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────あっ、くにみつ…っ
胸の突起に触れるといつもリョーマは小さく肩をすくめる。それは一種の癖らしく、その一瞬に垣間見せる表情が好きで、意識的にリョーマの顔を覗き込みながら胸をまさぐる。
突起を摘み、爪を立て、時には強く引っ張ってやると、リョーマは目を固く閉じて唇を噛む。「噛むな」と囁いて口づけると、リョーマはそっと唇を開いて受け入れてくれた。
────んんっ
未だに呼吸がうまくできないらしく、長く舌を絡めていると、必ずリョーマは苦しげに眉を寄せる。その表情もまた、この劣情を煽る要素になるということを、リョーマは知っているのだろうか。
長い口づけで身体の力が抜けてきたところで、リョーマの胸に置いていた手をゆっくり下ろしてゆく。
────あっ
まだ幼さが残る雄を撫で降ろすと、リョーマの身体が揺れる。そのまま何度も撫でてやっていると、未完成ながらも、それが雄であるという主張を始める。
────ああ…
リョーマの吐息に艶が混じる。うっすらと開かれた瞳に捕らえられた瞬間、自分の中心にも熱が灯される。
────アンタは…服、脱がないの?
たいてい訊いてくる台詞。
きっと自分だけが何も着けていないことに不公平さを感じているのだろう。そうでなければ焦れったさを感じているのだろうか。
だがそんなときは優しく微笑みかけてリョーマに口づけ、その口を塞いでしまう。

自分にとって、服は理性を繋ぎ止める「手段」でもある。服を脱ぎ落とす時は、理性も一緒に捨てる時だ。一度捨ててしまった理性は、熱い激情を吐き出すまで戻ることがない。本能のままにリョーマを貪り始めると、たとえリョーマが涙を流しても、その涙さえ甘い誘惑に感じてしまう。
まさにケダモノのようだ、と心の中で自分を嗤う。
だから、自分がケダモノに成り果てる前にじっくりとリョーマをとろけさせておかないとならない。どんなに避難めいた瞳を向けられても、シャツのボタンを外す程度にして、今はまだ、服は脱がない。
────んっ
リョーマの雄を緩く扱いてやると、不満そうだった瞳が、一変して潤んでくる。文句を言いかけていた唇は、中途半端に開かれたまま、熱い吐息を漏らした。
────くにみつ…ああ…
生意気な瞳が、情欲に濡れた瞳に変わってゆく。自分のもっとも好きな瞬間かもしれない。
ゆっくりと身体をずらし、勃ち上がりかけたリョーマの雄を、躊躇いなく口に含む。途端にリョーマの下肢が強ばる。
────あっ、だめ…っ
熱に潤んだような瞳で、甘い吐息を混ぜた声音で、拒絶の言葉を言われても説得力なんか少しもない。
聞こえてないふりをして根元近くまですっぽりと口内に含み、ゆっくりと引き出してやる。何度かそれを繰り返してから先端を丁寧に舐め回す。
────あぁ……っ
リョーマの腰が揺れる。もう一度すっぽりと口内に導き入れてきつく吸いながら上下に動いてやると、今度はリョーマの腰が浮き上がった。
────やっ、ダメっ、出ちゃう…っ
口内に微かに広がってくるリョーマの「味」。ここまで来たら一度口を離す。
荒い呼吸を繰り返して縋るように見つめてくるリョーマを見つめ返しながら、このままリョーマを一度イかせるか、それとも自分を受け入れさせる準備を始めるか、一瞬考える。自分に余裕があるなら前者を、もうすでに苦しいほどリョーマを求めているならば後者を選ぶ。
今日は、「後者」だ。
震えるリョーマの先端に優しく触れるだけのキスをしてから、リョーマの脚を抱え上げて折り曲げ、彼の胸につきそうなほど押しつけながら左右に開く。
────ヤダっ、こんなの……っ
もう何度もこうして自分を受け入れる準備をしたはずなのに、まだ理性の残るリョーマはいつだって頬を染めて抗議する。
────ああんっ!
