まだ暖かいとは言えない夜風が、リョーマの前髪を揺らす。
「ふ……あっ」
艶めいた水音がするたびに、リョーマの口から熱い吐息が漏れた。
湯の張ってない露天風呂の縁に腰掛けたリョーマは、自分の中心に顔を埋める手塚の頭を優しく撫でる。
「気持ち…いい……くにみつ……あ…あっ」
きつく吸い上げられてリョーマが仰け反る。
自分の口腔内でどんどん形を変えてゆくリョーマの欲望を、手塚はさらに煽り立てる。
「ああ…っ、そんなにしたら、だ………出ちゃうってばっ……」
リョーマの太股が断続的に緊張と弛緩を繰り返す。
「………っや、出……っ!」
手塚のジャケットの、肩の部分の布を握りしめてリョーマは大きく仰け反った。
「あ…………っっ!」
息を詰め、リョーマが全身を強ばらせる。
直後、手塚の口内にリョーマの熱い激情が吐き出された。
「んっ、……あっ……っ」
リョーマの身体の痙攣がおさまると、手塚がゆっくり顔を上げ、口元を手の甲で拭った。
「………飲んじゃったんスか?」
何も言わず手塚が微笑む。
「…じゃ、アンタのはオレがする!」
ムッとしたように身体を入れ替えようとするリョーマを、手塚がそっと制した。
「…いいから、脚を開け」
「…っ」
リョーマの顔が真っ赤に燃え上がる。
暗がりとは言え、月に煌々と照らされた中で自ら脚を開くことには、まだ抵抗がある。
「誰も見ていない……俺と、月だけだ」
「キザ」
リョーマが小さく笑いながら、観念したように目を閉じて溜息をつく。
「アンタが見てるから恥ずかしいんだけど」
「今更何を言っている」
「だって、アンタにはいいカッコしか見せたくないじゃん。なのに、こんな……」
いいながら、リョーマがゆっくりと立ち上がってズボンを下ろし、片足だけ引き抜いて再び腰掛ける。
縁に寄りかかるようにして大きく脚を開き、手塚にすべてを晒した。
大きく開かれたリョーマの両脚の中心に、再び手塚が顔を埋めてゆく。やわらかな膨らみに口づけ、そこから舌先を滑らせて固い蕾に辿り着く。手塚の舌が蕾に触れると、一瞬キュッと窄まり、ゆっくりとほどけ出した。
「あ……んっ」
手塚の熱い舌先がリョーマの蕾に潜り込む。
「ダメっスよ……今日はまだ風呂……あ、んっ……やっ」
リョーマの制止の声など聞こえないかのように、グイグイと手塚の舌がリョーマの秘蕾に食い込む。あまりの心地よさにリョーマも言葉の抵抗をやめて素直に感覚を委ね始めた。
「…くにみつ……っん」
リョーマの唇に手塚の指が触れる。何も言わず見つめてくる手塚に促されたように、リョーマはしなやかな長い指に舌を絡ませた。
目を閉じながら唾液が滴りそうなほど手塚の指を舐めていると、いきなりリョーマの口から指が引き抜かれ、代わりに手塚に口づけられる。
「んんっ、う……っん!」
激しく舌を絡ませながら、手塚の長い指がリョーマの秘蕾に一気に根元まで埋め込まれた。いきなりスイートスポットを責め立てられ、リョーマの腰が跳ね上がる。
「ん……っ、やっ、ああっ!」
「リョーマ……」
手塚の熱い吐息がリョーマの唇を掠める。
リョーマの唾液に濡れた手塚の指が、艶やかな水音をさせて狭い蕾をゆっくりと出入りした。
「あっ、あぁ…っ、く……みつ……っ!」
手塚の首に腕をまわして縋り付いてくるリョーマの表情を、闇に慣れた手塚の瞳が食い入るように間近で見つめる。
「あっ、……んっ、いい……、もう、いい……からっ」
「…っ」
熱い吐息とともに耳元へ囁かれたリョーマの言葉に、手塚は理性を飛ばした。
三本まで増やしていた指を一気に蕾から引き抜き、リョーマの片脚に引っかかっていたズボンと下着を手早く取り去ると、手塚はその引き締まった脚を肩に担ぎ上げる。
