周りに人影はなかった。
それでも解放された空間はリョーマの羞恥心を煽る。
「ん……あ、ん…っ」
口づけながらシャツのボタンを全て外され、あらわになった胸の突起を手塚がきつく吸い上げる。
リョーマの背中へ布越しに伝わるコンクリートの冷たさが、熱くなり始めた肌には心地よく感じられた。
手塚の手がリョーマのズボンに掛かる。
ものすごい勢いでベルトが外され、ファスナーが下ろされる。
「ああっ、や…っ」
いきなりリョーマのズボンが下着ごと太股まで下ろされ、頭を擡げていた昂ぶりが手塚の口に含まれた。
「あっ、はぁ…」
緩く扱かれながら先端を舐め回され、時には音をたてて吸い上げられて、リョーマはどんどん追いつめられていった。
「出ちゃうよ、…待ってっ、…まだイきたくないってば!……ああぁっ!」
無理矢理追い上げられて、リョーマが堪えきれずに達してしまった。
リョーマが潤んだ瞳で手塚を睨む。
「……待ってって……言ったのに……っ!」
口元を拭いながら手塚が優しく微笑んだ。
「すまんな」
謝られて、それ以上手塚を責められなくなったリョーマは上目遣いで手塚を睨んだまま、腕を引っ張って自分の立っていた場所に手塚を押しつけた。
「…リョーマ?」
リョーマは無言のまま手塚のズボンのベルトに手をかけ、もどかしげに外しながらファスナーを下ろす。
「リョーマっ」
「オレもやる」
そう言って手塚に挑戦的な目を向けると、下着の間から手塚の熱塊を取り出す。
「………っ」
リョーマは一瞬その大きさに息を飲んだが、もう一度チラッと手塚に視線を投げると躊躇わずに口に含んだ。
手塚が自分にしてくれたように、太い茎を手でゆっくりと扱きながら先端に舌を這わせる。
自分の気持ち良かった場所を思い出しながら同じところを同じように刺激してやった。
「……っ、リョーマ…っ」
アイスのように舐め上げながら、リョーマが上目遣いで見上げると、手塚の肉剣が硬度を増した。
「…すごいっスね、アンタの」
そう言えば、何度も身体を合わせているのに、リョーマがこうして手塚の昂ぶりを間近に見るのは初めてのような気がした。
(いつもオレばっかり、よくしてもらっていたんだ…)
リョーマは、すでに大人のそれに見劣りしない手塚の熱棒を、愛しさを込めて口の中にすっぽりと包み込む。
「……っ」
手塚が息を飲む。
そんな、切羽詰まった手塚の様子が嬉しくて、リョーマは必死になって奉仕を続けた。
手塚の先端から先走りの液が出始めたのを感じとったリョーマは、更に敏感なところを攻めようとした、その時、
「あっ」
手塚がリョーマの口から自身を取り上げた。
「もうちょっとだったのに」
手塚に腕を引っ張り上げられながら、リョーマがふてくされて唇を尖らせる。
そのまま橋脚に向かって手をつく恰好をとらされたリョーマは、自分の後孔に熱いものが押し当てられたのを感じて焦った。
「ちょ、待ってよ、いきなりは無理……っ!」
「全部は挿れない」
それでもグイグイと押しつけられてくる熱塊が、リョーマの秘蕾を少しずつ押し広げてゆく。
「あっ、や……だぁ…!無理だって…っ」
「…じっとしててくれ」
手塚は先端の一部をリョーマにめり込ませたまま自身を扱き始める。
「なに…?」
「くっ……うっ」
リョーマの腰を掴んでいた手塚の左手に力がこもった、と感じた途端、リョーマの中に熱い体液が注ぎ込まれた。
低く呻きながら全てを吐き出すと、手塚は深く息を吐いた。
「くにみつ…?」
「これで少しは足しになるだろう…」
「あ…」
潤滑剤も何もない状態でリョーマと身体を繋げるとリョーマの身体へのダメージが大きい、と考えた手塚はせめてもの潤いのかわりにと、自らの体液をわざとリョーマの浅いところへ注ぎ込んだ。
そんな手塚の無謀な思いやりを感じ取ったリョーマは苦笑しながら手塚を振り返った。
「よくそんなこと思いつくね」
「じっくりほぐしてやる余裕がないだけだ」
言いながら手塚は、リョーマにめり込ませていた肉剣で入口を掻き回し始める。たった今熱を吐き出したばかりのものが、すでに形を変え、熱く脈打っていた。
「ああ、んんっ、やっ」
「リョーマ…」
少しずつ深くなる結合に、リョーマは先程目の前にしていた手塚の大きさを思い出して不安になった。
(あんなのがホントにいつも入って来ていたわけ?)