いくら抗議してきても取り合わず後孔に舌を這わせ始めると、リョーマの唇は抗議するどころか言葉さえ発することができなくなる。
後孔の襞を舌で優しく広げながら、時折リョーマの顔を盗み見てみる。リョーマは真っ赤になりながら必死に顔を逸らして、この視線から逃れようとしていた。
可愛い、と思う。
普段はリョーマのことを、女子のように可愛らしいとか、可憐だとか思ったことは一度もないが、こうして恥ずかしそうに真っ赤になって目を硬く瞑っている様は、なんだかとても可愛いと思える。
それでも、自分が「可愛い」だなんて言葉を口にしたら、きっとリョーマはその大きな瞳に目一杯力を込めて睨みつけてくることだろう。リョーマの、男としてのプライドは人一倍高いのだから。
リョーマの秘蕾が解れてきたのを見計らって、中指をそこにゆっくりと埋め込んでみる。
────あ……んっ
ピクッと全身で反応を返したリョーマは、たぶんその意志とは関係なく、柔らかな襞で体内に入り込んだ中指を締め上げてくる。指一本なのにこれほど強く締め付けられるのなら、指の何倍もの太さがある自分の欲望はどんなにきつく締め上げられてしまうのだろう。
ゴクリ、と喉が鳴る。
早く、繋がりたい。
指を少し引いて、入り口のきつく締まろうとする襞をのばす。少しできた隙間に人差し指も捩り込んで、二本の指をゆっくり広げてゆく。
────ああっ、やっ、ヘン……っ
常に閉じている部分を開かされる感触にリョーマが震える。だが、痛いのかと聞くと、首を横に振ってくれる。
広げていた指を閉じ、二本揃えて深く沈める。
────は……っ
反比例するように反らされたリョーマの身体が、小さく痙攣している。
中を掻き回すようにして二本の指をゆっくり引き出してやると、リョーマの身体も沈んでゆく。何度かそれを繰り返してから指を抜き去ると、リョーマはホッとしたように息を吐いた。
少し足りない潤いを充分に与えるために、いつものようにハンドクリームを取り出し、解れたリョーマの秘蕾にチューブの先を直接差し込む。
────あっ!
クリームを絞り出す間、リョーマは唇を噛んで眉を寄せ、迫り上がる何かを必死に堪えているように見える。
チューブの半分ほどを絞り出して引き抜き、足下に落とす。服を脱ぐために少し身体を離すと、リョーマの瞳が追いかけてきた。
────くにみつ……
こんな風に自分を見上げる時、リョーマはいつも熱に浮かされたような瞳をしている。それが、「ケダモノ」に残る最後の理性を飛ばす危険な引き金になるというのに。
シャツを脱ぎ捨て、ズボンのベルトを外し、ファスナーをゆっくり降ろす。下着をずらして脈打つ熱塊を取り出すと、それまでジッと見上げてきていたリョーマの瞳が、ふっと逸らされた。彼の上気した頬がさらに赤くなる様に、征服欲が湧き上がる。
────全部、脱いでよ…ちゃんと
そっぽを向いたまま、リョーマが呟く。ちょっと怒ったようなその言い方に、自然と笑みが浮かんでしまう。言われた通りにすべて脱ぎ落とし、彼を抱き締める。
────あ……くにみつ…
抱き締め返してくれる腕の強さが、愛おしい。
互いの身体の間にある二つの熱塊は、もうすでに限界近くまで膨らみ、ドクドクと脈打ってそれぞれが解放の瞬間を待ちわびているのが伝わってくる。
そっと抱き締めていた腕を外し、リョーマを俯せにさせると、恥ずかしそうに頬を染めながら、リョーマは自ら膝を立てて腰を高く上げた。熱い内壁に溶かされたクリームが少しだけ流れ出て、蕾の周りを艶めかせている。
逸る気持ちを抑えながら、リョーマの細い腰を両手で掴み、猛り狂う肉剣を蕾に擦りつける。
────は、ああ……ヤ……も…っ
リョーマが泣き出しそうな声で喘ぎ、シーツをきつく握ってたぐり寄せる。
────性格、悪い…っ
こんなシーンでのその台詞は、リョーマが感じすぎてもう我慢がならないと告げているのと同じだ。
わざと焦らしている訳じゃない。ただ、傷つけたくないだけだ。
もう、我慢ができないのは自分の方なのだから。
────あ……ああっ!
熱い。きつい。
拒まれているのではないかと思うほどに、侵入してゆく熱塊を襞が押し戻す。
少し乱暴に半分まで捩り込むと、リョーマの背が反り返った。
────やぁっ、…そ、な……ムリっ
ゆっくり小さく前後に動きながら、少しずつリョーマが慣れるのを待つ。
リョーマの顔を覗き込み、きつく寄せられている眉がほんの少し弛み始めた頃、崩れ落ちそうになるリョーマの腰を引き上げて、一気に奥までぐっと埋め込んだ。
────い……っ!