手塚は、期待感に瞳を揺らすリョーマを見つめたまま自分の熱塊を取り出し、焦らすようにその先端を熱い秘蕾に擦り付けた。
「ああ……っ、やっ……っ」
リョーマの眉がきつく寄せられる。
「…アンタ、やっぱ……性格……悪っ……」
涙ぐむリョーマに優しく微笑みかけると、次の瞬間、手塚の瞳の色が変わる。
「う、あ………っ、やああぁっ!」
軋む肉鞘を、手塚の凶器が一気に奥まで貫いた。
「く…っ、リョーマ……っ」
あまりのきつさに、手塚も息を詰める。
「……っ、うあっ、あっあっ、あぁっ!」
「リョーマ……あぁ……」
馴染む間もなくゆっくりと抽挿を開始され、リョーマの顔が苦痛に歪む。縁に押しつけられた背中も痛かった。
少しでも痛みを和らげようと手塚の腕にしがみつくと、肩に担がれていた脚が下ろされ手塚にしっかりと抱き締められる。
途端に、後孔の軋みも背中の痛みも何もかもが快感へと変化してゆくのをリョーマは感じた。
「あ…っ、あっ、あっ、…あっん……んっ」
抱き締められたまま、手塚が奥を抉る度にリョーマの唇からは甘い嬌声が上がる。
手塚の背に回した両手で、リョーマも必死になって手塚を抱き締めた。
「リョーマ……リョーマっ……好きだ……っ」
熱く零される手塚の囁きに、リョーマの身体が心ごと悦びに震えた。
「…もっ…と……くにみつ……あっ、くっ、………もっと!」
「あ……っ、くうっ、……リョーマっ」
奥深くに埋め込まれた手塚の存在をもっと感じたくて、リョーマが思い切り体内の熱塊を締め上げる。
そのきつく甘い締め付けの中、手塚の肉剣がさらに速度を速めながら抽挿を繰り返す。
手塚の腰骨がリョーマの尻にぶつかり、ガツガツと鈍い音を立て続ける。それと同時にリョーマの内部に零れだした手塚の先走りが、接合部分に派手な粘着音をあげさせていた。
「ああっ、ああっ、い…っ、す…ごっ……いいっ」
「リョーマ……っ、あ…っ……くっ……っ」
「あっ!?…な、に……っ?」
手塚はリョーマの身体をすくい上げ、ゆっくりと浴槽の底に横たえさせると、そのまま再びリョーマの脚を肩に担ぎ上げて、真上から突き下ろし始めた。
「やっ、あっ、やああっ、ああぁっ!」
「く、うっ、…リョーマ…っ!」
鋭く突き下ろされ、すぐさま勢いよく先端まで引き抜かれて、リョーマの身体が反動で弾み続ける。
いつもより激しい手塚の行為にリョーマは意識を飛ばしそうになる。しかし、強すぎる快感が、逆にリョーマの意識を引き戻した。
「ああっ、ああっ、ああぁっ、あっあっ、ああぁっ!」
すでに口を閉じることも出来ず、リョーマは喘ぎ続ける。真っ白な思考の中で、手塚への愛しさだけが、リョーマの瞳に宿っていた。
「くに、みつっ…く…み……っ、ああっ!ああっ!」
「いくぞ、……リョーマっ!」
手塚の肉剣がリョーマの奥までめり込み、そこからさらに最奥を抉り始める。
「うああっ、ああっ、も、だめっ!壊れ……るっ!」
「くっ、…っ、リョ……マっ…あっ……くうっ!!」
艶めいた呻きと共に手塚の腰骨が限界までリョーマの尻朶に食い込む。そこからグイッグイッと何度も大きく突き上げながら、手塚は大量の体液をリョーマの直腸内に注ぎ込んだ。
手塚の熱い激情を体内に感じたリョーマも、激しく身体を痙攣させながら白濁液を吹き上げ続ける。
ようやくすべてを吐き出し終えた二人は、繋がった身体を離そうともせずに強く互いを抱き締めあった。
「……すまん……抑えが……効かなかった……」
荒い息に言葉を途切れさせながら、手塚が小さく呟く。
リョーマも息を弾ませながら、しかし、いつものように文句は言わずにクスッと笑った。
「…ねえ……続き、出来る…体力、残ってる?」
「………ああ」
一瞬驚いたように目を見開いた手塚は、リョーマをさらにきつく抱き締めながら頷いた。