つめ合った。
「あ……はうっ!」
手塚の腰が突然動きを再開し、一気に絶頂へ向けて加速する。
ほとんど木に押しつけられた恰好で後ろから突き込まれ、リョーマは木の幹に縋り付いて必死に激しい衝撃に堪える。
手塚がリョーマの前に手を回し、突き上げに合わせて刺激を加えるとリョーマはすぐに身体を硬直させた。
「………っ!!!」
きつい締め付けの中、手塚がリョーマのスイートスポットを狙って突き込み続けるうち、リョーマは自分の口を両手で塞ぎながら、とうとう絶頂を迎えた。
ものすごい力で手塚を絞り上げながらリョーマが2度目の精を解き放つ。
リョーマに締め付けられながら手塚は大きく2・3度突き上げると、爆発する直前にリョーマから自身を引き抜き、リョーマの股の間から地面に向けて激情を放った。
息を詰めてすべて出し終えると、二人はそれぞれに大きく息を吐き出した。
リョーマは肩で息をしながら木の幹に寄りかかるように手塚の方へ身体を向け、潤んだきつい瞳で手塚を見上げた。
「……なんで…中で……達かなかったんスか……っ!」
手塚も肩を軽く揺らしながら、リョーマを見つめ返した。
「…また…俺の家で着替えなくてはならない………だから……今日は下着を汚したらマズイだろう…?」
「………」
リョーマはしばらくきつい瞳を手塚に向けていたが、ふっと視線を落とした。
手塚の思いやりが嬉しかった。だが、最後の最後で『肩すかし』を食らったような、ちょっと寂しい気持ちがするのも事実だった。
「怒ったのか?」
「………」
リョーマは自分の中に射精される行為自体が好きなわけではない。手塚が自分の身体で快感を味わったという証をリョーマの中に残してくれることが、リョーマにとって特別に嬉しく幸せなことなのだ。その感覚はリョーマにしか味わえないものなのだから…。
だが自分のことを思って、そうしなかった手塚に、文句など言えるはずもない。
「………は、………て」
「ん…?」
「次は………絶対、中で……終わって!」
手塚は微笑むとリョーマを抱き締めた。
「『次』か……明日でもいいぞ、俺は」
リョーマはビックリして顔を上げた。
「明日って、いつそんな時間あんの?」
手塚はリョーマの髪を優しく撫でた。
「部活の後だな」
「………マジ?」
リョーマは呆然と手塚を見上げる。
「だが体力を温存するような練習のしかたはするなよ。手を抜いたら承知しない」
「…………」
リョーマはしばし手塚の顔を見つめ、いきなりプッと吹きだした。しばらくクスクス笑った後で、もう一度正面から手塚の瞳を見つめた。その瞳には、先程までのいじらしい切なさは消えている。
「いーっスよ。アンタもきっちり練習した後で、オレのことちゃんと満足させてみせてよ」
まるで試合を挑むかのような不敵な瞳に、手塚は自分が引き込まれてゆくのを感じる。
「ああ、覚悟しておけ」
二人は見つめ合うと、同時にクスッと笑いだした。
「浴衣を直そう」
「アンタが浴衣直せる人で良かった」
リョーマが自分の恰好を見ながら溜息をつく。
祭りの囃子と人々のざわめきが、二人の周りに戻りつつあった。