そんなことをリョーマが考えている間にも、手塚の熱い固まりは質量を増しながらリョーマの中に入り込んでくる。
「あ、あ……っ、もっとゆっくり……んんっ!」
「あと少しだ…っ」
「うあっ!」
リョーマの腰が引き寄せられて、残りの3分の1ほどがグジュッと音をたてて一気に押し込まれた。
手塚は息を吐くと、リョーマの身体を抱き締める。
「…大丈夫か?」
「あんまり…大丈夫じゃないけど、くにみつならいい…」
「リョーマ…」
耳元で熱い吐息と共に自分の名前を囁かれて、リョーマは身体を震わせる。
「動くぞ」
「ん…」
手塚の熱塊がゆっくりと引き出され、またゆっくりと埋め込まれる。根元まで埋め込んだところで、腰を回されてリョーマは喘いだ。
ひどく久しぶりに感じる強烈な快感が、リョーマの身体中からわき起こってくるようだった。
「…ねえ…」
「…ん?」
「…気持ち、いい?」
リョーマが身体を捻って手塚を振り返ると、獰猛な雄の顔をした手塚と目があった。
手塚は「ああ」と答えてリョーマに口づける。舌を絡ませながら腰を動かされて、リョーマは苦しげに眉を寄せた。
「ふ…ああ…っ」
唇が解放されるやいなや、リョーマの口から甘い声が漏れた。
それが合図のように、手塚の動きが激しくなる。両手でしっかりとリョーマの腰を掴み、荒々しく前後に揺さぶる。
「あっ、ああっ、あうっ!」
「く…っうっ……リョーマ…っ」
手塚は崩れ落ちそうになるリョーマの腰を支えながら、膝を使って下から抉り込むように激しく突き上げる。
乱暴なほど肉剣を出し入れしてもリョーマの内部は傷つく様子はなく、なめらかに手塚を受け入れ、そして出ていこうとするときつくまとわりついて行かせまいとする。先程リョーマの中に注ぎ込まれた手塚の体液が、見事に潤滑剤として役割を果たしていた。
「は、ああっ、あんんっ、ああっ、あっ」
手塚が激しく突き込む度に、リョーマの口から嬌声が漏れた。
先程とは逆に開放的な場所が、リョーマに声を抑えることなく、感じるままに喘がせる。
それが更に手塚の激情を煽り、腰の動きを加速させた。
「すご……、く…みつっ、深っ……ああぁんっ、あっ、はぁっ!」
「リョーマ……リョーマ…っ!」
愛しくてたまらないかのように、手塚が何度もリョーマの名を呼ぶ。
そのたびにリョーマの身体は反応して、体内の手塚を締め上げた。
何度も何度も激しく突き込まれているうちに少しずつ溢れ出した手塚の体液がリョーマの内股を伝って流れてゆく。
「……は、あっ、ひ………っっ!」
奥まで押し込まれてそのまま中を抉り回され、リョーマが息を詰めた。
その最奥から一気に、抜け出てしまいそうなほど勢いよく身を引き、そこからまたさらに奥の奥をめがけて手塚が腰を叩きつける。
普段の手塚からは想像もできない激しさに、リョーマは心の隅でなんとも言えない優越感を感じる。
(この人のこんな姿は、オレしか知らないんだ)
嬉しくて嬉しくて、手塚への恋心が一層膨れ上がってくる。
手塚のことが好きすぎて、あまりの切なさに泣きそうにさえなってきた。
熱くリョーマの名を呼ぶ声も、激しく肉のぶつかり合う音すらも、リョーマの独占欲を甘く満たした。
「くにみつ…っ、好きっ……ああっ、はあぁっ、あ、ん、んんっ」
「リョーマ…う、くっ……俺のものだ、…お前は全部っ!」
「ああぁ、や、…出そう…っ、くにみつっ!もっと!」
手塚の動きが更に早まり、頂上に向かって一心不乱に抉り始める。リョーマの腰もそれに合わせてうねりだした。
「いくぞっ、リョーマっ…、あっ、くうっ!」
手塚がリョーマの尻朶を変形させて限界まで肉剣を突き刺し、リョーマ自身でさえ意識したことのない身体の奥に熱い体液を注ぎ込む。
「ひあぁっ、ふ、んんっ!」
リョーマの奥深くで想いの丈を断続的に吐き出し続ける手塚を更に絞り上げながら、リョーマも橋脚の壁に向かって熱い激情を迸らせていた。
長い長い絶頂を終えて身体から力を抜くと、手塚は満足げに吐息を漏らしてリョーマを抱き締めた。
リョーマも硬直していた身体を弛緩させて手塚に寄りかかる。
甘い余韻の中で、二人は息も整わないままに口づけを交わした。
「……死ぬかと思った」
溜息混じりにリョーマがそう呟くと、手塚は苦笑して「すまん」と答える。
「…アンタも死ぬ程ヨカッタ?」
さりげなくリョーマが、先程の「死ぬかと思った」の意味を「それほどよかった」のだと伝える。
リョーマの素直でない感想にやわらかな微笑みを返して、手塚がリョーマの身体を一層深く抱き締める。
「ああ、このままずっと、一晩中でもお前を抱きたいほどな」
「ホントに死ぬってば」
リョーマは呆れたように言いながらも、満ち足りた表情をしていた。
手塚はリョーマの頬に口づけると、まだ繋がったままだった自身をゆっくりと引き抜く。
「…んんっ、あ、出て来ちゃうっ」
手塚は自分のポケットから慌ててハンカチを取り出し、リョーマの秘部にあてがった。
「すまない、リョーマ……このまま帰れるか?」
「…平気っスよ」
本当は帰り道にまた漏れ出てきそうで心配なリョーマだったが、これ以上手塚に謝らせたくなかった。
手塚はリョーマの内股のあたりまで綺麗に拭いてやると、下着とズボンを引き上げてやった。