奥まで入り込むと、不思議なことに今度は離さないとでも言うかのように、熱い襞に絡め取られる。
あまりの心地良さに、気を許せばすぐに達してしまいそうだった。
────くに、みつ…っ
動くぞ、と断りを入れてから、クリームの助けを借りて緩く動き始めると、リョーマの唇からすぐに甘い声が洩れ始める。普段の彼からは想像もできないほど甘く、官能的な声だと思う。
────あっ、ああ、んっ
強く突き込むと大きく、緩やかに擦りつければ震えるように、開いたままのリョーマの唇から、様々な声が紡ぎ出される。
────や…ああぁんっ!
深く沈めたまま大きく腰を回すと、リョーマの声がひときわ大きくあがる。同時に、リョーマの熱い襞にきつく巻き付かれるような錯覚を起こす。その襞を纏いながら先端だけ残るように引き出し、奥まで一気に叩きつける。
────ひっ、ああっ!
大きく動きながらリョーマの耳元で想いの丈を囁くと、一瞬、リョーマが嬉しそうに小さく微笑む。
愛しくて、愛おしくて、この想いすべてを伝えるためにはどうすればいいのだろう。ただこうしてがむしゃらに熱を捩り込むだけで、伝わっているのだろうか。
どうしようもないほど愛していると。
リョーマのすべてが、何もかもが、欲しいのだと。
「リョーマ……リョーマ……っ」
譫言のように愛しい名を呼ぶ。
────ああっ、あっ、くに、…つっ、ああぁぁっ!
リョーマの内壁がギュウゥときつく窄まる。堪えきれずに達ってしまったらしい。一緒に連れて行かれそうになるが、もっとリョーマを味わいたくてどうにか堪えて波をやり過ごす。
────んっ、んっ、う、あっ
達ってしまった直後で力も入らないだろうに、懸命に締め付けてくれるリョーマが愛おしい。
もう少し味わいたい。
もっと深く、もっと奥まで。
「リョーマ…っ」
────あっ、あっひっ、や、あっ
突き込むたびにあがる嬌声に暴走しそうになる。ふと動きを緩めると、リョーマが縋るような瞳を向ける。
────な…んで?
戸惑うリョーマに微笑みかける余裕もなく、繋がったまま彼の脚を持ち上げて仰向けに反転させる。
────い、やぁっ!
襞が捩れ、熱塊を巻き込んで絞り上げてくるがそのまま構わずにまた突き込み始める。
きつく目を閉じ、喘ぎ散らすリョーマの痴態に目を奪われる。
突き込むたびにガクガクとリョーマの身体が振動する。そのまま突き続けているうちに、もはや声すら上げられなくなったのか、開いたままの唇からは、空気が激しく出入りする音しかしない。
動きを緩めてつらいかと訊くと、きつく目を閉じたまま首を横に振ってくれる。それどころか、ふと瞳を開いて小さく微笑みかけてくれた。
────気持ち、いい?…くにみつ…
リョーマのこんな表情を見る時、自分は本当に、心からリョーマに求められ、愛してもらえているのだと実感できる。
愛しさで、胸が苦しい。
どうしてこの世に、これほどまでに愛しい存在があるのだろう。
「愛してる…リョーマ…」
想いを唇に乗せて、リョーマに口づける。どうか、この想いが、少しでもリョーマに届くようにと。
────オレも、アンタだけ、愛してる…
少し離れた唇の隙間で、リョーマが答えてくれる。そのまま貪るように舌を絡め、リョーマの内壁に自分の熱を強く擦りつける。
────ああ、あっん!
突き上げながら、目の前で仰け反る喉に口づける。それから少し降りて鎖骨に跡を残した。
────あ……ああっ
腰を打ち込まれる衝撃でずりあがるリョーマの身体を、自分の方へ引き寄せて抱え直し、真上から突き降ろす。
────ひっ、い…っ、うあっ
息が上がる。そろそろ限界が近い。どうしようもないほどの射精感が本能だけを残してすべての思考を奪い去った。
────ああっ、ああっ、あ、ああぁっ!
夢中でリョーマを抉り続ける。叩きつける肉の音と、二人分の荒い呼吸しか耳に入らなくなる。
「リョーマ…っ!」
────くに…みつ…っ!
・・・